【かえるちゃん】マルチすぎるコスプレイヤーの仕事論「全方位ガチで生きると、嫌いな自分から遠ざかる」

働き方が多様化し、やりたいことを形にしやすくなった現代。それでも一歩踏み出せないのは、時間の問題や家庭の事情、あるいは経済的理由など、人それぞれの事情があるはずだ。

一方で、それらの理由を言い訳にして、犠牲的に生きている側面も否めない。

どうしたら私たちは、もっと自由に人生を謳歌できるのだろうか。

そこで話を聞いたのが、SNS総フォロワー30万超のインフルエンサー・かえるちゃん。コスプレイヤーとして活動しながら、コンカフェプロデュース、バーレスクダンサー、ラウンドガール、さらには介護美容師と、まさにマルチに活躍する毎日を送っている。

しかもその全てに“ガチ”な姿勢で挑む彼女。なぜかえるちゃんは、こんなにも幅広い仕事を楽しみながら全力で取り組めるのだろうか。彼女の生き方から、自分のやりたいことに背を向けないヒントを見つけてみたい。

かえるちゃん

かえるちゃん

少女漫画『GALS!』にあこがれ、ガングロギャルに。その後、介護美容師として働きながら、コスプレイヤーの活動をはじめ、テレビ東京『家、ついて行ってイイですか?』の出演をきっかけに注目を浴び活動が本格化。現在はコスプレイヤーと並行し、コンカフェプロデュース、バーレスクダンサー、ラウンドガール、介護美容師と多岐にわたった活動を展開している ■XInstagramTikTok

ガングロギャルになったとき、私の人生は始まった

私、小さい頃からずっと自分のことが嫌いだったんです

親が厳しくて、勉強して私立の中学に入ったけれど、全然馴染めなくて、友達もいなくて、何かあると泣いてばかり。今の私とは真逆の女の子でした。

そんな自分が嫌で、中2の時にずっとあこがれていたガングロギャルのカッコをして渋谷に飛び出した瞬間が、本当の意味での私の人生の始まりです。

ギャルサーに参加して仲間ができて、週8、9で日サロに行って、読者モデルをしたりブログを書いたり、普段行かないような丸の内の居酒屋でバイトしてお金を稼いだり、毎日やりたいことにあふれていて。

渋谷の高校に通っていたので、放課後は毎日のようにセンター街に出かけて、とにかく忙しかったですね。

かえるちゃん

進路も、このまま皆と同じ感じで大学に行っても意味ないだろうなと早々に見切りをつけて、手に職が付けられる上に自分が大好きになれるものはないかなと思って見つけたのが、介護美容師という仕事でした。

介護美容師は、老人ホームなどに行って、車イスとか寝たきりのお年寄りの髪をカットしたりきれいにしたりする仕事で、正社員として週5で関東中の介護施設を回っていました。

私、昔からおじいちゃんやおばあちゃんが大好きなんです。本当は介護の仕事でもよかったんですけど、介護職は派手髪NGというルールが多い。派手髪じゃない私なんて私じゃないし、お年寄りに喜んでもらえる仕事が良かったので、当時やっている人がほとんどいなかった介護美容師の道に進みました。

かえるちゃん

で、介護美容師の仕事をしながら、新たに見つけたのがコスプレの世界。きっかけは、友達に誘われて出かけた東京ゲームショウというコスプレイベントでした。

そこでコスプレイヤーという存在を知った私は、ウィッグを被ってメイクをしたら、全然違う人になれることが面白くて、自分もやってみることに。

最初は趣味で始めたけれど、やっぱりやるなら全力でやりたくなっちゃうんですよね。どんどんのめり込んでいたら、いつの間にかバズって、お仕事を頂けるまでになりました。

他にも今やってるバーレスクダンサーの仕事も、ラウンドガールの仕事も、友人や知り合いから「やってみない?」と誘われたのがきっかけです。

かえるちゃん

基本的に、興味のあることは何でもやっちゃうタイプなんですよ。

全力人生の源は、“いつか夢はかなう”のディズニーマインド

そんな私のポリシーは、何でも全力でやること! それは仕事も趣味も同じで、やるからには準備も勉強もガチガチにして、フルパワーな状態で挑みます。

例えば介護美容師の仕事では、関東のいろんな施設を毎日回るから、基本始発出発なんですよ。でも私は、友達と遊んだり仕事の勉強したり、趣味にあてたりする時間も絶対に削りたくなくって。

朝まで遊んでそのまま始発に乗って仕事に行くこともザラでしたし、睡眠時間なんて1〜2時間で十分。

今はさすがにもうちょっと寝てますけど、「人間は人生の大半を寝て過ごしている」という話を聞いて、そんなのもったいなさすぎるって思っていました。

かえるちゃん

新しいことを始めるときも、絶対に妥協したくありません。

例えば一昨年、とあるYouTuberの方の動画の企画で初めてポーカーをやらせてもらって。その時は「ポーカーの経験がなくても、女の子としてYouTubeに出てくれるだけでいいよ」って感じだったんですよね。

案の定ボロ負けしたんですけど、負けたことがとにかく悔しくて。そこから講師の先生をつけて必死にポーカーの勉強を始めたんです。

そしたら、始めて8カ月くらいで国内の大会で優勝するまでになって、去年にはスポンサーさんがついてラスベガスの世界大会にも出場しました。

かえるちゃん

やると決めたら、とことんやる。このスタイルは小さい頃から変わらないですね。

なんでこんな極端な性格になったんだろうって考えたんですけど、親の影響はあるかもしれません。

うちは親も思い込んだら一直線っていうタイプ。子どもをどうしてもディズニー好きにしたかったらしくて、私は小さい頃から毎日ディズニーランドの周りを散歩して、毎日ディズニー映画を観て育ちました。

そんな英才教育のおかげで、今では私も清く正しいディズニーガチ勢に(笑)

小さい頃から「いつか夢はかなう」ってディズニーマインドを浴びてきているから、本当に頑張れば何でもかなうんだろうなって思いながら、毎日を生きています。

どんなに忙しくても、人生から一つでも後悔を減らしたい

こんな生活をしているから、もちろん時間なんてありません。今は週2でバーレスクに出て、撮影やコスプレのお仕事もして、土日は何かしらのイベント出演があって。美容師としての腕を落としたくないので、月2で介護美容師の仕事も続けています。

よく「毎日忙しそうだね」と周りからも心配されるし、実際どれかを手放した方がいいのかもしれない。でも、どれもやりたいことだから全部諦めたくないんです。

かえるちゃん

人生、後悔したくないじゃないですか。

私、やらずに後悔したことがあって。キャビンアテンダントだった母がよく英語を教えてくれていたのに、反抗期だった私は母親から勉強を教わるのが嫌で、ずっと英語から逃げていたことです。

でもポーカーでラスベガスに行って、海外の友達ができて、そしたらやっぱり英語を話せるようになりたくなって。今は月1、2回のペースで英語のオンラインレッスンを受けるようになりました。

ただやっぱり大人と子どもじゃ吸収力が全然違うので、あのときちゃんと勉強しておけばよかったって、ちょっと後悔しています。

そういう後悔を人生から一つでも減らすために、やりたいことは全部挑戦したいんですよね。

それによって犠牲にしているものもあるかもしれないけど、私にとってそれは犠牲じゃなくて、単に優先順位が低いだけです。一番大切にしたいものを守り抜けるなら、多少忙しくてもそれでいいやと思っています。

王子様にも魔女にも頼らない“ラプンツェル”のように人生を切り開く

最初にもお話ししましたが、私、基本的に自分のことが好きじゃないんですよ。

そんな私がこうやって人前に出るお仕事ができているのは、本名ではない「かえるちゃん」という新しい自分を見つけることができたから。「かえるちゃん」というキャラクターが、私に価値を与えてくれたんです。

だから、もし何かやりたいけれど自信がないような人は、そんなふうにキャラチェンジしてみるのもいいですよね。自分と違うキャラを演じてみるだけで、気持ちってきっと変わると思います。

それに、チャレンジには常に新しい世界を知れる楽しさもあります。

私がラウンドガールを始めたときも、最初はプロレスのこともまったく知らない素人からのスタートでした。

でも必死になって勉強していくと、自分の知らない世界に一つ一つ小さいルールがあると分かって、そこからまた新しい仲間ができて、人生が広がっていったんです。

きっとこれを読んでいる人の中にも、時間がないとか、勇気が出ないとか、いろんな理由で諦めていることがあるのかもしれません。でも、時間はつくるものだし、動き出さなきゃ何も始まらないと思いますよ。

かえるちゃん

話は戻りますが、私はディズニーの中でも、特にラプンツェルが大好きなんです。なぜかというと、ラプンツェルは自分の力で塔を出たから

王子様が迎えに来るのを待つのでもなく、魔女の力を借りるわけでもない。フリン・ライダーに助けてもらった部分はあるけれど、一歩踏み出したのは彼女自身です。

ずっと母親の言いつけを守って塔の中で暮らしてきたラプンツェルが、自分の意志で外の世界に飛び出して、本当の自分の姿を見つける。

私もラプンツェルみたいになりたくて、新しい世界に飛び出しました。そしてそこには、私の知らなかったいろんな楽しさや驚きや発見があって。見たことのない景色の美しさに、今も感動し続けています。

人生を切り開くのは、自分自身。ずっと塔の中にこもり続けるか、一歩踏み出すか。どちらの自分が好きか、ぜひ自分の胸に問いかけてみてください。きっと答えは出ているはずです。

取材・文/横川良明 編集/大室倫子(編集部)