決め手に欠ける転職のモヤモヤを解決する“ジョブ・クラフティング”のススメ「人間関係は良好、でも本当にこのままでいいの…?」
「どうやったら転職はうまくいく?」「私に向いている仕事って何?」はじめての転職には悩みや迷いがつきもの。長く自分らしく働き続けるための転職のコツを、キャリアアドバイザーが伝授!
今の職場に大きな不満はないけれど、「本当にこのままで良いのかな?」とモヤモヤ……。
転職が当たり前になった現代だからこそ、「いつ転職するのがベスト?」「転職に踏み切る決め手は?」と悩んでしまう人は多いのではないでしょうか?
そんな誰もが一度は直面する悩みに、キャリアアドバイザーの藤井佐和子さんが回答します!

<プロフィール> 株式会社キャリエーラ 代表取締役
藤井佐和子さん
大学卒業後、カメラメーカー海外営業部にて3年半従事、その後、前職インテリジェンス(現:パーソルキャリア)では、創業期の1994年から8年間派遣事業部と紹介事業部の立ち上げに携わる。2002年株式会社キャリエーラを立ち上げ、キャリアアドバイザーとして1万7000人以上のカウンセリングを行う
【今回の相談】人間関係は良いけどモヤモヤ。転職すべき?
26歳/クリエーティブ職
新卒で入社した今の職場は、楽しい上に人間関係も良好ですが、業務量の多さと身に付くスキルが合わないと感じてしまいます。忙しいわりに細かい業務が多く、成長できていないような気が。
環境が良いならもう少し続けてみるべきか、転職するべきか、他の会社を知らないから自分でも分からない……アドバイスをいただきたいです。
・転職するかどうかは「キャリア形成」の観点で考えて
・判断に迷ったら、仕事に対する「考え方の枠組み」を変えてみよう
・いつでも転職できるよう準備は怠らないで
転職を迷うのは「キャリア視点」が足りないから
私のもとにも「人間関係が良く、楽しい職場だけど何となく不安」という方は多くいらっしゃいます。
職場の人とは1日のほとんどの時間を共に過ごすわけなので、職場の人間関係が良いに超したことはありません。
ですが、良くも悪くも「人間関係」が転職の判断基準の一つになっているのは少し考えもの。というのも、人間関係で転職する・しないを判断するのは「キャリア形成」という観点ではあまり良い方法ではないからです。
転職すべきか、現職でもう少し頑張るべきか。
その選択に迷ってしまうのは、ビジョンが描けていなかったり、自分が何のために何をしたいのかというキャリアの軸が不明瞭だったりするから。
臆測にはなってしまいますが、Sさんはまだキャリアの軸や仕事の本質がはっきり見えていないのではないでしょうか?
それがゆえに視野が狭くなり「忙しいわりに成長できていない」と感じているのではないかと思います。
キャリアにおいて、なんだか壁にぶつかっているような気がすると感じたときは「ジョブ・クラフティング」を試してみることをおすすめします。
ジョブ・クラフティングとは、仕事を主体的なものとして再定義し、仕事に新たな価値を見いだすこと。これを行うことで、振られた仕事をただこなすのではなく、「○○のために自らやっている」という意識が持てるようになります。
「転職するかどうか」を判断するなら、ジョブ・クラフティングを行ってからでも遅くはありませんよ。
「ジョブ・クラフティング」で業務を再定義してみよう
ジョブ・クラフティングを実施する際に、必要な三つのステップは以下のとおりです。

【STEP1】業務内容を洗い出し、「仕事の意味付け」を行う
やりたくない・苦手だと感じている業務を含めて、今自分が担当している業務をすべて洗い出しましょう。それらの業務一つ一つに対して、誰に対するどんな仕事で、どのような影響があるのかなど、「意味付け」をしていきます。
何のためにやっている仕事かが分からない場合は、先輩や上司に話を聞いてみたり、会社の方向性を改めて確認したりするのがいいでしょう。
Sさんのようにクリエーティブ職などでクライアントと会う機会が少ないのであれば、営業担当に同行して顧客に直接会ってみるのも有効です。
【STEP2】働く理由や目指す姿などキャリアの軸を決める
次に自己分析などから、自分のキャリアの軸を再確認します。
入社時に目指していた姿や今目指したいと思っている姿、価値観ややりがいを感じること、そしてうまく活かせていないと感じるスキルや弱点など、多角的な視点で分析を行います。
その上で、キャリアビジョンをかなえるためには今どんなスキルや知識が必要なのか、どのような仕事に取り組むべきか、逆に自分には必要のない要素はないかなどを洗い出します。
【STEP3】1・2の内容をすり合わせ、仕事を主体的に捉え直す
最後にSTEP1と2で洗い出した要素をすり合わせ、業務内容の再定義を行います。
そして自分が「つまらない」「意味がない」と感じている業務があれば、どのようにすれば自分にとって有意義な仕事になるかを考えてみましょう。
例えばSさんのようなクリエーティブ職の場合。
「クリエーティブ以外の業務=雑務」と捉えられがちですが、将来的にマネジメントに携わりたいならクリエーティブ以外の業務を経験しておいた方がキャリアにおいて有利になるでしょう。また将来的に独立するつもりなら、顧客対応など営業的な視点も必要です。
このように、ジョブ・クラフティングを行うことで、これまで「雑務」だと感じていた仕事への捉え方が変わり、主体的に仕事に取り組む原動力になります。
それにより、成長スピードが格段に上がり、キャリアビジョンの実現にもつながるのです。
「仕事の意味」が腹落ちすれば、自然と道が見えてくる

逆にジョブ・クラフティングを行った結果、「今の会社では自分のキャリアビジョンをかなえるための経験が積めないかも」ということが分かったなら、「転職」というカードを切るのも一つの手段になるでしょう。
とはいえ、仕事の本質を理解するために必要な期間は人によって異なり、入社1年目で分かる人もいれば、大器晩成型で数年かけてたどり着く人もいます。
さまざまな人に話を聞いたり、多様な業務を経験したりする中で腹落ちするポイントを探ることも大切です。
ちなみに、「今は転職しない」という選択をしたとしても、転職サイトや転職エージェントに登録し、常に情報収集を行っておくことは非常に重要です。
というのも、世の中にどんな求人があって、どのようなスキルが評価されやすいのかを知ることは、ジョブ・クラフティングを行う際の一つの指針にもなるからです。
どんな仕事にも言えることですが、仕事は主体的に取り組むことで見える景色が大きく変わります。
「やらされている」のではなく「自らやっている」という意識で、有意義な時間を過ごせるような選択を心掛けられるといいですね。
取材・文/赤池沙希 編集/大室倫子(編集部)
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