転職で「PRできることが無いから資格取得」は悪手? 自己アピールにつながる“独自性”の見出し方
「どうやったら転職はうまくいく?」「私に向いている仕事って何?」はじめての転職には悩みや迷いがつきもの。長く自分らしく働き続けるための転職のコツを、キャリアアドバイザーが伝授!
手に職を付けたいなら、資格とかとった方がいいのかな……?
でも、そもそも資格って転職に役立つの?
短期間で取れて、転職に有利なコスパの良い資格ってある?
そんなよくある疑問を、株式会社キャリエーラ代表、キャリアアドバイザーの藤井 佐和子さんに聞いてみました。

<プロフィール> 株式会社キャリエーラ 代表取締役
藤井佐和子さん
大学卒業後、カメラメーカー海外営業部にて3年半従事、その後、前職インテリジェンス(現:パーソルキャリア)では、創業期の1994年から8年間派遣事業部と紹介事業部の立ち上げに携わる。2002年株式会社キャリエーラを立ち上げ、キャリアアドバイザーとして1万7000人以上のカウンセリングを行う
【今回の相談】転職のために資格取得を検討中。でも、本当に必要?
28歳/一般事務
私にはスキルやPRできることが無いので、今後のために資格を取った方がいいのかなとぼんやり考えています。でも、資格って本当に転職活動で必要ですか?
・資格取得は「転職に必ず有利になる」というイメージは誤り
・転職で大切なのは独自性。自分ならではのアピールを探して
・キャリアの棚卸しで思わぬアピールポイントが見つかることも
転職のために資格は「取らなくてもいい」?

「資格は転職活動で有利になるのか」「どんな資格を取るのが良いか」など、資格に関する相談はとても多いです。
おそらくMさんも、私に「ズバリ、この資格がおすすめ」と言ってほしいのだと思いますが、先に結論を申し上げると、資格取得にはそれほど大きな威力はありません。
と言うのも、転職市場において何よりも武器になるのは「経験」だからです。
保育士や医師、介護士など、その資格がなければできない仕事があるような場合は別ですが、よほどのことがない限り「資格がある=即戦力」にはならないことを肝に銘じておきましょう。
逆に資格を取得したがゆえに「何が何でもこの資格を活かさなければ」という罠に陥ってしまう人もいます。
「やりたいこと」ではなく「資格を活かすこと」が目的になってしまい、なかなか転職先が見つからないというケースも珍しくありません。
このことからも、個人的な意見としては「資格は取らなくても良い」というのが本音です。
資格取得がプラスに働くケースは?
ただし、資格取得がプラスに働くケースもあります。
それは、資格取得によって自分に自信が持てるようになる場合。
Mさんは自分のことを「スキルやPRできることがない」とおっしゃっていますが、資格を取得することで自信につながるのなら、取得して損はないでしょう。
その他、面接などで資格にまつわるエピソードが話のタネになることも。例えば「資格勉強のためにこんな努力や工夫をしました」といった話ですね。
実用的なスキル習得を目的としたスクールで学ぶのも有効
いずれにせよ、取得した資格が直接的に転職に有利になることは少ない点は念頭に置いておきましょう。
強いて言うならWebデザインやプログラミングなど、資格ではなく実用的なスキルの習得を目的としたスクールで学ぶのは有効だと思います。
実践的なプロセスを学ぶ中で、その仕事が自分に合うか合わないかを判断する材料にもなりますし、スクールによっては卒業と同時に案件や就職を斡旋してくれるところもありますよ。
「経験×価値観」を組み合わせて、自分ならではの独自性を探して
先ほど、転職市場において何よりも武器になるのは「経験」とお伝えしましたが、経験さえあればOKというものではありません。
特に年齢を重ねてからの転職や競争率が高い職種への転職の場合、経験だけで採用に至るかと言われると、必ずしもそうではないのが現状です。
そこで大切にしてほしいのが「独自性」。
業務経験としてドンピシャの経験はなくとも、「この経験とこの経験があるので、こんな貢献ができます」や「前職ではこんなプロセスを加えて業務に取り組みました」など、「経験×あなたならではのアイデアや価値観」を組み合わせることで、独自性が生まれます。
この独自性こそ、企業があなたを採用する理由。「一緒に働きたい」と思ってもらえるかどうかを左右する大きな要素となるのです。
なので、資格取得も独自性を出すための一つの要素として活用するのがいいでしょう。
「事務の経験に加えて、さらに専門スキルを身に付けたいと思い、簿記の勉強をしました」「自信を付けたくて難しい資格にチャレンジしました」「新しいことを学ぶのが好きなので資格を取得しました」など、どのような経緯で資格取得に至ったのかなどのエピソードを加えることで、あなたの人柄や価値観が見えてきます。
それにより「そういう志向性の人なら自社にマッチしそう」「部署に新しい風を吹かせてくれそう」など、あなたを採用することによるメリットを採用担当にイメージしてもらいやすくなるでしょう。
それこそが独自性であり、他の求職者との差別化ポイントとなります。
「○○の経験がある」「資格を取得した」「○○な時、私ならこうする」など、それぞれの要素にはそれほど威力はなくても、それらを面で捉えることで「あなたならでは」のアピールにつながりますよ。
「PRできることが無い」と感じた時こそ“キャリアの棚卸し”を
そもそもMさんは「自分にはスキルやPRできることがない」と考えているようですが、本当にそうでしょうか?
私の経験から言うと、アピールできることが無い人なんていません。
例えば、一般事務の経験があるMさんには事務スキルがあると思いますし、他者のサポートが多い仕事ならではの工夫や、業務を効率的に進めるために心掛けていることなどがあるのではないでしょうか?
自分では大したことではないと思っていても、普段の業務の中で気を付けていることが実は他の企業では当たり前ではなかったり、独自性につながったりすることは珍しくありません。
そんな隠れた魅力に気付くためにも、Mさんにぜひやってほしいのはキャリアの棚卸しです。
過去の記事でも幾度となく述べてきましたが、転職において重要なのはまず自分の立ち位置ややりたいことを把握すること。
これまでどのような経験をしてきたのか、仕事をする中で心掛けていることや、なぜそのような工夫をしようと思ったのか、他人からの評価など、これまでのキャリアや人生を棚卸しすることで、自分の市場価値や思わぬ長所、やりたいことなどが見えてくるはずです。
自分の市場価値が分かれば「得意分野や経験を活かせる仕事」という観点で仕事を選ぶことができますし、やりたいことが明らかになれば、それを実現するために必要なことも分かってくるはず。
その結果、「やはり資格が必要」となったら改めて資格取得を検討してみてはいかがでしょうか?
やりたい仕事が見つかったのなら、まずはチャレンジを!

ただ繰り返しになりますが、資格取得は、ある一定の仕事では有利になるものの、転職では資格よりも経験やマインドの方が有利になることが多いのです。
そのためやりたい仕事が見つかったのなら、四の五の考えずにまずチャレンジしてみることをおすすめします。
実務を通じて業務経験を積めますし、その仕事が本当に自分に合うのか・合わないのかが判断できるからです。
その上で、「もっと知識を身に付けたい」と思ったときに資格取得を目指すのが正しいキャリア構築のプロセスなのではないでしょうか。
取材・文/赤池沙希 編集/大室倫子(編集部)
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