インスタフォロワー25万人のファッション芸人・バヤコにSNS運用の悩みを相談「批判の声が怖い」「何を投稿すればいい?」
PRやマーケティングなど、ビジネスでも重要な役割を担うSNS。公式アカウントのみならず、個人アカウントを仕事で活用するシーンも増えている。
ただ、いざ仕事でSNSを活用するとなると、さまざまな疑問が浮かぶ。
「何を投稿すればいいの?」
「フォロワーを増やすコツはある?」
「アンチコメントが付いたらどうしよう……」
そんな悩みを、アパレル企業アダストリアのバヤコさんに相談してみた。
バヤコさんは店舗スタッフとしてゼロからInstagramを始め、2024年7月時点で25万人ものフォロワーを有する。
現在は本社でSNS運用に関する社内研修も行っている彼女に、気になるSNS運用のあれこれを聞いてみよう。
【バヤコさんのキャリアインタビューはこちら】地方のバイトスタッフだったバヤコが、40歳で大手アパレルのSNS戦略のカギを握るインフルエンサーになるまで

株式会社アダストリア
バヤコさん
高校卒業後、アルバイトでアパレルを含むさまざまな仕事に従事。2年後にアパレル企業に就職。2009年アダストリアに転職。2012年、目の病気をきっかけに退職し、自営業へ。2016年アダストリアから短期バイトの声がかかったことをきっかけにアルバイトの販売員として再度従事。24年2月アルバイトから正社員になり、本社のドットエスティメディア部に異動 Instagram/TikTok/STAFF BOARD
悩み1「どう始めればいいの……?」
仕事でSNSを始めるにあたり、「何を投稿しよう?」「コンセプトを決めた方がいいのかな」といきなりつまずいてしまう人は多そうです。
何に気を付ければいいと思いますか?
やっていくうちに見えてくることは多いので、まずは投稿してみるのが一番だと思いますよ。
私もインスタを始めた頃は何をあげていいか分からなくて、「とりあえずこの間食べたラーメンの写真載せとくか」みたいな感じでした(笑)
バヤコさんも最初はそんな感じだったんですね。ちょっと安心……。
とりあえず運用してみると、フォロワーが多い人が何をあげてるのか気になってくるんですよ。
で、チェックしてみるとラーメンなんか載せてない(笑)
人が写っている方がいいんだな、映り方はこういう感じがいいのか……みたいに、いろんなアカウントを研究して、真似していくうちに、少しずつ反響も増えていきました。
これなんかは反響が増え始めた頃の投稿ですね。
事前に人気のアカウントを研究してから始めるより、やりながら調整していく方がいいんでしょうか?
そう思います。最初から完璧な投稿をするなんて絶対無理ですよ。それができたらみんな最初から10万人くらいフォロワーいるはずですから。
たしかに……!
インスタにもPDCAが必要なんだと思います。
「こういう投稿をしてみよう」と計画して、実際に投稿して、その反響を見たり他の人と比較したりしながら次のプランを立てて、また投稿して……を繰り返す必要があるんだなと。
で、反響は本当に分からないんですよ。
「これはめっちゃいいねつくでしょ!」と思う投稿に限って全然ダメだったり、時間ないからこんな感じでいいやって手抜きで作ったやつにめちゃくちゃリアクションがあったりする。
もちろん経験を重ねて狙い通りにできることもあるけど、いまだに反響は読めないことの方が多いです。
だから「うまくやらなきゃ」って思わなくていいんじゃないかなと思いますね。
とりあえず何か上げれば、やるべきことは見えてくる!
悩み2「何を投稿したらいい?」
とりあえず投稿するのが大事なのは分かったんですけど、とはいえ何を上げたらいいんだろう……と再び悩んでしまいそうです。
自分のコンセプトやターゲットを意識するのが基本ですね。そこも最初から決めるというよりは、やっていく中で見定めていく必要があるかなと思います。
バヤコさんはどんなコンセプトでやっているんですか?
店舗にいた頃は「地方の店舗スタッフが着こなしを教えてくれる」アカウントとして、お洋服に悩み始めるアラサー世代のファッション迷子をターゲットにしていましたね。
子どものイベント時のスタイリングや体型カバーの方法など、「ファッションの悩みに対する解決策を提案できる販売員」をイメージしていました。
本社に異動した今は?
「すごい元気な人」ですね。
プロフィールにも「アダストリア所属ファッション芸人」と書いています。
なぜコンセプトを変えたんですか?
フォロワーが10万、20万人と増える中で、だんだん私のキャラクターに興味を持ってくれる人が増えてきたんです。
以前はファッションのお悩みに関するコメントばかりでしたが、「毎日元気をもらってます!」といった内容に変わってきた。
私へのニーズが変わったことを体感したし、ちょうど本社勤務に変わるし、私自身もキャラクターを見せる方が自分らしいなっていうのもあって、方向転換しました。
ということで、今は「とにかく明るいバヤコ」でやってます(笑)
コンセプトは流動的でいいんですね。
SNS自体が随時変わっていくものですからね。
それに、見てくださってる方がどういう人か、最初は分からないんですよ。コントロールできることでもないから、リアクションを見ながら柔軟に変えた方がいいかなと思います。
ただ、信念を持って「こうする!」と決めてやるのも大事だし、それがハマることもあるかもしれません。そこはやっぱりやってみないと分からないなと思います。
コンセプトやターゲットは随時見直せばOK! リアクションを見ながら調整しよう!
悩み3「フォロワーを増やすには?」
バヤコさんは店舗で働きながらSNSをやっているスタッフの管理や教育をしているんですよね。
フォロワーが増える人、増えない人には、どういう違いがあるんですか?
続けられるかどうかですね。コツコツ毎日更新できる子の方が、やっぱり伸びます。
私自身も草の根活動のように毎日更新をとにかく続けて、コメントしてくださった方にこまめに返信して……と、コツコツ続けてきました。

フォロワーからの質問への返答(引用)
バヤコさんはどんな感じでフォロワーが増えていったんですか?
最初の1年は1000人もいかないぐらいで、2年目にようやく1万人いったかな? そこから10万人にいくまで、さらに2年ぐらいかかってますね。
10万人を超えてからは1年ぐらいで20万人を超えました。ある程度フォロワーがいた方がフォローしやすいのもあるし、自分が慣れてきたことも影響していると思います。
「定期的に更新する」ではなく、「毎日更新する」のが大事でしょうか。
そうですね。更新頻度によって、SNSへの力の入れ方も変わってくるんですよ。
他の人の投稿をチェックする回数やPDCAを回す数も、毎日やっている人は全然違う。結果として、知識量も経験値も表現力も、格段に上がると感じます。
Instagramだとストーリーとフィードの大きく二つありますが、ストーリーを毎日あげればいいですか?
両方ですね。
ストーリーの方は日常をあげるのもいいと思います。なので、ラーメンの写真でも大丈夫ですよ(笑)
地道な毎日更新に勝るものなし!
悩み4「どう継続すればいい?」
継続のコツはありますか?
スケジュールにSNSの時間を組み込むことです。例えば通勤時間をSNSに当てるとか、生活リズムに合わせて時間を確保できるといいですね。
私の場合、店舗勤務の頃はシフト制だったので、遅番の日は午前中に時間を確保するなど、1週間のスケジュールの中でSNSに使う時間をあらかじめ決めていました。
1日どのくらいの時間をSNSに使っているんですか?
編集して投稿するまで、2時間ぐらいはかかっていますね。
準備さえしておけば投稿自体はすぐできるけど、自分が表現したいことを追求しようと思うと、編集にはある程度時間がかかります。
「編集が間に合わない」という投稿を上げていたのを見ました(笑)
片手間でヒョイっとできるものではないっていうのは盲点ですね……。
ただ、最初からクオリティーを求めない方がいいと思います。自分のできる範囲でやればいい。面倒くさくなって継続できなくなるのが一番よくないですから。
更新するタイミングに内容、投稿のクオリティーなど、気になることはたくさんあるけど、軌道に乗るまでは細かく考えすぎない方がいいのかもしれないですね。
そうですね。あれこれ気になって投稿できないくらいなら、気にせず投稿した方が全然いいと思います。
考えすぎず、更新するハードルは限界まで下げよう!
悩み5「フォロワーが少ないのに続ける意味が見出せない」
フォロワーが100人くらいしかいないと、「頑張って毎日更新する意味はあるんだろうか……」と思っちゃう気がします。
私もフォロワーが少ない頃、「よくそんな毎日頑張りますね」って言われたことがあります。
でも、よく考えてみてください。100人が自分に興味を持って、投稿を見てくれているなんてすごいことじゃないですか。
みんな知らない人ですよ? そんなことある? って感じじゃないですか。
たしかに……。
「私みたいな地方のよくわからん人を100人がフォローしてくれてるの?」と思ったら、もうありがたさしかないですよ。
「その人たちが待ってくれているのに、投稿しないわけにはいかん!」っていう気持ちで毎日投稿して、今があるなと思います。
インフルエンサーやバズった投稿を見慣れているから自分のフォロワーやいいねの数が少なく感じるけど、知名度のない一般人の投稿を見てもらえてるわけですもんね。
リールの再生回数も「1000回しか見られてない」じゃなくて、「1000回も見られてる!」ですよ。1人1回で1000人か、1人2回で500人か分からないですけど、どちらにしたってすごいじゃないですか。
根本にそういう気持ちをしっかり持てば、やる気にもなるし、更新するハードルも下がると思いますよ。
フォロワーやいいね数をリアルに置き換えて考えよう。100フォロワーってすごくない!?
悩み6「否定的なコメントが怖い」
誹謗中傷やアンチを恐れる人も多いと思います。
バヤコさんみたいに顔出しでファッションを紹介するアカウントだと、絶対に見た目やセンスについて嫌なことを言ってくる人もいるじゃないですか。
スタッフからもよく聞かれますけど、もともとInstagramは好きを共有する場所です。だから「いいね」のボタンしかないし、興味があるものがおすすめされる仕組みにもなっている。
つまり嫌いなものをいちいち見に来る人って、すごく暇な人なんですよ。
嫌な人はブロックもできるし、そういう機能をうまく活用して、自分の投稿に共感して喜んでくれる人たちのことを考えた方がいいと思います。
それに否定的に見えるけど、実はそうじゃないパターンも結構多いんですよ。
どういうことですか?
例えば、うちのスタッフがヘソ出しルックでバーベキューに行った写真を上げたところ、「火を使うのに危ないでしょ。ありえない」みたいなコメントがついたんです。
でも、そのバーベキューは都市型の焼いてくれるタイプで、コンロだから火花も飛ばない。それを返信で伝えたら「じゃあ安心ですね」って返ってきたそうです。
なるほど。言い方がキツかっただけで、純粋に心配していた可能性もありますね。
そうそう。だから私は否定的なコメントに対してはアンチと思わず、「そういう意見もあるんですね」と受け止めています。
「その色の組み合わせ変じゃない?」みたいなファッションに関するコメントも「そう思う人もいるんだな」って感じですね。
そう思えるのは、自分のセンスに自信があるからですか?
というよりは、普通に好き嫌いってあるじゃないですか。おしゃれとされているスタイリングでも「その組み合わせないわ〜」って思うことはあるわけで。
だからといって相手に対して「その服着ない方がいいよ」とは思わないというか、なんなら「自分は好みではないけど、そういう組み合わせもあるんだな」くらいに思う。
それと同じなんですよ。批判というか、純粋な感想なんじゃないかなと。
そうか。そもそもファッションやセンスに正解はないですもんね。
100人いたら100通りのファッションがあって、受け止め方も人それぞれです。
人に迷惑をかけているわけでない自分の行動に対する意見はただのリアクション。「その人の受け止め方を教えてくれたんだな」ぐらいの感覚でいいと思いますよ。
批判に見えるコメント、ただの感想かも。重く受け止めなくていいんじゃない?
悩み7「誹謗中傷が怖い」
明確に悪意がある誹謗中傷はどう対応しているんですか?
私は「笑って返す」がテーマなので、「そんな顔で恥ずかしくないの?」みたいなコメントを書かれたときは「私もそう思います」って返信しました。
さすがファッション芸人……!
返す言葉が思い浮かばない場合はスルーでいいと思いますよ。
誹謗中傷はコミュニケーションになっていないですし、コメントを消してブロックしちゃってもいいんじゃないかな。で、周りの友達に「こんなこと言われたんだけど!」って吐き出す。
あとは、フォロワーさんが辛辣なコメントに返信してくれることもあります。「もっと優しい言い方があると思いますよ」みたいに言ってくれて、案外平和に終わることも多いです。
言い合いに発展するのは、大体フォロー外の人たちですね。
嫌なコメントに対して「誰が言っているのか」を冷静に見るのは大事ですね。
「フォロー外の人=知らない人」なわけで、リアルで想像してみてくださいよ。
道端で知らない人から「ブス!」って言われたとして、気にします? 無視して終わりじゃないですか?
確かに。
多くの人が行き来する道で知らない人に言われた一言なんて、どうでもいいですよ。
ストレス発散のはけ口にたまたま自分がなっちゃった、くらいに思っておけばいいと思います。
誹謗中傷は「誰が言っているか」に目を向けて。フォロー外の悪意はスルーでOK!
「お客さまのため」という信念は変わらない
おしゃれですてきな人はたくさんいる中で、なぜバヤコさんは25万人ものフォロワーに支持されているんだと思いますか?
私には一つだけ信念があって。「絶対にお客さまのためになることをやろう」ということだけは最初から決めていました。
だから自社サービスの「STAFF BOARD」でも、正面の写真だけ掲載する人が多い中、全角度から撮影した写真を載せていました。

自分のおしゃれをアピールするのではなく、お客さまの参考になるものを載せる。それだけはブラさずにやってきたかなと思います。
SNSを続けて、フォロワーもこれだけ増えて、よかったなと思うことはありますか?
いろいろなきっかけをSNSがくれていますね。そもそも地方のアルバイトが渋谷の本社社員になれるなんて、想像もしていなかった状況になっていますから。
私のものの見方も変わりました。年を取るにつれて若い子との接点はどんどん減っていくし、流行りも分からなくなっていくけど、SNSのおかげで共通点ができたなと思います。
「最近この音源よく聞くよね」「こういうリールめちゃめちゃ見るよね」みたいな会話ができて、コミュニケーションの幅が広がりました。
予想外にフォロワーが増えて、この先どうなっちゃうんだろう?って思うけど、先が分からないからこそ楽しみでもあって。
将来は周りの友達とのんびり縁側でお茶でも飲みながら過ごすんだろうな〜となんとなく思っていたけど、今は今後の可能性がふくらんでいてワクワクしかないです。
取材・文・編集/天野夏海