「仕事を辞めたいから転職したい」人のNG行動とは? 採用人事が明かす落とし穴

大きな声では言えない本音、ぶっちゃけます!
採用担当者の覆面ガチトーク

表立って聞きにくい「これってどうなの?」という転職にまつわる女性たちの疑問を中途採用担当者に直撃!人事のリアルな見解とは……?

話し合う人事担当者たちのイラスト

上司が嫌すぎる……。
職場の環境が悪すぎる……。

そんな時、「仕事を辞めたい」という思いが頭をよぎることもある。実際に転職活動へ踏み切る人もいるだろう。

そんな人に対し、中途採用を担当する人事3名は「その状態のまま選考に臨むのは要注意」と警鐘を鳴らす。

<お話を聞いた中途採用担当者>
●IT系メガベンチャーの採用担当者・野村さん(仮名)
●大手アパレル企業の採用担当者・中野さん(仮名)
●スタートアップの採用担当者・石田さん(仮名)

現職に嫌なことがあるのは当たり前、だけど……

編集部

選考をする中で、「仕事や職場が嫌で転職したいんだろうな」というのは分かるものですか?

中野さん

前提として、会社を辞めようと思う背景には何かしらネガティブなポイントがあるもの。嫌なことがなければ、辞める理由もないですからね。

だから仕事や会社が嫌で転職を考えるのは別に構いませんし、こちらもそのつもりで転職者を見ています

編集部

「現職に嫌なことがあって当然」という認識で選考を行っているのですね。

中野さん

ただし、「仕事を辞めたいから転職したい」で終わってしまっている人は問題だなと思います。

編集部

どういうことですか?

中野さん

こちらが知りたいのは、ネガティブな要因に対して、どう向き合い、どう行動してきたか。それを踏まえて、転職先で何をしたいのか。

要するに、「仕事を辞めたいから転職したい」の先の話を聞きたいんですよ

それなのに「仕事を辞めたいから転職したい」で終わってしまうと、そういう話が出てこないんです。

石田さん

まさにそう。

「なぜ今の環境が合わなかったのか」「自分が今後やっていきたいことは何か」

それらを踏まえた上で、「次の環境にはこういうものを求めたい」という転職後の話ができないと、採用は見送ることが多いですね。

野村さん

転職理由が他責で終わっている人って結構多いんです。

「マネジャーが悪い」といった不満はたくさん出てくるけど、「それに対してあなたは何をしましたか?」という質問への回答は全然出てこない

「今の上司が嫌だから、良い上司がいる会社に入りたい」と言われても、転職後に嫌な上司の元に配属されたらどうするの? って話じゃないですか。

石田さん

どれだけすばらしいと評価されている会社であっても、嫌なことや合わないことがあるのは当たり前ですからね。

だからこそ外的要因に責任を求める人は、転職後に何か嫌なことが起きたとき、再び他責にして辞めてしまうのではないかと思ってしまいます。

野村さん

「上司が悪かった」と他責にして辞めて、「環境が良いから」と他責で入社して、「思っていた環境と違った」と他責で辞めていく。

「会社が嫌だから辞めたい」人は、この繰り返しになる可能性が高いんですよ。ある意味、採用可否を判断しやすいとも言えますね。

たとえ現職に問題があっても、面接での否定はNG!

編集部

他責にしないことが大事なのは分かりました。

とはいえ、ハラスメントなど職場や上司、同僚側に問題があるケースもあるじゃないですか。

そういう場合、「いかに問題だったか」をしっかり説明したくなっちゃうなと思います。

中野さん

人や環境に大きな問題があるケースが存在することも、人間関係を壊す人が一人いると大変な事態に発展しかねないことも、よく分かります。

それでも、やはり印象は悪いです。

こちらは転職者の話を聞きたいのであり、転職を考えるきっかけになった人や職場の問題点を挙げ連ねるのは、全く得策ではありません

野村さん

「ここが嫌だった」という話にフォーカスされちゃうと、こちらとしても全体像が見えないんですよ。

例えば、「会社の方針が売り上げ重視に変わり、以前より顧客フォローに力を割けなくなったから、顧客対応を重視する会社に転職したい」と話してもらえればスッと理解できる。

でも「会社が顧客にひどい対応をしている」という説明に重点を置かれると、問題点がどこにあるのか分からなくなってしまうんです。

石田さん

面接に限らない話ですが、何かを否定する気持ちの裏側には、それによって自分自身を肯定したい気持ちがあるんだと思います。

でも話を聞く側に、そのロジックは通用しないんですよ。転職者が何かを否定したところで、面接官が肯定することは絶対にありません

野村さん

問題点を伝えるつもりで話していたのに、いつの間にかエスカレートして現職の悪口を言ってしまう人も多いなと思います。

転職を考えている人にぜひ知っていただきたいのですが、面接官が面接中に候補者を否定することは基本的にないんです。

本音では「それはあなたがおかしいんじゃない?」と言いたい場面でも、選考だから言わない。

中野さん

相当話が長くならない限り、止めることもないですね。

野村さん

それを知らないから「話を熱心に聞いてくれている」と思って、話をする中で加熱してしまうんでしょうね。

なんなら「めっちゃ面接盛り上がった!」って手応えを感じている人も多いんじゃないかな。

中野さん

面接官は「あなたは何をしたのか」しか見ていません

「異動したいって希望は伝えなかったの?」

「キャリアアップして、嫌な人の上司になるぐらい頑張ったらよかったんじゃない?」

転職者が面接で人や環境を否定している間、私たちはこんな感じのことを考えています。

野村さん

「こういうアクション取らなかったんですか?」ってめちゃくちゃ突っ込みたいけど、我慢してるんですよ……!

石田さん

「うちの会社に入りたくて今日来たんだよね?」というのがわれわれの心の声ですよね。

アクションを起こした結果改善できなかったのであれば仕方がないですけど、何もせずに文句だけ言っているのはちょっと……と思ってしまいます。

企業は転職者の逃げ場所を提供するわけではないですからね。

編集部

「あの人が100%悪いから私がこの会社にいられなくなった」というのがたとえ事実であったとしても、面接でそれを伝えてプラスになることは絶対にないと……。

中野さん

そもそも誰かを否定したり、仕事を辞めたいというネガティブな気持ちをそのまま面接で話したりする人は、「それを聞いて相手がどう思うのか」という想像力が足りていないなとも思います。

そういう意味でも少し心配ですね。

視点を「自分→企業」に切り変えよう

編集部

「仕事が嫌だから辞めたい」モードのままだと、選考中に他責にしたり否定的な言動をしたりしてしまいそうだなと思います。

転職活動にあたり、どう自分の気持ちを整理すればいいと思いますか?

中野さん

まずは何が嫌なのか、書き出してみるといいですね。

「上司がムカつく」「こんなに頑張ってるのに評価されない」「給料が低い」

こうしてバーッと書いていって、自分が何に一番引っかかっているのか、見極めて整理するのはとても大事です

中野さん

というのも、面接中に「あなたが引っかかっているのはそこじゃないのでは?」と感じることが結構あるんですよ。

しっかり振り返って、「本当に嫌だったことは何か」を深堀りして、自分の状況を正しく理解してほしいですね。

その上で、状況を改善するためのアクションを起こせている人はいいなと思います。

編集部

アクションを起こす前に辞めざるを得ない場合は、どうすればいいですか……?

石田さん

過去の事象に対して、「どう向き合って、どんなアクションを起こせばよかったのか」を振り返って考えながら、できなかったことを反省するのが重要だと思います。

その上で、「この経験を転職先ではこう生かしたい」という話に落とし込めればポジティブかな

人間、完璧じゃないですし、振り返ってみないと分からないこともあります。逃げていないことが大事だと思いますね。

野村さん

その際、自分視点ではなく、企業視点で「私はこうしたい」を話していただく方が納得感は増します。

転職者側はどうしても「自分」が主語になりやすいのですが、企業は自社の理念やミッションを達成するために採用をしていますからね。

石田さん

事業や会社の方針を含めて「自分がどうしていきたいか」を考えて話せるのはかなり好印象ですよね

野村さん

関連するところで、仮に会社の方針が変わったことが転職理由である場合でも、現職の意思決定を尊重している人はいいなと思います。

「こういう理由での方針転換だと理解しているけれど、自分の考えは違う」というように、ただ自分の希望を押し付けているのではないことが伝わると、こちらとしても安心です。

転職先でも、会社の方針が変わることなんていくらでもありますからね。

編集部

会社のせいにしてはいけないと……。

石田さん

繰り返しになりますが、「〜のせい」だけで終わってしまうと、どれだけ優秀な人だったとしても採用は慎重になります

それはリストラやハラスメントなど、あらゆる退職要因に共有すること。

100%相手に問題があったとしても、全てを他責にした瞬間、思考はストップしてしまう。「かわいそうな自分」で終わってしまうと次につながりません。

スキルや経験も大事ですけど、皆さんが思っている以上に、企業は候補者のマインドや姿勢など「人として」の部分を見ていると思いますよ。

企画・取材・文・編集/天野夏海