つよつよマネジメントで大失敗…FinT代表・大槻祐依が学んだ「ありのままの自分」を生かして成果を上げる働き方
「ゆるキャリ」も「バリキャリ」もしっくりこないーー。そんな女性に提案したいのが、人生を楽しむゆとりと仕事を思い切り頑張ることで得られる充実感の両方を大切にする「ゆるバリLady」な生き方。2025年は、「ゆるバリLady」を目指してみない? 「日本に勝たせてもらい、日本を世界で勝たせる」 そんな大きな夢を掲げるのは、平均年齢26歳の「若者視点」を強みに、SNS起点のマーケティング分野で躍進する株式会社FinT代表の大槻 祐依さん。 大学在学中にFinTを立ち上げ、創業8年目となる現在までにベトナムにも拠点を拡大。「日本企業を世界で勝たせる」グローバル企業を目指し、仕事にまい進している。 一方、世界を相手にビジネスをするには「若すぎる」「経験がない」など、周囲から不安の声が寄せられることも。 そんな逆風もまるで気にせず、「ありのままの自分」を強みにしながら仕事で成果をあげ、人生を丸ごと楽しむ大槻さんのマインドをひも解いてみたい。 FinTはSNSを起点としたマーケティング支援をしている会社です。Z世代を中心とした若いチームで、日本を代表する大手企業をはじめ300社以上を支援してきました。 2024年にはグローバル展開を加速させてベトナムにも拠点を拡大でき、17年の創業以来、売上は毎年150%以上伸び続けています。 このような成果を出せているのは、当社がメンバーみんなの力を信じてどんどん仕事を任せ、チャレンジできる環境をつくることに注力しているから。 うちのメンバーはもともとみんな優秀ですが、私はどんな人にも絶対に何かしらの強みがあって、活躍できる可能性があると思っているんです。 年齢や性別などの属性で「あなたはこうだから」と決めつけられたり、「私にはできない」と自分で思い込んだりする必要はないと思っています。 当社は平均年齢26歳と若手メンバーが中心で、「経験がない」「若すぎる」と心配されることもあります。 でも、SNSを起点としたマーケティング支援をやるにあたっては、ベテランの社会人よりSNSとともに育った若い世代の方が経験を積んでいるとも言える。 それに「経験がない=『決めつけ』がない」わけです。だから変化に強い。それがうちの組織の強みであり、ここまで成長を遂げられた大きな要素となっています。 ただ、実は創業当初のマネジメントは今と真逆でした。 当時は何でも一人でやろうとしていて。自分の意見ややり方をみんなに押し付けてしまったり、「この数字が出せないのはなんでなの?」としつこく詰めてしまったり。 そんな“つよつよマネジメント”のせいで会社の成長を止めてしまったし、メンバーには嫌な思いをさせてしまったと思います。 私は学生のうちに起業したので、インターン時代に仕事を教えてくれた上司のスタイルを無意識に真似してしまっていました。 インターン先の会社や上司にはそういうスタイルが合っていたけど、私には合わなかったなと思います。 だから自分自身もしんどかったんですよ。完璧じゃないのに、完璧かのように振る舞っている自分がつらかった。 転機は、会社の成長です。仕事量が増え、一人ではどうにもならなくなったタイミングで思い切って任せてみたら、自分よりもすごい成果を出すメンバーが増えていって。 そこから徐々に、本来の自分らしくいられるようになった気がします。 メンバーに任せるようになったことで「自分のスタイルってこうだったな」と思い出していきました。 たぶん、元々の私は頼るのが得意なんですよ。中高時代にバスケ部のキャプテンをやっていた頃からそう。 私はチームを引っ張ったり方向を示したりするのは得意だけど、それを具体的な行動に落として細かいメニューや計画を立てるのは、別の人の方が上手でした。 キャプテンというポジションでやるべきことはあるけど、何もかもうまくできる必要はない。得意なことはみんな違って、それらが合わさってチームが強くなっていく。 FinTでは「強みを生かす」を大事にしているけれど、それはバスケ部時代に学んだことが影響しているなと思います。 自分の強みを生かしてありのままの自分で働くには、「自分のなりたい姿って何だっけ?」を振り返るのが大事です。 「ありのままの自分で働きたい」と思うからには、心の中に何かしらの理想像があるはずですから。 私のなりたい姿は、ずっとチャレンジし続けられる、変化に強い人。 変化やチャレンジは昔から好きで、「転んでも、転び続けたらいつかは成功する」という感覚がずっとあるんです。 転んだら次は転ばないようにするのではなく、むしろ大きく転ぶことを考えてきたような気がします。 そう思えるのは、最終的には起き上がれることを知っているから。 新しいことに挑み続けてきたことが、起業やグローバル展開などの新しい夢につながっています。そんな感覚があるから、私はチャレンジが好きなんです。 一方、メンバーの中には「チャレンジをしたい」という気持ちがありながらも、そうするまでに時間がかかる人もいます。 その根底には「できない」という思い込みがあるように感じていて。深層心理のどこかで、何かを怖がっているというか。 例えば新卒2年目で大企業からFinTに転職してきた女性はチャレンジするときに、「自分にできるのか」という不安を抱えている印象が強いメンバーでした。 ところが「どんどんチャレンジしてね」と伝え続けて可能性を引き出し続けた結果、入社3年目になる今ではチームリーダーになり、最近では自らリーダー合宿を企画するなど大活躍してくれています。 彼女自身が努力してくれたのはもちろんですが、周囲の環境に刺激を受けて気持ちが前向きになるだけで、人は大きく変わるんですよ。 自分が何を怖いと思っているのかが分かれば、挑戦への一歩を踏み出せます。モヤモヤを明確にするのは難しいけど、スマホやノートに書くなどして、向き合うのが大切だと思いますね。 「怖い」などの漠然としたネガティブ感情の要素を分解して、言語化して、要素をどんどん小さくしていく。 そして、「自分はどうしたいんだっけ?」とポジティブに考える。この二つを反復するのが大事だと思っています。 私の場合、怖いと思うことがあっても、要素を分解して明確にしていけば大丈夫になるんですよ。最終的には「なんだ、これだけか」みたいになりがちです。 「これをしたら人からこう思われるかも」という怖さがあるなら、「その『人』って具体的に誰だっけ?」と落としていく。 「じゃあ、その人に事前に説明しておこう」など、やるべきことが分かりますし、話した結果、相手がむしろ協力者だと分かることもあります。 自分らしく働き続けていくためには、定期的に「自分らしさ」に立ち返ることも重要だと思います。 最近は土日にしっかり休むようになり、友達と飲んだり旅行へ行ったりする時間が自分らしさを思い出す機会になっていますね。 あとは、自分に期待し過ぎないことも意識しているかもしれません。 自分に期待し過ぎると、「自分はこんなにできているのに、皆がそれを分かってくれない」と卑屈に思ってしまいやすくなるけど、そんなの周りの人は分からないじゃないですか。 代表として会社を引っ張る立場として自分に期待しているところもありますけど、それは今までやってきた自分の成果を認めているから。失敗も成功も噛み締めて、それを期待の根拠としているというか。 自分が目指す先に向けてコツコツと積み上げてきたものに、無駄は絶対にない。 だから「絶対できる」と思いながら進むけど、同時にできなくても「自分はこんなもんだな」とも思っているんです。 なぜなら、未来は分からないから。絶対できるとは限らないから、目の前のことをコツコツやっていって、その積み重ねに期待を寄せるしかないんじゃないかと思います。 私は多分、苦しいことが大好物なんです。「苦しかったですか?」って聞かれれば苦しかったとも思うけど、「楽しかったですか?」って聞かれたら楽しかったとも思う。 きっと、どっちもあるからこそ楽しいんでしょうね。これまでも「つらかったけどやってよかった」と思える経験を何度もしてきました。 最近は、毎月1週間以上は海外に行き、現地法人の立ち上げに向けて動いています。忙しい日々ではあるものの、どんどん新しいことができるようになるのが、私はめっちゃ楽しいんです。 メンバーがワクワクしながら働くようになったり、こうしてメディアで取り上げていただいたり、以前は想像できなかったことがリアルになっていく。 毎年、自分自身も会社も変わっていって、見える世界も変わっていくのが、とにかく楽しみですね。 苦しければ苦しいほど楽しいと思う私にとって、起業家の仕事は本当に最高です。 でも、もし会社員をやっていたとしても100%楽しめてたと思います。というのも、私はどんな環境でも楽しもうと努力するタイプなんですよ。 楽しいかどうかは思い込みだと思っているから、強引にでも「楽しい」と思おうとしているんでしょうね。そうすると自分を楽しませようとするから、楽しい方向に進むんです。 ただ、知っていることをやるのはあまり好きじゃないかな。 あと、釣りも無理でした。1年前ぐらいに初めてやったんですけど、待ち時間は長いし、静かにしてなきゃいけないし、もう一生行かない(笑) 実は釣りに行く前からそんな予感はうっすらあったけど、一応新しいことはやってみるようにしていて。で、実際にやってみて合わなければ、もうやらない。 それを繰り返していくと、「自分らしさ」の仮説がなんとなく立つようになるんですよ。 「楽しかった」「これはできるな」みたいなことを細かく知っていった結果、「自分はこういう人間だな」と理解できるようになるのだと思います。 つまり「自分らしさ」はあくまで結果論。「自分らしく働くって何だろう」って悩んでいる人は多いように思うけど、そこにとらわれ過ぎないでほしいですね。 「自分にはできない」なんて思わず、ガンガンやっていこうぜって思います。そうする中で自分の強みに気づいたら、そっち側に進めばいいだけですから。 それに、嫌なことを苦しみながらやり続ける必要はないと思うんです。 私は飲み会が好きだから会食にも行きますけど、苦痛なら行かなくてもいい。 会食の目的をかなえる方法は他にも絶対あるはずで、実際に飲み会に行かなくても仕事がうまくいっている人はいるじゃないですか。 楽しい方がパフォーマンスは上がるし、単純に人生を楽しみたい。だから自分が楽しめること、続けられることだけを私は考えています。 ひとまずは自分が苦しみつつも楽しくグローバル展開に向けてチャレンジする姿を、メンバーに見せられる存在でいたい。 そうやって自分らしく、楽しく人生を生きていきたいです。 取材・文/天野夏海 大槻さん・社員写真提供/FinT「経験がない」は「決めつけがない」と同義
つよつよマネジメントで失敗、「完璧」を装う自分がつらかった
「できない」の正体は、意外と大したものではない
「絶対できる」と思うけど、自分に期待はしすぎていない
「自分らしさ」は結果論。ガンガン行こう!
『「ゆるバリLady」を目指してみない?』の過去記事一覧はこちら
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