転職のプロmotoさんに聞く、自己主張が苦手な“控えめさん”が面接前に必ずやっておくべきこと
自分のことをうまくPRできない、自己主張が苦手……そんな“控えめさん”が転職活動をするときに直面するのが、面接の壁。周囲のペースに飲まれずに、控えめさんが面接突破・交渉成功を実現して「後悔しない転職」をかなえるための秘訣を解説していきます!
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女性活躍推進に本腰を入れる企業が目立つようになり、各業界の中途採用市場では女性採用が活況だ。
管理職を目指したい、キャリアアップして長く働き続けたい……仕事に対する意欲が高い20~30代の女性であれば、多くの企業が「ぜひ採用したい」と思っている状況です。
だからこそ、もし内定を出したなら「絶対に入社してほしい」という思いで内定承諾を急かしてきたり、情に訴えて入社を勧めてきたりする企業も少なくありません。
そう話すのは、転職メディア『転職アンテナ』を立ち上げた起業家で、転職・採用・キャリア領域のプロフェッショナルmoto(戸塚俊介)さん。
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HIRED株式会社
代表取締役
戸塚俊介(moto)さん
1987年長野県佐久市生まれ。新卒で地方ホームセンターである綿半ホームエイドへ入社後、リクルートやマイナビ、スポットライト(現:楽天ペイメント)など8社へ転職し、営業部長や事業責任者などを務める。 会社員として働きながら「moto」というハンドルネームでSNSを開始。自身の転職経験を元にした転職メディア『転職アンテナ』を2021年4月に上場企業であるログリーへ売却。現在はHIRED代表取締役。 著書『転職と副業のかけ算』(扶桑社)はAmazon総合ランキング1位のベストセラーとなり「読者が選ぶビジネス書グランプリ 2020」にもノミネートされた。
X(@moto_recruit)
Xのフォロワーは約12万人。ビジネスパーソンがより良いキャリアをかなえるためのヒントが詰まったポストが共感され、人気を集めている。
前職で活躍してなかった後輩が、転職先で優秀だと言われて重宝されていたり、すごく優秀だった先輩が転職先で活躍できずに悩んでいるのを見たりすると、優秀かどうかは身を置く環境によっても変わるんだなと思った。評価の物差しが自分と合っている場所で働くことが大切なんだろうね。
— moto (@moto_recruit) January 7, 2025
転職・採用市場のトレンドに詳しいmotoさんに、自己主張が苦手な“控えめさん”が面接を進めていく上で持っておきたい心構えについて聞いてみた。
内定は得やすいが、採用側のペースに飲まれるリスクも
ここ数年、若手人材の売り手市場が続き、「内定自体は短期間のうちに得やすくなっている」とmotoさんは言う。一方、そんな環境の中で起きがちなのが、自分の考えがまとまり切らないまま内定承諾をしてしまい、入社後に後悔するケースだ。
転職活動を始めたら割とすぐに内定をもらえて、採用担当に“よいしょ”されて勧められるがままに入社してみたけれど、仕事内容や職場環境とのミスマッチで「本当にここでよかったのか」と悩む人は少なくありません。
そういう場合、早期退職のリスクが高まる懸念も。短期間のうちにまた転職を繰り返すことで経歴に傷がついてしまうこともあるので、採用側のペースに飲まれすぎないことが大事です。
また、 人手不足を理由に「内定を出した人にはなるべく早く入社してほしい」という企業も多く、内定を出した後のつなぎとめで食事会を開催したり、社員との交流会に参加させたりするケースも目立つという。
それはそれで職場の雰囲気を知ることができるので良い面もあると思うんですけど、情に流されて内定を承諾する必要はありません。
相手も採用後のグリップは「仕事」としてやっていること。そう割り切って考えてOKです。
「せっかく内定をもらったのだから、すぐに入社を決めなければ」「ここまで良くしてもらったんだから、内定を断ったら悪いかも……」
そんなふうに思ってしまう人もいるかもしれないが、「自分も企業を選ぶ側」なのだという意識を必ず持っておいてほしいとmotoさんは呼び掛ける。
自己主張が苦手だったり、控えめな性格であったとしても、転職で大切なのは最後まで「自分で決める」ことです。
そして、面接を受ける前の心構えとして特に大事なのが、自分も企業を選ぶ側の立場なのだという意識を持っておくこと。「選んでもらう」のではなく、「選ぶ」権利を持っていると考えれば、相手のペースに飲まれにくくなるのではないかと思います。
面接の前に必ず転職軸をクリアにしよう
さらに、面接に臨む前に控えめさんにこそ準備しておいてほしいのが、転職活動の軸を明確にしておくことだ。
採用側のペースに飲まれないためにも、「これだけは大事にしたい」ということを決めておくことで、前もって面接の過程や内定承諾後に確認すべきことがクリアになり、ミスマッチ転職を防ぐことにもつながる。
「今の会社を辞める」ことがゴールになっていて、どういう会社で働きたいかがないまま転職活動を始めてしまう人は多いんです。
でも、そういう状態だと「うちで働きませんか?」と強めに言われたり、自分の考えをうまく伝えられないまま面接を終えてしまったりすると、「まぁ、それでいいか」と引きずられてしまう。
そうならないように、「何のための転職か」「転職で何がかなえば自分にとって成功なのか」を必ず言語化しておきましょう。
ただ、今では転職者にアドバイスを送る立場になったmotoさんも、かつては「めちゃくちゃ口説いてもらった会社に入社して、3カ月で辞めたことがあるんです(笑)」と打ち明ける。
その会社に入社するまでの選考は、8次面接くらいまであったんですよ。それで、採用担当の方からも「ぜひうちに」と口説いてもらって。
こんなに何度も面接に通って、こんなに口説いてもらったんだから「それなら」みたいな感じで人事の仕事に未経験で挑戦してみたんです。
でも、いざやってみたら人事の仕事は全然向いてなくて(笑)
僕自身はもっとフラットに転職を考える人に「あなたには、こっちの会社の方がいいよ」って言いたいタイプだったから、絶対に自社に入社してもらうっていう考え方が合わなかったんですよ。
それで、試用期間のうちにその会社を辞めることになりました。
この時の離職は後からばん回できたので大きな痛手になったわけではないけれど、一時は無職になりました。
そういう中ですぐに転職活動を再開するのは、一般的にはやっぱり大変です。
未経験の仕事はいざやってみないと分からないことがあるので仕方ない部分もあるけれど、ちゃんと「どんな成果が求められる仕事なのか」「その業務の中で自分が楽しいと思えそうなポイントがあるのか」などを事前に確認しておくべきだったなと今なら思います。
転職軸をクリアにする上で役立つのは、「たくさんの求人票に目を通してみること」だとmotoさんは言う。
自分がどんな求人に惹かれるのか、年収、ワークライフバランス、社風など、なぜ惹かれたのかを書き出していき、特に重視したい項目に優先順位をつけていく。
逆に、惹かれなかった求人は、どんな要素があるから嫌だと感じたのかを言語化しておく。そうすることで、面接に進んだ際に会社選びで迷うシチュエーションが減っていくという。
転職エージェントは、控えめさんの強い味方に
また、面接のような緊張する場所で自分の意見をまとめたり、自己主張するのがどうしても苦手な場合は、転職エージェントを活用するのも一つの手だ。
自分に自信がない人に僕がおすすめしたいのは、転職サイトからの応募だけじゃなく、転職エージェントも使うこと。
転職エージェントって、転職者は基本的に無料で使えるし、キャリアアドバイザーや営業担当が皆さんに代わって採用企業にスキルや強みをPRしてくれるんですよ。
希望を出せば面接の練習もしてくれるし、控えめさんが使わない手はないんじゃないでしょうか。自分に合う転職活動の方法を見極めるのも、なるべくストレスを抱えずに新しい職場に移るためには大事ですよね。
転職エージェントを活用すれば、採用担当に直接聞きづらいことや、内定を得た後の年収・待遇の交渉なども、キャリアアドバイザーが間に入って調整してくれる。
断ることが苦手な人、自分の希望を伝えづらいと感じる人は、こうした場面でもエージェントを頼ってみてもいいだろう。
転職は「なりたい自分」に近づいたり、「理想の働き方」をかなえるためのきっかけ。
例え自分の意見を人に伝えるのが苦手だったとしても、面接に臨む前にしっかりできる準備をしておけば、周囲のペースにまどわされずにより良い選択ができるようになるはずだ。
・今の会社を辞めることをゴールにせず、転職でかなえたいことを明確にして、自分なりの転職軸をもっておくこと
・自分に合う転職活動の方法を見極めること
ぜひこの三つを心にとめて、後悔のない転職活動を始めてみてほしい。
取材・文/栗原千明(編集部)
『「控えめさん」のための面接・交渉攻略術』の過去記事一覧はこちら
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