【山本美月】がむしゃらに働いた20代、結婚出産を経て気付いた自分らしい仕事のバランス

山本美月(やまもと・みづき) さん

山本美月(やまもと・みづき) さん

1991年生まれ、福岡県出身。2009年に女性ファッション誌『CanCam』の専属モデルとしてデビュー。その後、女優としても活動を開始し、『桐島、部活やめるってよ』『ピーチガール』『ザ・ファブル』などの話題作に出演。2023年に第一子を出産。2025年2月7日公開の映画『大きな玉ねぎの下で』に出演 InstagramX

予期せぬ休職や退職、さらには産育休など、キャリアに「ブランク」ができてしまうことに不安を感じる女性は少なくないだろう。

復帰してやっていけるのか、自分が休んでいる間に周りと差がついてしまうのではないか……。

でもこの人の話を聞くと、長いキャリアの中で一度「立ち止まって考えてみる」ことの大切さが分かる。出産を経てスクリーンに戻ってきた俳優、山本美月さんだ。

2025年2月7日に公開される映画『大きな玉ねぎの下で』に主人公・美優のアルバイト先の先輩役で出演した山本さん。彼女にとって、この作品は出産後久しぶりの映像作品への参加となった。

目の前の仕事に全力で取り組んできた20代を経て、30代、そして母となった今。山本さんが復帰して気付いた「自分らしい働き方」への向き合い方とは——。

復帰して気付いた「周りを見る余裕」がある自分

山本美月さん

1985年にリリースされた爆風スランプの名曲を原作に、手書きの温もりが伝わる人と人とのつながりを描いた本作。

撮影現場では2017年に山本さんが主演した映画『ピーチガール』でも一緒に仕事をしていたスタッフとの再会もあった。現場は常に和やかな空気に包まれていたという。

山本さん

今回この映画に出演させていただくことを決めたのは、お話がとても素敵だったこと、草野監督とご一緒させていただきたいと思ったからです。

そして出産後、久しぶりとなる演技の仕事に対して、不安を感じていた私にとっては、撮影期間が1週間程度ということも大きかったかもしれません。

いざ撮影が始まってみると、演技は自然と体が覚えていて、それまでの不安が嘘みたいにリラックスして臨むことができました。本当に、周りの皆さんの優しさに支えられましたね。

1週間という短い撮影期間。それでも「もっと撮影していたい」と思えるほど充実した時間だったという。

山本美月

現場では、10歳以上年の離れた若手俳優たちとの交流も新鮮な刺激になった。

山本さん

年の離れた方と仕事をするのは新鮮でした。自分の中で意外だったのは、相手の話をじっくり聞いて、受け止められる余裕が自分の中に生まれていたこと。以前に比べて視野が少し広くなれている気がしました。

ブランクがあるとつい「遅れを取り戻さなきゃ」と頑張り過ぎてしまう人は少なくない。

しかし山本さんは、母になった経験を生かしながら、今の自分にしかできないことを楽しんでいるようだ。

以前演じた母親役や妊婦役を振り返りながら、実体験を経た今だからこそ見えてきた景色についても、柔らかな表情で語ってくれた。

山本さん

例えば妊婦さんの役でも、実際に自分が経験してみると、想像していたのと違う部分も多くて。意外と動けた時期が長かったり、お腹の重さの感じ方も違ったり。演技に生かせる発見がたくさんありました。

山本美月
山本さん

あと私はこれまで『守られる側』の役をいただくことが多かったんです。でも今回は、誰かを見守る立場で、お姉さん的な役。

経験を重ねたからこそ挑戦してみたい役どころでした。実際に母になってみて、『守る』という気持ちがより深く理解できるようになったのかもしれません。

仕事と育児で見つけた、自分らしいバランス

山本さんの芸能界入りのきっかけは、地元・福岡でのスカウト。大学進学を機に上京し、モデル、俳優と幅広く活躍してきた。

山本さん

実はもともと芸能界への強い憧れはありませんでした。

でも、地元の福岡で少しずつこのお仕事に携わらせていただく中で、この世界にもっと深く関わりたいという気持ちが自然と芽生えてきたんです。

上京を決意した時、実家の両親は慣れない土地での1人暮らしを心配したという。しかし山本さんはあえて自立の道を選んだ。

山本さん

私はとにかく独り立ちがしたくて。『自分の力で、どこまでやっていけるんだろう』という挑戦心があったんですよね。

普段もそうやって、自分を試したくなることがあるんですよ。以前だと、突然海外旅行に行ったりね。そういう冒険が、新しい自分との出会いのきっかけになるような気がするんです。

山本美月

その決断通り、20代後半までは自分の力を試し続けた。

目の前の仕事に全力で向き合い、とにかく夢中で走り続ける日々を経て、30代を前に仕事との向き合い方に変化が訪れたという。

山本さん

20代でたくさんの経験を重ねて、30歳を手前にふと立ち止まったんです。

このままがむしゃらに仕事をするのもいいけれど、自分のペースを見つめ直して一つ一つの仕事に丁寧に向き合うことも大切だなって思い始めて。

時を経て、その変化が自分にとって大切な転機だったと、山本さんは穏やかに振り返る。

山本さん

自分にとって本当に大切なことは何か、今この時期だからこそできることは何か。29歳くらいからはそんなことを考えながら、仕事をさせてもらっていました。

そのことが、今の自分らしい仕事や働き方につながっているのだと思います。

家庭と仕事の両立はパートナーと探っていく

山本美月

2023年春に出産し、仕事に加えて育児もこなす生活を送る山本さん。今は、家庭と仕事、どちらも充実させていくための自分らしい働き方を、パートナーと共に探っている最中だ。

山本さん

子どもとの時間は何物にも代えがたい幸せ。でも同時に、表現者としての自分も大切にしたい。その気持ちに正直に向き合えるようになりました。

夫婦ともに同じ仕事をしているから、お互いの気持ちはよく分かるんです。その上でどうやってバランスを取っていくのか。

二人で話し合いながら、少しずつ自分たちらしいかたちを見つけていきたいと思っています。

子育て中はどうしても、自分一人で完結できる時間は少なくなってくる。だからこそ、パートナーとしっかり話し合い、良いバランスを模索し合うことが大切なのだ。

自分の心に正直に、良いバランスを探してみて

とにかく仕事に向き合った20代、その経験を活かして自分らしい働き方を見つめ直し始めた30代。

以前は「美月ちゃん」と呼ばれていた現場でも、今では「山本さん」という声が増えた。それは、プロフェッショナルとしての成長を実感させる、小さな、でも確かな変化だ。

山本さん

20代の頃のがむしゃらな期間が、今思えばとても大切でした。あの時期があったからこそ、自分の心に耳を傾ける余裕が出てきましたし、30代に入って少し落ち着いて周りが見えるようになったんです。

これからは現場で新しいことを学ぶ気持ちも忘れないようにしながら、落ち着いて周囲を見渡す。そういう時間を大事にしていきたいですね。

そして新しい表現にも挑戦していきたいと話す山本さん。「かわいらしい役だけじゃなく、凛とした大人の女性、仕事に真摯に向き合う女性。そんな役にも挑戦できたらいいな」と、目を輝かせる。

山本美月
山本さん

これまでのキャリアを振り返ってみても、仕事にどう向き合うか、そのバランスってその時々で変わっていくもの。

だから、自分に対して完璧を求め過ぎないことが大切なのかもしれませんね。

自分にとってちょうどいいと思えるバランスを、ゆっくり探していく。それは仕事だけじゃなく、人生全体についても同じことかなと思います。

自分にとって良いバランスは何なのか。長い人生の中で、ゆっくり探していけばいい。そう優しく語りかける山本さんは「だからこそ、時には立ち止まることも大切ですよね」と微笑む。

山本さん

自分の気持ちに、正直でいることが大切だと思います。本当は何がしたいのか、何を大切にしたいのか。

それを時々立ち止まって考える時間を持つことで、きっと自分らしい答えが見つかるのではないでしょうか。

周りが走っているように見える中で、一人立ち止まることは誰しも怖いもの。でも一度かがめば高く飛べるように、その経験は決して無駄にはならないはずだ。

取材・文/安心院 彩 撮影/洞澤 佐智子(CROSSOVER) 編集/大室倫子(編集部)

映画『大きな玉ねぎの下で』2025年2月7日(金)全国公開

山本美月さん

ロックバンド「爆風スランプ」の楽曲「大きな玉ねぎの下で」にインスパイアされた物語で、手紙やノートでのやりとりを通して芽生える恋を描いたラブストーリー。アルバイトの連絡用ノートを介して日本武道館の屋根の下で初めて会う約束をする男女と、同じ約束を三十数年前にした男女の物語が交錯する。

配給:東映
出演:神尾楓珠 桜田ひより
山本美月/中川大輔/伊東蒼 藤原大祐 窪塚愛流 瀧七海
伊藤あさひ 休日課長 和田正人 asmi/飯島直子
西田尚美 原田泰造/江口洋介 
監督:草野翔吾
脚本:髙橋泉
音楽:大友良英
ストーリー原案:中村航
プロデューサー:小杉宝 美濱浪万 宇田川寧 田口雄介 丸山格 江本優作
主題歌・挿入歌:『大きな玉ねぎの下で』『手紙』asmi
(C)2024 映画「大きな玉ねぎの下で」製作委員会
公式ホームページ:https://tamanegi-movie.jp/
製作委員会:東映 U-NEXT ダブ ニッポン放送
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