ぱっと見ホワイトな「パープル企業」で20代女性が働くリスクとは?入社前に見抜く方法を転職のプロmotoさんが解説

いま話題のパープル企業とは?転職前に見抜くコツを解説

近年、パープル企業というキーワードが注目されている。

パープル企業とは、残業や厳しいノルマがなくゆとりを持って働ける「ホワイト」な環境がある反面、ルーチン業務が多く若手社員の挑戦・成長機会が少ない「ブラック」な側面も持つ会社のこと。

パープル企業の求人では、「残業なし」「ノルマなし」「社員同士の仲がいい」などのフレーズが並びやすく、ワークライフバランス重視で安定して働きたい女性からの応募が集まりやすいことも特徴だ。

一方、パープル企業で長く働けば働くほど、女性にとっては特に「キャリアのリスクが高まりやすい」と話すのは、転職メディア『転職アンテナ』を立ち上げた起業家で、転職・採用・キャリア領域のプロフェッショナルmoto(戸塚俊介)さん。

女性がパープル企業で20代を過ごすキャリアのリスクと、転職活動中にパープル企業を見抜く方法についてmotoさんに聞いてみた。

motoさん

HIRED株式会社 
代表取締役 
戸塚俊介(moto)さん

起業家・著述家。新卒で地方ホームセンターへ入社後、リクルートやベンチャー企業など8社へ転職後、自身の転職経験を元にした転職メディア『転職アンテナ』を上場企業へM&A。現在はHIRED代表取締役。 著書『転職と副業のかけ算』(扶桑社)はAmazon総合ランキング1位のベストセラーとなり「読者が選ぶビジネス書グランプリ 2020」にもノミネートされた。X(@moto_recruit

指示待ち人間になる? パープル企業で働き続けるリスク

編集部

なぜ最近「パープル企業」が注目されるようになっているのでしょうか。

motoさん

若者世代を中心に、転職や副業、リスキリングなどのキャリアの選択肢が増えたことで、改めて今の働き方でいいのかと考え直す人が増えていることが要因の一つになっているのではないかと思います。

残業やノルマが少なく、ライフワークバランスは安定しているけれど、業務の多くがルーチン作業ばかりなのがパープル企業の特徴ですが、そこにいても「スキルが身につかない」ということに危機感を覚え始めているんだと思います。

motoさん

就活の時にはこうした企業がホワイトに見えたものの、数年後に「ルーチン作業しかできない自分」に危機感を覚え、転職を検討し出す20代が最近は目立つようになってきた印象です。

特に、20代~30代で妊娠・出産を考えている女性の方が、男性と比べても「早く経験を積みたい」「若いうちに大きな仕事を任されたい」という焦りが強い傾向もあります。

若いうちからもっと裁量のある仕事をして経験を積み、それなりのポジションについておきたいと考える女性は多いと思います。

編集部

motoさんは、20代女性がパープル企業で長く働くリスクについてどう考えますか?

motoさん

これは女性に限った話ではないですが、「言われたこと」「指示されたこと」しかできない人になってしまうリスクはあるだろうなと思います。

上司から指示されたことはできるけど、それ以上のことはできないし、しようとも思わない。つまり、評価されないことはしない、みたいなスタンスが染み付いてしまう。

仕事への取り組み方のベースがそこででき上がってしまうと、後からそれを払拭するのはなかなか大変です。

motoさん

こうした仕事の姿勢になってしまうと、社外の同世代と比べても経験値が少なくなってしまい、転職市場に出ると「今よりも年収が上がらない」「同業同職種にしか採用されない」という状況にも陥りやすくなります。

昨今では、AI技術も発達しているので、ルーチン業務しかできないとなると、将来的にAIに仕事を代替されてしまう可能性もあります。

残業やノルマがなく、和気あいあいと気楽に働けることが自分のキャリアにおいて大切だと感じる人であればいいと思いますが、次のキャリアを考えたときに大変になる気がしますね。

motoさん

もし「この先、年収を上げたい」「転職してキャリアを積みたい」と思っているなら、身を置く環境は見直してみてもいいでしょう。

ただ、一つ強調しておきたいのは、挑戦の機会を得ることや裁量権を得ることは「転職しなければできないこと」ではないということです。

編集部

どういうことですか?

motoさん

そもそも、挑戦の機会や裁量はもともと「与えられる」ものではなく、「自分から取りに行く」ものだと僕は考えています。

今いる会社がどうしても嫌というわけでなければ、何か改善の提案をして、自分で機会をつくって仕事に取り組むことができれば、今の環境でもいろいろな経験ができるはずです。

リクルートの「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」という言葉はまさに本質で、自分で機会をつくって取り組むことが大切なんです。

いま話題のパープル企業とは?転職前に見抜くコツを解説
motoさん

このスタンスがないと、たとえどんな会社に転職しても、「何か機会を与えてもらえるかもしれない」と待っているだけになってしまい、状況は大して変わりません。

ですから、もしもパープル企業と呼ばれるような会社にいて、将来のキャリアに不安を感じるなら、まずは「今ここでできることは何か」を考えて行動してみてほしいです。

それでも「ここで新しいことに挑戦することは難しい」と思ったら、それができる場所や働き方を探してみてください。

転職で失敗しない、パープル企業の見抜き方

編集部

いざ転職活動を始めて、また同じような環境を選んでしまわないようにするためには、「若手が成長できるホワイト企業」と「一見ホワイトなだけのパープル企業」を入社前に見極める必要があると思います。この二つの違いは特にどんなところに表れると思いますか?

motoさん

残業が少ない、ノルマが少ない、社員同士が仲良し……そういうカルチャー面だけでなく、その会社がちゃんと売上を伸ばしている会社なのか数字を確認してみてください。

売上がちゃんと伸びている会社だと、事業を拡大していく中で新しいポストが生まれたり、やらなければいけないことも増えたりしていくので、ルーチン作業ばかりの環境になることはあまりないでしょう。

motoさん

一方、売上がずっと同じくらいか、赤字が数年間続いているような会社なのに、社員に危機感がなく、ルーチン作業ばかりしているという会社は危ないです。

注力事業に大きな投資をしていて企業全体で見れば赤字になっているということもあるので、必ずしも「赤字が出ているから悪い」というわけではありませんが、数年間そういう状態が続いていたり、その会社の主力事業単体で赤字に陥っている場合には注意が必要です。

選考を受けている会社のIR情報などに目を通して、直近数年分の売上高・利益の推移を見てみることをおすすめします。

いま話題のパープル企業とは?転職前に見抜くコツを解説
motoさん

年次や役職に応じて社員の給与がどんなふうに上がっていくのか「給与レンジ」を確認しておくのも、入社前にパープル企業を見抜く上で役立つと思います。

編集部

給与レンジはどうすれば見られるのでしょうか?

motoさん

採用HPや求人情報に載っていなければ、二次面接以降など、ある程度、面接が進んだところで人事に聞いてみたらいいと思いますよ。

「入社何年目で、年収はいくらくらいになりますか?」「年収はどのような評価で上がっていきますか?」という感じで、社歴や実績・能力がどのように給与に反映されるのかを聞いてみてください。

そこでもし、「社員の給与の差があまりない」という場合、パープル企業である可能性が高いです。

編集部

なぜですか?

motoさん

何年たってもみんなが同じような仕事をしているために給与差をつけにくい。

それに、実績を出したところで年功序列で給与面の評価がなされなかったりするので、「給料が大して変わらない」という会社はパープル企業であることが多いと思います。

これはルーチン作業の多い職場だからこそ、起こり得ることなのかなとも思いますね。

あとは、実際に社員に会ってみて、「仕事の中で大変だったこと」を聞いてみるのもおすすめです。

編集部

「大変だったこと」ですか?

motoさん

はい。

企業側があなたの採用に積極的なら、「実際に働いている社員さんの雰囲気も見てみたいから、職場を見せてもらえませんか?」とお願いすれば、入社前にそういう機会をもらえることが多いと思います。

そこでぜひ、あなたが配属されるかもしれない部署の社員にでも「普段の仕事でどんなことが大変ですか?」としんどかった経験について聞いてみてください。

そこで出てきた回答が「それって、そんなに大変なことじゃなくない……?」と思うようなことなら、若手の成長環境としては「ゆるい」可能性が高いですよね。

motoさん

話を聞いても、もっとチャレンジできそうなことが多いのに、あえてやっていないのか、する必要がないと思っているのか、いずれにせよ社内の雰囲気に危機感や熱量がない企業はパープル企業である可能性が高い気がします。

編集部

「売上が伸びてない」「給与もそんなに伸びしろがない」「若手が『大変な仕事』にチャレンジしていない」など、複数の要素が重なったら要注意ですね。

motoさん

そう思います。

職場を見せてもらった結果、赤字だったり、売上が伸びていないのに社員が大した苦労もせずわいわいやっている会社は経営者にも危機感がないことが多いので、会社としても先は長くないと思うんですよね。

株価が下がっていて、事業もじわじわと衰退していっているのに、中の人はのんきに働いて定時でみんな帰っていく……みたいな。

そういう会社ほど、優秀な人から辞めていってしまいます。

motoさん

仮に入社しても、やたらと組織編成が変わったり、新規事業をつくっては縮小したりするので、自分のキャリアを考えたときには注意した方が良いです。

「自分は何をやっているんだろう」と考えることが多くなり、早い段階で次の転職を考えるようになってしまいます。

もちろん、「そういう会社を自分が立て直すんだ」くらいの気概があるならいいのですが、そうじゃないなら転職先として選ぶのはおすすめしません。

安定は会社に求めるものではなく、自分の中に持つもの

編集部

ここまでパープル企業の見抜き方を教えてもらいましたが、「成長も安定も欲しい」と思う20代女性が普段の仕事の中で意識した方がいいと思うことは何ですか?

motoさん

先にお話ししたことと重なる部分もありますが、やっぱり、会社や環境に安定を求めすぎるのはやめようっていうことはぜひお伝えしたいですね。

自分が黙っていても、会社が「成長機会」も「安定」もくれる……というのは、やっぱり通用しない考え方になっているのかなと思います。

スキルを身に着けて成長したい、という姿勢は、一見向上心があるように見えますが、実は受け身の姿勢です。会社はスキルを身に着けるための場や、自己成長のためにあるわけではありません。

motoさん

会社に安定を求めて「どこで働くか」を考えるより、自分自身が「どう働くか」で、その後の安定や成長は変わります。

会社に「成長させてもらおう」と考えるのではなく、自分で課題を見つけて、それを解決するために動いてみて、試行錯誤の中で経験値を増やしていくことを心掛けてみてください。

そうする中で、どこにいても・どんな人とでも働ける「安定」が自分の中に生まれていきます。成長も安定も欲しい……という人にこそ、脱・受け身を意識してみてほしいですね。

取材・文/栗原千明(編集部)

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