面接での遠慮、実は逆効果かも? 控えめさんの悩みを人事にぶつけてみたら、意外な答えが返ってきた
自分のことをうまくPRできない、自己主張が苦手……そんな“控えめさん”が転職活動をするときに直面するのが、面接の壁。周囲のペースに飲まれずに、控えめさんが面接突破・交渉成功を実現して「後悔しない転職」をかなえるための秘訣を解説していきます!

自己主張や交渉が苦手な控えめタイプにとって、転職活動は悩みがいっぱい。
自分をアピールするのも、希望を伝えるのも、ちょっと聞きにくい質問をするのも、いちいち遠慮してしまう……。
そんな控えめさんの悩みを、中途採用人事3人に相談してみた。面接官の目に、控えめな転職者はどのように映っているのだろうか?
【今回、座談会に参加する人事たち】

豊川美玲さん
外資系複数社にて人事及び人事マネージャーを経験後、現在は人事コンサルタントとして人事業務支援を担う

和田真知さん
元外資系メーカーの人事担当

前山良太さん(仮名)
人材企業勤務後、現在は国内スタートアップ企業の人事担当
相談1. 口下手な私、人事からどう見えますか……?
27歳/事務職
面接のような緊張する場面で、自分の意見をはっきり伝えるのが苦手です。
私のような自己主張ができないタイプの人は、そもそも人事の目にどう映りますか?
口下手でも選考で高く評価される人と、そうでない人の違いがあれば教えてください。
「どう映りますか?」という質問に対しては、「ネガティブに映ることはない」とお伝えしたいです。
5分ぐらい話せば「この人は自己主張が苦手なんだろうな」と分かりますよね。
もっと言えば、履歴書や職務経歴書の時点で「たぶん控えめな人だろうな」と想像がつきます。
そもそも事務職であれば、営業職と比べて自己主張する場面はそう多くないと思います。
そういった職種やご本人の性格を考慮して選考をしているので、そこは安心していただきたいですね。
同感です。
私は最近、「面接では自己主張をしなければいけない」という話が一人歩きしているように感じていています。
自己主張が苦手な人が無理に自己主張しようとすることで面接がうまくいかなかったり、ミスマッチが起きたりすることもあると思うんです。
「自己主張をしなければ」と考えすぎず、まずは誠実に面接に臨むことを考えてほしいですね。
強いていえば、「自己主張が強い人と仕事することがストレスにならないか」は心配かな。
特にD&Iを重視している会社の場合、多様なメンバーと働けることが重視されるので、そこは確認すると思います。
控え目な人の場合、「自己主張ができるか」よりも「受け身になり過ぎず場を調整できるか」といった観点で見られることが多いかもしれませんね。
「口下手でも選考で高く評価される人と、そうでない人の違い」はありますか?
自己主張が苦手だと理解した上で、「チームで仕事をする上でどのような工夫をしてきたのか」を話せる人は評価されると思います。
採用側としても、上司や同僚とのバランスを判断しやすいですね。
「打ち合わせ前に資料を完璧に仕上げる」「プレゼンの練習をする」など、その人なりの工夫を教えてもらえるとありがたいですね。
口下手だったとしても、面接で何を伝えたいか自分なりに整理し、話す練習をしてきたことは分かります。
会社や仕事内容について熟知した上で面接に臨んでいることが垣間見える場面があるなど、面接に向けて準備をしてきたことが伝わる人だと、評価は高まりますね。
ミーティングで「口下手だから話せません」とは言わないですよね。
同じように、話すのが苦手だと自覚しているのであれば、「面接の準備をしっかりする」が答えだと思います。
相談2. 「質問はありますか」ってホントに何でも聞いていいの?
30歳/専門職
面接のような緊張する場面で、自分の意見をはっきり伝えるのが苦手です。
私のような自己主張ができないタイプの人は、そもそも人事の目にどう映りますか?
口下手でも選考で高く評価される人と、そうでない人の違いがあれば教えてください。
そもそも「質問はありますか?」と聞く目的は何ですか?
そこで何を聞くかによって人物評価をしている、といううわさも聞きますが……。
大前提として、面接は一方的に採用側が質問をする場ではなく、お互いを深く理解し、しっかり見極める場だと捉えています。
だから「私たちが質問した分、あなたも気になる点があれば何でも聞いてください」と思っています。
「実際に働くイメージが持てるように、何でも質問してほしい」というのが本音ですよね。
疑問を飲み込んだままでは入社後に「思ってたのと違う」となりかねないので、気になることは解消し切っていただきたいです。
とはいえ、質問のやり取りもコミュニケーションなので、そこで出てくる内容や話し方によって、相手の印象が変わることはありえます。
例えば、「この質問は鉄板」「最後の質問の時間で何も聞かないと印象が悪くなる」といったSNS投稿を参考にする人もいるかもしれませんが、個人的にはかえって印象が悪くなることの方が多いと感じます。
本当に当社や仕事内容に興味があれば、そのテンプレートを使わなくても質問は出るのではと思ってしまうのが正直なところ。
無理に質問をするなら、「この面接で十分イメージが持てたので大丈夫です」と正直に伝えてもらう方がいいなと個人的には思います。
ただ、質問が何もない人に対して「当社にあまり興味がないのだな」と判断する人がいるのも事実です。
また、同じ職種でも会社が違えば仕事の進め方も変わるので、そこのギャップを埋めるためにも、できるだけ業務について聞いた方がいいとは思いますね。
職務内容を求人票に書き切れていないこともあるので、不明点はしっかり聞いて、早々に働くイメージができる状態にしておけば、選考が進む中でより具体的な話がしやすくなるはずです。
面接官の印象はさておき、質問はできるだけした方がいいとは思います。最近は新しい職種が増えていて、単純に仕事内容をイメージできないこともあると思うんですよ。
それに、最近は各社がさまざまなメッセージを外部に発信しています。面接前の情報収集の段階でも、結構な情報が入ってくるはず。
こちらとしても「最後にこの点は聞かれるだろうな」と思っているのに、聞かれないまま終わってしまうケースは結構あって。本当に大丈夫?と心配になります。
相談3. 企業のネガティブなうわさ話、確認しづらいです……
28歳/事務職
企業に対して不安に感じるうわさやニュースがあった場合、実際はどうなのかを聞きたくても失礼に当たるのではないかと思うと聞けません。
このようなネガティブな話に切り込む人に対してどのような印象を抱きますか。
また、ベストな聞き方があれば、教えてください。
むしろ聞いてほしいですね。ネガティブなニュースがあった場合、それについて質問がないと、「知らないのかな?」とかえって不安になります。
とはいえ、こちらから話を切り出すのも違うというか。
むしろネガティブな質問をされることを想定して、企業に関する社員クチコミが掲載されている『OpenWork』経由でスカウトを送っていたことがあります。
候補者は口コミのリアルな声を確認した上で応募をするわけで、採用側も「ここは聞かれるだろう」と心構えをしていました。
そこは遠慮なく質問するのがお互いのためだと思いますね。
特にスタートアップの場合、時に新事業が話題になり、炎上することもあります。うわさ話をうのみにされると事実が曲がって捉えられる可能性があるので、面と向かって聞いてほしいですね。
こういう話って企業側からは切り出しづらいことも多いので、ネガティブな話題は候補者側から振ってもらえると、質問に答える中でこちらも伝えたいことが話せるし、ご本人が何を不安に思ってるかに合わせて話ができるのでありがたいなと思います。
私も聞いてほしいですね。ただ、聞き方は大事かなと思います。
「このうわさって本当ですか?」「実際どうなんですか?」みたいな言い方だとトゲトゲしく聞こえてしまいかねません。
「最近ニュースで拝見したのですが、今後どう考えているのでしょうか」など丁寧に聞けば、採用側も普通に答えると思いますよ。
あくまで入社したい意思がある前提で、「だからこそ、この点を事前にクリアしたい」という聞き方をしてもらえるといいですね。
自社の悪いうわさやネガティブなイメージなど、求職者が気にするポイントは人事も把握していますもんね。
もし嫌な顔をされたり、明確な回答がなかったりする場合、その会社はやめておいた方がいいんじゃないかなと個人的には思います。
採用側もその会社で一生懸命働いているからこそ、真摯に回答するものだと思いますよ。
相談4. 働き方や年収、本音を伝えてもいい?
27歳/営業職
理想の働き方や希望年収を聞かれたとき、本音をストレートに伝えてもいいのでしょうか。
ネガティブに捉えられてしまったり、条件に合わないからと選考に不利益が生じたりするのではと思うと、遠慮してしまいます。
入社後に言われても調整できない可能性があるので、ぜひ選考中に教えていただきたいです。
ただ、伝えるタイミングと伝え方は考えた方がいいと思います。
伝えるタイミングと伝え方?
タイミングで言うと、初対面でいきなり冒頭から制度や働き方の話をされるとびっくりしてしまうので……。
年収に関しては、選考が進む中で人事や面接官から質問されると思うので、そこで答えられるようにしておけばいいと思います。
たまにオファーを得てから希望年収を引き上げる人がいるのですが、印象は良くないですし、社内調整ができない可能性もあるので、それは避けてほしいですね。
前山さんのおっしゃる通り、福利厚生や産休・育休の取得状況などは終盤、あるいは内定後に確認する方がいいかなと思います。
一方、仕事内容やキャリアに関することは早めがいいと思います。長期的に働くイメージをお互いに持てるように、疑問は早々に解消してください。
私もお二方と同意です。
伝え方でいうと、「フルリモートができると聞いたので応募しました」「〇〇までに産休を取りたい」など、いきなり言われてしまうと、正直戸惑うことが多いです。
「ライフイベントを考慮しながら長期的に働きたいと思っているのですが、どういう環境ですか?」
「フルリモート勤務に興味があるので、皆さんがどうやって仕事をしているのか知りたいです」
こういった質問から入って、その中で自身の希望をさらっと伝えるとスムーズかなと思います。
ただ要望を伝えるのではなく、「長期的に働きたいから、こういう条件を望んでいる」という姿勢が見えると好印象ですね。
その際、「自分の希望は一般的に見て妥当なのか」は事前に確認した方がいいと思います。
自分の職種の現年収が世の中の平均と比べてどうなのか、応募先の業種でリモートワークは普及しているのか。
こういったことを知らないまま面接に臨んでしまうと、すり合わせが難しくなりますから。
特に、年収は転職エージェントに相談して相場を把握するのが大事だと思いますね。
相談5. スキルに自信がないです……
27歳/営業職
自分の経験・スキルをPRするほどのものではないと感じてしまいます。
胸を張れるほどのアピールポイントがない場合も、自信を持って話をした方がいいのでしょうか。
自信がないことを正直に打ち明けた方が良いのでしょうか。
自信満々でいる必要はなく、できることを淡々と伝えて、その上で「こう成長したい」と前向きな話ができれば十分だと思います。
ただ、過去をしっかり振り返れば、抜きん出てはいなくとも「これはできる」というものが必ずあるはず。そこに自信が持てない場合は、自己分析が足りないのかも?と思います。
同感です。自己理解をしっかり深めていれば、「自信を持てるものが一つもない」状態にはならないと思いますね。
自己分析の際は、八木仁平さんの『世界一やさしい才能の見つけ方』という本がアピールポイントを見つける上で役に立つかなと思います。
きっと自信がある人の方が少数だとは思うんですけど、自信のなさを埋める方法はいろいろあります。
仮にスキル不足だと思うなら、「今はまだ足りていないけど、入社後にこうやって頑張ります」と、自信のなさを入社後の頑張りに転化すればいいと思いますよ。
仕事に置き換えて考えると、たとえ自信がなかったとしても、大事な仕事の前には自信を持って振る舞えるように準備をしますよね。
転職も同じで、自信を持とうと切り替える姿勢が大事なのだと思います。
控え目になってしまう自覚がある人は、転職エージェントを利用するといいと思います。
口下手だったり、アピールが苦手だったりする人が対策なしに面接に臨むのはもったいないので、準備段階で何かしら客観的な視点を取り入れる工夫が必要かなと。
控えめだからマイナスなことはなく、それも個性の一つです。
無理に自己主張したり自信家を装ったりするのではなく、事前準備も含め、自分ができることを最大限しているという姿勢が評価につながるのだと思いますよ。
まとめると、控えめな人をマイナス評価することはないけれど、控えめでも自信を持てるよう、準備して臨む姿勢や誠意が大切なんだと思います。
取材・文/天野夏海 編集/光谷麻里(編集部)
『「控えめさん」のための面接・交渉攻略術』の過去記事一覧はこちら
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