【松山ケンイチ・松嶋 菜々子・永山瑛太・中谷美紀】ベテラン俳優4人に学ぶ、長く活躍し続ける秘訣

長く働き続けたいと思う人は多いけれど、壁にぶつかると逃げ出してしまいたくなることもあるし、ペースを誤ると息切れしてしまうこともある。
サステナブルに働き続けるには、どのようなマインドで仕事と向き合えばいいのでしょうか。
そのヒントを与えてくれるのが、4人のベテラン俳優たち。
芸能界の第一線で20年以上にわたりパフォーマンスを発揮し続ける俳優たちのインタビュー記事をご紹介します。
松山ケンイチ「仕事はあえて全身全霊でやらない」

シリアスな役からコミカルな役までこなす守備範囲の広さに定評があり、話題作への出演が絶えない俳優・松山ケンイチさん。
以前は俳優業に全身全霊で取り組む姿が印象的だった松山さんですが、「今は俳優業に割く時間は、全体の2割くらい。生活における仕事の割合もできる限り減らせるよう、試行錯誤している」と話します。
長らく演じる仕事に100%の力を注ぐスタンスでやってきて、ずっと力みがあったんです。
それが原因で仕事を楽しめなかったり、自分の表現をうまく伝えられなかったりすることも多かった。だから、もっと楽に考えようと。
この7年の間に結婚し、子どもが生まれ、私生活も大きく変化しました。
自分にとって最高のエンターテインメントである子どもたちを見て学んだり、アップサイクルプロジェクト『momiji』を立ち上げたり、二拠点生活で畑仕事をやったりと、活動の場が広がることで、俳優業に割く時間がどんどん減っています。
面白いのが、俳優業に100%力を注がなくなったことで、以前よりも芝居を褒めていただけるようになったんです。
役者以外の世界が広がったことで、周囲に目を向ける余裕が生まれて、芝居の幅も広がったのかもしれません。
100%の力で仕事に取り組むことが100%のパフォーマンスに結び付くわけではない。これは僕にとって大きな発見でした
松嶋 菜々子「全員の期待に応えようとしない」

日本のトップ女優の一人として、数多くのヒット作で主演を務めてきた松嶋 菜々子さん。
出演するドラマは常に高視聴率。「視聴率の女王」の名を欲しいままにしてきた松嶋さんですが、周囲から期待を寄せられ続けるプレッシャーとどのように付き合いながら、長くパフォーマンスを発揮し続けてきたのでしょうか。
私が意識してきたのは、「全員の期待に応えようとしない」ということ。
ドラマや映画を見てくださっている皆さんには、もちろん良い作品は届けたい。でも、「きっとみんなは、私にこういうことを期待しているはずだ」って勝手に妄想して、自分で自分を苦しめる行為は意味がない気がして。
監督やプロデューサー、共演者、あるいは「あなたにCMに出てほしい」と依頼をくれた企業の担当者など、“顔の見える人たち”の期待にはしっかり応えようと考えてきました。
永山瑛太「余計なプライドを捨てる」

四半世紀近く俳優としてさまざまな作品に出演してきた永山瑛太さん。今なおその存在感を高め続けている背景には、仕事に対する考え方の変化があったそう。
若い頃は自分自身の見られ方を気にしたり、そのために作品選びにこだわったりしていた永山さんですが、「今はあまり自分が世間にどう見られているかを気にしなくなった」と話します。
それよりも今は、求められていることに対してシンプルに応えていこうと思っているんですね。
例えば何かちょっととがったことや自分のイメージと違うことを提示されたとする。そのときに「ちょっとそれはやりすぎなんじゃないですか」と意見することも可能は可能なんです。
でもそうすると、なんとなく良い感じにまとまったものしか生まれない。それだと面白くないし、ものづくりをしていても気持ち良くないんです。
であれば、未知のものにも思い切って乗っかってみた方がいい。
そして、そこでどんなリアクションが世間で生まれたとしても、それも含めて面白がればいい。
今はそんなやり方で仕事をしています。
中谷美紀「いつでも辞めていいと自分に言い聞かせる」

俳優歴30年以上。今なお話題作への出演が続く中谷美紀さん。
20代も30代も、多忙を極めていた中谷さんですが、そんな時期を「いつでも仕事は辞められる」と考えながら乗り越えてきたと明かします。
私は役づくりで自分を追い込んでしまうことが多かったんです。
例えば、ドラマ『永遠の仔』で性的虐待を受けた女性を演じた時には、友人との交流を一切絶ち、共演者との雑談すら控えて、自らに孤独を強いていました。
しかも、そのドラマを評価していただいたことで、次々にヘビーな作品へのオファーが舞い込んできて。精神的につらくなる時もありました。
そういう時に自分を心を守るための防衛策が、「私はいつだってこの仕事を辞められる」、「転職だってできるし、いつでも違う仕事を選んでいいんだ」と自分に言い聞かせることでした。
編集/Woman type編集部