18 SEP/2021

土屋太鳳が語る、ぶれないプロ論「いい結果、すごい偶然、全て見えない努力が影にある」

一流の仕事人には、譲れないこだわりがある!
プロフェッショナルのTheory

この連載では、各界のプロとして活躍する著名人にフォーカス。 多くの人の心を掴み、時代を動かす“一流の仕事”は、どんなこだわりによって生まれているのかに迫ります

土屋太鳳

プロとはどんな人のことを言うのだと思いますか。その質問に、土屋太鳳さんは少し考えて、こう答えた。

努力することを大事にしている人かなと思います」

すべての人に才能があるとは限らない。だけど、すべての人が努力することはできる。

今日より明日。明日より明後日。一つ一つ積み上げていくことで、なりたい自分に近づくことができるはず。そう頭では分かっていても、実際に努力を継続することは難しい。

努力家のイメージが強い土屋太鳳さん。なぜ土屋さんはどれだけキャリアを重ねても、謙虚に努力し続けることができるのだろうか。

本当のプロは“人から見えない努力”を馬鹿にしない

土屋太鳳

2008年、『トウキョウソナタ』でスクリーンデビュー。以降、ドラマ・映画を軸に活躍し、近年はミュージカル『ローマの休日』で帝国劇場の板を踏むなど、舞台でも実績を積み上げている土屋さん。

たくさんの現場で、さまざまな俳優、スタッフと出会った。数々のプロフェッショナルを見てきた土屋さんは「プロとは、努力することを大事にしている人だ」と答えた。

土屋さん

メイクさんとかスタイリストさんとか、周りの皆さんのお仕事を拝見していても、『すごいな』と思う人は、みんな努力をしています。

常に、自分の仕事をもっと良くしたいと思っているし、何か予想外のことが起きたときにちゃんと対応できるように日頃から準備もされている。

土屋さん

役者の仕事も、例えばアドリブとか、偶然生まれたものがすごいって評価されることが多いですけど、そうした偶然を生むにも、そこまでの努力の積み重ねが大事

いい結果を生むための“人からは見えない努力”を決して馬鹿にしない人が、本当のプロだと思います。

土屋太鳳

そう話す土屋さん自身が、何よりの努力家。

どんな仕事も、初めのうちは一生懸命努力できる。けれど、少しずつ仕事に慣れて、ひと通りこなせるようになればなるほど、いつの間にか努力を怠り、今持っているスキルだけで仕事をまわすようになる。

常に新鮮な気持ちで努力をするために、土屋さんが心掛けていることは何か。

土屋さん

なるべく自分がいる業界以外の人と話すようにすることです。

同じ世界に身を置いている人とだけ過ごしていると、どうしても慣れで自分や相手を見てしまう。

だけど、銀行で働いている人と話してみるとか、カフェを経営している人と話してみるとか、全く違う業界の自分と違う職種の人とコミュニケーションをとってみると、自分にとっての普通が全く通じないことを痛感します。

土屋さん

それに、いろいろな職業の人たちの、いろいろな努力のカタチを知ることができるのもいい刺激になる。

新しい発見がいっぱいあると、『自分は次にこんなことがしてみたいな』っていう想像力が掻き立てられるんです。

土屋太鳳

努力の電池は切れやすい。だけど、好奇心や教養を育むことが、努力の充電器になる。

土屋さん

この間は、投資について学んだのですが、全く知らない世界だったのですごくワクワクしました。

こうやって知らないことを知ると、社会の見え方も変わってくる。

自分が今やるべきことも少しずつクリアになるし、そこに向けてまた努力をしてみようという気持ちになる。

その繰り返しです。

土屋さん

自分が何だか頑張れないなって思うときって、何に対して頑張ればいいか分からないことが理由だと思うんですね。

だから、そうやって人と接して視界を広げてみるといいんじゃないかなと思います。

「ずっと憧れてきた」藤原竜也との共演

そんな土屋さんが努力の末に今回掴み取ったのは、“ずっと憧れてきた人”との共演だ。

一家失踪事件に、突然転がり込んできた大量のニセ札。天才作家の周りで次々と起こる謎を描いた直木賞作家・佐藤正午の傑作エンターテインメント『鳩の撃退法』がついに映画化される。

同作の主人公・津田伸一に扮するのは藤原竜也さん。そして、津田の担当編集者である鳥飼なほみを土屋太鳳さんが演じる。

土屋太鳳
土屋さん

竜也さんと初めてお会いしたのは16歳の時でした。

当時、私が『鈴木先生』の撮影をしていて、竜也さんは隣のスタジオで『カイジ』を撮っていらして。

そうしたら、デビュー作の『トウキョウソナタ』でお世話になった香川照之さんが竜也さんを紹介してくださったんです。

まだ芸能界のことなんて何も分からない頃。目の前にいる藤原竜也さんは、土屋さんにとって「ずっとテレビで見てきた憧れの人」だった。

土屋さん

大河ドラマの『新選組!』は、今でもオープニングを歌えるくらい大好き。竜也さんの演じられた沖田総司が本当に素晴らしかったんです。

ちょうどその頃、『鈴木先生』でご一緒した長谷川博己さんが『舞台をやりたいなら、これを観たら?』と蜷川幸雄さんが演出をされている舞台のDVDを貸してくださいました。

そこに登場されていたのも、竜也さんだったんです。

ずっと憧れ、追い掛けてきた人と、がっぷり四つに組んで芝居をする。土屋さんにとって今回の共演は、10年前の自分に教えてあげたくなるような幸せな時間だった。

土屋太鳳
土屋さん

私が今回演じた編集者の鳥飼は、竜也さん演じる津田“の行き過ぎたファン”みたいなところがあって。

鳥飼が津田に寄せる気持ちと、私の竜也さんに対する憧れの気持ちは、重なる部分があるなと思いながら演じていました。

ずっとその背中を追い掛けてきた藤原竜也さんの仕事を間近に見て、学ぶものも多かった。

土屋さん

竜也さんは絶対に周りが飽きないお芝居をされるんです。

例えば、テストのときには台本にない台詞をどんどんアドリブで入れてくることも。まるで舞台を見ているみたいなんです。

毎回違うお芝居をされるから、こちらも気が引き締まる。どのシーンもいい緊張感を持って臨めたのは、竜也さんのおかげでした。

焦らず「体験」を増やし、つないで「経験」へ

土屋太鳳

演じ手としてのスキルを伸ばすだけでなく、土屋さんが今努力していることの一つが英語のレッスンだという。聖火ランナーという大役を務めた際も、Instagramに日本語と英語の両方で自身の気持ちを綴った。

もともとは英語に対しコンプレックスがあった。でも今は、できない恐怖や恥ずかしさと向き合いながら一生懸命学び続けている。

苦手な英会話のレッスンも、努力を続けた先に、「視界が開ける瞬間」が訪れた。

土屋太鳳
土屋さん

先生から言われたんです。焦っても意味ないよって。

どれだけ焦ったところで、私一人だけ時間が進むわけでも二倍になるわけでもない。大事なのは焦らず確実にやることだよと。

その言葉には、はっとさせられました。

頑張れば頑張るほど、つい視野が狭くなりがち。大事なのは、早くゴールに着くことではない。その道のりにあるすべてのものを拾いこぼさず吸収し、成長の糧に変えていくことだ。

土屋さん

私たちの毎日は、「体験」という小さな点の連続です。その点と点と点がいつか一本の線で結ばれたとき、「経験」に変わる。

未来が見えないときほど、自分のやっていることがただの点にしか思えなくて辛くなったりするけれど、いつか「経験」という線 になると信じて、目の前の点を頑張ることが大事な気がします。

そう話してから、土屋さんはこう付け加えた。

土屋さん

それでも面倒くさいとか、頑張れないと思うなら、もしかしてそれは自分にとって頑張らなくていいことなんじゃないかなって。

だったら、無理してやらなくてもいいと思います。

努力するのは難しい。それは、努力家の土屋さんが一番よく知っている。それでも努力し続けるのは、それが土屋さんにとって頑張ってでもやりたいことだからだ。

そんな大きなものはすぐには見つからないかもしれないし、一足飛びで成功への階段は上がれない。でもそんな試行錯誤も含めて、まだらに散ったいくつもの点が、自分だけの「経験」という線になる日はきっと来る。

その日まで、焦らず、無数の点を積み上げていけた人が、プロと呼ばれる人間になれるのかもしれない。

土屋太鳳

土屋 太鳳(つちや・たお)
1995年2月3日生まれ、2008年、『トウキョウソナタ』で女優デビュー。15年、NHK連続テレビ小説『まれ』のヒロイン役で一躍国民的女優に。以降、『オレンジ-orange-』『トリガール!』『8年越しの花嫁 奇跡の実話』『累 -かさね-』『哀愁しんでれら』『今際の国のアリス』など多数の映画で主演を務める。女優だけでなくNHK『シブヤノオト」土23:10~では音楽番組のMCに起用され、今後は映画『アイの歌声を聴かせて』10月29日、映画『大怪獣のあとしまつ』が公開。
インスタグラム

取材・文/横川良明 撮影/洞澤佐智子(CROSSOVER) 企画・編集/栗原千明(編集部)

作品情報 映画『鳩の撃退法』

鳩の撃退法

公開日:8月27日(金) 全国ロードショー
監督:タカハタ秀太
出演:藤原竜也
土屋太鳳 / 風間俊介 西野七瀬
佐津川愛美 桜井ユキ 柿澤勇人 駿河太郎 浜野謙太
岩松了 /村上淳 坂井真紀 濱田岳 ミッキー・カーチス / リリー・フランキー  
豊川悦司  
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