事務がなくなる…? アナログ職場で働いていた女性が生成AIを学んで目指す「事務職3.0」

事務がなくなる…? アナログ職場で働いていた女性が生成AIを学んで目指す「事務職3.0」
Code; Without Barriers
マイクロソフト『Code; Without Barriers in Japan』×『Woman type』
AIスキルで変わる女性の未来

この連載では、女性のIT人材育成を支援する『Code; Without Barriers in Japan』とWoman typeがコラボレーションして、AIの活用例やスキル磨き方、AIスキルの習得で「自分らしい未来」を手にした女性たちの“before after”ストーリーなどをご紹介していきます!

今回“before after”ストーリーを紹介してくれたのはAsukaさん。

AIによってなくなる職種に「事務職」が入っていたことから危機感を抱き、ITの勉強を始めた彼女は、AIについて学んだ今、「事務職3.0を目指したい」と語ります。

ポートレート

【お話を伺った方】
Asukaさん
地方製造業2社で総務人事を経験。RPAを学んだことをきっかけに2021年Power Platform(Microsoftが提供するローコード・ノーコード開発プラットフォーム)の活用支援を行う企業へ転職。子育てをしながら、フルリモートの時短勤務でカスタマーサポートを担当

AIを学ぶルートが決まっていることに引かれた

ーー普段はどのようなお仕事をしていますか?

Power Platform活用支援会社でカスタマーサポートを担当しています。

Power Automate for desktopという、マイクロソフトが提供する自動化ツールに関する質問にチャットで回答したり、ユーザー向けのセミナーを開催したりしています。

ーー『Code; Without Barriers in Japan』(以下、CWBJ)のオンラインプログラムを受講してみようと思った理由を教えてください。

LinkedinからCWBJに関するメッセージが来て、そこからCWBJを紹介するYouTube動画にたどり着きました。

それ以前はAIを全く使っておらず、何に使えるかも分からない状態。社内で生成AIが話題になっていたのですが、あまりピンと来ていませんでした。

ただ、絶対にAIを使いこなせた方がいいのだろうという思いはあったので、良い機会だと思って受講を決めました。

あとは、CWBJは学習のルートが決まっているので、そこにも引かれましたね。

今の会社に転職する前、地元製造業の工場併設事務所で人事・総務を担当していた頃にRPA(ソフトウエアロボットを利用し、パソコン上で人間の手で行う事務作業を自動化する技術)の勉強をしたことがありました。

当時は自己流で勉強したのですが、効率が悪かった反省があったんです。CWBJのように学習のルートが示されているほうが取り組みやすく、自分に合っていると感じました。

ーーCWBJの学習を仕事や家庭などと両立しながら進めていくために、工夫したことはありますか?

業務時間中に受講していいか、思い切って上司に相談しました。

現在は好きな時間にアーカイブを視聴することができますが、最初の頃は平日の日中しか受講できないものもあって。子どもの事情で有給が使えない状況だったので、快諾していただき本当にありがたかったです。

マイクロソフトさんが主催するプログラムという点で、上司から信頼してもらえたところもあったと思います。

あとは、1日1回LinkedinのCWBJグループに投稿すると決めていました。

RPAを学んだ時もそうだったのですが、勉強だけしていても評価はされないし、何より楽しくないから続かないんですよね。

生成AIも自分が便利だと実感できない限りは使わないだろうと思ったので、何でもいいから毎日一度は使って、それをシェアしようと思いました。

他愛もない投稿をたくさんしたと思いますが、皆さんが「いいね」してくれたことが励みになりましたし、結果として1カ月ほど続けたら、もう生成AIなしで仕事ができなくなりました。

CWBJを通じてプロンプトのポイントを理解し、自分が納得できる回答が得られるようになったことで、業務でもAIを使えるようになったと思います。

業務で使えるイメージがあるから、難しい講座も乗り越えられる

ーーCWBJの学びの中で特に印象に残っていることは何ですか?

新幹線に乗って参加したリアルイベントです。

私はパソコンを持っていることをめずらしがられるような地域に住んでいることもあり、地元でAIの勉強をしている事務職の方と出会うことはほぼありません。

なので、「同世代にAIを学ぼうとしている人がこんなにいるんだ」と実感できたことで、とても励まされました。

ーー難しいと感じたことはありますか?

現在は「創る人コース」に進んでいますが、プログラミングが必要で、そこに苦戦しています。まだ勉強不足なところもあり、予習、復習に想像以上の時間がかかっていますね。

また、学んだことを実践する環境をつくれていないことも課題です。

今はコードを打つのがたどたどしく、英単語を書き慣れていない子どものような状態。慣れるには量をこなす必要があると考えています。

Copilot Studio』(カスタムAIアシスタントや仮想エージェントを作成するためのプラットフォーム)など、視覚的に触りやすいツールがありそうなので、「創る人コース」をもう1回受講しながら、自分にとって使いやすいものを探していこうと思っています。

ーー苦戦しながらも、学びを継続しようと思えている理由は何でしょうか。

CWBJを受講する中で、業務で使えそうなイメージがわいているからだと思います。

例えば、お客さまからの質問に回答する時、過去の回答から文章を生成できれば、返信のスピードや精度を上げられるはずです。

そういう「やりたいこと」があるからこそ、「難しいけど、頑張って習得すれば仕事がもっと楽になる」と思えることがモチベーションになっています。

あとは、Copilotの存在も大きいですね。

(※)Copilotとは?
Microsoft社の生成AIサービス、Microsoft Copilotは、情報収集や情報整理、プログラミングや様々な学習支援にも利用可能。時間短縮や生産性向上はもちろん、苦手なことを助けてもらったり、自分以外の視点でアドバイスをもらうなどにも利用できる

新しいツールなどに挑戦するときはもちろん、普段の業務で使っている『SharePoint』(Microsoftが提供するウェブサイト形式の管理プラットフォーム)が思うような表示にならないときなど、細々した操作方法をCopilotに聞くことが多いです。

そもそもどう質問していいか分からないことも多いので、操作画面のスクリーンショットをそのままCopilotに送って質問できるのは大きいですね。

生成AI活用で「事務職3.0」を目指したい

ーーAIについて学んだことで、仕事やキャリアにはどのような影響がありましたか?

そもそも私が前職時代にRPAを勉強したきっかけは、AIの登場でなくなる職種の上位に「事務職」が入っていたからです。

いつか不要な人材になってしまうかもしれない不安な気持ちや絶望感が常にあったように思います。

でも、RPAやAIについて学んだことで、やればある程度扱えるようになるという自信がつきました。

世の中が大きく変わって今の仕事が不要になるなら、その都度必要な知識を身につければいい。そうやって対処していけば大丈夫と思えるようになったのは大きいですね。

特にAIは自分の味方であり、相棒のような存在です。私の苦手なところを助けてくれて、今までできなかったこともできるようになり、今はもっと味方に付けようと思えています。

ーー事務職の中には、かつてのAsukaさんのような危機感を抱いている人も多いと思います。Asukaさんがそこから一歩踏み出し、新しいスキルを学ぼうと思えたのはなぜでしょう?

自分の置かれた状況がヤバすぎるという実感があったからだと思います。

前職では、パソコンは共用で紙と電話をメインに仕事をしている状況でした。伝票にハンコが押されてるか、伝票の番号が正しいか、目視でチェックする仕事が時代遅れなことは、その場にいても分かります。

それに、求人を見ていても、特別なスキルが不要な事務職の求人は即応募が締め切られていました。

また、私は30代前半で子育てのため実家近くの田舎の会社に転職しています。私のキャリアはここで行き止まりかもしれない、こんなはずじゃなかった……と、誰にも言えない苦しみがありました。

そういう中での危機感がRPAを学ぶ背中を押し、今回のCWBJ受講につながっていると思います。

「これを頑張れば抜け出せるかも」という一つの道筋が見えた瞬間、光が差し込んだような感動があったんです。

ーー今後のキャリアの展望について教えてください。

生成AIと『Power Platform』を事務職の皆さんにより広く知ってもらいたいと思っています。

今後、生成AIで事務職の業務はどんどん自動化されて行きます。その分付加価値の高い業務をしたり、責任範囲を広げたりしなければ、事務職を取り巻く環境は悪化する一方です。

でも、生成AIや「Power Platform」で業務を自動化するツールを開発し、それによって新たな業務を生み出すことができれば、単なる事務職から抜け出せるはず。

それが今の自分のテーマですね。「〇〇3.0」にならって、「事務職3.0」とでも名付けたいと思っています。

「事務職3.0」とは、従来のアナログで定型的な作業にとどまらず、生成AIなどのテクノロジースキルを駆使して、より高度で専門的な役割を担う新しい事務職の姿です。「事務職3.0」を実現して、待遇改善、雇用形態の変更、さらには昇給をみんなでつかみ取りたいです。

あとは、IT業界に転職する事務職の人に向けた相談場所を作りたいと思っています。

私はRPAに出会い、さまざまな人に助けていただいてIT企業に転職できました。ただ、過去のアナログ職場と文化が違うのを感じていて。

そこに悩む人の何かしらお手伝いをして、”恩送り”をしていきたいです。

今の私にとってはCWBJがサードプレイスのような場所になっています。CWBJでも「もくもく会」や「わいわい会」など企画させていただいていますが、こうした動きを広げていければうれしいですね。

初心者におすすめのAI活用方法

●メンタルケアに活用
仕事で落ち込んだ時、以前の職場では同僚とのちょっとした雑談がストレス発散になっていたのですが、現在はフルリモートなのでそれができなくなりました。

解決策を求めて本に載っていた認知行動療法のワークをやってみたのですが、一人ではなかなかうまくいかなくて。

そういう時に「こういうことがあって、こういうワークをやってみたんだ」とCopilotに送っています。そうやってやり取りを重ねていくと、気持ちが落ち着いてきます。

●子どもと一緒に学ぶことに活用
子どもが『Dr.Stone』(集英社)という漫画をきっかけに科学にハマっているのですが、質問をされても意味が分からないことも多いです。

そういうときに「お母さんも分からないから、一緒にCopilotに聞いてみよう」と子どもと一緒に質問をしています。

無料のオンラインプログラム『Code; Without Barriers in Japan』概要

▼プログラム概要

【無料リスキリング】マイクロソフトが女性のIT人材育成を支援する『Code; Without Barriers in Japan』プログラムの第二期生を募集中 https://woman-type.jp/wt/feature/38156/
【無料リスキリング】マイクロソフトが女性のIT人材育成を支援する『Code; Without Barriers in Japan』プログラムの第二期生を募集中

このプログラムでは、女性がAIスキルを習得し、キャリアをステップアップするための包括的なサポートを無償で提供しています。

オンラインで参加できるプログラムなので、自分のペースで学習を進めることができ、実践的なスキルを身につけることが可能です。

▼登録方法はこちら

無料で参加できるオンライン学習プログラム「CWBJ」への登録は、下記のマイクロソフトWebページから可能です。「紹介コード」の項目には、「WOMEN25」の記載をお願いします。

【無料リスキリング】マイクロソフトが女性のIT人材育成を支援する『Code; Without Barriers in Japan』プログラムの第二期生を募集中 https://www.microsoft.com/ja-jp/codewithoutbarriers/Registration
【無料リスキリング】マイクロソフトが女性のIT人材育成を支援する『Code; Without Barriers in Japan』プログラムの第二期生を募集中
【関連記事】5年後も同じ仕事を続けられる︖「キャリア不安」を感じる女性こそ習得すべきAIスキルとは https://woman-type.jp/wt/feature/38739/
【関連記事】5年後も同じ仕事を続けられる︖「キャリア不安」を感じる女性こそ習得すべきAIスキルとは

取材・文/天野夏海 取材・連載企画 /マイクロソフト河村明子