30代半ばで“理想的な転職”はムリ!? 女・35歳、転職活動のリアル
将来的に転職したいと思いつつも、「30代半ばになってからの転職は難しそう……」と感じている20代の女性は多いはず。
しかし、30代半ばの転職活動で実際にどのような壁があるのか、具体的にイメージできている人はあまりいないのではないだろうか。そこで、キャリアカウンセラーの水野順子さんに、実際に30代半ばで転職活動をした女性たちの事例を教えてもらった。
「30代半ば、未経験で事務に転職」は難しい!?
営業職Aさんの場合
年齢:35歳
ステータス:既婚、子どもなし
職種:営業職(正社員)
将来的に子どもを持っても長く働きたいと考えたAさんは、落ち着いた働き方が実現できそうな事務職への転職を決意。
求人サイトに登録することから転職活動を始めたが、そもそも事務職の求人が非常に少ないことや、30代半ばの女性となると必ず「事務職経験」が求められることに気付き、転職活動は難航。
結果的にAさんは、比較的残業が少ないとされている業界の営業職へ転職することになった。
水野さんは、Aさんの転職活動事例を見て次のように語る。
「35歳を過ぎての転職では、それ相応の経験値が求められるもの。正直なところ、未経験の職種に30代半ばで応募しても、採用される可能性は低いでしょう。
しかも、Aさんの場合は常に求人倍率が高い事務職を希望していたのでなおさら。ですが、同職種で業界を変えるというAさんの最終的な選択はとても賢い方法です。30代半ばの女性にとって、王道の転職成功パターンですね」
子育て中の転職活動には“有給不足”の落とし穴アリ!?
事務職Bさんの場合
年齢:37歳
ステータス:既婚、子ども一人
職種:出版社で事務(契約社員)
子どもが小学校に進学するにあたり、より安定的に働き続けられる正社員になるために転職活動を開始したBさん。
採用活動中の企業にいくつか応募してみるものの、子どもの急な発熱や学校行事への対応で有給をほとんど使い果たしており、平日の面接に行けないことに気付く。
さらに、夜も子どもの面倒で家を空けることができない。何とか行けた面接では、「第二子の予定」についていつも確認され、回答に窮してしまうことが多々あった。
結局Bさんは、それまで働いていた会社で昇格試験を受け、正社員になることができた。
水野さんは次のようにBさんの転職活動を見る。
「Bさんの事例は、小さな子どもが転職活動の壁になるというケース。30代半ばの女性の転職にはよくあることです。子どもがいるとやむを得ず会社を休まないといけない日が増えるので、面接に参加すること自体が難しくなります。
また、面接時に出産計画を確認されたら『こればかりは何とも言えませんが、子どもが出来ても働き続けたいと考えています』と、正直に答えるのが良いと思います。
本来、このような質問は均等法違反にあたるので答えなくもいいのですが、その人にとってベストな人事配置を考えるために確認してくれている可能性もあります。
だからこそ、回答はあいまいにしないほうがベター。『実家の手助けが得られる』、『保育園に入れるつもり』など、育児のサポート手段まで考慮していることを具体的に伝えられるとなお良いでしょう」
管理職経験があっても年収は下がって当然!?
課長職に就いていたCさんの場合
年齢:35歳
ステータス:独身
職種:Web系企業で課長職(正社員)
管理職として活躍していたCさんは、自分のスキルを他社でも試したいと考え、転職活動を開始。しかし、業務量が多い上に社内の重要な会議に参加することも多いため、平日に休暇を取って面接に行くことは難しい。
また、管理職クラスのCさんは同業他社に顔見知りが多く、転職活動をしていることが周囲に知られやすいリスクも感じていた。さらに、他業界を視野に入れても管理職クラスの求人がほとんど見つからず、年収も下がってしまう可能性が高いことに気付く。
結局Cさんは、知人の紹介を通じて転職活動を行い、以前より少し給与の低い会社で働くことになった。
Cさんの転職活動事例から、水野さんは次のように説明を加える。
「管理職には経験と裁量があるため転職活動もうまくいきやすい印象があるかもしれませんが、実はそうとは言い切れません。
Cさんの事例のように、Cさんがいなければ進まない仕事を抱えていることも多く、いざ転職しようとしても会社が手離してくれないケースも多々あります。
また、新卒からずっと同じ会社で出世してきた場合は年収面で恵まれている場合が多いので、年収やポストが下がることがほとんどでしょう。
さらに、管理職クラスの求人は紹介会社やヘッドハンターだけに概要が明かされるシークレットな案件になっていることが多いので、一般の目には触れにくいという特徴もあります。
その結果、Cさんのようにポストや年収をあきらめてしまうケースも少なくありません」
女性活用が推進されている昨今、30代半ばで管理職に就く女性はこれからますます増えていくだろう。責任の大きな仕事を担当するようになったときに転職を考え始めたら、「何を守り、何を諦めるのかを決めてから活動に入ることがとても重要」と水野さんは指摘する。
「30代半ばで管理職女性が転職するケースで、年収や仕事の裁量権、時間の確保などの観点から、全てが今よりも良くなる転職はほとんど無いのが現実です。
だからこそ、自分が転職することで最も優先したいことは何なのかを事前に整理して考えておく必要があります。
ただ、管理職として働いた経験はとても強い武器になるので、人材紹介会社やヘッドハンターに頼るなどしながら、より良い求人に出会える可能性を広げ、自分の市場価値を把握した上で転職活動を進めると良いでしょう」
30代で理想の働き方を実現するために20代のうちからキャリアの見直しと選択を!
「30代半ばを過ぎての転職活動は不可能ではないものの、選べる選択肢がとても少ないことを実感すると思います」と水野さん。Aさん、Bさん、Cさんのような事例は、どれもよくあるケースだという。
「30代で今とは違う仕事に就くことを考えているのなら、20代のうちに今後のキャリアについて考える機会を持つべきです。そして、必要があれば転職するなど、早めのアクションも大切。
自分のキャリアに関する選択を先延ばしにすればするほど、自分の望み通りの転職をかなえることはより難しくなっていきますから」
とはいえ、30代半ばになってから、家族の事情などでやむを得ず転職をしなければいけないことになる人も多いだろう。そんな時でも納得のいく仕事を続けていくために、「20代のうちにできることを増やしておいてほしい」と水野さんは念を押す。
「仕事を快く教えてもらえる20代のうちに、いろいろな人にさまざまな仕事を教えてもらっておくべきです。そして、マネジメント職への打診や新規プロジェクトの参加など、声を掛けてもらったときには失敗を恐れずにチャレンジすることが大切。
手持ちの選択肢を絞り込んでいくことは30代でもできまずが、自分の可能性を広げられるのは20代ならではの特権です。
自分にとって少し負荷がかかるような働き方を意識してみると、自ずとどこの会社でも求められるようなヒューマンスキルやテクニカルスキルを磨けるはずですよ」
年齢を重ねていくと、転職における選択肢は狭まっていきがち。30代半ばになって自分のキャリアを振り返ったときに後悔しないよう、理想的な働き方の実現に向けたアクションを早めに始めていこう!
取材・文/朝倉真弓