やりたいことが見つからない…「選べる自分」を育てるためのキャリア戦略【転職Q&A 森数美保】

やりたいことが見つからない…「選べる自分」を育てるためのキャリア戦略【転職Q&A 森数美保】
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20代~30代の女性が抱える仕事・キャリア・転職のお悩みに、その道のプロが本音でアドバイス! 「私らしい働き方」の発見や「いい転職」をかなえるためのヒントを提供します

今回、転職に関するお悩みに答えてくれたのは、「選択できる自分になる」ためのキャリア戦略を共につくるパートナー『キャリパト』を運営する株式会社Your Patronum 代表取締役、森数美保さん。

届いたのは、「やりたいこと探し」がなかなかうまくいかないという女性からのお悩みです。

キャリア戦略のプロが解説する、キャリアの軸足の定め方とは……?

森数美保さん

株式会社Your Patronum 代表取締役
森数美保さん

新卒で人材紹介会社ジェイ エイ シー リクルートメントに入社。最年少マネージャーを経験。大手企業で人事を経験した後、株式会社Misoca(現:弥生株式会社)などを経て、18年11月 株式会社キャスターに入社。21年4月 同社執行役員に就任し複数事業を管掌。22年5月株式会社ミライフに執行役員として入社。キャリアコンサルタント/人事/事業経営の経験を活かして、本質的なキャリア構築や組織づくりを推進。24年に株式会社Your Patronumを創業。社会保険労務士有資格者。

お悩み:どれもピンとこない…「やりたいこと」が見つかりません

28歳/販売/転職経験なし

転職活動中の28歳です。仕事で「やりたいこと」を見つけるために、いくつか興味のある分野の勉強を始めてみましたが、どれも中途半端で「これだ!」というものに出会えません。

選択肢が多すぎる(もしくは、どれもピンとこない)場合、どうやってキャリアの軸足を定めていけば良いでしょうか?

森数さんの回答:まずは「自分のコアを知り、軸を育てる」プロセスに踏み出そう

初めての転職。しかも「やりたいことが見つからない」状態で進めようとしていると、不安になりますよね。でもまず、「これだ!」と思えるものが見つかっていない自分を責めなくて大丈夫です。

実は「やりたいこと」がある状態の方が少数派です。しかもそれは、あらかじめ決められた「正解」ではなく、行動しながら少しずつ輪郭が見えてくる「プロセス」の中にあります。

そして、情報収集してもピンとこない理由の一つに、「自分の基準(判断軸)」がまだ言語化されていないことがあります。

軸がないまま集めた情報は、比べる土台がないので、どれも「なんか違う」と感じてしまうんです

私は、「キャリアの市場価値が高い状態」とは、年収や肩書ではなく“選べる自分”であることだと考えています。

「選択肢が他にないからここにいる」よりも、「他にも選べるけど、自分で選んでここにいる」方が圧倒的に納得感があるし、幸福度も高い。どのキャリアフェーズにおいても、“自分に合った選択肢”を、自分の意思で選べる状態が大切です。

だからこそ、焦って何かを決めるのではなく、「自分のコアとなるものを知り、軸を育てる」プロセスに一歩踏み出してみてください。

悩むだけで立ち止まってしまえば未来は変わりません。でも、視点を少し変えて、行動を起こしてみれば、見える世界は確実に変わっていきます。

ただし、行動を起こす「順番」にはポイントがあります。

「選べる自分」を育てる4つのステップ

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やりたいことを探すとき、多くの人がつい「未来」から考えようとします。でも実は、キャリアの軸をつくるうえで大事なのは、「過去」から「今」を丁寧に見つめ直すこと。

私は以下のステップで、“選べる自分”を育てていく方法を提案しています。

1.【過去】やってきたことを“ピース化”し、「好き・得意・ストレス」にラベリング

まずは、自分がこれまで経験してきた仕事や出来事を「ピース」に分解し、「好き/得意/ストレス」でラベリングしていきます。

例えば…
・「お客さまの悩みを聞いて、それに合う商品を提案できた」→【好き】【得意】
・「決まったマニュアルに沿って淡々と対応」→【ストレス】
・「店内レイアウトを工夫して、売上アップに貢献」→【得意】【創意工夫が楽しい】

こんなふうに自分の“好き”や“得意”がどんな状況で発揮されていたのかが見えてくると、「キャリアのコア」が明らかになってきます。

2.【価値観】どんなときに「自分らしくいられる」と感じたかを言語化

次に、「どんなときに自分らしくいられるか」「どんな環境・関係性が心地良いか」を考えてみましょう。合わせて「どんな時にもやもやしたか」を書き出してみるのもおすすめです。

例えば…
・一人ひとりと丁寧に向き合える環境だとモチベーションが上がる
・自分なりのアイデアが形になったときにやりがいを感じた
・「結果さえ出せばいい」と言われると、違和感を覚えた

これは、仕事を選ぶときの「判断軸」になります。何を大切にしているのかが言語化できると、選ぶ視点がぐっとクリアになります。

3.【未来】“今のまま進んだ場合”と“ステップを踏んで描ける未来”を両方考える

ここまでの「過去」と「価値観」をふまえて、これからの未来にどんな選択肢があるかを広げていきます。
ポイントは、「今の延長線上にある未来」だけでなく、「ちょっと背伸びすれば届く未来」も視野に入れること。

例えば…
・今の接客経験を活かせる、他の業界や職種は?
・少し学べば挑戦できそうな仕事は?
・自分が成長できそうな環境って、どんなところ?

ここでは、一つに決める必要はありません。将来的にキャリアの選択肢が増えている状態になるには、どんな選択があるのか?を考えます。

4.【行動】キャリアテーマを決めて、自分企画書をつくる

ここまでの過程を経ると、「こんな仕事に挑戦したい」「こんな価値観を大事にしたい」という方向性(キャリアテーマ)が見えてきます。

そのキャリアテーマを実現するためには、どんなスキルや経験を伝えるとよいか?どんな会社や環境なら実現できそうか?を考えて、「自分企画書」としての職務経歴書をつくっていきます。

自分の強みや価値観を具体的に表現するための職務経歴書を作成することで、他者にも自分の価値を伝えられるツールになります。

“選べる自分”になるための第一歩を踏み出そう

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悩んでいるのは、キャリアについて真剣に向き合っている証拠です。真剣だからこそ、不安になりますよね。

でも大丈夫。今まさに、“選べる自分”になるための第一歩を踏み出しているところです。

自分の過去や価値観に向き合いながらキャリアの可能性を広げる選択を知り、選択を重ねていくことで、「あなたらしいキャリア」に近づけます。

焦らなくて大丈夫。

私もかつて、「やりたいことが分からない」ことに悩んだ一人です。

だからこそ伝えたいのは、「やりたいことがない」ことは、あなたの可能性を否定するものではなく、これから自由に描ける未来が広がっているということ。

一つずつ、自分の感覚を大切にしながら、選べる力を育てていってくださいね。応援しています。

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