【来栖りん】アイドル→声優に転身後“できない自分”と闘い続けた3年間

【来栖りん】アイドル→声優に転身後“できない自分”と闘い続けた3年間

特集:推しのお仕事!

いま日本各地で熱烈に「推されている」注目の人に、仕事に対する知られざる努力とこだわりをテーマにインタビュー。彼・彼女たちがファンから「激推し」される理由を探ります!

アイドルグループ『26時のマスカレイド』のセンターとして活躍していた来栖りんさん。

2022年10月にグループ解散後は、ずっと憧れていた声優に転身した。

アニメ『神無き世界のカミサマ活動』で声優デビュー後は、アニメ『歴史に残る悪女になるぞ』、『ラブライブ!蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ』などの話題作に出演している。

そして今年、大人気アニメが待望の映画化された『映画 おでかけ子ザメ とかいのおともだち』に参加。声優としてまた一つ活躍の幅を広げている。

来栖さん

もともとアニメやゲームが大好きで、「推している側」だったからこそ、声優の世界に足を踏み入れる時は恐怖が大きかったです。

デビュー当時の心境をそう明かす来栖さん。

声優歴はまだ3年でありながら、彼女が多くのアニメ・ゲームファンから受け入れられ、推される背景には、決して自分に満足することのないストイックな仕事への姿勢と、ファンへの熱い想いがあった。

「舞台が変わったら私は何もできない」無力さを実感した声優デビュー

編集部

来栖さんは、2022年にアイドルグループが解散した後、声優の道に進んでいますが、もともとアニメやゲームが好きだったんですよね。

来栖さん

高校生の頃から、「アイドルもやりたいし、声優もやりたい」と思っていて、ずっと憧れていた世界でした。

ただ、アイドルをしていたからこそ、ファンの方たちが「自分の推しに対してプライドを持っていること」を知っていたので、生半可な気持ちで足を踏み入れてはいけないという思いもあって、なかなか口には出せませんでした。

編集部

アニメやゲームの世界にも、アイドルと同じようにファンがいて、その人たちの気持ちも理解できるからこそ、「気軽に関わってはいけない」という思いがあったんですね。

来栖さん

はい、私もアニメやゲームのファンの一人だったので。

でもアイドルは永遠にできるものではないし、いつか終わりが来てしまうことは分かっていたので、「声優にチャレンジしてみたい」という夢だけは絶やさないようにしていました。

そしてグループが解散したタイミングで、思い切ってチャレンジしてみたんです。

編集部

憧れの仕事に就いてみて、どうでしたか?

来栖さん

まず、オーディションで自分の無力さを痛感しました。

私は養成所に通っていたわけではなく、アイドルを辞めてすぐにこの世界に来たので、同期の仲間たちが知っているようなことも何も知らないし、皆が当たり前にできていることができない

ボイトレ一つとっても、皆のような滑舌で発声ができないんです。

来栖さん

アイドルとして約6年間活動してきたので、ステージに立つことだけは得意だと思っていたけれど、いざマイクの前に立つと、何をしたらいいか分からなくてパニックになってしまう。

「あぁ、フィールドが変わったら、私はこんなにも何も持っていないんだ」とすごく追い込まれました。

ただ今思えば、キャリアチェンジしてすぐにこの経験ができて良かったなと思っています。

編集部

それはなぜでしょうか?

来栖さん

もし私がここで、「何だ、できるじゃん」とあぐらをかいてしまっていたら、おそらく前に進めなかったと思うんです。

「なんでこんなにできないの?」って、自分のことを責めてばかりいたけれど、そのおかげで今こうやって、『おでかけ子ザメ』のような魅力的な作品に参加できるようになれたんだと思っています。

自分のことを認められる日は、一生来ない

編集部

来栖さんが声優にキャリアチェンジしてもうすぐ3年になりますが、この3年を振り返っていかがですか。

来栖さん

私はもともと「ハッピーな人だよね」なんて言われることも多く、基本的にはポジティブに楽しく取り組めています。

ただその反動なのか、半年に1回くらいのペースでスランプに陥ってしまうことがあって。

練習では完璧にできるのに、ステージに立つとできなくなるんです。そういう時は涙が止まらない……なんてことも多かったですね。できない自分が許せなくて

編集部

自分に対して厳しくなってしまうんですね。

来栖さん

「あれもできない、これもできない」と一気に感情が溢れ出てしまうんです。

仕事からの帰り道に、一人でボロボロ泣きながら電車に乗ることも珍しくなかったです。これは今でもたまにありますね。

編集部

アイドル時代も、自分を追い込んでしまうことはあったのでしょうか。

来栖さん

アイドルの頃は、「来栖りんにこの仕事をしてほしい」と依頼されることが多かったのですが、声優になってからは、「この仕事をやらせてほしい」と、自分から働きかけることが増えたので、「私は作品に参加させてもらっている立場なのにミスするなんてあり得ない!」って、つい自分にお説教してしまうようになって。

チャレンジするチャンスをもらっている仕事で、少しでも役に立てなくなることが怖いんですよね。この恐怖は、声優になってから感じるようになりました。

編集部

来栖さん出演の最新作である『映画 おでかけ子ザメ とかいのおともだち』は、「ぜひ来栖さんに!」とオファーがあって実現したそうですが、バイネームで依頼される声優の仕事が増えても、自分に厳しいスタンスは変わらないですか?

来栖さん

変わらないですね。アイドルの頃はまだ若かったこともあり、「私はこんなに頑張ってる!」という気持ちが先に立ってしまいがちだったんですけど、声優に転身してからは視野が広がったというか。

仕事を与えてくれるメディアがあって、キャスティングしてくださる方がいて、応援してくれるファンがいて。これって全て当たり前ではなくて感謝すべきことなんだという気付いたので、自分を甘やかさずにやってこられました。

声優になってから、一つの作品を作るためにがむしゃらに頑張っている人たちの姿を間近で見るようになって、この感覚が培われてきたように思います。

編集部

与えられるチャンスを当たり前と思わず、感謝して大切に取り組む。そんな気持ちから生まれるストイックな姿勢が来栖さんの可能性を広げ続けているんですね。

来栖さん

おそらく、私が自分のことを認めて満足することは、死ぬまでないと思います。

編集部

そんなにストイックだと、しんどくなっちゃいませんか……?

来栖さん

ファンの皆さんの声がやすらぎになっているので、頑張れます。

ファンの方が「あの作品のこの演技が良かった」と、私の演技のすごく細かい部分に対しても感想をくださるので、「見てくれているんだな」って思うと、勇気が湧いてきます。

編集部

SNSでも、来栖さんを応援するファンの声をたくさん見かけます。

来栖さん

すごくありがたいですね。ファンの方々が、「歩いてたら来栖りんちゃんの広告を見つけた!」「このキャラクター、来栖りんちゃんが声を当てる子だよね」なんて画像を送ってくれることも多くて、いつも励まされてます。

来栖さん

日常の中で自分が応援している人の姿を見かけると、嬉しいじゃないですか。

だからこそ、少しでも皆さんの目に留まるように広く活躍したいなと思っています。

「疲れたなぁ」って思いながら乗った満員電車の中で、私の姿や私が演じるキャラクターを見て「わー!」と気持ちが明るくなる。一秒だけでもそんな瞬間を作れたら、幸せだなと強く思います。

声優として一つステップを上がるきっかけになった『おでかけ子ざめ』

編集部

来栖さん出演の最新作である『映画 おでかけ子ザメ とかいのおともだち』は多くのファンがいる作品なので、来栖さんの活躍をより多くの人に届けるいい機会になったのではないでしょうか。

来栖さん

『おでかけ子ザメ』は私の友人も大好きな作品で、彼女からグッズを見せてもらったり、一緒に作品の話をしたりしていたので、以前からよく知っていました。

私は今回の映画から参加したのですが、「おでかけ子ザメの広告見たよ!」なんて声をかけてもらえることも多いですし、多くの人たちが身近に感じている作品に携わらせていただけてすごく嬉しかったです。

『映画 おでかけ子ザメ とかいのおともだち』場面画像

『おでかけ子ザメ』は、子ザメちゃんの小さな大冒険とおともだちとの出会いを描いたハートフルストーリーが人気を集める漫画作品。2025年8月22日(金)より、ファン待望の映画版が全国ロードショー。“とかい”にやってきた子ザメちゃんの新たな“おでかけ”が描かれる

編集部

共演されているキャストの方もすごく豪華ですけれど、現場はいかがでしたか?

来栖さん

誰もが知っている作品でメインキャストを務めているような大ベテランの先輩方がたくさん出演されているので、すごく緊張しました……!

『おでかけ子ザメ』はすでに多くのファンがいる作品ですし、先輩方が作り上げてきた世界観を壊さずに、「新しい色」としての役割を果たしていくのは難しかったですね。

編集部

来栖さんにとって一番チャレンジになったのは、どのような点でしたか?

来栖さん

私はそら(CV.石見舞菜香)のクラスメイトのみほという役を演じたんですが、みほはキャラクター性が強い子ではなくて、ごく普通の高校生なんです。

生活していれば誰もが出会いそうな親近感のある女の子なので、声も作りすぎず、自分の素に近い声を意識しました。

私が普段演じているのは、キャラクターっぽい声の役が多いので、逆に難しさを感じましたね。

編集部

大ベテランの先輩方と共演する中で、気付きや学びはありましたか?

来栖さん

メインの子ザメちゃんたちは、独自の言語でコミュニケーションを取るんですが、台本上での子ザメちゃんたちのセリフは全て、○△×のような記号で書かれていて。

自宅でみほのパートの練習をしながら、「これ、どうやって表現するんだろう?」と思ってたんですよね。

来栖さん

いざ現場に入ると、共演者の方たちが「こんな感じですよね」「あんな感じですよね」と、一切動揺せずに対応する姿を見て、やっぱり経験豊富な方々はすごいなぁと思いました。引き出しがたくさんあるので、焦らないんだなって

編集部

今回の作品で、来栖さんもまた引き出しが増えましたね。

来栖さん

そうですね。私は現場で急に新しいことを求められたりすると、どうしていいか分からなくなってしまうことがあるんですが、イレギュラーにも動揺せずに対応していくには、やっぱり経験を積んでいくしかないんですよね。

恐れずに何でもチャレンジしてみる大切さを実感しました

『映画 おでかけ子ザメ とかいのおともだち』場面画像
編集部

たくさんの人から推されている来栖さんですが、来栖さんが推している人やモノはありますか?

来栖さん

私、ゲームが好きなんですが、中でも韓国発の『VALORANT』っていうFPSゲームが大好きで。

いつも遊んでるんですけど、いつかこのゲームのキャラクターの声優をやってみたいなと思っています。

自分が毎日触れているコンテンツに携われたらどんなに興奮するだろうと思って。

編集部

声優になった頃は「自分が推しているものだからこそ、足を踏み入れるのが怖かった」と話していましたが、「推しているものを仕事にしたい」と思えるくらい、自信が付いてきたのかもしれませんね。

来栖さん

たしかに地に足が付いてきた感覚はあります。

キャリアチェンジしたばかりの頃は「好きなことに関わるのが怖い」気持ちがあったけれど、今では好きなことに関われると力が湧いてきます

まだまだ未熟な私ですけど、こうやって少しずつ成長していけたらいいなと思っています。

来栖りんさん

来栖りん(くるす・りん)

2016年、アイドルグループ『26時のマスカレイド』のメンバーとしてデビュー。2019年のメジャーデビューミニアルバム『ちゅるサマ!』でオリコン週間アルバムランキング1位獲得。個人としては、18年に週刊ヤングジャンプの企画「制コレ'18」でグランプリを受賞し、グラビアでも注目を集める。22年のグループ解散後、本格的に声優としての活動をスタート。主な出演に『ラブライブ!蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ』安養寺姫芽役など。その透き通る歌声と表現力で多くのファンを魅了。同年にはソロアーティストとしてもデビュー
XInstagram

取材・文/光谷麻里(編集部) 

作品情報

『映画 おでかけ子ザメ とかいのおともだち』2025年8月22日(金)全国公開

『映画 おでかけ子ザメ とかいのおともだち』ポスター
<あらすじ>
八魚駅前にやってきた子ザメちゃんは、 ベンチで悲しそうにうつむく女の子・そらに出会う。
都会の高校に転校することになったと話すそらは、 ひとりぼっちになってしまうかもしれないと落ち込んでいた。
楽しい都会の様子が載っている雑誌を見ながら、 きっと都会でも新しいお友達ができると元気づける子ザメちゃん。
そらと別れ、歩き出した子ザメちゃんの目に、 キラキラした都会のポスターが飛び込んでくる。
そのとき子ザメちゃんの上をサメの形をした雲が通り過ぎていく。
そしてその雲に誘われるように、子ザメちゃんは都会へ向かう電車に乗り込むのだった。
輝くネオン、人々が行き交うスクランブル交差点、 たくさん人たちが揺られる満員電車。
“とかい“を舞台に子ザメちゃんの小さな大冒険が始まる!

キャスト:
花澤香菜、潘めぐみ、久野美咲、梅原裕一郎、花江夏樹、宮田俊哉、高野洸、杢代和人、石見舞菜香、来栖りん ほか

原作:ペンギンボックス(「おでかけ子ザメ」/KADOKAWA「キトラ」刊)
監督:熊野千尋
コンテ・演出:熊野千尋
脚本:長嶋宏明
キャラクターデザイン:竹内あゆみ
色彩設計:西詠仔
美術監督:北島雅代
撮影監督:佐々木明美
音響監督:小泉紀介
編集:小口理菜
音響効果:武藤晶子
音響制作:dugout
音楽:藤澤慶昌
アニメーション制作:ENGI
配給:角川ANIMATION
製作:KADOKAWA

公式サイト公式X

©ペンギンボックス・KADOKAWA/おでかけ子ザメ

ワタシの未来診断(無料)性格特性やストレス度、未来の予想年収までわかる-女の転職type