花江夏樹 上田麗奈 斉藤壮馬 浪川大輔『鬼滅の刃』声優4人の「ゆずれない仕事の信念」

花江夏樹 上田麗奈 斉藤壮馬 浪川大輔『鬼滅の刃』声優4人の「ゆずれない仕事の信念」

日本中を熱狂の渦に巻き込んでいる『劇場版 鬼滅の刃 無限城編』。その大ヒットの裏側には、キャラクターに命を吹き込む声優たちの、プロフェッショナルとしての仕事があります。

そこで今回は、過去にWoman typeのインタビューに答えてくれた、竈門炭治郎役の花江夏樹さん、栗花落カナヲ役の上田麗奈さん、鋼鐵塚蛍役の浪川大輔さん、哀絶役の斉藤壮馬さんの記事をご紹介。

「完璧なプランより、現場の化学反応を信じる」「ネガティブだからこそ、最初から勝とうとしない」――。彼ら自身が演じるキャラクターの生き様とも深く共鳴する「ゆずれない仕事の信念」を紐解きます。

【花江夏樹】「『誰かのために』はもっと頑張れる」―仲間を信じる力が、最高のチームをつくる

花江夏樹

どんな逆境でも、家族や仲間への想いを力に変えて立ち上がる主人公・竈門炭治郎。彼に命を吹き込む花江夏樹さんもまた、「誰かのために」という想いを仕事の原動力にしていました。

花江さん

昔は「自分のために」と頑張っていた感覚が強かったんです。でも今は、「人のために」という気持ちで仕事ができるようになりました。

自分のためにできることって、どこか限界がある気がしていて。でも、「誰かのために」って思うと、もっと視野が広がるし、より頑張れるなと感じています。

このスタンスは、彼の仕事術にも表れています。花江さんが大切にするのは、個人の完璧なプランよりも、現場での共演者との掛け合いで生まれる「化学反応」。

花江さん

家で自分なりに考えてきた「こう演じるといいんじゃないか」といったプランを、現場での共演者との掛け合いを経て、より良いものにできたと感じられる時にやりがいを感じますし、それが「いい仕事」なのかなって感じますね。

花江夏樹「完璧な準備より、現場の化学反応を信じる」トップ声優のチームで成果を出す仕事術 https://woman-type.jp/wt/feature/41270/
花江夏樹「完璧な準備より、現場の化学反応を信じる」トップ声優のチームで成果を出す仕事術

【上田麗奈】「良くて引き分けでいい」―“弱さ”を受け入れることが、挑戦への第一歩

上田麗奈さん

自分の意志で行動することができなかった栗花落カナヲが、炭治郎との出会いを経て、心の声に従い成長していく姿に胸を打たれた人も多いはず。そんな彼女を演じる上田麗奈さんも、実は「すごくネガティブで心配性」だと明かします。

大きなプレッシャーと闘いながら、彼女が挑戦を続けられるのはなぜなのでしょうか。

上田さん

ネガティブな自分が顔を出す瞬間も、もちろんあります。

気負いすぎてしまう自分の性格をよく理解しているからこそ、「良くて引き分け」「勝とうとしない」のも大事かなって。

だって、いつも「完璧にやろう」と思いすぎていると、うまくいかなかった時にヘコんじゃうし、疲れちゃうじゃないですか。調子が悪い時は誰でもありますから。

「私なんて…」と思ってしまう自分の弱さを受け入れた上で、あえて挑戦のハードルを自分で下げてあげる。そのしなやかな思考が、彼女を前進させていました。

上田さん

最初からうまくできなくて当たり前! と思えば挑戦のハードルも下がります。

完璧を求めてそもそもチャレンジしないよりも、自分の気持ちを楽にしてあげてチャレンジできた方がいいですよね。

【声優・アーティスト 上田麗奈】ネガティブで心配性な私がプレッシャーと闘えるワケ https://woman-type.jp/wt/feature/35689/
【声優・アーティスト 上田麗奈】ネガティブで心配性な私がプレッシャーと闘えるワケ

【浪川大輔】「壁は乗り越えなくていい」―挫折だらけの道で見つけた、自分だけの突破口

折れた日輪刀を手に、猪突猛進で炭治郎を追いかける鋼鐵塚蛍。この強烈なキャラクターを演じる浪川大輔さんは、意外にも「役者一本では食べていけず、会社員も経験した」という苦労人。

芸歴40年のトップランナーは、キャリアの壁をどう乗り越えてきたのでしょうか。

浪川さん

目の前に高い壁が立ちはだかった時、「どうやったらこの壁を越えられるか」って考える人は多いと思うんですけど、別に越えなくてもいいと思うんです。

もしかしたらその壁は、下に穴が空いているかもしれないし、横幅もそんなに広くないかもしれない。

それなら、くぐったっていいし、横から回って行ったっていい。それすらも大変なら車に乗って行こうが、ヘリコプターに乗って行こうが、向こう側に行ければ何でもいいですよね。壁の向こう側への行き方は別にキレイじゃなくていいと思います。

スポーツ選手の夢を怪我で断たれ、役者の道でも挫折を経験。しかし、その度に浪川さんは真正面から壁を壊そうとするのではなく、「かたちを変えてでも、今できること」を続けてきました。

浪川さん

これらは全部、進んではいるけれど、壁は乗り越えてないんですよね。何一つ成し遂げていない。ただ、何とかして壁の向こう側に行こうとはしていた。

最終的に壁の向こう側に行けたかどうかではなく、たどり着くために頑張り続ける過程がかっこいいといいなと思います。

【浪川大輔】役者一本で食べていけず会社員に…彼が声優界のトップランナーに返り咲いたワケ https://woman-type.jp/wt/feature/40674/
【浪川大輔】役者一本で食べていけず会社員に…彼が声優界のトップランナーに返り咲いたワケ

【斉藤壮馬】「他人のものさしを信じてみる」―固定観念を壊し、進化し続ける思考法

半天狗から分裂した“喜怒哀楽”の鬼の一人、「哀」を司る哀絶。その独特の悲哀に満ちたキャラクターを見事に表現したのが、斉藤壮馬さんです。彼は、エンタメ業界の目まぐるしい変化に対応し、進化し続けるために、ある信念を貫いていました。

斉藤さん

「他人のものさしを信じる」ことです。

例えば、僕はヒプマイで夢野 幻太郎というキャラクターを演じているのですが、新曲が届いた時に、「幻太郎はこんなことはしないのでは」と感じたとしても、自分の固定観念だけで決めつけるのではなく、「幻太郎はこれもありえるんだ」って思ってみるようにしています。

自分のやり方や解釈に固執するのではなく、あえて外部の基準や他者の意見を受け入れてみる。その柔軟性が、彼の表現の幅を広げてきたのです。

斉藤さん

ただ、何でもかんでも「外の基準」を取り入れるわけではなくて、「やる」「やらない」の判断は、自分のワクワクに従うようにしています。

僕の好きな漫画で『ホイッスル』っていう作品があるんですけど、その中に「どうやったらなれるのかではなくて、なぜなりたかったかを考えなさい」っていうセリフがあって。

仕事をしているとつい「どうすればうまくいくのか」という思考になりがちなんですけど、そこで立ち止まって、「そもそもなぜやりたいのか」っていう気持ちを常に見失わないようにしたいなと思っています。

【斉藤壮馬】声優歴15年の彼が、エンタメ業界の新境地を切り開くヒプマイと共に進化し続けるワケ https://woman-type.jp/wt/feature/38426/
【斉藤壮馬】声優歴15年の彼が、エンタメ業界の新境地を切り開くヒプマイと共に進化し続けるワケ