
20代で“年上含むメンバー全員男性”のチームリーダーになった女性が「今が一番幸せ」と語るワケ【LINEヤフー】
政府は女性管理職の割合を2030年度までに30%に引き上げるという目標を掲げているが、それに対して、現状は12.7%。実際には、「打診されても、管理職にはなりたくない」という女性が少なくない。
そこでご紹介したいのが、20代にして年上を含む男性のみのチームのリーダーに抜擢された、LINEヤフーの平賀郁子さんのエピソードだ。
「管理職になった今が一番幸福度が高い」と話す彼女に、その言葉の真意を聞いた。
※本記事は『働くわたしの仕事地図』(女の転職type編集長 小林 佳代子著・ダイヤモンド社)の一部を転載しております。

LINEヤフー株式会社
コマースカンパニーSC統括本部 開発本部 サービス開発部 SC開発3チーム
リーダー 平賀郁子さん
男性のみの部署で、半年後にリーダーに抜擢!
「自分で作ったアプリで誰かの生活が便利になったり、豊かになったりするところを見てみたい」
そんな気持ちでエンジニアとして働くことを選んだ平賀郁子さん。大学と大学院で情報科学を学びながらアプリの制作会社でインターンに励み、2020年に満を持してLINE社(現LINEヤフー株式会社)に入社した。
最初は、ライブ配信プラットフォームのLINE LIVEに配属されました。
新卒は私だけで、一人1案件持たなければならなかったので大変でしたね。少しずつ大きな案件を動かせるようになった入社3年目にLINE LIVEがサービス終了となってチームも解散。私はLINEギフトの部署に異動することになりました。
LINEギフトは直接会えなくてもLINEで簡単にプレゼントを贈り合えるサービス。新しい価値、新しい体験を提供するサービスに関われるという意味で、結果的にはとてもうれしい異動になりました。
「LINEギフト」のサービス開発本部は、約25人が3つのチームに分かれており、平賀さんを除く全員が男性だ。
そんな環境のなか、異動から約半年後に平賀さんはチームリーダーに抜擢された。
私は前々から、いつか管理職になりたいと思っていて、部長との1on1でもそう伝えていました。
なので、私自身の評価が高かったというより、「リーダーになるにはまだ実力が足りないけれど、本人の意志や今後の可能性もくんで任せてみよう」ということで抜擢してくださったのだと思います。
ちょうどポストが空いたというタイミングではあったのですが、上層部にとってはかなり勇気のいる選択だったのではないでしょうか。
現在、部下は年上2人を含めた男性6人。一般的にこうした状況では、管理職になることを避ける女性が多いのかもしれません。
年上部下の方も、私の立場を理解してフラットに話してくださいます。私が誰かに注意することも、誰かから嫌みを言われることも全くないですね。
弊社は院卒や高専卒が入り交じっているので、入社年と年齢がバラバラなのです。だから、相手が誰であれ、丁寧に接するという文化が根づいているのかもしれません。

スキル×適性×やりたいこと=管理職だった
平賀さんが管理職に就きたかったのは、昇進や昇給を目指したからでも、自分が他のメンバーより優れていると思ったからでもない。
「自分はどんな仕事をしていきたいのか」というビジョンの先にあったのが、管理職という“役割”だった。
そもそも私は、サービスを通じて人々の生活を豊かにしたいという思いでこの仕事を選びました。
現在担当するプロダクトでは、案件レベルでは企画とエンジニアが協力して開発をしていますが、「もっと大きな決定に関わっていきたい」という思いがだんだん強くなって。
モノづくりが好きなのでプログラミング自体は好きですが、ユーザーにサービスを提供するために、チームとして私が必ずコーディングをしなければならないとは思っていないです。
仕事を進めていくうえで人を巻き込みながらプロジェクトを推進していくことが得意だということにも気づきました。
そういう意味で、私のスキルと適性、そしてやりたいことをかけ合わせると、“エンジニア職でリーダー”がベストだと思ったんです。

「管理職と技術職は、そもそも別のスキルをもつ」と定義する当時のLINE社独自の考え方も平賀さんの背中を押した。
評価基準として使うスキルレベル表というものがあるのですが、管理職と技術職の表は別のものです。
だから“管理職はみんなよりエラい”ということではないし、エンジニアのままでレベルを上げていけば待遇面で管理職を超えることもありえます。
リーダーに向いている人は管理職を目指せばいいし、エンジニアとしてスペシャリストになりたければ管理職になる必要はない。そもそも、これら2つは別の役割だという考え方なんです。
管理職の大きな役割といえば、部下の人事評価がある。平賀さんもすでに2回の人事評価を経験した。
自分より上のレベルの方を評価するのに、不安がなかったといえばうそになります。
でも、部長が相談に乗ってくれることもありましたし、評価がずれていないかどうかを評価会議で話し合ったりすることもできたので安心して臨めました。
リーダーをサポートする体制が整っているのは助かりますね。

仕事も働き方も、自分ならではの道を
将来的に、今のポジションを上り詰めてCTO(最高技術責任者)を目指す、といったことは一切考えていないという平賀さん。
大切にしているのは自分自身のビジョンの実現だ。
よいサービスを社会に届けたい、という思いが私の原点なので、B to C(消費者に直接届けられる仕事)であれば、ウェブサービスでなくても、どんな仕事でもいいのかもしれません。
いずれにせよ、より広い視野を持てるようになることが大切ですね。
また、30代を迎えればライフステージが変化する可能性もある。平賀さんはロールモデルが身近に欲しいと言いますが、エンジニア職は男性が多いため、参考にできる人は多くない。
育休から復帰したエンジニアの女性が他部署にはいます。また、エンジニアでリーダー職を務める女性も全社的にはいますが、私の近くにはいません。
だから、丸ごと参考にできるようなロールモデルは多くは存在しませんが、他の部署では多数の女性管理職の方々が活躍されていますし、いろいろな人の働き方をかけ合わせて自分なりの道を探していこうと思っています。
「女性管理職」というキーワードが重要性を増しつつある昨今。打診されても、自信のなさや育児との両立に悩んで断る女性がいるのが現状だが、その点、平賀さんは軽やかだ。
まずはやってみようという感じでしたね。やってみてダメなら謝って、その失敗を次にしっかり活かせばいい。最近は、どんなこともそんなスタンスでいいんじゃないかな、と思っています。


【『働くわたしの仕事地図』著者】
女の転職type 編集長 小林 佳代子
東京女子大学卒業後、新卒で(株)キャリアデザインセンターに入社。転職情報誌及び転職サイト「type」、「女の転職type」の求人広告制作に携わる制作部に配属され、1,000社以上の企業の求人広告制作に携わる。その後、新卒採用担当、働く女性のためのWebマガジン「Woman type」編集長を経て、2018年「女の転職type」編集長に就任。20年にわたり、多くの働く女性の、迷いや悩みを広い視点で捉えつつ、常に深く寄り添い続けてきた。私生活では二男の母として奮闘中