
「入社して一年経っても活躍できない…」転職すべき?もう少し頑張るべき?ベストな選択をするための準備【十束おとは】
20代~30代の女性が抱える仕事・キャリア・転職のお悩みに、その道のプロが本音でアドバイス! 「私らしい働き方」の発見や「いい転職」をかなえるためのヒントを提供します
今回寄せられたのは、「やりたかった仕事に就けたのに、思うようなパフォーマンスを発揮できない」という女性のお悩み。
転職すべきか、もう少し頑張るべきか……。判断しかねている女性のお悩みに答えてくれたのは、メンタル心理カウンセラーやメンタルヘルス・マネジメント検定、産業カウンセラーの資格を持ち、キャリアコンサルタントとして女性やアイドルのキャリア支援を行っている十束おとはさん。
身の振り方を決める前にやるべき準備について、解説してもらいました。

十束 おとは(とつか・おとは)さん
アイドルグループ「フィロソフィーのダンス」を2022年11月に卒業。会社員を経て、現在はキャリアコンサルタントとして芸能人のセカンドキャリアや学生・女性のキャリア支援にも取り組む。キャリアコンサルタント、メンタル心理カウンセラー、メンタルヘルス・マネジメント検定、産業カウンセラーを取得。ゲーム・アニメ・漫画・映画といったサブカルチャーにも精通し、イベントMC・タレント・ライターなどパラレルキャリアを邁進中■X/Instagram
お悩み:仕事でパフォーマンスが発揮できずつらい……転職すべき?もう少し頑張るべき?
転職して、ずっとやりたかった仕事に就くことができたのですが、一年経っても思うようなパフォーマンスを上げることができず、同僚に迷惑ばかりかけてしまい、毎朝仕事に行くのがつらいです。
転職したい気持ちもあるのですが、せっかく就くことができた憧れの仕事ですし、安易に失敗体験にしてしまうのが怖いです。
転職すべきか、もうちょっと頑張るべきかの線引きはどのように考えたらいいでしょうか。
ご相談いただき、ありがとうございます。
ずっとやりたかったお仕事をするという夢を叶えたもののご自身の思うようなパフォーマンスを上げることができず、おつらいお気持ちなのですね。
「せっかく就くことができた」というお言葉の中に相談者さんの努力の道のりを感じました。
きっとこの文に書ききれないほどたくさんのお気持ちがあると思うので、ここだけを見てお答えするのは心苦しいのですが、さまざまな葛藤の渦中にいらっしゃる相談者さんが今後を考える上でヒントとなる言葉を残せるよう、心を込めてお答えいたします。
転職するのか、今の職場でもう少し頑張ってみるのか。相談者さんにベストな選択をしていただくために私からご提案するのは、下記の2ステップです。
STEP1.現状を書き出し、整理してみよう
まず、一歩踏み出す前に現在の状況や気持ちを整理してみることをおすすめします。
「思うようなパフォーマンスを上げられない」「同僚に迷惑をかける」「つらい」という感覚は、日々の中でどのような時に感じるのかを改めて振り返ることにより、自分が今抱えている悩みや課題をより深く知ることができます。
・どの業務で思うようにパフォーマンスが上げられない、つらいと感じるのか
・業務量・環境・スキル面…どこが一番気がかりなのか
【人間関係】
・同僚との関係性はどうか
・周囲からのサポート体制はどうか
・迷惑をかけていると感じるのは、自己評価なのか、それとも第三者から直接何かを言われたのか
・そもそも自分はどんな人間関係で仕事をするのが好きなのか
【自分の性格・適性】
・どんな業務をしているときに目の前の仕事に向いていると感じるか
・業務をする中でどんな気持ちになることがあるか
・自分はどのようなタイプなのか(人と比べる/完璧主義/マイペース など)
【憧れとのギャップ】
・憧れていた仕事のイメージと現実の違いはどこか(良い点と悪い点どちらも挙げてみる)
つらいときは無理せず休んでいただきたいので、お休みの日や時間と気持ちの余裕があるときにぜひ。
自己理解が深まり、絡まりあっている現在の悩みが少しほどける感覚があるかもしれません。
なぜ、身の振り方を考える前に自分の状況や気持ちを整理した方が良いかというと、もしかしたら相談者さんが、出来事を事実以上に厳しく受け止めてしまっている可能性があるかもしれないと思ったためです。
【事実を歪めずに受け止めるために「書き出す」ことが有効な理由】
キャリア理論の1つにアルバート・エリスが1955年に提唱したABC理論(ABCDE理論)という概念があります。
Aは【出来事・事実】、Bは【信念や受け取り方】、Cは【結果や行動】を表しており、全ての物事はA→Cと直接つながるわけではなく、その間に必ずB(人それぞれの感じ方や解釈)が存在します。
今回のお悩みの1つに当てはめると、

となります。
物事の受け取り方や感じ方は人それぞれですが、時に「~しなくてはならない、~すべき、~されてるに違いない」という非合理な信念が浮かんでしまうことがあり、認知の歪みとなって事実とは異なる解釈をしてしまうことがあります。
どんな人でも少なからずそんな気持ちになることはありますが、一度立ち止まって今の状況や事実を1つずつ振り返り、そう思うに至った背景を整理することで「~しなければならないと思っているけれど、どうしてだっけ……」「あれ、あの時はこう受け取っていたけどもしかしたら違っていたかも……」と自分の認知の歪みに気がつくことがあるかもしれません。
その気付きがあるとA【出来事】の受け取り方が変わり、C【結果や行動】も変わると言われています。
ぜひ、今の自分の気持ちや状況を確認するために、試してみてくださいね。

STEP2.線引きを考えてみよう
STEP1で【事実】と【受け取り方】のギャップを埋めて、何がつらいのかを整理した上で、自分の現在地と未来について考えてみましょう。
必要であれば、キャリア・プランシートを記入して可視化するのも良いかもしれません。
>厚生労働省が用意するキャリア・プランシートのひな形はこちら
まず、前提として心身ともに健康でいられないほどつらい場合は、現在の環境から離れることをおすすめします。
まだそこまでではない場合は、記入した自分の大切な価値観や、将来取り組みたい仕事や働き方を参考に、今後の自分の航路を自由に描いてみてはいかがでしょうか。
STEP1で整理した結果、今の職場で頑張れそうだと思えて、尚且つ今の仕事が、自分の理想とする将来に繋がりそうであれば、もう少し頑張ってみてもいいかもしれません。
もし、やっぱり心理的負担が大きいと感じたり、自分の理想のキャリアプランとマッチしなそうだったりするようであれば、転職という選択をするのも良いかと思います。

現在のお仕事を辞めてしまうことを失敗体験と表現されているのですが、私はそうは感じません。
一歩踏み出し、憧れの仕事にチャレンジしたことで、たくさんの学びを得たはずです。理想とは違う点もあったかもしれませんが、日々の軌跡は経験値としてしっかりと相談者さんの糧になっているはずです。
私もたくさん挑戦して、挫折して、今がありますが意外と失敗やピンチから学ぶことがたくさんあります。
どんな決断をしたとしても、相談者さんの経験がきっと支えてくれるはずです。応援しています。
『働く女性の転職Q&A』の過去記事一覧はこちら
>> http://woman-type.jp/wt/feature/category/work/consultation/をクリック