05 JUN/2024

元フィロソフィーのダンス・十束おとはがアイドルからキャリアコンサルタントへ転身。「“諦める”以外の選択肢はきっとある」

十束さん

2022年11月、アイドルとしての7年のキャリアに幕を閉じた、元『フィロソフィーのダンス』の十束おとはさん。

『フィロソフィーのダンス』は20年にメジャーデビューを果たしたアイドルグループ。ファーストシングルはオリコン2位、4thシングルがアニメ映画の主題歌になるなど、さらに上を目指せる時期だったにも関わらず、「戦力でいられるうちに卒業したい」と、グループを潔く卒業した。

卒業から1年半、会社員とタレントの二足のわらじで活動してきたが、24年4月にキャリアコンサルタントの国家資格を取得。資格を生かし、今後は「若者と女性のキャリア支援」に尽力していくという。

アイドルからキャリアコンサルタントへ。大きく別の道にかじを切った彼女のキャリア支援への思いを聞いていくと、やりたいことに一歩を踏み出すヒントが見えてきた。

「アイドルを辞めたことに後悔はありません」

十束さん

十束 おとは(とつか・おとは)さん

アイドルグループ「フィロソフィーのダンス」を2022年11月に卒業。現在は、エンタメ企業のeスポーツ事業の裏方スタッフとして従事しながら、ゲーマータレント、MC、ライターとして活動中。キャリアコンサルタント、メンタル心理カウンセラー、メンタルヘルス・マネジメント検定を取得。今後は資格を生かして、若者や女性のキャリア支援に力を注いでいく。多くの働く女性からの質問が寄せられるポッドキャスト「十束おとはのハピゆる‐明日がもっとハッピーになるゆるゆる相談室‐」は毎週木曜日更新■XInstagram

芸能界とは180度違う、会社員としての一からのスタートは、タレント業との調整、社内のルールなどスムーズに行かないことだらけで、「最初は大変でした」とおとはさん。

アイドルとして積み上げてきたキャリアをいったんリセットして始めることへの不安ももちろんあった。だが、今は「アイドルを辞めたことに後悔はありません」ときっぱり言い切る。

おとはさん

振り返ってみると楽しかったです。表の活動でも裏方の活動でも、新しい挑戦ができた1年半でした。

今後のキャリアにとってむだなことは一つもないと感じているので、「今の私で良かった」と心から言えます

思い出は美化されがちですが(笑)、アイドルとして経験したことは、美しくすてきな思い出として私の中に残っていくのだろうなと。

キャリアコンサルタントという職業を知ったのは、グループに所属していた頃に担当していた、就活生を応援するラジオ番組。

彼女自身、大学卒業後に就職した会社が合わずにすぐに辞めて引きこもりになるという、日陰の道を歩んでいた時期があった。

おとはさん

キャリアコンサルタントという仕事を知った時、学んでみたいと思うと同時に昔つまずいていた時に相談してみたかったなと感じました。

私は引きこもりからしばらくしてアイドルになり、異業種からの転職も経験しています。

さまざまな失敗や挫折を含めたあらゆる経験をした今だからこそ誰かの役に立てるのならと、キャリアコンサルタントを目指そうと思いました。

そして、新たな目標を掲げて仕事と両立しながら学校に通い、この春、国家資格キャリアコンサルタントの資格を取得した。

自身のSNS上で「キャリアコンサルタントの資格取得を目指しています」と宣言したことが、モチベーションの維持につながったという。

おとはさん

思ったよりも覚えることが多いうえに、タレントと会社の仕事との両立で心が折れてしまいそうな瞬間が何度かありました。

ひっそりと誰にも告げずに勉強していたら、途中で諦めていたかもしれません。あえて自分を崖から突き落とすつもりで、言ったからには「絶対に取る!」と思っていました。

時代が変わっても不変な「女性の悩み」を解消したい

十束さん

より良いキャリアコンサルタントを目指し、この1年半の間に、メンタル心理カウンセラーとメンタルヘルス・マネジメント検定の資格も取得。

SNSで「何か一緒にやりたい人」を「ゆる募」してみたら、多くの反響があったという。

おとはさん

とある事務所さんからのご依頼で、アイドルやタレントさんのキャリアとメンタルケアの支援をさせていただくことになりました。

心と身体は切っても切り離せないものなので、資格を生かして毎日を健やかに過ごしながら未来を描いていくお手伝いをしていきたいです。

十束さん

大学時代に就活につまずいたこと、アイドル、会社員と、一人の働く女性として経験してきた全てを、明日への活力へ変えてきた。だからこそ、「若者や同世代の女性の支援がしたい」という思いは強い。

おとはさん

女性の20代から30代は、一番仕事に悩む時期だと思うんです。時代が変わっても、年代によって悩むことは決まっているというか。

悩みは普遍的なのに時代の流れは変わっているので、そこでみんなグラグラしちゃうと思っていて。

一気に解決することは難しいかもしれませんが、お話を伺いながら利用できる制度やサービスなどの情報を提供しつつ、その人にとっての良い形を共に探していきたいと思っています。

正解はない。自分の軸があれば、なんだっていい

十束さん

女性はどうしても出産によって、働き方が変わりやすい。

おとはさん自身も、いつかは出産を経験するかもしれないと思いながら活動を続けているが、「正直、このままの状況だとしんどい」と感じる部分は多いという。

おとはさん

本来、女性の働き方やキャリアに正解はないと思うんです。

国が女性活躍を推進していることもあって頑張る女性が美化されることも多いけど、「バリバリ働くことが素晴らしい」といった風潮になりすぎるのも、私はあまり好きではなくて。

自分の軸があれば、キャリア志向じゃなくてもいいし、「推し活のために働く」とか、「私はゆるく最低限で」とかも全然アリですよね

十束さん

「本当は別にやりたいことがあるけど、今までのキャリアを捨てる勇気が出ない」

「転職をしたいけど、将来仕事と子育てを両立するのであれば、今の会社で働き続けた方がいいかもしれない」

そんな考え方から、自分の望む生き方に二の足を踏んでしまう人もいる。そんな人に、おとはさんは「諦めないでほしい」と力強いメッセージを送った。

おとはさん

「諦める」という言葉があまり出てきてほしくないんです。

人生はタイミング次第。大きな一歩が難しければ小さな一歩を。大きく踏み出せそうなら踏み出してみて、合わなかったら辞めてもいい。ひとまず相談してみて、自分に合っている道を選ぶ方法もあると思います。

「諦める」以外の方法で、ライフスタイルに合わせたキャリア形成がきっとできるはずです!

十

培ってきたキャリアをいったんリセットして、前に進んだおとはさん。自分のことを「実験台」と言い、サンプルとして見てほしいとほほ笑む。

おとはさん

私もいろいろなことを辞めてここまで来ました。

私が挑戦してみてダメだったら「ダメだなー」と思ってくれていいし、成功したら参考にしてもらえればいい。「こういう生き方もあるんだな」と思っていただけたらうれしいです。

回り道をしたとしても、最終的にたどり着けばいいじゃないですか。

取材・文・編集/石本真樹(編集部) 撮影/渡辺美知子