“不安定”を恐れなくていい──2000人の支援を行ってきた第一人者が明かす、失敗しないフリーランスの始め方【Morning Me 佐藤麻美】

“不安定”を恐れなくていい──2000人の支援を行ってきた第一人者が明かす、失敗しないフリーランスの始め方【Morning Me 佐藤麻美】

「ライフステージが変わっても、プライベートと両立しながら働きたい」

そんな想いを持つ女性にとって、時間や場所に縛られず、高収入も目指せるフリーランスは、魅力的な選択肢の一つだ。

一方で、雇用や収入の安定を手放すことに足がすくみ、なかなか一歩を踏み出せずにいる人も多いのではないだろうか。

「フリーランスを、そんなに怖がらなくていい」と語るのは、フリーランスと企業のマッチングサービス『Morning Me』を運営する佐藤麻美さん。

フリーランスがまだ一般的でなかった頃から自身もその道を選び、設立13年になる株式会社MorningMeでは2000人以上のフリーランサーを支援してきた。

彼女が言う「怖がらなくていい」の真意とは何か。そして、フリーランスデビューで失敗しないために大切なこととは──。佐藤さんに話を聞いた。

佐藤麻美さん

株式会社Morning Me
代表取締役 佐藤麻美さん

フェリス女学院大学卒業後、株式会社テイクアンドギヴ・ニーズに入社。ウエディングプランナーとして入社1年目で優秀個人賞を受賞。その後、化粧品会社、ブライダル企業を経て、2013年12月、株式会社Morning Meを設立。2019年、一般社団法人日本フリーランス・複業協会を発足。フリーランスや複業という働き方の価値を上げる取り組みを実施。現在はフリーランサー教育プラットフォーム製作と並行してSNSインフルエンサーと企業のマッチングシステムの構築を手掛ける。JIPCC認定キャリア・コンサルタント/プロフェッショナル・キャリアカウンセラーを保有 ■Instagram

自分で稼がなければ、思い通りに生きることはできない

佐藤さんがフリーランスで働く女性を支援したいと考えるようになったルーツをたどると、幼少期にまでさかのぼる。

「誰のおかげで飯を食えているんだ」と事あるごとに口にする父。「お父さんがいるから食べていけるのよ」と口を添える母。

そんな両親の姿を見て、次第に疑問を持つようになっていった。

佐藤さん

母もやりたいことをやったらいいのに、何で父の言いなりになってるんだろうって思っていて。

母も私も、父の言う通りにしなければならない。それは、稼いでいないから。

「そうか、お金を稼がないと好きなことができないんだ」というのを幼心に実感していました。

インタビューに答える、佐藤麻美さん

稼げば好きなことができるなら、稼ぐ力を身に付ければいい。

そんな考えを持ち大学生となった佐藤さんだが、就職活動の時期を迎えるも、大手・中小・ベンチャー問わず、いずれにも魅力を感じなかった。

当時はまだ、どこに入社したとしても、女性は結婚・出産を機にスキルを手放してしまう人が多かったからだ。

佐藤さん

せっかくスキルを身に付けても、結婚したら仕事を辞めて、これまで培った経験が活かせない分野で、雇用形態もパートに切り替え、収入も大きく減る……。それだけは絶対に避けたいと思いました。

でも、いつかは結婚もしたいし、子どもも欲しい。ライフステージが変わっても、培ったスキルを活かして稼ぎながらプライベートと両立できるのは、フリーランスしかないと思いました。

当時はまだ今ほどフリーランスの働き方を選択する人は一般的ではなく、女性のロールモデルもほとんどいなかった。

それでも、佐藤さんがフリーランスの働き方を選んだ背景には、自由に生きられる女性を増やしたいという強い思いがあった。

佐藤さん

結婚・出産と同時に稼ぐ力を手放してしまう女性たちに、「短時間でも高収入を得られる働き方」を選択肢に入れてほしくて

まずは自分がロールモデルとなり、いずれはフリーランスで働く人たちが集まり支え合える場所をつくりたい。大学時代からそんなことを考えていました。

インタビューに答える、佐藤麻美さん

そんな佐藤さんが、新卒で入社したのは、ブライダル専門会社。ウエディングプランナーとしての経験を積みながら、独立のための準備を着々と進めていった。

そして、フリーランスに転身した後の2013年、かつてから温めていたフリーランス支援を担う企業「Morning Me」を設立。

「女性が自分の力で稼ぎ、選択肢を持って生きられる社会をつくりたい」。

その想いは、起業後、2000人を超えるフリーランサーと向き合う中で、より強まっていった。

人付き合いも仕事選びも、最初から“選ぼうとしない”

数多くのフリーランサーを支援する中で、佐藤さんは「雇用や収入の不安定さ」を理由に立ち止まってしまう人たちを、何度も見てきた。

しかし佐藤さんは、「人付き合いが苦手でなければ大丈夫」と話す。

佐藤さん

フリーランスは、一つの企業から仕事をもらうわけではありません。

人との繋がりを増やせば増やすほど、働く場所も増えていきます

確かに正社員は、身を置く場所の保障がありますが、フリーランスはそれがない代わりに、自分次第でいくらでも増やせるんです。

人との繋がりを増やすことは、企業で働いていてもできることなので、社員でいるうちから意識して準備しておけるといいですね。

佐藤さん自身、仕事や交流会で会った人とは必ず自分から二回目に会う約束を取り付けていたという。

一見仕事と関係なさそうな人でも、そこからさらに人がつながり、知り合いがどんどん増えていく。

この人脈こそが、フリーランスになった後の自分を守る“盾”となる。

佐藤さん

女性がフリーランスとして働く上でのもう一つの不安が、出産後に戻る場所がなくなることだと思います。

こういう時に「戻る場所」をつくってくれるのも人との繋がりです。

仕事に直結するかどうかを考えずに人との繋がりを大切にしておくと、出産・育児期間を経て久しぶりに連絡をしたとしても「下心があって連絡してきたのかな?」と思われることなく、「会おうよ!」と言ってもらえる関係性を築けます。

カメラに向かってポーズを取る、佐藤麻美さん

佐藤さんが運営するワインバー。人脈を大切にしてきた佐藤さんのお店には、たくさんの知り合いが顔を出してくれるという

昨年、出産し母となった佐藤さん。自身の強みを活かした仕事をしながら、家庭も大切にする──。かつて願っていたワークライフバランスを叶えられたのも、人との繋がりを大切にしてきたからに他ならない。

人と繋がることが苦ではないことに加え、自分は何ができるのか、企業から必要としてもらえるスキルは何なのかを俯瞰できる人は、ぜひ躊躇せずにフリーランスに挑戦して欲しいと語る佐藤さん。

しかし、自分の強みやスキルが本当に求められているものなのか、自信を持てない人もいるだろう。

自身を安く見積もりすぎて「忙しいのに思ったほど稼げない」という状況に陥ってしまう人は、「自分のやりたい仕事」だけを選んでしまっている場合が多いという。

佐藤さん

フリーランスの仕事選びで大切なのは、「やりたいこと・できること・求められること」の三つが重なり合う部分から選ぶことです。

ところが「やりたいこと」は人気のある仕事であることが多く、競争率が上がる分、価格が下がってしまう。

だからこそ、最初のうちは「やりたいこと」にとらわれすぎずに、「できること・求められること」に比重を置くといいと思います。

佐藤さんのアドバイスは、自身の経験に裏打ちされたものだ。

佐藤さんはフリーランスとして働き始める前、正社員のウエディングプランナーとして働いていた。

当時、同僚のウエディングプランナーの多くが営業活動に嫌悪感や苦手意識を抱いていたのに対し、自分はそれほど負担を感じずに営業ができることに気付いた。

佐藤さん

私はどちらかというと、プランニングよりも営業の方が好きだったんです。

この時に、「みんながやりたがらなくて、自分ができること」こそが「求められること」であり、売れるスキルなんだと思いました。

カメラに向かってポーズを取る佐藤麻美さん

自分ができることの中で「求められること」が何か分からない時は、あえて女性が少ない環境に飛び込む戦略も有効だという。

佐藤さん

以前キャリアカウンセラーの資格を活かして、施工管理会社の採用の仕事をしていたことがあるのですが、建設業界は女性が非常に少ないため、「女性である」というだけで一定の価値がありました。

競争相手が少ない分野を狙うだけで、良い条件を引き出せることもあるので、まずは選り好みせずにいろんな仕事にチャレンジしてみるといいと思います。やってみると、思わぬ「好き」も見つかるかもしれません。

どうしても「やりたいこと」があり、それが競争率の高いものである場合は、まずは全体の1~2割に絞ってチャレンジしてみるといいと、佐藤さんは続ける。残りの8割は、気が向かないことでも「求められること」をやってみる。

人脈づくりも仕事選びも、選り好みをせずに「まずはやってみる」ことが、フリーランスデビューで失敗しないための心得だと言えるだろう。

フリーランスだって、チームで助け合えばいい

佐藤さんは、多くの女性たちが不安を抱える「不安定さ」は、実はメリットにもなり得ると話す。

佐藤さん

不安定だと、その状態を解消しようと思って努力しますよね。逆に、人は安定していると動けなくなるんです。

不安定さに不安を感じると、必然的に成長していく。そして20代のうちに成長すればするほど、30代、40代になってからの選択肢が増えていきます。選択肢が多ければ多いほど、キャリアは安定しますよね。

佐藤さん

つまり、20代のうちにあえて厳しい環境に身を置くことが、将来の「安定」につながるんです。

若さという限られた資源を使って将来の選択肢を増やす上で、フリーランスは最適な選択だと思いますね。いい意味で自分を追い込めますから。

インタビューに答える佐藤麻美さん

しかし、女性がフリーランスで働く際に抱く不安の中で、なかなかカバーしにくいものもある。「代打がいない」ことだ。

出産後であれば、子どもの体調不良などで、急に仕事を休まなければならない事態も起こり得る。

佐藤さん自身も、助けてくれる人が誰もいない怖さを実感したことがあるという。

もし仕事に穴をあけて、企業に迷惑をかけてしまったらどうしよう……。同じような不安を抱えるフリーランサー同士で支え合える仕組みをつくれないだろうか。そんな考えが、佐藤さんの起業を後押しした。

佐藤さん

フリーランスのデメリットを補うには、フリーランスがチームになればいいと思ったんです。

そうすれば困ったときに助け合えるだけでなく、仕事を分け合うこともできますよね。

「代打がいない」恐怖心から逃れられますし、企業にとっても安心して発注できるメリットがあります。

佐藤さんの立てた旗のもと、フリーランスのマッチングサービス『Morning Me』には多くのフリーランスたちが集まった。その6割ほどが女性だというが、特にどのような点が評価されているのだろうか。

佐藤さん

一つは、不測の事態が起きた時に、フリーランサー同士でサポートし合える安心感ですね。

もう一つは、ご登録いただいたフリーランサーに代わって、当社が企業との条件交渉を行うこと。例えば報酬形態についても、一律で良いのか、成功報酬が良いのかは人によって異なるため、個人の希望に応じた契約内容を作成しています。

その他にも、労働時間や業務内容に関する細かい擦り合わせも代行するので、安心してスタートできる点を評価いただいています。

また、未経験の分野にチャレンジしたい場合は、研修をしてから企業に紹介しているので、「やりたいこと」への最初の一歩を踏み出したい方にも選んでいただいていますね。

報酬に関する交渉は、フリーランスにとって精神的な負担が大きい作業でもある。

こうしたやり取りに加え、未経験分野の研修や、人脈がまだ少ない状態でも仕事紹介など、フリーランスデビューする女性たちが不安を抱きがちな業務を代行してもらうのも、不安を解消する一つの手だ。

佐藤さんがMorning Meを通じて伝え続けてきたのは、「不安を一人で抱え込まなくていい」ということだ。

数々の不安と向き合ってきた佐藤さんは、最後にフリーランスを前に立ち止まってしまう女性たちへ、こんな言葉を贈った。

佐藤さん

フリーランスだからといって、一人ですべてを抱え込む必要はありません。連帯することで助け合いながら成長することもできますし、その積み重ねがフリーランス全体への信頼や、業界の価値向上にもつながっていきます。

一人になることが怖いと感じるのなら、無理に強がらなくていい。『Morning Me』のように、フリーランスが集まり、支えあえる場所に身を置いてみるのも一つの選択です。

不安を感じること自体が、挑戦できていない証拠ではありません。むしろ、その不安があるからこそ、未来の選択肢は少しずつ広がっていきます。

佐藤さん

だからこそ不安を一人で抱え込まず、誰かとつながる道を選んでもいい。

理想の働き方や、なりたい自分に近づくために、自分に合った一歩を踏み出してみてください。

カメラに向かってポーズを取る、佐藤麻美さん

取材・文/一本麻衣 撮影/笹井タカマサ 編集/光谷麻里(編集部)

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