13 DEC/2021

「会社員は割に合わない」って本当? フリーランスと会社員、見落としがちな働き方別のメリット・デメリット

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副業を始めたら、本業(会社員)のモチベーションが下がった……。

休みのメンバーの仕事を代理で担当したり、繁忙期で業務量が増えたりしても会社のお給料は増えないから、なんだか損しているような……。

副業で好きな仕事にチャレンジしたり、案件・プロジェクト単位の仕事を経験したりすることで、会社員として働くことにモヤモヤを感じるようになった人も少なくないかもしれません。

でも、そもそも、会社員として働くことと、フリーランスとして働くこと、それぞれには「違い」があるもの。

その違いとは一体何なのか。それぞれの働き方のメリットとデメリット、特徴を確認しながら考えてみたいと思います。

会社員・フリーランス、働き方別のメリットとデメリット

以下の図表はさまざまな働き方の種類と、それぞれのメリット・デメリットについて私が図にしたものです。

会社員 フリーランス

多様な論点がありますが、分かりやすくするために極力シンプルにどの働き方もメリット・デメリットを二つずつ記載しています。

向かって左側に正社員、契約社員、派遣社員……と働き方の種類を書いています。

このうち、グリーンで色付けした正社員からパート・アルバイトまでが「雇われる働き方」で、イエローで色付けした「業務委託(フリーランス)」が「雇われない働き方」です。

正社員に関して言えば、「安定した処遇と給与」は大きなメリットの一つです。

経営不振など、会社によほど深刻な事情がない限り、解雇されることはありません。また、原則として従業員の同意がない限りは、会社は勝手に従業員の給与を減額することもできません。

会社員

会社員の場合、給与や仕事の維持が法律で厳格に守られているのが特徴です。

フリーランスは自由度が高いが、不確実性も高い

一方、フリーランスは社会的立場や収入が非常に不安定です。

個人がフリーランスとして企業と働く場合、業務委託契約を結ぶケースが一般的ですが、その際、無期ということはありえず、必ず特定の契約期間が存在します。

また、契約期間内であっても、一定の予告期間をもって双方から契約解除可能な場合が多いです。

クライアント企業によって報酬が支払われるタイミングや金額もさまざまなので、そういう意味でも会社員に比べて経済的な不確実性は高くなります。

会社員

しかしながら、正社員にもデメリットはあります。たとえば働く時間・場所の固定化(長時間化)です。

コロナ禍で約4割の企業がテレワークを実施中とのデータもありますが(※1)、会社規模(大企業の方が実施率は高め)や地域・業種による差が大きく、「本当はテレワークしたいけれど、会社方針でできない」という人は多いのではないでしょうか?

余談ですが、コロナ禍で「もっと自由にテレワークを交えて働きたい」ということが理由で転職や独立を模索する人が増えたのも直近一年のトレンドです。

それだけ働く時間・場所の固定化に悩んでいる会社員の方がいるということでしょう。

「働き方改革」で改善傾向はあるものの、会社員としてリーダー・マネジャーなどの責任ある役割を任せられるようになればなるほど、結果として長期間労働になりがちな傾向もあります。

知ってた? 会社員とフリーランスの社会保険の大きな違い

さらに、会社員とフリーランスの処遇の差として大きいのが社会保障です。

会社員だと給与天引きで支払っているので意識していない人が多いかもしれませんね(私自身は会社員時代まったく意識していませんでした……)。

社会保険について意識したことがなかった人は、ぜひご自身の給与明細をチェックしてみてください。

会社員 フリーランス

株式会社Waris 研修資料より

社会保険には、大きく五つの種類があります(上図)。

上記五つのうち、雇用保険にはフリーランスは自分自身で加入することができませんし、労災保険についても一部職種をのぞいて自分から加入はできません。

雇用保険は「労働者が失業した場合や雇用の継続が困難となる事由が生じた場合に必要な給付などをおこなう制度」です。

転職経験がある方の中には、失業期間中に給付を受け取ったことがある人もいるのではないでしょうか? あのお金は、この雇用保険から支払われているわけですね。

労災保険は、「労働者の業務上または通勤による病気やけがに対して必要な保険給付をおこなう制度」です。

フリーランスは雇用保険や労災保険に自分から加入することはできませんので、病気やけが・失業などに対して、自分の責任で準備していく必要があります(フリーランス向けの保険など備える方法はありますので、それはまた別の機会にご紹介します)。

もう一点、非常に大きなポイントは上記の社会保険のうち「公的医療保険」「介護保険(40歳以上)」「年金保険」については会社員の場合は保険料の半額を会社が折半して支払ってくれるのです。

一方、フリーランスは国民年金・国民健康保険に全額自己負担で加入する必要があります。

納得感を持って選び、働き方を組み合わせていく

会社員 フリーランス

「副業を始めたら本業のモチベーションが下がった」という人のお話を聞くと、「副業の仕事内容と報酬に比べて、本業の仕事を時間単価で割り出すと、報酬がずっと低くなってしまう」という声が挙がります。

そのときに、ぜひ上記のメリット・デメリットを考慮に入れていただきたいと思うのです。

確かに「時間単価」だけを考えたら、副業のフリーランスの仕事の方が良い条件に見えるかもしれません。

でも、会社員の場合は目に見える給与以外にも、安定した処遇や社会保険料を会社が半額負担してくれる点など、金銭的に大きなメリットを受け取っているのです。

冒頭にもご紹介したように、会社員は他のメンバーのフォローに入ったり、自分の本業以外の業務を担当しなければいけないシーンも多く、「わずらわしい」「割に合わない」なんていう声もあります。

しかし、会社の「構成員の一人」として働く以上、安定した処遇や給与などのメリットと引き換えに受け入れていかないといけない責務の一つでもあります。

会社員 フリーランス

ただ、どうしても「会社員として働くデメリットの方が大きい」と感じたら、思い切って退職してフリーランスとして働いていく選択肢もあります。

ここでお伝えしたいのは、会社員とフリーランス、単純に「時間単価」だけで損得は語れないということです。

働き方が多様化したからこそ、「自分に合う働き方」に意識的になる人が増えました。それ自体はとっても喜ばしいこと。今は「会社員か、フリーランスか」という二項対立ではなく、それらを自分の裁量で組み合わせて働ける素晴らしい時代でもあります。

それぞれの働き方のメリット・デメリットを知った上で、納得感を持ってベストな組み合わせをしてみたり、ライフステージの変化に応じて働き方を変化させたりしながら人生100年時代のキャリアを自律的につくっていきましょう!

(※1)総務省資料より 

田中美和

【この記事を書いた人】
Waris共同代表・国家資格キャリアコンサルタント
田中美和

大学卒業後、2001年に日経ホーム出版社(現日経BP社)入社。編集記者として働く女性向け情報誌『日経ウーマン』を担当。フリーランスのライター・キャリアカウンセラーとしての活動を経て2013年多様な生き方・働き方を実現する人材エージェントWarisを共同創業。著書に『普通の会社員がフリーランスで稼ぐ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。一般社団法人「プロフェッショナル&パラレルキャリア フリーランス協会」理事