「事務経験者」が副業市場で引っ張りだこ! 資格もスキルもいらない選択肢の増やし方
「専門スキルもなければ、目立つ実績もない。外の世界で通用するスキルなんて、何も持っていない……」
事務職や一般職として働く女性の中には、「副業」が自分とは無縁の話だと思う人は少なくないだろう。
しかし、これまで累計8,100人以上の女性のキャリアに寄り添ってきた『リモラボ』代表の小森優さんは、「事務経験こそ、副業をするには“宝の山”」だと断言する。
自分では「当たり前」だと思っている仕事が、なぜ今、組織の外で求められているのか。
特別な資格も、クリエーティブなセンスもいらない。今の事務経験をそのまま価値に変えるためのヒントを、小森さんに聞いた。
女性のためのWEBスクール「リモラボ」代表
小森優さん
保育士からWeb業界へ未経験で転身。SNS運用代行などのクライアントワークを経て、女性向けの実践型リスキリングスクール「リモラボ」を設立。これまでの経験をもとに8,100名以上の”女性の選択肢を広げる”サポートを行うほか、フルリモートワークのSNSコンサルタントとしても活動している。著書に「私たちは“通勤”を辞めました 新時代のキャリアの築き方と20人のリアルな経験談」「にゃるほど! 心のモヤモヤがスーッと消える仕事術図解100」(KADOKAWA)など。 X Instagram
副業市場では、事務経験が武器になる
女性向け実践型リスキリングスクール『リモラボ』では、クリエーティブ職未経験の事務職の女性も多く在籍しているという
事務職の方は「自分の仕事は副業に繋がらない」「スキルがない」と自信をなくしがちです。
すごく多いですよね。でもそれって、「スキルがない」からではなくて、会社員の評価軸に慣れすぎているだけだと思うんです。
会社員の評価軸、ですか?
社内だと、事務の仕事って「できていて当たり前」になりやすいですよね。ミスなく回っていることや、調整がうまくいっていることが、評価として見えにくい。
たしかに、トラブルが起きないことが当たり前で、評価はされない、みたいなところはありますよね。
そうなんです。その結果、「特別なスキルがない」「誰でもできる仕事なんじゃないか」と思ってしまう。でも副業市場ではむしろ、事務経験は立派な武器になります。
武器、というと?
例えば経営者がコア業務に集中したくても、日程調整やメール対応、資料作成などの事務作業が追いつかず、パンクしそうな現場はたくさんあります。
だからこそ、事務職の方が当たり前にやっている「ミスなく整える」「期限を守る」「情報を整理する」というスキルは、喉から手が出るほど欲しい価値なんですよ。
事務職の人が日常的にやっていることですね。
まさにそうです。副業市場では、「誰かがやらないと回らない仕事」を、きちんとやってくれる人の価値が、実はとても高いのです。
事務経験を「副業の仕事」に変えるために
では具体的に、事務職の経験を活かすとなると、どんな副業があるのでしょうか?
例えば、「オンライン秘書」としてのスケジュール調整や備品購入、「カスタマーサポート」としてチャットやメールの返信、営業資料の作成やデータ集計、マニュアルの作成や情報整理などは、スタートアップ企業を中心にニーズはかなり高いです。
全て、事務職の方が普段から行っていることの延長線上にありますね。
そうなんです。しかも最近は、「毎日◯時間」「9時~17時」といった時間固定ではなく、「月にこの業務量」「このプロジェクト期間だけ」といったかたちで依頼されることも増えています。
ということは、平日の昼間じゃなくてもできる?
できます。例えば、朝の1時間、子どもが寝たあとの夜、週末のまとまった時間など、自分の生活に合わせて進めている方も多いですよ。
それなら、本業があっても現実的ですね。
はい。「事務=時間拘束が長い」というイメージは、会社員の働き方の影響が大きいと思います。副業では、時間ではなく“任せられるかどうか”が重視されることが多いですね。
事務作業の副業であれば「今の生活を大きく変えずに、副業を始める」ことができる。それも、この分野の大きな強みだと思っています。
なるほど。逆に、会社員としての事務と副業としてのクライアントワークでは、求められるスタンスに違いはありますか?
副業は「継続して依頼したい」と思ってもらえるかどうかが全てです。そのためには、言われたことをこなすだけでなく「期待以上の価値を出す」という視点が大切になります。
期待以上の価値……少しハードルが高そうに聞こえます。
最近では、生成AIを使って賢く価値を高めている方も多いです。
例えば、今まで1時間かかっていた議事録作成を、AIを使って15分で終わらせる。そこで浮いた時間を使って、「前回のミーティングの内容も踏まえて、こんなマニュアルを作っておきました」と、先回りして「改善」を提案するんです。
作業をAIで効率化して、空いた時間を「気配りや提案」に使うんですね。
そうです。これが「単なる作業者」から「手放せないパートナー」へと評価が変わる瞬間です。特に女性は、相手の課題を察して先回りするのが得意な方が多いので、事務経験を活かしたサポートは非常に向いていると思います。
副業で「自分が選べる未来」をつくる
ここまで伺っていると、事務経験って副業市場ではかなり評価されるんだなと感じます。
そうなんですよ。だからまずは、「自分はどんな事務業務が得意なのか」を整理するところから始めてみてほしいですね。
整理、というと?
「事務」と一言で言っても、調整が得意な人もいれば、細かい作業を正確に進めるのが得意な人、情報を分かりやすくまとめるのが得意な人もいます。
だから「事務をやっていました」で終わらせずに、「どんな場面で頼られていたか」「何を任されることが多かったか」を思い出してみてほしいんです。
そうやって振り返ると、自分でもできる副業が見えてきそうですね。
はい。そして、副業を通じて手に入るのは、お金だけではありません。働く「場所」や「時間」、収入の得方、人との関わり方。そうしたものを、少しずつ自分で選べるようになるのが最大のメリットです。
例えば、会社の環境が変わったときや、ライフステージが変わったとき。「スキルがないから、このまま続けるしかない」と思うのと、「別の道も選べる」と思えるのとでは、心の余裕はまったく違いますよね。
事務経験を副業にすることが、その「選択肢を持った状態」につながるんですね。
そうですね。これまで積み重ねてきた経験が、組織の外でも通用すると分かるだけで、働き方の見え方は大きく変わります。
「事務しかやってこなかった」と思っている方ほど、実は可能性は大きい。評価されなかったのではなく、まだ評価される場所に出会っていなかっただけなんです。
副業は、自分の経験を別の角度から照らしてみるための手段として、ぜひうまく活用してほしいですね。
取材・文/大室倫子(編集部)


