「別世界」は思い込み? 会社員から国家公務員へ転身した女性が見つけた、社会を変える手応え
「次のキャリア」を考えたとき、国家公務員が選択肢に入る人はどれくらいいるだろう。
「お堅そう」「民間の経験なんて通用しないのでは?」そんな先入観から、自分のキャリアとは無縁の世界だと思い込んでいる人も多いはずだ。
しかし実は今、国の行政機関である各省庁では民間からの中途採用を積極的に行なっている。
複雑化する社会課題の解決を目指すには、多様な経験や価値観を持つ人材が必要とされているためだ。
とはいえ、具体的な職場環境をイメージするのは難しいもの。そこで、民間企業から国家公務員に管理職として転身した新庄浩子さんに、民間との違いや共通点、国家公務員だからこそ得られるやりがいなど、「知られざるリアル」を率直に語ってもらった。
内閣官房 内閣人事局 調査官
新庄浩子さん
大学院修了後、民間企業の研究職に就職。その後、人事部門へ社内異動し、人材育成やキャリア開発、女性活躍推進やダイバーシティー推進などを担当。2025年、内閣官房内閣人事局に入局
社会のあり方に関わる課題は、一つの企業では解決できない
私は新卒で民間企業に就職し、研究職としてキャリアをスタートしました。
研究開発は一人の力ではできませんから、いかにチームで仕事を進めていくかが重要になります。その中で次第に「良いチームとは何か」「良いリーダーとはどうあるべきか」といった組織や人の課題に興味を持つようになりました。
その後、人事部門に異動となり、人材育成やキャリア開発、女性活躍推進やダイバーシティー推進などを担当。
その中で私自身が働く目的も次第に明確になり、「性別や属性に関わらず、誰もが働くことを通じて自分が生きる意味を感じられる社会をつくりたい」という人生のビジョンを描くようになったのです。
その一方で、人事領域のさまざまな課題に挑戦するにつれ、「この仕事は一つの会社の中では決して完結しない」と実感するようになりました。
特に女性活躍やダイバーシティーを推進するには、世の中に根強く残る固定観念を変えていく必要があります。
こうした社会のあり方に関わる本質的な課題は、とても一企業だけで解決できるものではありません。
社会全体を変えていくには、より大きな取り組みが必要になる。そう考えたとき、国家公務員としてのキャリアは、新たな挑戦の舞台としてとても魅力に感じました。
もし自分が民間で培った経験を行政組織でも活かすことができれば、官民の架け橋となって、課題解決に向けた取り組みをより広い範囲で展開できるのではないか。
そんな思いが高まり、国家公務員として仕事に挑戦してみようと決意。2025年に公募(選考採用)への応募を経て、内閣人事局に入局しました。
内閣人事局は、内閣の補助機関である内閣官房に属し、国家公務員の人事管理に関する中枢的機能を担う組織です。
政府の方針を各省庁の人事戦略に落とし込み、関連する制度の企画立案から運用までを一体的に担当します。
その中で私は、管理職としてチームを持ちながら、人材の育成・確保や省庁をまたいだ組織横断的な人事戦略のとりまとめを担当しています。
「国家公務員も同じ人間」入局前の先入観はすぐに消え去った
とはいえ、実際に入局するまでは不安もありました。
多くの方が「お堅い職場なのでは?」とか「民間より自由度が低そう」と想像すると思います。
最近は報道などで国家公務員の働き方について取り上げられることが増えたので、家族からは「ちゃんと家に帰れるの?」なんて心配もされました。
私も「高い壁の向こうで、黒いスーツを着たエリート集団が黙々と働いているんじゃないか……」なんて勝手に想像していたのですが、実際は全然そんなことはなくて(笑)。
「意外と民間と変わらないんだな」というのが率直な感想です。
当たり前のことですが、国家公務員も同じ人間なので、それぞれに個性があり、感情があって、笑ったり、喜んだり、悲しんだりもする。実際に接してみれば、私たちと何も変わらない一人の人間なんです。
もちろん仕事を進める上では、民間とまったく同じというわけにはいかない部分もありますし、予算を使うことに対する責任も会社員時代より格段に重くなります。
それでも守るべきラインさえ逸脱しなければ、自分たちでアイデアや意見を出し合って試行錯誤や創意工夫ができますし、やりたいことにチャレンジできます。
民間との大きな違いを一つ挙げるとしたら、組織構造でしょうか。国の機関なので組織が非常に大きく、判断や決定を下すことにより大きな責任と影響力が伴いますから、管理職といえど自分の一存で物事を進めるわけにはいかない部分は多くあります。
ただこの点についても、時間が経つにつれて「組織としての意思決定プロセスに違いはあっても、その重要な担い手であるメンバー一人ひとりをマネジメントする立場として大事なことややるべきことは前職と変わらないんだな」と感じるようになりました。
メンバーと向き合い、話を聞いて、課題や悩みを共有し、一緒に解決していく。
これは前職でも求められていたことですが、むしろより大きな組織だからこそ、民間企業では身に付かなかった新たなマネジメントスキルを磨くことができて、私自身のキャリアにもプラスになっています。
もしかしたら私が感じたような環境の変化や違いは、民間で転職した人たちも経験しているのかもしれませんね。
ひと口に民間企業といっても実にさまざまではないでしょうか。組織が変われば当然変化もあるでしょうし、突然経営方針やビジネスモデルがガラリと変わることも珍しくないはずです。
もはや変化は避けられない今の時代には、民間から国家公務員への転職も、変化の幅としてはそれほど大きくないものになりつつあるのかもしれません。
さらに、家族にも心配された「働き方」ですが、私が所属する内閣人事局がワークライフバランス関連の取り組みを推進する立場ということもあり、まずは自分たちが率先して実践しようとする意識が高いと感じます。
もちろん全ての省庁が内閣人事局と同じかと言えば、まだ組織によって差があるのが現状。
そこは内閣人事局が多様な働き方の事例集を作成して積極的に発信していくなど、各省庁においても、たとえ時間的な制約があっても誰もがもてる力を十分に発揮できる環境をつくれるように働きかけていきたいと考えています。
「民間の経験」が入局後の自分を支えている
民間で働く人が国家公務員への転職を考えたとき、「自分がこれまで培ってきたスキルや経験が本当に通用するのだろうか」と迷う人も多いかと思います。
これは私も嬉しい驚きだったのですが、「今まで一社の中でやってきたことがこれほど活かせる世界があったのか」というのが今の実感です。
例えば「仮説検証を経て今までにないものをつくり出す」という経験は、現在も大いに役立っていることの一つです。
前職で研究開発に携わっていた頃も、人事として施策や研修プログラムを企画するときも、「仮説を立て、実証し、必要な改善や修正を行い、最終的なアウトプットを出す」というプロセスが求められました。
これは私に限ったことではなく、商品開発や営業、業務改善の担当者など、民間企業で働く人の多くが日々の仕事の中でこの思考プロセスを実践しているはずです。
その他にも、前職時代に築いた人脈が今活きるなど、民間で培った経験が公務で活きる場面は思った以上に多く、そのことが入局後の自分を支える自信になっています。
国家公務員に転じたことで、新たなやりがいや手応えも得られました。
私が会社員時代に感じていたのは、国が打ち出す方針やメッセージはとてもパワフルだということ。
例えば自社でジェンダーギャップを解消する取り組みを進めたいと思ったとき、国が公的な文書や資料で「なぜ性別の違いによる格差の解消が必要なのか」を発信してくれると、一担当者である私も「国もこんな方針を示していますよ」と周囲を巻き込みやすくなるんです。
それくらい国からの発信は影響力が大きく、世の中を動かす力がある。非常に重みのある仕事だからこそ、今はそこに関われることに手応えを感じています。
また以前はやりたくてもできなかったことが、国家公務員なら実現できる場面もたくさん経験するようになりました。
私が現在取り組んでいる施策の一つに、各省庁で働く国家公務員が高校生に「仕事のやりがいや魅力」を伝える事業があります。
実は私は前職の頃から「もはや自分の会社だけが良い人材を確保できればいいという時代ではない」と感じ、社会全体で人材を育てる取り組みとして、子どもたちのキャリア教育に関わりたいと考えていました。
でも企業が単独で教育現場にアプローチするのはなかなか難しいことも多くって。
それが国家公務員の立場なら、国の課題として次世代育成に取り組むべき明確な理由を語れますし、教育現場に対して「この国の未来を支える次の世代のために一丸となりましょう」というムーブメントを起こすこともできます。
これは民間の立場ではなかなか成し得なかったことであり、国家公務員だからこその大きなやりがいを実感しています。
国家公務員は「こんな課題を解決できたらいいのに」を叶える手段
冒頭でお話しした「誰もが働くことを通じて自分が生きる意味を感じられる社会をつくりたい」という夢の実現に近づいている手応えを日々感じられて、今は国家公務員に転身して本当に良かったと思っています。
以前の私と同じように、この記事を読んでいる人の中にも「国家公務員の仕事に興味はあるけれど、民間の経験しかない自分がやっていけるのだろうか」とためらっている人がいるかもしれません。
でも今は、これまでの国家公務員にはなかったような個性や経験を持つ人こそが求められています。
日本の社会全体をより良くするには、多様な人材が集まり、多様な経験やスキルを活かせる組織へと発展していく必要がありますから。
企業での日々の仕事の中で「こんな課題を解決できたらいいのに」と感じることを叶えるための手段として、国家公務員になることは有力な選択肢になるはずです。
社会に存在するどんな課題にも対応する省庁や組織が必ずあり、その一員となることで、最前線に立って課題解決に取り組めます。
自分の思いを実現させたいと感じたときに、ぜひ国家公務員をキャリアの選択肢として考えていただけたらうれしく思います。
取材・文/塚田有香 撮影/赤松洋太 編集/大室倫子(編集部)
●2026年3月2日、3月4日に国家公務員中途採用オンライン説明会を開催します。ぜひお気軽にご参加ください。
https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/recruit/event/detail_202603020304.html
●現在募集中の求人情報は以下をご覧ください。
https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/recruit/howto/koubo.html
●国家公務員の中途採用に関する詳細情報は以下をご覧ください。インタビューも掲載しています。
https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/recruit/chutosaiyou_lp/index.html


