「仕事ができない自分」になるのが怖い…。転職先で自己肯定感を下げずに乗り切るには?【十束おとは】
働く女性が抱える仕事やキャリアにおけるメンタルヘルスのお悩みに、キャリア×メンタルヘルスの専門家、十束おとはさんが回答!心身ともにヘルシーに働き続けるためのヒントをお届けします。
気が付けばもう4月も目前。来月から異動や転職で新しい環境に飛び込む人も多いでしょう。
十束おとはの「キャリア×メンタルヘルス相談室」、初回で取り上げるのは、転職先で「仕事ができない自分と出会うのが怖い」という女性のお悩み。
自己肯定感を下げずに、戦力になるまでの時期を乗り切るためにはどうしたらいいの……?
「キャリア×メンタルヘルス」の専門家、十束おとはさんに相談してみました。
十束 おとは(とつか・おとは)さん
アイドルグループ「フィロソフィーのダンス」を2022年11月に卒業。会社員を経て、現在はキャリアコンサルタントとして芸能人のセカンドキャリアや学生・女性のキャリア支援にも取り組む。キャリアコンサルタント、産業カウンセラー、メンタル心理カウンセラー、メンタルヘルス・マネジメント検定、産業カウンセラーを取得。ゲーム・アニメ・漫画・映画といったサブカルチャーにも精通し、イベントMC・タレント・ライターなどパラレルキャリアを邁進中■X/Instagram
お悩み:4月から転職するけれど「できない自分」になってしまいそうで不安
初めての転職をし、来月から新しい職場で働き始める予定です。
前の会社では社内表彰を受けるなど成果も出せており、自分なりに自信を持って仕事をしていました。
転職先の仕事もこれまでの経験を活かせるものではありますが、業界や仕事内容が少し変わるため、足を引っ張る側になったり、「この人、本当に経験者なの?」と思われてしまったりしそうで不安です。
新しい職場で“できない自分”に出会ったとき、自己肯定感を下げずに乗り越えるためのアドバイスをお願いします。
ご相談いただき、ありがとうございます。
28歳で初めての転職、そして前職では社内表彰を受けるなどしっかり成果を出してきた相談者さんが、「足を引っ張る側になるかも」「経験者として見てもらえないかも」と不安なお気持ちになるのは、自然なことだと思います。
これまで積み上げてきた確かなものがあるからこそ、その積み木たちを全て崩した新しい環境での「ゼロからのスタート」が怖く感じる瞬間ってありますよね。
実際、多くの人が転職後に似た感情を抱きます。
転職後3カ月程度は、80%以上の人が何らかのストレスを感じるとのデータもあります。
相談者さんが弱いわけではなく、環境が変わることで誰しもに生じる「適応ストレス」の一部です。この不安を「ダメな自分」と否定せず、「新しい挑戦へのサイン」として受け止められるような考え方についてお話ししていきます。
自己肯定感を下げないための準備と心構え
転職直後は、前職の「できる自分」と比べてしまいがちですが、ここで最も重要なのは「前職の自分」との比較を最小限に抑えることです。
条件が同じではないのに比較してしまうことで、不安が大きくなり、自己肯定感が下がってしまうので、今の自分を受け入れ、活かしていく方法をいくつか紹介します。
【1】今は学習フェーズと割り切る
新しい業界・業務では、経験年数に関わらず誰しも新人と同じ状態になります。
最初は分からないことだらけで当然です。今は吸収する時期であり、成果より成長を優先する時期なのだと自分に言い聞かせてください。6カ月までは成長投資期間と捉えると、心に余裕が生まれます。
【転職後に新しい環境に適応するまでのプロセス】
■入社~1カ月:慣れる時期
まずは、会社の雰囲気やルール、人に慣れる時期。この時期は環境に慣れれば合格くらいの気持ちで大丈夫です。
■1カ月~3カ月:吸収・実践期
業務の流れや目的が少しずつ見えてくる時期。たくさんのことを吸収しながら実践していく時期です。疲れが溜まりやすい時期でもあるので、無理はせず一歩ずつ前へ進んでいくことが大事です。
■4カ月~6カ月:安定期
一通りの仕事を理解し、馴染んでくる方が多い時期。最初の安定期を迎え、求められていること×自分らしさの発揮がしやすくなる時期かと思います。
上記はあくまで一例ですが、新しい環境に入ってすぐに全てに順応できる人はいません。会社も、たとえ経験者だったとしても最初の半年ほどは慣れるまでの助走期間と捉えていることが多いので、焦らなくて大丈夫。
一歩ずつ進んでいくと必ず道が開けてくると思いますよ。
【2】セルフコンパッション(自分への優しさ)を意識する
セルフコンパッションとは、自分を大切に思いやり、寄り添うこと。
失敗や困難な状況でも自己肯定感を保つ力で、企業研修や教育分野などでも注目されています。
ミスをしたときや、新たな業務に理解が追い付かないとき「またダメだった……」ではなく、「今は慣れていないだけ。誰も最初から完璧じゃない」と自分に声を掛けてあげてください。
自分を厳しく責めるより優しく接する方が、長期的にモチベーションとメンタルが安定すると言われています。ぜひ自分を思いやる気持ちを日頃から意識してみてください。
【3】小さな成功体験を意識的に積む
日記やジャーナリングなど、書くことで頭の中が整理され、客観的に自分を見ることができます。
また、先ほどお話したセルフコンパッションも、日頃から自分ができたことを書き出し、知ることで根付きやすいと言われています。
例えば、毎日夜に「今日できたこと」を3つ書き出してみましょう。「先輩に1つ質問できた」「新しい業務を1つ覚えた」など、どんなことでも構いません。
脳は小さな達成を積み重ねることで自己効力感(自分はできるという感覚)が回復します。
夜にまとまった時間を取る余裕の無い方は、ノートやスマホのメモでも良いので合間の時間で記録に残しましょう。
【4】前職の強みを「ポータブルスキル」として再定義する
ポータブルスキルとは、業種や職種関係なく活用できるスキルのこと。
厚生労働省では「職種の専門性以外に、業種や職種が変わっても持ち運びができる職務遂行上のスキル」と定義されています。
相談者さんの中にも、前職で培った、業界が変わっても活きるスキルがあるはずです。
新しい業務でつまずいたとき「前職で培ったこの力はここでも使える」とつなげて考えると、自己肯定感を傷つけることなく、新たな環境で業務に向かえるのではないでしょうか。
参考に、厚生労働省のポータブルスキル見える化ツールを紹介します。ぜひ前職の業務を思い出しながら、ご覧ください。
ポータブルスキル見える化ツール(職業能力診断ツール)|厚生労働省
「できない自分」に出会うのは、成長の入り口に立った証拠
相談者さんは、すでに成果を出す力を持った人です。それを証明してきたのが前職の表彰歴であり、転職を決断した勇気なのだと思います。
新しい職場で最初に「できない自分」に出会うのは、成長の入り口に立った証拠であり、誰もが通る道を、今あなたが歩き始めているだけ。
少しずつ焦らず、自分のペースで吸収していけば、必ず「あのとき不安だったけど、乗り越えられた」と振り返れる日が来ます。新しい環境で、また新しい“できる自分”に出会えることを、心から応援しています。
そして、息抜きもお忘れなく! 誰かに話す、趣味を思いっきり満喫する、美味しいものを食べるなど、自分の喜ぶことをたくさんしてリフレッシュしてくださいね。
一歩ずつ、楽しみながら進んでください。
『十束おとはの「キャリア×メンタルヘルス相談室」』の過去記事一覧はこちら
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