小田切ヒロインタビュー/毎日のマンネリメイクが劇的に変わる「1割のスパイス」のススメ

小田切ヒロインタビュー/毎日のマンネリメイクが劇的に変わる「1割のスパイス」のススメ

「ちゃんとして見られたい」「コンプレックスは隠さなきゃ」

そんな思いから、いつの間にかメイクが“義務”になっていないだろうか。

毎日同じ手順、同じ仕上がり。けれど本来、メイクはもっと自由で、自分を鼓舞するためのものであるはず。

そこで今回話を聞いたのは、トレンドの最前線を走りながらも、常に「自分を愛すること」を最優先に掲げるヘア&メイクアップアーティスト・小田切ヒロさん。

働く女性が「自分を縛るルール」を少しゆるめ、心まで軽やかにしていくためのヒントを聞いた。

「ちゃんとしなきゃ」を、戦略的に手放す

2026年4月、韓国のビューティークリエイター1,033人が厳選した韓国コスメブランドが集結するイベント『1% SELECT STORE TOKYO』(東京・原宿2026年4月2日~4月13日)が日本で初めて開催。

会場はK-ビューティーならではの華やかさとトレンド感があふれ、どのブースも多くの来場者でにぎわっていた。

今回はその熱狂のステージを終えたばかりの小田切ヒロさんを、Woman type編集部が独占インタビュー。

小田切ヒロさん

小田切さんは、K-ビューティーをただの流行として追うのではなく「トレンドを追うこと以上に大切なこと」を、一人一人の読者に語りかけるように話し始めた。

まず話してくれたのは、日本の女性が持つ「繊細な美意識」だ。

小田切さん

日本の素晴らしいところって、丁寧さや繊細さ、品格、そして余白を大切にする美意識だと思うんです。その感性は、本当に素敵。

その一方で、韓国のビューティトレンドには、スピード感や高揚感があるんですね。そのムードを意識的に選ぶことが、日常のちょっとしたスパイスになるなと感じています。

日本の「整った美しさ」に、韓国の「気分を上げる美しさ」を掛け合わせる。その視点を持つだけで、鏡の前の自分はもっと多角的に見えてくる。

特に働く女性は、仕事に向かうためのメイクを「マナーという名の義務」に閉じ込めてしまいがちだ。Woman type読者の多くが抱えるこの葛藤に、小田切さんは優しい眼差しを向ける。

小田切さん

「ちゃんとしなきゃ」というマインドは、とても素晴らしいです。でも、メイクアップにおいては、もう少し自由になってもいいと思うんですね。

トレンドについても「全部取り入れなきゃいけない」と、自分の大部分を寄せようとして疲弊してしまう方が多い。でも、無理に変わる必要はないんですよ。今の自分を保ったままでいいんです。

今の自分を否定して「何者か」になろうとしなくていい。小田切さんの考え方は、そんな「現状肯定」という名の一歩だ。

「1割のスパイス」が思考を動かす

小田切ヒロさん

自分の中のベーシックは維持したまま、ほんの少しの新しい風を入れる。小田切さんが提案するのは、シンプルな「1割の変化」という考え方だ。

小田切さん

1割でもいいんです。トレンドのスパイスを入れることで、マンネリ化したメイクや美容のルーティンに、新しい自分を開拓するきっかけが生まれる。

働きながらでも、世の中の動きを少しずつ取り入れることは活力になりますし、停滞した日常に刺激が入って、毎日がちょっとでも楽しくなるんじゃないかなと思います。

この「変化」は、新しいものを買い足すことだけではない。「引き算」をすることも、立派な変化であり、戦略だ。

小田切さん

真面目な方ほど、一度取り入れたものを「絶対やらなきゃいけないルール」に固定してしまいがち。でも、もう少し崩してもいいんですよ。

例えば、いつも塗っているファンデーションを半分の量にしてみる。フルで引いているアイラインを、目尻だけにしてみる。自分の中で勝手に決めたルールを崩したとき、新しい自分に出会えたり、気持ちがふっと軽くなったりするものです。

頑張っている人ほど、全てのパーツに100点の力を注いでしまう。けれど、あえて「抜く」ことで生まれる余裕が、逆に洗練された「今っぽさ」や「信頼感」に繋がるのだという。

小田切さん

特に日本人は本当に真面目。でもメイクにおいては、どこか抜け感というか、「足りなさ」があった方が、その人らしさが見えてきたりします。少し崩す、少し抜く。それは手抜きではなく、自分らしさを見つけるためのポジティブな選択なんです。

コンプレックスを「隠す」から、素材を「生かす」へ

私たちはつい、メイクを「欠点を埋める作業」と捉えてしまう。しかし、小田切さんが提示するのは、自分の個性を武器に変える「素材活用」の視点だ。

小田切さん

メイクアップは、個性を引き出すためのツールです。個性を武器にするには、自分の素材を生かすことが不可欠。

例えば、肌の調子がいい日はわざわざファンデーションを塗り重ねなくていい。自分のコンディションに合わせて引き算をする。そんな柔軟性を持って、自分のいいところを引き出すメイクアップをしてみてほしいですね。

さらに小田切さんが強調するのが、自分だけに与えられた「骨格」への愛着だ。

小田切さん

フェイスラインや鼻の形など、自分しか持っていない骨格を生かすメイクをすることで、誰とも被らない個性が生まれます。

骨格って、唯一無二なんですよ。そこを生かさずに均一な肌づくりだけをしてしまうと、10人並んだときにみんな同じに見えてしまいますから。

整えることと、自分らしさを残すこと。そのバランスが、大人の美しさには必要だ。

小田切さん

そしてもうひとつ大事なのが「余白」。どこかのパーツを抜いてみる「余白を残すメイクアップ」をすると、自分らしさを見つけやすいかなと思います。

自分らしさという「余白」を残すことで、初めてその人の空気感や魅力が浮かび上がってくる。全部を完成させない美学。それは、自分という人間を信じることにも似ている。

心を持ち上げる「赤リップ」を味方につけて

小田切ヒロさん

インタビューの終盤、小田切さんは自身の根底にある、潔いまでの死生観とバイタリティを明かしてくれた。

小田切さん

私の根底にあるのは、「人生は短い」ということ。悩んでいる暇がないくらい短いんだから、どうせ生きているなら明るく生きたい。その想いがずっとあります。

とはいえ、どんなに強くあろうとしても、心が追いつかない日もある。そんなときのために、小田切さんは極めてシンプルな解決策を用意してくれた。

小田切さん

心を持ち上げるのって、実はすごく難しい。でも、視覚からエネルギーを取り入れることはできます。効果的なのが「赤」ですね。

元気がないときは血色も失われますが、リップで赤みを足すだけで、鏡の中の自分が生き生きとして見える。そうすると脳が「いけるかも」と錯覚してくれる。この視覚効果をうまく使うのがコツです。

「元気が出るまで待つ」のではなく、先に「色」で元気な自分を演出してしまう。その手軽さも、忙しい女性には嬉しい。

小田切さん

やる気がない日にスキンケアから作り込むのは大変。でも、リップは塗るだけです。

大胆な赤が難しければ、カジュアルなバームリップや、韓国コスメに多い透け感のある赤を選んでみてください。それだけで血色がよくなり、気分が確実に変わります。

活力とエネルギーの色である「赤」は、どんなトレンドが来ても普遍的な味方。お守りのように一本持っておくといいですよ。

全部を変える必要はない。全部を頑張らなくてもいい。 自分のスタイルを軸にしながら、1割の「新しさ」を取り入れ、時にはあえて「抜く」勇気を持つこと。

どうしても気分が上がらない日には、ルーティンにしばられず、すっぴんの状態から赤リップをひと塗りしてみるだけでいい。

小田切さんの言葉は、働く女性に向けたメイクのアドバイスでありながら、日常を前向きに動かすためのヒントにも満ちていた。

メイクは誰のためでもなく、自分の毎日を、自分の足で一歩前へ進めるためのもの。 明日の朝、鏡の前の自分に、あなたはどんな「1割」を贈るだろうか。

取材・文/キャベトンコ

小田切ヒロさん

Nous Inc.代表取締役/ヘア&メイクアップアーティスト
小田切ヒロさん

雑誌・広告を中心にヘア&メイクアップを手がけるほか、化粧品ブランドのアドバイザーやディレクション、メディア出演、書籍など幅広く活動。豊富な美容知識と現場経験を背景に、女優やモデルから高い信頼を得ている。YouTubeチャンネル「HIRO BEAUTY CHANNEL」は、登録者数168万人を誇る美容系チャンネル。実践的で再現性の高いメイクテクニックと視聴者に寄り添う言葉で支持を集め、「ヒロ買い」と呼ばれるコスメ購買行動のムーブメントを生み出すなど、美容市場における消費トレンドにも影響を与えている。

2025年には、東京・大阪でのBeauty Selected Pop Up開催をはじめ、リアルイベントへと展開。デジタルとリアルを横断したコミュニティ形成を推進。日本ならではの繊細な技術や美意識を現代的に再解釈し、J-beautyの価値を現代のマーケットに接続する取り組みに注力。SNS総フォロワー数389万人。