これだけは絶対禁句!うつ気味の同僚を余計に追い詰めるNGワード三つ【精神科医監修】

職場の同僚など身近な人に対して「もしかして、うつ病っぽい?」と感じたとき、あなたならどんなふうに接するだろうか。
自分の接し方次第で相手の症状をさらに悪化させてしまうかも……? そんなふうに考えると、どんな態度を取るべきか、どんな言葉を掛けるべきか悩んでしまう。
そこで、職場の「うつ」で悩む人々の診療・復職支援を行う精神科医の五十嵐良雄さんに、同僚が「うつ」かもしれないと思ったときに絶対にかけてはいけないNGワードを三つあげてもらった。
【お話を伺った方】精神科医 五十嵐良雄さん
虎ノ門リワーク研究所所長。精神科医・医学博士。医療法人社団雄仁会理事長。メディカルケア大手町院長。日本デイケア学会副理事長、日本産業精神保健学会理事、日本外来臨床精神医学会理事、日本社会精神医学会理事、東京大学大学院非常勤講師。1976年、北海道大学医学部卒業。埼玉医科大学助手、秩父中央病院長などを経て2003年、メディカルケア虎ノ門開設。2008年、うつ病リワーク研究会発足、代表世話人に就任。2018年、一般社団法人日本うつ病リワーク協会理事長に就任。リワークの活動をより広く活性化するために、虎ノ門リワーク研究所を設立し、所長に
※この記事は2014年11月26日 に公開し、2021年10月5日に内容を更新しています。
NGワード1:「頑張れ」「元気だして」と励ます

一般的に、職場の同僚に“うつ疑惑”のある人がいれば、心配でいろいろと聞きたくなってしまうもの。中には、元気のない同僚に対して親切心から『頑張って』『元気を出して』などと励ましの言葉を掛ける人もいるかもしれない。
だが、五十嵐先生は励ましの言葉は不要だという。
「実際にその人がうつだった場合、もう既にこの憂鬱な気分をどうにかしようともがいているところ。そこで、自分の状況を理解していない人から励ましの言葉を掛けられたところで、余計に追いつめられたような気持ちになってしまいます」
うつ状態にある人は、基本的に常に憂鬱な気分を抱え、心身の不調を感じている。
「元気がないことや仕事が手についていないことについて、あれこれ言われることを気持ち良く思う人はいないはず」と五十嵐さん。
「その人を今以上に追いつめたくないと思うなら、励ましは必要ありません。ただ、『悩みを誰かに聞いてほしい』と思っている人も多いので、うつ疑惑のある同僚に対する接し方に迷うなら、余計なことは言わず、相手の話をただ聞いてあげるのがベストです」
きっかけは「何か話したいことがあれば聞こうか?」という声掛けでいい。「こうすべき」「ああすべき」という助言も不要。ただ、聞くことに徹してみよう。
NGワード2:「もっとちゃんとして」「最近ミスし過ぎ」と責める
とはいえ、相手が職場の同僚となると、聞き役として話を聞いているだけでは済まないシチュエーションもある。その人に仕事を任せられないことで業務に支障が出てしまうケースもあるし、放っておくこともできない。
明らかに仕事のパフォーマンスが落ちている相手に対しては、「私はあなたを心配している」ということを伝えた上で本題を伝えてほしいと五十嵐先生。
「人は、うつ状態になると、仕事の作業効率が落ちたりミスが増えたりするものなのですが、経験の無い人にはなかなかこの状況は理解できないもの。
以前までは出来ていたことが出来なくなっているということは本人にも自覚があるはずなので、そこで、『最近、仕事でミスが多いよね?』と結果から指摘したり、『もっとちゃんと仕事してよ』と責めてしまうと、相手を余計に追いつめてしまいます。
『最近、以前と比べて仕事があまり手についてないみたいで心配しているんだけど……』と前置きし、相手の身に起こっている変化を例に挙げ、その点を『心配している』というあなたの立場を分かってもらってから話を進めていくといいですよ」
NGワード3:「私に任せて」「どうにかしてあげる」と頼りがいある言葉をかける
また、五十嵐さんが「これは絶対に言ってはダメ!」と念を押すのは、「悩みがあるなら私がどうにかしてあげるよ」という言葉を掛けること。
一見頼りがいのある言葉だが、そこには大きな落とし穴がある。
「うつ病の人のつらさや不調は医学的に治療すべきものであり、同僚が職場でどうこうできるものではありません。結果的に何もしてあげられなかったとなると、無責任な言葉で相手の期待を裏切り、余計に傷付けてしまうことにもつながります」
また、同僚に対して「うつっぽいな」と思ったときに、接し方や扱い方に悩む人は多いものだが、そういう時は一人で抱え込まずにその人の管理に責任を持つ上司や、しかるべき部署の人に相談すべきだと念を押す。
最近は、新型コロナウイルス感染拡大の影響でリモートワークを取り入れる職場も増え、職場のメンタルヘルスの問題がさらに深刻化している。
特に、20代の若手社員などで、メンタル不調に悩むケースが多い。もしも「この人、うつっぽいかも」と気づいたときは、相手を追い込むような言葉はかけず、正しく対処していきたい。
取材・文/上野真理子