バービーが“女性の自己決定”を支える会社をつくったワケ「20代の頃は、自分を殺すのが正義だと思ってた」
お笑いコンビ・フォーリンラブのボケ担当で、女性の体やパートナーシップ、フェムケアについての発信も精力的に行っているバービーさん。2026年7月、自身が代表を務める株式会社bloomestを設立したことを発表した。
「自分史上、“最高”に咲き乱れる。」をステートメントに掲げる同社は、イベント開催やエンターテインメントを通じてフェムケア・ウェルネスの選択肢を届け、「女性たちの自己決定」を後押ししていくという。
自分で決めたい、自分らしく生きたい。そう願っていても、周囲の目や家族、パートナーとの関係を考えると、「本当はこうしたい」という気持ちだけでは決められないこともある。
実はバービーさん自身も、ずっと迷わず自分の道を選んできたわけではない。周囲に合わせて自分を抑え、「こうあるべき」という枠にとらわれていた時期もあったという。
そんな彼女は、どのようにして自分の人生に「YES」を出せるようになったのか。新会社設立の背景と、誰かを大切にしながらも、自分の人生を自分で選ぶために必要なことを聞いた。
バービーさん
1984年1月26日生まれ、北海道夕張郡栗山町出身。2007年にお笑いコンビ「フォーリンラブ」を結成しデビュー。現在はTBS『ひるおび!』コメンテーターやラジオパーソナリティとして幅広く活躍。下着プロデュースやYouTubeでも女性の体・自己決定をテーマに発信を続ける。26年7月、女性のエンパワーメントを支援する「株式会社bloomest」を設立し代表取締役社長に就任。X Instagram YouTube『バービーちゃんねる』
「女性であること」の不自由さに悩んだ20代
「株式会社bloomest」は、女性の自己決定を支えることを掲げています。設立に至るまでには、どのような背景があったのでしょうか?
私自身が、若い頃から「女性であるがゆえの不都合や違和感」をいろんな場面で感じて生きてきたんです。
多くの女性が共感してくれると思うんですけど、女の子ってグループで群れがちで、思っていることも素直に言葉にしづらい。大学生のころは、服装も流行りのファッションを皆一様に取り入れていて、そうじゃないと白い目で見られちゃう。私も「自分を殺すのが正義」みたいなところがありました。
分かります……! そこからはみ出すのは勇気がいりますよね。
芸人になってからは、女性特有のしがらみからはある程度解放されたけど、今度は「人間らしくあるより、芸人らしくあるべきだ」と思い込んだり、「女芸人なら結婚するべきじゃない」と考えたり。
当時はメイクや服装も、かわいく見えるかより、いかにおもしろく見せるかが最優先でした(笑)
バービーさんといえば、今や「自分らしさ」のアイコンという印象だったので意外ですね。
20代の頃は、むしろ自分を隠していたんですよ。私、何も気にせずに「ポジティブにいきまーす!」って突っ走ってきた人間ではなくって。
そこから「自分のやりたいことを選んでいい」と思えるようになった転機はあったのでしょうか?
30代半ばくらいから、それまでかたちにならなかったことが、少しずつ実を結び始めたんです。ラジオ出演をきっかけにエッセイを書いたり、下着のプロデュースをしたり、仕事内容が少しずつ変わっていった感覚がありました。
それまでは、何をやってもなかなかかたちにならなくて。どこかで「芸人たるもの、嫌なことをすることこそ修行になる」とか思っていたんですよね。でも仕事が変わっていく中で、ようやく「好きなことをやってもいいんだ」と自分に許可を出せるようになった気がします。
そんな時期に出したのが、生理用品について語ったYouTube動画でした。
340万回再生を超える、大反響でしたね。
本当にたくさんの方に観ていただいてうれしかった一方で、驚いたんです。
驚き、ですか?
「気になっていたけど、人には聞けなかった」「試したかったけど、怖くてできなかった」という声がたくさん届いて。
そこで初めて、「自分のことなのに、自分では動けない人がこんなにいるんだ」って気付いたんです。
YouTubeを見ただけでは、行動までたどり着けない人もいる。
そうそう。私は思いついたら即行動!なタイプなので、「自分で動けばいいのに……!」って、最初はそうした女性たちの気持ちがよく理解できなかったんですよ。
でも夫からの「“突っ走っているバービー”の姿に、勇気付けられる女性がたくさんいるんじゃない?」という言葉に、私が彼女たちの背中を押せばいいのかとハッとして。
その言葉が、一つのきっかけになったのですね。
さらにその思いが強くなったのは、子どもが生まれてからですね。 私自身が女性として抱えてきた違和感や悲しみを、娘には感じてほしくない。
もちろん娘は私とは別の人格だから、そこはちゃんと切り離して考えたいですが、出産を機に「よし、私がやるしかないな」という気持ちに変わりました。
「自己決定」は一人で突っ走ることじゃない
ここ最近は、「自分らしい選択を大切にする」といったメッセージをたくさん目にするようになりました。
とはいえ、パートナーや家族、周囲との関係性を考えると、思いのままに行動するのは難しいですよね。年齢を重ねるほど、 周りの大切な人も増えてきますし。
すごくよく分かります。私も全然、「今がベストです!」と言える状態ではないですよ。会社の設立だって、半分は突っ走ってしまったようなところもありますし(笑)
バービーさんは「自分の気持ち」と「大切な人たちとの関係」、どちらも大事にするためにどうされているんでしょうか?
まずは家庭だとか、自分の身近な人との関係性を耕すことで、土台を確かにすることですね。
仕事も頑張りたい、家庭も大切にしたい。最初は私も、それを天秤にかけていたんです。思うようにならないフラストレーションを夫にぶつけて、けんかばっかりしていた時期もあって。
でも、それではどちらもうまくいかない。だんだん「対立するんじゃなくて、手を取り合うべきなんだ」と思うようになりました。
まずは、自分の足元にある関係を整えることから、と。
私にとっては、パートナーシップが自分の幸福度にすごく影響しているんだって、ようやく気付いてきたんですよね。だから家庭の土台がちゃんと整えば、仕事もきっとうまくいく、という気持ちでいます。
仕事を頑張るために家庭をおろそかにするんじゃなくて、まず自分の足元を整える。そうすると、その安心感が仕事にもつながっていくんじゃないかなって。
「仕事か、プライベートか」と二者択一で考えなくてもいい、ということですね。
そうですね。「自己決定」とか「自分らしく」って、「自分を最優先にするわがままな人」みたいな印象を持つ人もいると思うんです。でも私は、一人で突っ走ることが自己決定の強さじゃないと思う。
周りの大切な人たちと手を取り合う関係性の中で、自信を取り戻していく。お互いを応援したり感謝し合ったりしながら、自分の人生を前に進める勇気を見つけていく。そういう人と人との関わりの中で生まれる勇気を、bloomestでもつくっていけたらと思っています。
今は、どの種が実るか決めなくていい
新会社ではこれから具体的にどんなことをしていきたいと考えていますか?
「何かしたいけど、どう動いたらいいか分からない」という女性たちが仲間を見つけて、気軽に意見交換ができるような場所づくりをしたくて。少し先を歩いてきた女性たちの経験や知恵を、これからの世代に渡していけるような、縦のつながりもつくれたらいいなと思っています。
単に情報を渡すのではなく、「知っている」を「やってみる」に変える最初の一歩をつくることがプロジェクトの大きな軸です。
聞いているだけでワクワクしますね!
先日開催された「bloomest」のイベントの様子
それから、 フェムケア製品の開発もやりたいですし、若い世代が気兼ねなく心と体について相談できる「ユースクリニック」のような場所をつくれたら良いなと思います。
病院や相談窓口って、必要だと分かっていても行くまでのハードルが高かったりするじゃないですか。そこにエンターテインメントの力を掛け合わせて、もっと気軽におしゃべりする感覚で入れる場所にできたらいいなと考えています。
お話を聞いていると、bloomestが目指しているのも、大きな決断を迫ることではなくて、まず一歩動いてみるためのきっかけを増やすことなんですね。
20代・30代のWoman type読者も、「この先どう生きるべきなんだろう」と迷うことが多い年代ですが、そんな読者に伝えたいことはありますか?
今は、とにかく種をいっぱい蒔いたらいいんじゃないかなと思います。
種、ですか?
私も30歳前後でいろいろな枠を超えて新しい人や環境との出会いを求めて動くようになってからは、「女芸人が何やってんだ?」って周囲から揶揄されたりもしました。
でも、あのときのちょっとした行動がすべて種になっていて、今になってものすごく大きな実を収穫できている気がするんです。
だから周りに白い目で見られても、「それはダメだよ」と言われても、自分の中の正義が「やってみたい」と言っているなら、素直に行動していい。今すぐ結果が出るとは限らないけど、私の場合は、あの頃蒔いた種が今になって恐ろしいほど回収できています。
20代・30代の女性って、周りが結婚したり、子どもを持ったり、仕事でも役割が増えたりして、「そろそろちゃんと人生を決めなきゃ」と思いやすいですよね。 でも今は、どの未来を選ぶか決め切るより、まず種を蒔いてみてもいい、と。
その不安な気持ちも痛いほど分かりますよ~!
私もその頃は、「一人で生きていくための人生設計をするのか、結婚するための人生設計をするのか」で、すごく悩んでいた時期でした。でも今なら、どれか一つの未来に決めなくてもいいと思えるんですよ。
私の場合は卵子凍結をしたことで、「どっちでもいいや」と思えるようになって。選択肢が残っていると思えたことで、迷いが少し減って、自分らしく動けるようになりました。
だから、今蒔いている種が、どの未来につながる種なのかまで決めなくてもいいんじゃないかな。何かしら、未来につながっていくと思います。
「正解の未来を決めてから動く」のではなく、動くことで選べる未来を増やしていく、と考えると少し気持ちが楽になりますね。
最後に、「自分で決めること」にまだ自信がない人は、何から始めればいいでしょうか?
「自己決定」って言うと、すごく堅苦しく聞こえますけど、細かい自己決定って、日常の中にたくさん転がっているんです。
例えば「バービーのイベント、ちょっと覗いてみようかな」なんて軽い気持ちで覗きに来てくれるのだって、一つの自己決定だと思う。
だから、いきなり人生を変えるような決断をしなくていいんですよね。「私は今、自分でこれを決めたんだ」と自覚して、楽しい気持ちで一日を終えるところから、自己決定の力を育てていってほしいです。
取材・文/神田佳恵 編集/大室倫子(編集部)


