「好き」を仕事にするだけじゃダメ!? 未経験でゴルフ場のキャディーになった女性が見つけた長く仕事を続けるための条件/株式会社 太平洋クラブ
仕事でもプライベートでも輝いている女性をクローズアップ! 自分らしいワーク&ライフスタイルで充実した毎日を送っている女性たちから、ハッピーに生きるヒントを教えてもらっちゃおう!

今回紹介するワーキングビューティーは、株式会社 太平洋クラブでキャディー職を務める杉川依子さん。「入社当初はゴルフのルールも知らなかった」と語る彼女が、なぜ現在の職場を選んだのか――。そして、9年間も働き続けることができたのか、“知られざるキャディー職の魅力”と杉川さんの輝きの秘訣に迫ります!
収入アップもキャリアアップもできない……
“自立できない”自分と別れを告げるためにした転職
編集部:学校を卒業後、接客業をしていたそうですが、転職をされたきっかけは?
前職は、仕事内容はとても楽しかったものの、キャリアアップの道がなく、結婚や出産をしたら働き続けるのが難しい職場でした。それに、生活していくのに精一杯の給与しか貰えておらず、この先自立した人生を送っていけるのかどうか不安を感じていたんです。そこで、一念発起して転職活動をスタートしました。
編集部:数ある転職先の中から、株式会社 太平洋クラブを選ばれた理由は何だったのでしょうか?
まず、大自然の中で働けるゴルフ場の環境にとても魅力を感じました。もともと、体を動かすのが大好きな性格なので、性に合っているなと思ったんです。
また、これは私も意外だったんですが、給与水準が非常に高く、研修期間終了後の初任給は、一般的な大卒新卒以上。生活基盤をしっかり整えて、「安定したキャリアを築きたい」と考えていた私にはぴったりの仕事だと感じました。

編集部:好きなことを仕事にできたとしても、やはり安心して働き続けられる環境があるかどうかは大事な条件ですよね。
そうですね。ゴルフ場の仕事は朝が早いので、仕事終りも早いのが特徴。実際に働き始めてみると、前職の接客の仕事と比べても自分の時間がたっぷり持てるようになって、ワークライフバランスもすごく充実しています。安定した仕事と生活がバランスよく続けられるようになったので、人生の充実感も上がっていきました。
編集部:それは素晴らしいですね! 転職された際はキャディー職についてどのようなイメージを持っていましたか? また、その印象は入社後どのように変わりましたか?
キャディーには中高年の方が多いのではないかと思っていました。でも、私が入社したころから当社では新卒採用も始めていて、20代の同僚が年々増えていきました。
新卒入社だけではなくて、元々アルバイトで生活していた女性や、介護職員をしていた人などの中途入社も活発。私もそうだったように、「長期的なキャリアを、安定的に築いていきたい」という理由で当社に転職してくる方が多いですよ。
編集部:社宅制度もあるそうですね。社員さん同士の交流は活発なんですか?
はい! 最近、「よりいっそう社員が働きやすいように」と社宅制度が整備されました。基本的には、一般的な賃貸マンションを会社が契約し、そこに、賃料の約一割を個人負担するだけで入居できるシステムになっています。会社契約なので、当然「敷金、礼金」も会社負担であることに加え、「引っ越し費用」も会社が負担してくれます。
私は、地元出身なので社宅へは入居していませんが、県外からの入社者との交流は楽しいですね。そして何よりも、コースの勉強がてら、業務終了後の夕方に、皆でゴルフをして交流することがあります。夕暮時のゴルフ場はとて綺麗ですよ。
社員同士の交流が活発かどうかは個人差もありますが、職場でもプライベートでも交流は盛んなほうではないかと思います。
編集部:会社の福利厚生がすごく充実していらっしゃるんですね、うらやましい! やはり、女性が長く働き続ける上では会社のサポート体制も気になりますよね。
そうですね。やはり、「好き」を仕事にするだけでは続かないこともあります。「好きな仕事」を諦めなくていいように、ライフステージが変わっても働き続けられる環境を選ぶことは非常に大切だと思います。
新しいことを学ぶ日々は「悩む暇もないくらい、楽しかった」
“未知の分野”だった仕事が9年間も続いたワケ
編集部:もともとゴルフのルールすら知らなかったとのことですが、未知の分野にチャレンジすることに不安はなかったのでしょうか?
多少ありましたが、当時はとにかく現状の生活を変えたかったので、勇気を振り絞って応募しました(笑)。そして入社後は先輩たちに仕事のこともゴルフのことも丁寧に教えてもらえたので、不安はすぐに解消されました。同時期に入社した仲間たちも「何人で競うスポーツなのか分からない」くらいの知識レベルでしたから、安心できたというのもありますね。
最初の2年間くらいは、新しいことを覚えるのに必死で、悩むヒマもなかったくらい。それでも、どんどんできることが増えていく自分に次第に自信がついていきましたし、新しいことを吸収することがとにかく楽しかった。楽しい記憶ばかりですね(笑)。
編集部:キャディー歴は今年で10年目ですね。入社当時と今では、全く見えている世界が違うのではないでしょうか?
そうですね。今はもうある程度ゴルフのことが分かっていますので、「新しいことを覚える」よりも「自分らしい仕事をしよう」というところまで来たと思っています。
例えば、「お客さまからいただいた質問には全部お答えしたい」、「また一緒にコースを巡ってほしい」とお客さまに思っていただくにはどのような接客をしたらいいのかなどを常に考えていますね。
編集部:なるほど。“ワンランク上”の仕事を目指していらっしゃるということですね。仕事のスキルや今後のキャリアについて、周囲の方に相談されることもあるのでしょうか?
よくあります。基本的には、先輩に相談することが多いですね。当社では、20年以上のキャリアを持つ大ベテランの方も少なくありません。経験豊富なキャディー仲間の存在が心強いんです。
編集部:女性がずっと続けたいと思えるお仕事なんですね。そんなキャディーの仕事の魅力を一言で表すと?
「究極の接客業」ということでしょうか。お客さまとは、お出迎えしてから5時間くらいはずっと一緒に過ごすので、プレーのアドバイスだけではなく、プライベートの話をすることもあります。普通の仕事をしていたら絶対に会わないような著名な方に、自分の仕事の話を聞いてもらえることもありますよ。そんな方たちと仲良くなって、「またお願いね」と言われるとすごく嬉しいんです。 『日本プロゴルフ選手権大会 日清カップヌードル杯』でキャディーを務めた時の杉川さん
編集部:最近、特に嬉しかったエピソードはありますか?
去年行われた『日本プロゴルフ選手権大会 日清カップヌードル杯』で、日本ツアー初優勝を果たしたアダム・ブランド選手のキャディーを務めたことですね。
プレー中にクラブを渡すタイミングを乱さないよう気を付けたり、「ナイスショット!」「ナイスバーディ!」と声を掛けると、ブランド選手が笑顔になるんです。プレイヤーを楽しませる、サポートする。キャディーはそんな基本的なことが大切だと実感しましたね。そして優勝が決まったブランド選手の笑顔と「サンキュー」という握手は忘れられません。
プロ選手のキャディーを務めるのは初めてだったので、最初はとても不安でしたが、いい経験になりました。自分の成長を実感できる機会にもなって、今後もキャディーを続けていく自信につながりましたね。
趣味に注ぐ時間の確保もマスト!
プライベートの充実で仕事のやる気もアップする
編集部:「究極の接客業」という話もありましたが、おもてなしやお客さまとの関わりで一番大切にしていること、心掛けていることを教えてください。
やっぱり、お客さまに1日楽しんで、気持ちよくプレーをしてもらうことです。ゴルフをされる方は、お友達と遊びに来ている人、接待として使われている人など、いろいろな方がいるので、お客さまに合わせていくことが大切だと思っています。その時に、お客さまが何をしてほしいのか、雰囲気を感じとることがキャディーの仕事だと思っています。
編集部:経験を積むごとに、自分を成長させていくことが出来ているんですね。今後の目標はありますか?
キャディーのリーダーポジションになりたいと思っています。そのために、今は若手とベテランの間に入って、調整役に徹しています。あと、同僚にはワーキングマザーも多いので、私もいつかは仕事と家庭を両立したいという憧れはあります。前職にいたころは「専業主婦になりたい」と思っていた時期もあったのですが、今は仕事が楽しいので、キャリアアップの気持ちも強いですね。
編集部:そんな風に価値観が変わるほど、仕事が楽しいと思えるようになった理由はあるんでしょうか?
先ほどお伝えした内容の繰り返しにはなりますが、「好きなこと」に「安定した環境」で取り組めているからだと思います。この両方の条件が揃っているから、毎日安心して仕事に集中することができますし、楽しむことができるんです。
編集部:仕事終りの時間が早いと伺いましたが、余暇の時間はどんなことをして過ごしていらっしゃるんですか?
早番だと昼過ぎには仕事が終わるので、一度帰ってゆっくりしてから夕方くらいに出掛けることが多いですね。時間的な余裕と金銭面の余裕ができたので、趣味の観劇に行ける回数も増えました! あとは、飼っているワンちゃんと散歩を楽しむことも心のリフレッシュになっています。
編集部:小まめにストレスを発散するのは大事ですよね。また、プライベートが充実すると、次の日の仕事のモチベーションも上がりそうですね。
そう思います。なので、“楽しみなこと”を意識的に設定するようにしています。「明日はこんな楽しみなことがあるから、仕事も頑張ろう!」って思えるように。モチベーションは自分の心の持ち方次第ですね。
ゴルフの知識もないまま始まった杉川さんの太平洋クラブでのキャリア。今ではすっかりキャディーの仕事に魅了されている。今年、社歴10年目を迎え、「今後さらにワンランク上の接客技術を身に付けたい」と語る成長意欲と、安定したワークライフバランスによって生まれる仕事人生への充実感が、一際彼女の輝きを際立たせているのだろう。

愛犬との散歩は至福の時間。「かわいいワンちゃんと体を動かすことが、リラックス&ストレス解消に繋がっています」(杉川さん)

観劇には月イチで行っているそう。公演日までのカウントダウンをするのも楽しいのだとか。「大好きな堂本光一さんのミュージカルがきっかけで、ハマりました!」(杉川さん)

白い肌が印象的な杉川さん。「日光に照らされる仕事なので、人一倍気を使っています。絶対に焼けたくない!(笑)」(杉川さん)
取材・文/大室倫子(編集部) 画像提供/株式会社 太平洋クラブ
『ワーキングビューティー・アルバム』の過去記事一覧はこちら
>> http://woman-type.jp/wt/feature/category/rolemodel/beauty/をクリック