アンジャッシュ流・競争社会を生き抜く“超シンプルな思考法”――「面白さで勝てないなら 、誰もやってないことをやるだけ」

一流の仕事人には、譲れないこだわりがある!
プロフェッショナルのTheory

今をときめく彼・彼女たちの仕事は、 なぜこんなにも私たちの胸を打つんだろう――。この連載では、各界のプロとして活躍する著名人にフォーカス。 多くの人の心を掴み、時代を動かす“一流の仕事”は、どんなこだわりによって生まれているのかに迫ります。

「勘違いコント」でブレイクし、それ以降もお茶の間に良質な笑いを提供し続けているアンジャッシュ。コンビ活動のみならず、MC、俳優、執筆業などそれぞれマルチな活躍を見せる二人が、また新たな一面を見せてくれた。それが、2016年11月3日公開予定の映画『コウノトリ大作戦!』だ。

アンジャッシュ

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【左】児嶋 一哉(こじまかずや) 【右】渡部 建(わたべけん)
1993年6月結成。お互い勘違いしたまま噛み合わない会話を続ける「勘違いコント」を代名詞に『爆笑オンエアバトル』『エンタの神様』など多くのネタ番組に出演。その後も、バラエティにとどまらず、テレビドラマやラジオナビゲーター、執筆業など幅広いジャンルで活躍している

本作では、ハリウッド映画の吹き替えに初めて挑戦した二人。手違いで誕生した赤ちゃんを会社に内緒で届けようと奮闘する「コウノトリ宅配便社」のエース配達員・ジュニア役に渡部さん、出世のためにジュニアの邪魔をするハトのトーディ役に児嶋さんが扮し、巧みな吹き替えを披露している。

近年、「コンビ格差」をネタにするお笑い芸人が増えているが、アンジャッシュの二人は両者がそれぞれの持ち味を活かし、バランス良く露出を増やしているのが特徴だ。競争の激しい仕事の世界で、自分のポジションをつくり続ける秘訣を聞いてみた。

仕事一筋だったこれまでの十数年
「何でそんなに頑張っているの?」と聞かれて答えられない自分がいた

――『コウノトリ大作戦!』ではキャリア志向で自己中心的な主人公・ジュニアを演じた渡部さん。彼が冒険の中で少しずつ“仕事をすること”の本質に気付き、真のリーダーとして目覚めていく姿が印象的でしたが、渡部さんはジュニアを演じてみて、どんな発見がありましたか?

渡部:僕もキャリア志向というか、この十数年、ずっと仕事のことしか考えてこなかったんですよね。若い頃なんて仕事もお金もなかったから、とにかくチャンスを掴もうと必死なわけです。もっと上へ行きたいって気持ちでとにかく一生懸命頑張ってきました。でも、改めて「何でそんなに頑張ってるの?」って聞かれたら何にも答えられない。

今のところは守るべき家族もいないし、「俺、何でこんな朝から仕事してんだろ」って考えちゃいますよね(笑)。だから、ジュニアが劇中で、本当に自分がやりたい仕事とは何なのか、なりたい姿とは何なのかを考えながら成長していく様子には、すごく共感しました。

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児嶋:何で頑張って働くのかって、僕の場合は家族の存在がデカいです。5年前に結婚したんですが、そこから仕事への取り組み方とか、キャリアへの考え方とか、変わったことがいっぱいあります。自分のためだけに働くのはキツイけど、誰かのためだと思えば頑張れたりする。

渡部:確かにね。「児嶋だよ!」って声も、家族ができてからデカくなったもんね。

児嶋:それはないでしょ(笑)!? 声量は変わってない!

――今回、ハリウッド映画で本格的な吹き替えに挑戦されています。率直に、いかがでしたか?

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渡部:台詞を決められた時間通りに言わなくちゃいけないのは、やっぱり難しかったですね。最初はなかなか慣れなくて、スタッフさんにもご迷惑をかけてしまいました。

――コンビでの演技合戦も見ものです。

渡部:2人の出会いのシーンで、僕が「ムーディか」って言って、児嶋が「いや、トーディだよ」って返すところがあるんですけど。ほぼ普段の芸風と変わりなかったですね。あの場面で僕らがこの映画の吹き替えに抜擢された理由が分かりました(笑)。

――演技の世界では、以前からドラマなどにもよく出演されている児嶋さんの方が渡部さんよりも“先輩”ですよね。渡部さんの演技は先輩の目から見ていかがでしたか?

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児嶋:うーん。まあまあ、ですね。

渡部:まあまあって何だよ!

勝ち目のないところに固執し続けていてはダメ
凝り固まった理想像は捨てていく

――アンジャッシュさんと言えば、「勘違いコント」で人気に火がついて、そこからまず児嶋さんが俳優として評価されて。さらに渡部さんもグルメや高校野球に関する博識ぶりで大ブレイク。児嶋さんも「ダメ芸人」としていろんなバラエティでご活躍されています。常に時代の波に乗りながら自在にイメージを変容させ、キャリアを築いていらっしゃるように見えるのですが、ご自身で意識されてきたことはありますか?

児嶋:昔の僕はプライドが高くて、「俺は絶対これしかやらない」っていう勝手な決めつけで仕事を選んだりしていたんですよ。若くて生意気で、背伸びしている部分もあって、なかなか周りのアドバイスを受け入れられない時期がありました。

――それはいつ頃の時期ですか?

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児嶋:もう10年以上前かな。で、あるとき、ふっと気が付いたんですよ、「自分が勝手に決めつけている自分より、周りが思っている自分の方が、本当の自分なんじゃないか」ってことに。そこからですね、少し柔軟になれたのは。こうありたいって固執している理想像を捨てて、みんなが面白がってくれている部分を積極的に打ち出してみる。そうやって周りの意見を素直に受け入れるようにした途端、仕事の幅もどんどん広がっていったし、新しい自分の一面を出せるようになった気がします。

渡部:僕の戦略はシンプルですよ。他の芸人さんがやってないことをやる。ただそれだけです。

――「やってないことをやる」、ですか。

渡部:だって面白さでは勝てないですから(笑)。ひな壇に上がれば、僕よりもトークの面白い芸人さんが山のようにいる。だから、この土俵に上がっても勝ち目はないなって認めることが、まず第一歩でした。その上で、空いている土俵はどこなのか探す。FMラジオのナビゲーターもグルメ雑誌の連載も当時やっている人は誰もいなかった。他の人がまだ手をつけていない空席を狙うことで、自分だけの強みをつくれるようになったんじゃないかと思います。

――そうやって差別化を図っていくわけですね。それは、芸能界という特殊な世界でなくとも、仕事をしている人であれば必要な意識ですね。

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渡部:そうだと思います。人がやっていないことを自分ができるようになったら、それだけでその人の市場価値は上がりますから、すごく単純ですよね。もちろん、まだ手がつけられていない“空きポスト”を見つけるだけじゃなくて、当然、そこを自分が担うだけの勉強は欠かせない。グルメも高校野球も今までは単なる趣味だったけど、仕事にする以上、誰にも負けないくらい徹底的に研究をしないと。

単に好きっていうだけじゃなく、自分なりに分析をしたり、他の誰も知らない情報を入手したり。他の誰にも負けないくらいその分野に詳しくなることで、初めて空席を自分のものにできるんだと思います。

児嶋:芸人なら芸をやれよっていう声もあると思いますが、それは考え方次第。僕らは、僕らなりに、柔軟に仕事を続けていこうと思っています。今回の吹き替えのチャレンジもそうですが、キャリアの可能性を広げられることは、どんどん経験して、オリジナリティーを発揮できたらいいですね。

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生き馬の目を抜く芸能界で、確固たるポジションを築くアンジャッシュ。その多彩な活動のコアにあるのは、意地を捨てることで見つけた“素直さ”と、他の人がやってないことにチャレンジする“先取性”だった。

二人それぞれがこれらの武器を携えているからこそ、唯一無二の存在として活躍を続けていけるのだろう。


映画『コウノトリ大作戦!』
2016年11月3日(木・祝)より全国ロードショー!

●監督:ニコラス・ストーラー、ダグ・スウィートランド
●脚本:ニコラス・ストーラー
●配給表記:ワーナー・ブラザース映画
●公式サイト: www.kounotori-daisakusen.jp
●オフィシャルYouTube: https://www.youtube.com/watch?v=NOGN4aUrHcw
(C)2016 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

取材・文/横川良明 撮影/洞澤佐智子(CROSSOVER)


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