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NOV/2016

「男性をおだてても女性が消耗するだけ」――働く女性が幸せに生きるために必要な“パートナー”と“覚悟”って?/男性学・田中俊之さん

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5周年記念
Woman typeが実施した読者アンケートによれば、働く女性の8割以上が現状の日本社会に“生きづらさ”を感じている。世界各国のメディアでも、日本社会で女性が働いていくことのしんどさについては度々取り上げられてきた。何となくこの国に蔓延しているしんどさの原因は何なのだろう……? どうすれば、私たちはもっと心地よく働き、生きていくことができるのだろうか――。「時代の常識を変える」パワーを持つ、各界の識者たちにその答えを聞いた。

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本特集第2弾に登場するのは、「男性学」の第一人者、田中俊之さん。「男性が男性であるがゆえに抱える問題」について研究を続け、男性ならではの生きづらさについて疑問を投げかけ続けてきた田中さん。女性たちがこの国で感じる働きにくさや生きづらさを解消していくためには、「女性をどうにかしようとするのではなく、男性側の働き方や価値観を変えていくことが急務」だと語る。

田中俊之
武蔵大学社会学部助教授
田中俊之さん

1975年生まれ。社会学の「男性学」研究を専門とする。学習院大学「身体表象文化学」プロジェクトPD研究員、武蔵大学・学習院大学・東京女子大学などの非常勤講師を経て現職。著書に『男が働かない、いいじゃないか!』(講談社+α新書)がある

女もしんどいが、男もしんどい。
昔ながらのルールや価値観が変わらないまま「男たちの城」が荒れている

今回の特集では「働く女性たちの生きづらさ」がテーマになっているそうですが、今の日本は男性が働き、生きていくのにも非常に過酷な状況です。実際、日本国内における男性の自殺率は、女性の約2倍にもなります。

男性たちのしんどさについてお話すると、まずは長時間労働や、仕事中心の人生そのものが挙げられます。それに、「社会の変化に世の中の価値観が追いついていない」というところもあるでしょう。

例えば皆さんは、働いていない男性や、いい歳なのに非正規雇用で働いている男性のことをどう思いますか? 「男はフルタイムで働いて当然でしょ」、「結婚するならちゃんと働いている稼ぎのある男性」という価値観の方がまだ一般的なのではないでしょうか。

そういった“世間の常識”があるにもかかわらず、これまで主に男性が担ってきた製造や建設のような産業は弱体化し、現実的には男性たちの仕事は減っているし、給与水準は下がっている。職にあぶれてしまう人も多い状況です。

田中俊之

それに、ここ数年で女性の社会進出もかなり進み、「女性は一般職、男性は総合職」といった線引きも無くなってきて、企業では限られたポストを争うライバルも増えた。これまで自分たちの「城」だった“仕事の世界”がどんどん荒らされ、プライドを傷付けられている状態です。

共働きが当たり前の時代と言っても、実際のところ、いわゆる男らしさ、女らしさを重んじるところは今でもあまり変わっていないんですよね。僕が教えている大学の男子学生の中には、「女性が自分よりも多く稼いだり、キャリアアップするのは嫌だ」というタイプが全体の半数もいたほどです。

男たちは男たちでしんどいのですが、改めて女性の立場から世の中を見ると、男性たちの価値観は相変わらず変わっていないし、国は保育環境も整えないまま女性にばかり「産めよ、働けよ」というし。理想と現実のギャップに生きづらさを感じて当然です。

自分を偽ることほど苦しいことはない。
女性に「立てられている」ことに気付かない男たち

また、女性たちが感じている生きづらさは、男を立てることを押し付けられているからという側面もあるでしょうね。

例えば、皆さんの会社には、自分のことをおだててくれる人が大好きな男性上司はいませんか? 自分にこびてくれる人や、自分のことを褒めてくれる人を評価する男性って多いんですよね。そういう人が上の立場にいると、女性は男性をおだてて動かさなければいけなくなる。でも、僕が実施した調査よれば、多くの女性が「何か物事をうまく運ぶために男性を立てたことがある」と回答しているのですが、ほとんどの男性たちは「自分が立ててもらっている」ということすら認識していませんでした。

田中俊之

恋愛や結婚においても同様のことが言えます。アメリカの社会学者、アーヴィング・ゴッフマンの『行為と演技』という本によれば、「アメリカの女子学生は、自分が恋愛対象としている男性の前では自分の能力を低く見せる傾向がある」と書かれていました。勉強でも仕事でも、あえて男性よりも“できないふり”をして男性を立てた方がモテるというわけです。

また、皆さんは、男性にモテるための「さ・し・す・せ・そ」という言葉を聞いたことがありますか? “さ”は「さすが」、“し”は「知らなかった」、“す”は「すごい」、“せ”は「センスいいですね」、“そ”は「そうなんですか」です。この5つさえ言っておけば、男性から評価されたり、デートに誘ってもらえると言われています。

しかし、男性側は女性に立ててもらっていることに無意識ですから、女性側がそれをやめない限り、永遠に男性を褒め続けなければなりません。職場でも、家庭でも、いつも女性が損な役回りを強いられてしまいます。

「私が努力すれば彼は変わる」という幻想は捨てよ!
大人の価値観や習慣はそう簡単に変わらない

結局、女性たちの生きづらさの問題は、女性たちをどうにかするというだけではダメで、男性の価値観や働き方もセットで変えていかないと解決しません。「子育て」という社会の継続に最も欠かせないトピック1つとっても、女性だけに押し付けていたら社会が成立しなくなるのは明確です。

そのために、国や企業は長時間労働を是正して、男性が家事や育児に参加できる時間を確保すること。「仕事だけでなく、育児や家事に参加する男性を評価する」といった姿勢を見せること。また、学校教育の現場でも男性に家事などの生活基盤となることを学ばせることを強化すべきだと思っています。

とはいえ、こうした変革が実現するのはまだもう少し先のことになるでしょうから、女性たち自身も自分ができることからアクションを起こしていった方が建設的です。

田中俊之

僕が特にオススメしたいことは2つ。1つ目は先ほど申し上げたように、“男性より下”の自分を演出して無理に男を立てるのをやめること。相手は“褒められて当然”と思い込んでいますから、女性側が消耗するばかりです。

そうはいっても、「モテるためには“こびなくちゃ”」と思っている女性がいるとしたら、それは間違いだってはっきり言えます。現在の25〜29歳の男女の人口比率を見てみると、男性の方が12万人も多いんですよ。統計的に言えば、女性が男性を選べる立場にいるわけです。「選んでもらおう」なんて考えずに、もっと強気に選びにいっていい。女性におだてられていい気になっている男性とくっついたところで、ろくな未来はないでしょうしね。

2つ目は、生涯共働きで生きていくことを前提にパートナーを選ぶこと。一流企業に勤めているかどうかとか、容姿がいいとか、そういうことばかり重視するのではなく、生活を共にするパートナーとしてお互い支え合うことができるかどうかを見ることです。オススメしたいのは、“家事能力の高い男性”を選ぶことですね。

中には、「彼は全然家事をしない人だけど、結婚して私が努力すれば変わってくれるはず」と思い込んでいる女性がいます。でも、はっきり言いましょう、大人の習慣や価値観はそう簡単に変わりません。相手はそもそも女性に家事をやってもらうのが当然と思っているので、そこから意識を変え、さらに家事スキルまで教え込んで身に付けさせるとなると、気の遠くなるような作業です。それならば、もともと生活能力が高いパートナーを選ぶ方が話は早い。「家事能力が高い男性がモテる」という風潮がもっと根付けば、男性側も自らの問題点に気付くはずです。

自分の運命を委ねられるのは自分だけ。主体的な人生ほど楽しいものはない

田中俊之

今や、ディズニー映画ですら「強いヒロインと、それを支えるヒーロー」という構図を描くようになったほど、時代は変わっています。男に自分の人生をまるごと委ねてしまうようなヒロインは、もう時代遅れなのです。

誰かに依存することをやめて、自立して生きていく覚悟を持つこと。偽りのない自分のままで、一緒に生きていけるパートナーを選ぶこと。

仕事も恋愛も同じで、周囲の環境に振り回されているだけの人生は苦痛ですからね。

「自分の人生、自分で舵(かじ)を取って生きている」そう感じられるようになったら、きっと今感じている生きづらさも少しは解消されるのでは? 主体的に生きる人生ほど、楽しいものはないと思いますよ。

取材・文/上野真理子 撮影/洞澤佐智子(CROSSOVER)

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