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JAN/2017

昼間はIT系企業の会社員、定時が過ぎたら小説家――辻堂ゆめがパラレルキャリアを通じて見つけた“働くこと”の意味

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これからの働き方を考えよう!
パラレルキャリアが創るオンナの未来

「ずっと会社員でいいのかな」「このままの仕事で、私の人生楽しいの?」。多くの女性が抱える、“仕事”と“未来”への不安。“自分らしいキャリア”を実現できていると胸を張れる人は、決して多くない。 そこで注目されているのが、何かの仕事をしながらそれ以外の仕事を持つことや、非営利活動に参加することを指す、「パラレルキャリア」という新しい生き方。報酬目的ではない仕事によって、叶えられる“キャリア”とはどのようなものだろう。 実際にパラレルキャリアによって自分の“未来”を変えてきた先輩ウーマンたちの言葉から、ヒントを見つけてみよう

今回登場するのは、最新作『あなたのいない記憶』(宝島社)が好評発売中の小説家・辻堂ゆめさん。大学在学中に第13回『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞を受賞。大学卒業の直前、2015年2月に受賞作『いなくなった私へ』で小説家デビューを果たすなど、気鋭の作家として注目を集める彼女だが、実は、昼はIT系企業の会社員というパラレルキャリアの持ち主。

小説家と会社員。全く対照的に見える「2つの顔」を持つ彼女だからこそ見えてきた「働くこと」の意味とは?

辻堂ゆめ
辻堂ゆめさん
1992年生まれ。神奈川県出身。東京大学法学部在学中に第13回『このミステリーがすごい!』大賞で優秀賞を受賞。『いなくなった私へ』(宝島社)にて作家デビューを果たす。以降、IT通信企業で会社員として働きながら作家として活動。最新作は『あなたのいない記憶』(宝島社)

大学4年生の時に小説家としてデビュー
「仕事は辞めちゃダメ」出版社の編集担当からの助言で“二束のわらじ”生活をスタート

本業をしながら別の仕事をすることを「パラレルキャリア」って言うんですね。この言葉自体、私は初めて知りました。と言うのも、私自身、何か意図があって小説家と会社員という二足のわらじの生活を始めたわけではなかったので。

以前、小説家として賞をいただいた時に、出版社の編集の方から「仕事は辞めないでね」って念を押されました。それだけ小説家の世界は厳しい世界。何か賞を獲ったからと言って、未来が保証されているわけではない。だから、私にとって小説家と会社員を両立するという選択は、自立した大人として生活していくために、ごく自然なことだったんです。

かといって、小説を書くことは昔から大好きなことだったので、会社員になるからと言って諦めようとは思いませんでした。両親曰く、幼稚園に入る頃にはもう「作家になりたい」と公言していたそうです。それくらい本が大好きな子でした。

本格的に小説を書き始めるようになったのは、中学生ぐらいの頃。高校生になると、長編小説を書いて公募に応募したりもしていましたが、運良く小説家になれたとしても、それはもっと10年後とか20年後とか遠い未来の話だろうと漠然と考えていました。だから、大学4年の時に出版社から「優秀賞」の連絡をいただいたときはすごく驚いて。急いで内定先の会社に事情を説明し、兼業の承諾をいただきました。

「残業しない」意識と、隙間時間の活用で作業効率をアップ!
多忙なパラレルキャリアの中で磨かれた時短術

私の日々のスケジュールは、朝の9時~17時45分までは完全に“会社員モード”。夜帰宅してから寝るまでの間を執筆の時間にあてています。会社員と小説家。まるで正反対の仕事ですが、おかげでいろいろなことが身につきました。

辻堂ゆめ

まず作家活動を続けているおかげで、だらだら残業することはできません。できる限り生産性高くタスクをこなして、定時退社することがマストです。昼間の仕事中は、ずっと集中して「1秒も時間を無駄にできない」という意識で働いています。

今、私の担当している仕事は、会社の重要戦略の1つであるロボット製品の営業サポート。営業担当がお客さま先に伺う際、専門家の立場から機能詳細についてより分かりやすく説明するのが私の仕事です。お客さま先へ伺うこともあれば、1日中会議に出席をしなければいけない日もあります。1つの会議が終われば、次の会議室まで全力ダッシュ!という日も珍しくないので、ハードといえばハードですね(笑)。

普段から効率アップのために工夫しているのは、隙間時間をうまく使うことです。例えば、意外と時間がかかってしまうメール対応などは、移動中の電車内などでスピーディーに処理。とにかく「後回しにしない」を鉄則に、その場その場で迅速に対処するよう心掛けています。

正直、「残業できる」なら、肉体的にも精神的にもずっと楽になるかもしれません。でも、私は家に帰ってやらなければいけないことがあるので、その手は通用しない。決められた時間内でパフォーマンスを最大化するという意識は、二足のわらじを履いていなければ身につかなかった私の強みですね。

作家としても時短術は相当レベルアップしたと思います。例えば、原稿を書き終えたら内容を再度推敲しなければならないのですが、これはやりだすとキリがない。だから私は書いた原稿をオンラインストレージにアップして、出退勤の間など移動中にまとめてチェックするようにしています。こういうITを活用した時短術は、会社員としての生活がなければ思いつかなかったかも(笑)。

それに何より会社員として働いていると、いろいろな世代や立場の人と関わります。その幅は学生の頃の比にならない。今まで接する機会の少なかった20代後半から30代の方のお話を聞くことができたり、多種多様な業界の現場を覗けるのも、作家として欠かせない知識を広げるいい材料になっています。

小説を書くことは好き。じゃあ会社員の仕事は……?
「やりがいは自分でつくる」意識を持ったら、仕事の楽しみ方が一変!

辻堂ゆめ
ここまで、パラレルワークが私のキャリアに与えてくれたものについてお話させていただきましたが、やはり、「時間の確保」以外にも、大変なことも少なくはありません。

自分の中で毎日頭の中を“会社員モード”と“小説家モード”で切り替えることが必要だし、肉体的にも疲れを感じることも。小説を書くことはもともと好きだったし、原稿の向こう側に楽しんでくださる読者の方々がいると思うと頑張れますが、会社員の仕事は、入社当初はなかなかやりがいが見出せず、モヤモヤとした時間を過ごしたこともありました。

とは言え、物理的には会社員として過ごす時間の方がずっと長い。この時間を無為に過ごすのはもったいないって、ある日気付いたんです。そこで、どんな仕事ならもっとやりがいを感じられるかを考え、社内公募で今の部署への異動を申し出てみました。入社2年目にして思い切ったチャレンジだったのですが、ありがたいことに採用していただけて。実際に、お客さまと触れ合える仕事をするようになったら、それが会社員として働く何よりの活力源になりました。

営業職と小説家。やっていることは全く違うことだけれど、結局、私にとって大事なことは誰かを楽しませたり、喜ばせたりしたいという欲求なんです。私にとって「働くこと」とは、「誰かを喜ばせること」。そこに小説家と会社員の違いはないということに気付くことができました。そう考えられるようになってからは、この二足のわらじ生活が以前よりもずっと充実したものになりました。いろいろな方法で人に喜んでもらえる仕事ができるなんて、すごく贅沢なことですよね。

パラレルキャリアは逃げ場じゃない
「本業/副業」ではなく、どちらも「本業」にすることが大切

これからパラレルキャリアにチャレンジしたいと思っている方に、私から1つだけアドバイスできることがあるとしたら、どちらも本業のつもりで楽しんでほしいということ。その1点に尽きます。

辻堂ゆめ

もしかしたら、今の自分の職場に不満があって、別の環境を求めている人もいるかもしれません。でも、パラレルキャリアは決して逃げ場ではない。苦労することも増える分、中途半端な気持ちでは続かないと思います。

私自身、本業と副業という意識は全然ないんです。よく「本業はどっちなの?」と聞かれますが、「どっちも」って答えるようにしています。「副業」というとどうしても「ほどほどでいいか」と考えてしまいますが、どちらにも100%のパワーを注いでいきたいので。

かと言って、小説家と会社員という生活だけで私のすべてが埋まってしまうのも本意ではありません。小説家でもない、会社員でもない、素顔の時間も大事にしたい。だから週末の2日間は、基本的に原稿も書きませんし、会社の仕事もしません。とにかく友達と遊んだり、飲み会に出かけたり、思いっきり楽しむ。そうして月曜が来たら、また会社と執筆、両方をフルパワーで頑張る。そうやってバランスをしっかりとることも、パラレルキャリアを楽しみながら続けていく秘訣と言えるかもしれませんね。

 あなたがいない記憶

【最新書籍】『あなたのいない記憶』(辻堂ゆめ/宝島社/2016)

【著者コメント】
2016年10月に私にとって3冊目の小説となる『あなたのいない記憶』が発売になりました。これは、約10年ぶりに再会した幼馴染みの2人が、共通の知人である「タケシ」という男の記憶だけ、それぞれまったく書き換わっていることに気付いたことから始まるミステリーです。これは、私がこうした会社員との二足のわらじの生活をスタートさせて初めて書き上げた小説で、メインキャラクターの一人である京香は、まさに私自身が会社員生活の中で経験したことを投影した人物。ちょっと疲れたOLなんですが、彼女の抱えている日々の鬱屈をリアリティーたっぷりに描けたのも、会社員としての生活があるからこそ。きっと読者の皆さんもうなずける描写がいっぱいあるのではないでしょうか(笑)。謎解き要素の強い作品なので、ぜひ通勤の合間に、寝る前のひとときに、楽しんでいただけると嬉しいです。
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取材・文/横川良明 撮影/吉永和志

連載『パラレルキャリアが創るオンナの未来』の過去記事一覧はこちら

>> http://woman-type.jp/wt/feature/category/parallelをクリック

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