10 JUL/2017

「成功体験は捨てていく」LINE GAME爆発的ヒットの立役者・奥井麻矢が明かす“アイデアマン”の仕事術

話題の“あの商品・サービス”を生み出したのはどんな人?
今をときめく!“ヒットgirl”の頭の中

働く女性たちに愛されているヒット商品やサービスを生み出した女性たちの頭の中を大解剖! 彼女たちがこれまで築いてきたキャリアや、仕事ノウハウを徹底インタビューしていきます。
話題の商品・サービスの「生みの親」「育ての親」から、ワンランク上の仕事をするためのノウハウや、モチベーション高く仕事を続けるコツを学びましょう!

『LINE POP』に『LINE ポコパン』など数々のヒットタイトルを擁するLINE GAME。通勤時間に、ちょっとしたオフタイムに、ついついプレイしてしまう働く女性も多いだろう。その仕掛け人が、LINE GAME立ち上げメンバーの一人である奥井麻矢さんだ。日頃からゲームに馴染みのないユーザーでも夢中になって楽しめる「カジュアルゲーム」という市場を開拓した第一人者に、ヒットコンテンツづくりの秘訣を聞いた。

LINE GAME

LINE株式会社
LINE GAME事業1部 事業部長
奥井麻矢さん
1987年生まれ
。インターネット広告代理店に営業職として新卒入社した後、2011年、NHN Japan株式会社(現LINE株式会社)に転職。ハンゲームのアライアンス営業業務を経て、LINE GAMEの立ち上げに携わる。プロデューサーとして『LINE ポコパン』など多数のタイトルを手がけ、17年1月、ゲーム事業1部の事業部長に就任し、現職に至る

弱点だと思った“ゲーム経験の無さ”が強みになった

――奥井さんはLINE GAMEの立ち上げから参加されていると聞きました。昔からゲームには詳しかったんですか?

いえ、幼少期からそれほどゲームで遊んだ経験はなくて、知識はごくごく人並みでした。でも、それは決して悪いことではなかったと今は思います。というのも、LINE GAMEの立ち上げ当初からの目標が、ゲームをやったことのない人たちにゲームの面白さを広げることだったので、ターゲットに最も近い存在として意見を出すことができ、それが私の強みになりました。

――LINE GAME立ち上げの際に大事にされたことはどんなことですか?

LINE GAME

大事にしたのは、「LINEならではのゲームを展開しよう」ということ。人と人をつなぐのが『LINE』の魅力であり使命です。だから、LINE GAMEにおいても友だち同士で遊べる要素をふんだんに入れよう、と。友だちをゲームに招待したり、ハートを送ったりできるのも、そういった狙いがあるからなんです。

――最初に『LINE POP』をはじめ5つのタイトルを一挙にリリースされましたよね。

そうです。中でも看板タイトルの『LINE POP』をリリースする上で徹底したのがユーザーテストです。主にABテストの手法を用いて意見をリサーチし、そこで得た声に、私自身の考えをプラスしながら、関係者みんなで企画をブラッシュアップしていきました。

――ユーザーテストを経て、どんな収穫が得られましたか?

ユーザー心理をよりリアリティーを持って実感できたことですね。例えば、ユーザーがゲームをしていて面白さを感じるのはどこかというと、意外と「勝敗」とか「獲得点数」云々の部分ではなくて。それよりも重視していたのは、「やっていて気持ち良かった」みたいな快感とか、「上手くなったような気がする」という感覚面での刺激。企画側の想定を裏切るそういう反応を正確にとらえることができたからこそ、「またやりたい」というユーザーの感情を動かす仕掛けをより多く盛り込むことができたのではないかと思います。

同じことをやり続けても通用しない。「変わり続ける姿勢」が愛されるプロダクトを育てる

――プロダクトを育てていく上で一番大変だったことは?

ありがたいことにLINE GAMEはサービス開始当初から順調にユーザーが増えています。早々に成功体験を積むことができた分、いかにその成功体験を捨てるかという点には苦労しました。

――同じことをやり続けていてもダメ、ということですね。

LINE GAME

そうです。ゲームは特に“目新しさ”や“やったことない”という感覚が非常に大事で、一度成功したからといってそれにしがみついているとすぐ飽きられてしまいます。なので、成功事例の範囲だけを延々と続けていってもスケールは大きくならないんです。そこに+αでどんなものが次に求められるか、仮説立てをして常にトライしていく姿勢が重要だと考えています。

――それを実践できたケースはありますか?

例えば、『LINE ポコパン(以下、ポコパン)』からそれに続く『LINE ポコポコ』なんかはその代表例かもしれません。『ポコパン』自体、LINEキャラクターの登場しないゲームコンテンツで初めて2000万ダウンロードを突破したヒットタイトル。じゃあ『ポコパン』の次は何をしようか開発会社と考える中、出てきたのは『ポコパン』とは別の発想でした。

具体例を挙げると、『ポコパン』は1分の制限時間の間に同色のブロックを3個以上一筆書きでなぞって消すことでモンスターを倒すアクションパズルゲーム。ただ一方で、1分間のゲームじゃ一過性のブームになってしまう懸念はつきものですし、中にはあまり急かされず腰を据えてプレイしたいという人もいる。そういうユーザーに向けてリリースしたのが『LINE ポコポコ(以下、ポコポコ)』です。ひたすら得点を競う『ポコパン』に対し、『ポコポコ』にはステージをクリアしていくゲーム性が新たに加わりました。『ポコパン』の成功体験に甘えず、ユーザーがどんなゲームを求めているかキャッチアップして盛り込んだからこそ、『ポコパン』に負けないヒットにつながったんだと思います。

――携帯ゲームは飽きられやすいというお話がありましたが、そんな中、「ゲームのプロデューサー」を務める上で必要なことは何だと思われますか?

LINE GAME

自分たちのプロダクトが世間からどう受け止められているのか、その上で私たちがやるべきことは何なのか。立ち位置と距離を正確に把握することですね。人と人をつなげ、マジョリティーに愛されるゲームを送り出していくことが私たちの使命。プロデューサーに求められるのは、そういう軸をぶらさず、チームメンバーやパートナー企業と一緒に、着実に目標を目指す基盤をつくることでしょうね。すごく難しいことを知っているとか、何か技術的に優れたところがなくちゃいけないとか、そういうことではないと考えています。

“自分グループ”でアイデアをメモ!『LINE』を活用した思考整理術で業務を効率化する

――ユーザー心理の把握を大事にされている奥井さんですが、その他にもヒットタイトルを生むために日頃から心掛けていることはありますか?

競合他社のゲームを研究するだけでなく、世の中全体のトレンドをチェックすることですね。と言うのも、私たちのターゲットは根っからのゲーム好きというわけではなくて、あくまで自分の可処分時間を何に使うかという選択肢の1つとしてLINE GAMEをプレイしてくださっている方たち。肩を並べる相手は、人気のECサイトや動画配信サイトなど、参考にしているもののジャンルはさまざまです。ゲームに限定せず、今世の中で何が面白いと思われているのかを広くリサーチすることが大事だと思っています。

――日々、たくさんのアイデアを生むことが求められると思いますが、“使えるアイデア”が生まれやすい時間や空間ってありますか?

私の場合はお風呂ですね(笑)。これは悪い癖でもあるんですけど、私はオンとオフであまり区別をつけていなくて、常に仕事についてあれこれ考えてしまうタイプ。思考をクリアにするには、「何も考えない時間」を意識的につくる必要があるんです。それが、私にとっては入浴タイムなんです。不思議なんですけど、頭を空っぽにしてリラックスしていると、逆に面白いアイデアが生まれてくるんですよね。……結局、仕事のこと考えちゃってますね(笑)。あとは日々思いついたことはこまめにメモするようにしています。

――そういうメモって後で整理するのが大変じゃないですか?

LINE GAME

そうなんですよ。そこで私が活用しているのが、『LINE』なんです。『LINE』って友だちとのコミュニケーションに使っている方がほとんどだと思いますが、実は自分用の思考整理ツールとしても優秀で。やり方は簡単。組織マネジメントとか、ゲームとか、テーマごとに自分一人のグループを作って、そこにちょっとした気付きやアイデアを投稿しておくだけ。PCと同期しておくと一層便利です。「慣れない業務管理系アプリを使うのは大変だから、もっと手軽にメモを整理したい」という方にはオススメですよ。LINEの社員はこのテクニックを使っている人、多いと思います!

――なるほど、それは是非試してみたいです! 最後に、奥井さんのようなヒットメーカーを目指したいという女性に向けて一言メッセージをいただければ。

ヒットメーカーというと、人にはない企画力がなければ務まらないと思う人もいるかもしれません。ですが、私のようなプロデューサーに求められるのは、そうしたクリエイティブな才能よりも、むしろ地味な作業を継続できる粘り強さや、チームメンバーやパートナー企業など全方位と信頼関係を築けるバランス感覚。「自分は普通だから……」と可能性を閉ざす必要はありません。やりたいことがあるなら思い切ってチャレンジしてみると、意外なくらい“できること”はたくさん見つかるはず。臆せず一歩踏み出すのが何より大事ですね!

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取材・文/横川良明 撮影/栗原千明(編集部)