正能茉優が語るミレニアル世代の本音「仕事、家族、友達、恋愛……それぞれ70点でも全体で120点に」
「ずっと会社員でいいのかな」「このままの仕事で、私の人生楽しいの?」。多くの女性が抱える、“仕事”と“未来”への不安。“自分らしいキャリア”を実現できていると胸を張れる人は、決して多くない。 そこで注目されているのが、何かの仕事をしながらそれ以外の仕事を持つことや、非営利活動に参加することを指す、「パラレルキャリア」という新しい生き方。報酬目的ではない仕事によって、叶えられる“キャリア”とはどのようなものだろう。 実際にパラレルキャリアによって自分の“未来”を変えてきた先輩ウーマンたちの言葉から、ヒントを見つけてみよう
地方にある魅力的な商材を女性目線で可愛くプロデュースし、地域活性化に貢献する株式会社ハピキラFACTORY(以下、ハピキラ)代表取締役社長の正能茉優さんは、大学在学中に同社を起業した若手経営者であり、その一方で、ソニー株式会社で新商品の開発に携わる会社員としての顔も持つ。朝イチでハピキラの仕事を済ませ、9時30分にソニーに出社。複数の重要な会議に出席し、通常業務をこなして18時に退社したらまたハピキラの仕事。その後は、友達との飲み会や家族との食事へ……。そんな驚くほどタフなスケジュールを、にこやかに楽しんでいる。
「女性こそ、パラレルキャリアに向いているのでは?」と提案する正能さん。パラレルキャリアのフロントランナーとして注目を集める彼女に、若手女子がこれから仕事を楽しみながら長く続けていくために必要なことを聞いてみた。
女性はもっと自由に、もっとしなやかに働ける可能性がある
私、パラレルキャリアこそ、女性が長く働く上で最適な戦略じゃないかと思うんです。共働き夫婦が増えたとは言え、依然「一家の大黒柱=男性」というのが社会の認識。結婚、出産、育児、親の介護、全部女性に降りかかってくるのが今の現実です。でも、その現状を嘆いてばかりいても仕方ないですよね。
この状態をポジティブに置き換えるなら、もともと女性はキャリアが流動的にならざるを得ない分、リスクを取りやすいということ。だって、一家の生活を背負っている男性に、いくらパラレルだなんだって言ったって、そんなリスク、怖くて取れないですからね。でも、女性ならもっと冒険しやすいはず。
私たち女性は、もっと自由に、もっとしなやかに働ける可能性があるというのが私の持論です。その特権を活かして、もっと幸せになろうよってことを、まずは女性たちに伝えたいですね。
あと、「選択可能な人生のパーツを増やす手段」としてもパラレルキャリアは有効ですよ。例えば、もし1つの組織にだけ所属して生きていたら、出産や子育てなどライフステージの変化が起きた途端にキャリアが途切れてしまう可能性がある。でも、2つ以上の仕事の足場を持っていれば、たとえどちらかのキャリアが継続困難になっても、もう片方の道が残されています。人生のフェーズごとにキャリア形成の方法が変わる女性にとっては、選択可能なパーツは多いに越したことはありませんよね。そうすれば、その時々の状況や事情に合わせて、最適なパーツをテトリスみたいに組み合わせて、自分の好きなようにキャリアを築いていけます。これって長く仕事を続けていきたい女性にとっては、すごく心強いことだと思うんです。
好きを仕事にするためには、「自分の好き」が「誰の役に立つのか」を考えること
私はこうした複数の足場をつくっておく働き方を「ビュッフェキャリア」と呼んでるんですけど、幸せの基本って、ビュッフェのように、好きなことを好きなバランスで好きな量だけやることだと思うんです。ただし、食べ過ぎには要注意。「ビュッフェキャリア」だからこそ、何をどれくらい食べたいか明確にしておかないと、すぐにお腹を壊しちゃう。
そこで私が実践しているのが、「人生配分表」をつくること。「仕事」、「家族」、「友達」など、自分がどの項目にどれだけ時間を使いたいか、日々のスケジュールに落とし込んで可視化し、PDCAを回していきます。
そして、1回つくった「人生配分表」は定期的に見直していくことも大事です。「最近家族との時間を取れていなかったから、もっと家族との時間を取ろう」とか、「もうすぐ商品発売の時期だから、今は仕事を頑張りたい!」みたいな感じで、「今の自分はこうありたい」というものを明確にして、日々の行動に落としこんでいきます。これをやらないと、いろいろやってるけど“全部中途半端な人”になっちゃうリスクがあるので要注意です。
好きなことをやるだけなら、ただの趣味
好きなことで価値をつくるのが仕事
いろいろとお話しましたが、パラレルキャリアを認めてくれる会社はまだきっと多くはないだろうし、社会的なルールだって不完全なまま。ルールは、先駆者たちが実践していく中で、後追いでできていくものだと思います。
だから、今まさに実践してみようと思うと大変なこともやはり多いはず。でもそういう壁にぶつかった時に続けていくためには、自分がなぜそれをやるのかとか、「好きだからやるんだ」っていう気持ちが一番大事なんじゃないかな。
そもそも私にとって「仕事」とは、「好きなことなのに、お金になること」なんです。好きじゃないことに人生を割きたくないし、生きていくためにはお金が必要だから稼げないこともしたくない。
そこで私が気付いたのは、自分の好きなことが“価値”になる環境を探せばいいんだということでした。例えば、ハピキラの事業はもし東京でやっていたら、あまり意味はなかったかも。だって、東京には可愛いものがいっぱい溢れているから。可愛いものをつくるのが好きな私が、中身はよくても可愛いものが少ない地方というマーケットと巡り会ったからこそ、ビジネスとしての価値が生まれたんだと思うんです。
不要なリスクは取りたくないし、できるだけ失敗もしたくない
まだ25歳の私がいろいろと言いましたけど、正直こんな話をしつつも、半年に1回くらいはパンクして、「もう、仕事したくない!」って状態になることもあります。だって、人間だもの。そんなときはどうするかと言ったら、家に引きこもるに限る(笑)! 有給を取って会社はお休みして、ハーゲンダッツを食べながら『Netflix』を観て。いいですよね、そういう日があったって。半年に1回くらい休みたいときに休んだって。仮にその日に休んだとして、3日後くらいに後悔と自己嫌悪に苛まされるっていうなら働いた方がいいと思うけど……。そうじゃないなら、自分を労わったり、ガス抜きしたりしてもいいと思うんです。人生100年時代とも言いますし、負荷をかけ過ぎても続かないですよ。
こう言ったら「ゆとり」と言われるのかもしれないけれど、基本的には不要なリスクなんて取りたくないし、失敗もしたくないし、そんなに“挑戦”なんてしたくないというのが、私たちミレニアル世代の本音です。上の世代の人たちみたいに24時間を仕事に注いで、上場して、成り上がってみたいな成功モデルはかっこいいと思うけど、そこまではいいかなと思ってしまいます。そういうこと以上に、仕事も趣味も家族も友達も、全部70点でもいいから全体で120点にして、バランスを大切にしたいというのが私たち世代の理想的な生き方。そういう意味でも、パラレルキャリアは1つの選択肢としてアリだと思いますね。バランス良くワークもライフも楽しんで人生の満足度が上がって、「なんだか、こういう毎日は幸せだな」って思いながら、日々を生きていける女性が増えるといいですよね。
取材・文/横川良明 撮影/栗原千明(編集部)
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