Twitterで話題の保育士てぃ先生が教える、働くママを楽にする“イライラ防止テクニック”
働くママの毎日は忙しい。時間に余裕がない中で、なかなか思うように子供が動いてくれずに、ついイライラしてしまう……。ワーキングマザーの誰もが一度は経験したことがあるはずだ。
2017年10月11日に行われたイベント『渋谷でママ大学』での、人気保育士てぃ先生によるセミナー『これを知るだけで子育てがもっと楽しくなる!』には、そんな働く母たちのヒントが詰まっている。ここではセミナーの中から、イライラ防止に役立つテクニックをご紹介しよう。
イライラ防止テクニック1
「分かる」の一言で“イヤイヤ状態”から脱出!
出勤前の慌ただしい朝、玄関先で「靴はくのイヤ!」と駄々をこねる我が子。つい「イヤじゃないの!」と声を荒げてしまいそうだが、「これでは逆効果」とてぃ先生。
「『イヤだ』『イヤじゃないの!』、これを5分続けるくらいだったら、『分かる』と一度認めて、子供の思いを受け止めてあげてください。子供の『イヤ!』には、いろいろな感情が詰まっています。
それを説明できないから、この2文字に全ての気持ちを乗せている。イヤイヤ期が数週間で終わる子と、1年近く続く子の一番の違いは、『周りの大人が子供のイヤイヤを認めるかどうか』にあると考えています。
『分かる。先生も靴はくのイヤなんだ。分かるよ~』。その上で、『あっ、でも、お外楽しそうだなぁ』と続ける。このワンステップがあるかないかで、子供の受け止め方は全く違います」
イライラ防止テクニック2
“最初の怒り”だけに集中!
積み木を並べて遊んでいた子供が、並べた積み木に向かって別の積み木をぽいっと投げる。
それを見た大人が「なんで積み木投げるの! ごめんなさいって言いなさい!」と注意し、うつむいたまま黙っている子供はストレスから物に当たるなどする。
すると、「なんで物に当たるの!」とさらに注意が続く。
これに近い光景をよくみるが、「これではお互いハッピーじゃない」とてぃ先生は話す。
「そもそも最初に子供に伝えたかったことは、『積み木を投げたら危ないよ』というだけのことだったんです。
理由を言わずに『悪いことをしたから謝らせないと』となってしまうと、誰と何に対してのごめんなさいなのかが分からない。
さらには『なんで物に当たるの!』と最初に注意したこととは関係のないところまで怒ってしまう。
お父さん、お母さんたちの子育てを見ていると、正直こういう傾向があるように思います。
さらに怒ったついでに『何度言ったら分かるの!』と始まっちゃう。
そこは一回落ち着いて、『今、何を伝えたかったのか』を考えてみてください
最初に伝えたいと思ったことから外れずに、最初の部分だけを短く、分かりやすく伝える。
自分も何に対してイライラしているのかが整理できますし、子供も何に気をつけたらいいのかが分かりやすい。子供にあれもこれも伝えても、逆に何も伝わらないことがほとんどですから」
イライラ防止テクニック3
「他の子と比べてうちの子は……」を封印!!
巷に溢れる育児の情報。子育ての仕方は人それぞれだからこそ、時に我が子を他の子供と比べてしまったり、周囲の「私の時はこうだった」という言動に振り回されたりするのは、世の母たちの“あるある”だろう。
「『◯歳までにこうしなきゃいけないの?』っていう不安な声が目立つんです。ちょっと発達が遅れているとか、体が小さいとか、ほとんどはその時だけなんだから、周りを気にする必要はないんです。保育園でも同じクラスの4月生まれと3月生まれを比べても意味がない」
その代表格がトイレトレーニング。てぃ先生は「トイレトレーニングは、精神論じゃない」と断言する。
「トイレまで歩いていける足腰があること、膀胱に尿を貯められること、尿意を感じられること。この3つがそろって初めてトイレトレーニングを開始~完了までできるんです。
子育て本に『2時間半以上膀胱に尿が貯められるようになってから始めましょう』と書いてあることが多いですよね。
仮に30分しかおしっこが貯められないのにトレーニングを始めたら、しょっちゅうトイレに行くことになって、大変じゃないですか。だから2時間半以上が目安って書いてあるんです。
つまり、その子の体の成長次第。他の子と比べても意味ないんです。叱ったって膀胱は大きくならない。焦ることなく、比べることなく、我が子にあったアプローチをすることに集中を」
イライラ防止テクニック4
子供の「やりたい」をお膳立て!
習い事をさせたい、おままごとで遊んでほしい。そんな親の希望に乗り気じゃない子供。この時、この希望が大人の押し付けであることを理解し、うまく子供の気持ちを乗せるのがポイントだ。
「おままごとで遊んでほしいと思った時に、『今日はおままごとをやるよー』っていうのは、大人の押し付けです。
例えば僕だったら、あらかじめおままごとコーナーを遊んでいた途中みたいな状態にします。子供はまっさらな状態よりも、「誰かが遊んでいたのかな?」と感じられるようなところに飛び込みやすいんです」
少し回りくどく感じるが、「子供が自分で選んで、関心を持って、好きになったぞっていう経験の積み重ねが、子供の主体性を育てます」とてぃ先生。
「僕の保育園では一定の年齢を迎えたら食事を自分で盛ります。山盛りにしちゃって食べきれない子もいますが、『食べきれないでしょ!』と注意しなくても、翌日その子は適量を盛ります。
自分で選んで、失敗して、経験する。そうすれば大人が何も言わなくても、子供は自分で学んで行くんです。
『子供に言うことを聞かせることができた! やったー!』ではなくて、子供がそこにいくように仕向ける。『しめしめ、うまくいったな』っていう成功体験を、親御さんにはしてほしいですね。
そこが子育ての面白さだと僕は思っています」
子供だって疲れている。理想を求めるなら“理想の親”になる努力を
子供に家庭に仕事にと、朝から晩まで忙しい日々を送る、働く母。だが、「疲れているのは親だけではない」とてぃ先生は意外な話を始めた。
「朝、保育園でぼーっとしている子が多いんですよ。なぜかなと思ったら、疲れているんです。
特に最近は共働きのご家庭が多いですから、つい朝から『早く起きなさい! ご飯食べなさい! 着替えなさい! 早く歩きなさい!』って、無意識に子供を急かせているんですね。
そうしてやっとたどり着いた保育園で、今度は保育士さんに『早くお部屋に入りなさい』なんて言われるんです(笑)。朝は戦争だって言いますけど、子供も戦争だと思うんですよ」
朝の忙しい時間に、イライラせず、子供を急かさずにいるためには、時間に余裕を持つことが必要。「特にイヤイヤ期は、15分でいいから早く起きて時間に余裕を持って」と、てぃ先生は続ける。
「最近のお父さんお母さんを見ていると、『こうなってほしい』『こうしてほしい』という理想がすごくある。だったら親も、子供にとっての理想に近づかなければならないのではないでしょうか。
大変だから、忙しいから、だから子どものために早起きできませんと、自分が子供にとっての理想を目指す努力をしないのは、フェアじゃない。
もちろん大変なのは重々承知の上なのですが、子供が小さい間の限られた期間に、両親が少し時間に余裕を持つだけで、子育てが豊かになるんです。そう考えたら、頑張れる気がしてきませんか?
その時にしか見られないかわいい子供の姿を、ぜひ大事にしてあげてください」
てぃ先生のテクニックの根底にあるのは、子供とのコミュニケーションと、その成長を楽しむ姿勢。「あの子も保育園で楽しみながら頑張っている」。
そんな気持ちを胸に、親子一緒に努力するつもりで、明日は15分早く起きてみる。生まれた余裕は、母と子のコミュニケーションをきっとハッピーにしてくれるはずだ。
>>保育士てぃ先生から「もう仕事辞めたい」働くママへの助言 ――「量より質の子育てで両立生活が変わる! 意識すべきはたった10分の集中触れ合いタイム」
取材・文・撮影/天野夏海