「あなたの我慢は、誰も幸せにしない」北欧女子オーサが語るスウェーデン女子がハッピーな理由
満員電車に揺られて心はすり減り、会社と家を往復するだけの平日。疲れてどっぷり寝ていつの間にか終わってしまう休日……。そんな毎日にちょっと物足りなさを感じている日本人女性は多そうだ。物質的には豊かだけれど、日本人の幸福度は低いということもよく言われている。
一方で、国土は小さいけれど、男女平等先進国で常に世界の幸福度ランキングで上位に位置するスウェーデン。なぜ、スウェーデン人々は「幸せ」を実感しながら生きられるのだろう。エッセイ漫画『北欧女子オーサが見つけた日本の不思議』著者でスウェーデン出身のオーサ・イェークストロムさんに聞いてみた。

漫画家
オーサ・イェークストロムさん
スウェーデン出身。子どものころ、アニメ『セーラームーン』と漫画『犬夜叉』を知って漫画家になることを決意。スウェーデンでイラストレーター・漫画家として活動後、2011年に東京へ移り住む。 好きな食べ物はラーメン。一番好きなアニメは『少女革命ウテナ』、一番好きな漫画は『ナナ』 。日本再発見コミックエッセイ『北欧女子オーサが見つけた日本の不思議』シリーズで話題になる ブログ:http://ameblo.jp/hokuoujoshi/ Twitter:@hokuoujoshi
「好きな仕事」をすることにこだわる
スウェーデンの女性たちは、ほとんどの人が仕事をしています。結婚しても専業主婦はほとんどいませんし、ずっと働き続けるのが前提です。なので、仕事選びで大事にするのは「好き」なことかどうか。嫌々やる仕事だったら絶対長続きしませんから、「好き」と思える仕事を探すんです。
「同じ会社にずっといても給料があまり上がらないから」という理由もあるのですが、「好き」な仕事を求めて20~30代で転職を繰り返すことも当たり前。それは別に悪いことではありません。学校に入り直し、勉強してから再度仕事に就くという女性も多いですよ。でも、実は今スウェーデンでは若者の就職難が問題になっています。なので、悠長に仕事を選んでいる場合でもないのですが……(笑)
もともと福祉が充実しているので、「お金」のために働いたり、結婚したりする人は比較的少ない環境なんだと思います。福祉や国の制度はそう簡単には変わらないかもしれませんが、日本の女性もこれからは長く働き続けていくと思いますから、そうなれば「好き」なことをするのが一番ですね。
どんなに働いても19時には帰る
スウェーデンには長時間労働をする人はほとんどいません。たまに管理職の人が残業しますが、それでも19時には帰ると思います。
どんなに大好きな仕事でも、1日中そのことばかりしていたら、クリエーティビティーが失われてしまう。例えば、脳は「今日あったこと」の情報を睡眠中に整理するといいますよね。それと同じで、仕事から離れているときに考えがまとまったり、いいアイデアが生まれたりすることって多いはずです。いい仕事をするためには、会社の外に出ること、しっかり休むことが必要だとスウェーデン人は考えます。これもハッピーに生きるコツではないでしょうか。

そういう私は日本に暮らして6年目なんですが、もともと趣味と仕事が重なっているから、漫画ばっかり描いて仕事ばっかりしています(笑)。スウェーデンの友達みたいに、メリハリつけて働けていないので偉そうなことは言えません……!
嫌いな制度・風土に無理に自分を合わせない
日本の女性は本当に頑張り屋だし、真面目だと思います。長時間労働もそうですが、「うちの会社はどうせ変わらないだろう。だったら自分が我慢しよう」って諦めちゃう。でも、それでは何もいいことって生まれないと思うんです。だからといって会社と闘わなくてもいい。一会社員が企業や社会の仕組みを変えるなんて難しいですから、疲れちゃいます。でも、そこから逃げることは簡単じゃないですか?
私の日本人の友達のことを話しますね。彼女はかつて、クリエーティブ系の仕事をしていて、残業は多いけれど給料は良い仕事をしていたんですよ。でも、口を開くといつも会社の愚痴や不満が多かったし、どうも幸せそうではなかった。そこで彼女は思い切ってパートタイムの仕事にチェンジして、できた時間でジュエリーデザインの学校に通い始めたんです。その後は独立してジュエリーデザイナーとしてバリバリ活躍するようになりました。思い切って自分と合わない環境から抜け出して、好きなことで道を切り開いた今では、すごくイキイキしていますよ。
今いる会社が自分に合わないなら、無理に合わせずにそうじゃない場所に行けばいいと思います。合わせる人がいなくなったら、時代に合わないそういう風土・制度だってさっさと無くなりますし、実はそれが世の中を良くするアクションになるかも。日本人は良くも悪くも、周囲の人と合わせる特徴があるから、誰かが事例を作って周囲の人が同じように動き出すと、いい変化も一気に広まるのでは?
ちなみに、私は朝が苦手だし、会社勤めは向いてないタイプ。でも、仕事は大好きだからずっとしていたい。それで今は、ほとんど家で漫画を描く仕事スタイルを自分で選んだわけですが、ほとんどの時間が幸せですね。自分の部屋で好きな音楽聴いて、好きな格好で仕事をするなんて、素敵でしょ?
何かしなきゃ、じゃない。何がしたいかを考える。

最近、日本でも労働時間を短縮する動きが出てきましたね。でも、お休みはすごく少ないと思います。スウェーデン人は、夏休みなら大抵2~3週間は休みます。だって、2~3日の休みじゃ頭の中から仕事のことが離れないじゃないですか!
「スウェーデン人はそんなに休んで何するの?」って日本の友達には聞かれます。答えは、「何もしない」、です。時間ができると、何かやらなきゃとか思っちゃうかもしれませんが、「何かやらなきゃより」大事なのは、何がしたいかを考えることです。自分の欲求に従って、ブログ見たり、アイス食べたり、その時にしたいことをして過ごします。
ただ、最近はインスタみたいなSNSもあるから、友達が何かしてるのを見て「私も運動しなきや」とか「素敵な写真撮りたい」とか焦りを感じる子はスウェーデンにもいるみたい。「自分を完璧に見せたい病」というんでしょうかね。もしもそういうのに疲れるなら、SNSを閉じて暇を存分に楽しめばいいと思います。
「自分は自分」、周囲と自分を比較しない。
スウェーデン人は、世界と比較してもすごく平等意識が強いし、かつ個人主義の人が多いと思います。それはもう極端なほど(笑)。LGBTの人にもすごく寛容だし、自分の指向性をオープンにしている人ばかりです。「私は私」という考え方が強くて、幸せのモデルみたいなものがないんですよね。
だからこそ、いつだって「自分にとっては何が幸せか」を考えます。ずっとそういう答えを探して、その時々の「幸せのカタチ」に合わせてライフとワークをデザインしていく。その時、誰にどう思われるかとか、周囲の人と違うかどうかは重要ではありません。
でも、そういうことを考えるのって、「暇」がないとできないんですよ。忙しい毎日で、会社と家の往復で終わっていたら、そんなことを考える余裕も持てない。ずっと悶々としてしまいそうです。
改めて言いますが、モヤモヤしたら思い切って長く休暇を取ってみるのはどうですか。気持ちに整理がついて新しいスタートが切れるかも。
人に合わせることよりも、自分がどうしたいかに向き合ってみてください。そうやって一歩踏み出せば、明日からの毎日が少しずつハッピーになるはずです。

>>日本には男性への差別がある!? 北欧女子に聞く、日本の女性の不思議
取材・文/栗原千明 撮影/赤松洋太