壇蜜が「仕事に楽しさは求めない」とキッパリ言い切る理由――“自分らしく”“キラキラ”幻想に押し潰されないで
今をときめく彼・彼女たちの仕事は、 なぜこんなにも私たちの胸を打つんだろう――。この連載では、各界のプロとして活躍する著名人にフォーカス。 多くの人の心を掴み、時代を動かす“一流の仕事”は、どんなこだわりによって生まれているのかに迫ります。
壇蜜さんは、不思議な女性だ。「エッチなお姉さん」というちょっぴり過激なふれこみでバラエティー番組を席巻したかと思えば、その発言は知性に溢れ、どんな無茶ぶりにもほどほどのユーモアと慎みでいなし、男性のみならず女性人気も獲得。今やその活動は文筆業や女優業など多岐に広がっている。

壇蜜(だんみつ)
1980年12月3日生まれ。秋田県出身。09年、28歳のときにゲーム『龍が如く 4 伝説を継ぐもの』に出演。10年、29歳でグラビアデビュー。12年、映画『私の奴隷になりなさい』に主演。その独特なキャラクターで大ブレイクを果たし、以降、数々のメディアで活躍。自らの日常を綴った『壇蜜日記』シリーズなど文筆業も好評を博している
いわゆる“壇蜜フィーバー”から5年。ブレイク期から「いずれ流行りは廃れる」と熱狂を客観視していたが、決して一過性のブームで終わらず、壇蜜さんは芸能界で確かなポジションを築き上げている。プロとして、求められるものに粛々と応え続ける壇蜜さんから私たちは何を学べるだろうか。壇蜜さんの仕事へのポリシーを探ってみた。
「私は今、孤独から立ち直っている最中なのかもしれない」
壇蜜さんの最新出演作『星めぐりの町』は、ベテラン俳優・小林稔侍さん初主演となる映画だ。壇蜜さんが演じるのは、小林さん演じる勇作の一人娘・志保。数年前のインタビューで女優の仕事について「向いていない」と即答していた壇蜜さん。あれから歳月を経て、経験を重ねた今も「やっぱり向いていないですね(笑)」と話す。

「でも今回は黒土(三男)監督が、志保の人物像を細かく描いて指示をくださったので、とてもやりやすかったです。やるべきことが明確で、『どうしていいのか分からない』と悩む時間がほとんどありませんでした」
小林さん演じる職人肌の豆腐屋主人が、東日本大震災で家族を失った少年・政美を引き取り、生活を共にするところから本作は幕を開ける。固く心を閉ざしていた少年が、勇作や志保との交流を通じて、少しずつ本来の明るさを取り戻していく過程が、大きな見どころだ。
「政美は周囲の人に守られ、支えられながら成長していく。その姿に自分の過去が重なり、私も『孤独から立ち直っている最中なのかもしれない』と思いました」
そう壇蜜さんはつぶやいた。
意味深な言葉だが、その真意はどこにあるのだろう。

「私は、この世界に入るまで派遣社員として働いていました。当時は何の社会的な保障もなく、正社員のように目標を共にする仲間もいない。とにかく孤独な毎日です。そうすると、自然と『チームって何だろう?』『仲間と働くってどんな感じだろう?』と考える時間が増えますよね。そんな疑問を抱えたまま、私は芸能界に足を踏み入れました。
今はチームでモノづくりをするのが当然という環境です。一人ぼっちで不安だった派遣時代とはまるで違う。まだ自分にとって『仲間とは何か』という答えは出ていませんが、今、その答えが出かかっているところ。いつか振り返ったときに、仲間がいて良かったと思えるような経験をこれからの仕事でも重ねていければ」
“働く=自分が輝く”と強く望み過ぎるからつらくなる
ブレイクから歳月を経た今も、テレビに出れば“セクシー担当”としての受け答えを要求される場面が多い壇蜜さん。しかし、そうしたイメージに縛られて、窮屈さを感じることはないのだろうか。そう尋ねると、いつもの壇蜜スマイルを浮かべて、こんな話をしてくれた。

「結局、“自分らしさ”なんてものは他人がつくるものです。どれだけ上司や先輩が『自分らしくやっていいよ』と何か仕事を任せてくれたとしても、それは上司や先輩の思う“自分らしさ”を見せてください、ということ。少なくとも仕事の本質は“誰かのためになるかどうか”ですから、自分の思い通りにのびのびできることなんてあり得ないと私は考えています」
そうきっぱりと断言した。
「私も含めて皆、他人に何かしら期待し、イメージを抱いている。それは仕方のないことです。そのイメージから解放されようというのは、少なくとも仕事では無理。だから、それを重圧に感じるのではなく、何を期待されているのかを読み取って応えていく方が、仕事は上手くいくと思います」
芸能界という移り変わりの激しい世界を、独自のスタンスでサバイブしてきた壇蜜さんらしい言葉だ。だが、器用に立ち振る舞うほどに、どこかで自分がすり減るような虚しさを感じてしまうこともある。

「これは私の持論ですが、そもそも働くことに楽しさを求めない方がいいと思います。“働く=自分が輝く”と強く望み過ぎてしまうからつらくなるんです。男性がいて、女性がいて、会社という組織がある。その中で自分の個性ややりたいことを見出していくことって、本当に難しい。なのに、皆が何とか『輝き』を見つけ出そうとするから、無理して体まで壊してしまうのではないでしょうか」
仕事に楽しさを求めない。言葉にすると、すごくショッキングだ。だが、一度それを認めてみると、なぜだろう、不思議と心が軽くなる気もする。
「悩みを持っている自分を愛して」
自分らしさで悩むのは、周囲から求められている証拠
やりたいことをやらせてもらえない。
自分らしく働けていない。
こういった悩みは20~30代の女性たちにはつきものだ。「でも、それってとても幸せなことだと思う」と壇蜜さんは話を続ける。
「なぜならそれは、周囲から求められている自分の像がある証拠だから。誰からも何も思われていない人は、そんな悩みを持ちません。だから、まずは悩みを持っている自分を愛してほしい。そして変に急いで悩みを解決しようとする自分にブレーキをかけてほしいなと思います」
私たちが、こんなに息苦しく感じるのは、小さな水槽の中で無理に深く潜ろうとし過ぎるから。一度、力を抜いて浮上してみれば、案外すぐ真上に空は広がっているのかもしれない。綺麗な星が見えるのかもしれない。そんな心の余裕を持つことの大切さを、壇蜜さんは教えてくれる。

「輝きたいとか、楽しみたいとか、願う気持ちも分かりますが、まずは一度それを封印してみてはどうでしょうか。そして今、自分の周りに何が見えるか探してほしい。特に、ずっと会社にいて同じ環境から出ていないと、どうしても視野が狭くなりがち。だから何か行き詰まりを感じているときは、ボランティアでもいいし、パラレルワークでもいいから、自分とは違う価値観を持った人たちが集まる場に足を運んでみることをオススメします。客観的な視点を持つことで、今の自分がどれだけ幸せか、気づけるはず。そんな“異形の血”を体内に入れる勇気を持つのも一つの手です」
「会社員経験のない私がこんな話をして、読者の皆さんのお役に立てたでしょうか……」、取材後そう心配そうに壇蜜さんは尋ねた。そんな些細なやりとりからも、壇蜜さんがいかに周囲の期待を読み取り、求められる役割を粛々と演じてきたかがよく分かる。そんなプロ精神が、壇蜜さんをただの一発屋的キャラクターで終わらせなかった最大の要因だろう。
自分が輝くことばかりを優先させるから仕事が苦しくなる。まずは、求められているものを高い精度で返すこと。その積み重ねが、あなただけのキャリアを形づくるのだ。

取材・文/横川良明 撮影/洞澤佐智子(CROSSOVER)衣装/セ・ラ・ヴィ/ミレーヌトモダ
『星めぐりの町』2018年1月27日より丸の内TOEIほか全国公開
(C)2018 豊田市・映画「星めぐりの町」実行委員会
http://hoshimachi.jp/
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