「今の仕事、ずっと続けられる?」40代、大胆なキャリアチェンジで手にした“ずっと使える手に職”
好きだから選んだ接客販売の仕事。けれど、30代、40代を迎える将来を意識した時、「この仕事、いつまで続けられるんだろう」と、不安になる女性は少なくない。
かつて百貨店でアクセサリー販売の仕事をしていた桜井美香子さん(仮名)も、「手に職がつき、長く働ける仕事」を求めて転職を決意した一人だ。「定年まで、ずっと続けられる仕事を」、そう考えて彼女が選んだ仕事は、タクシードライバーだった。大胆なキャリアチェンジのように思えるが、「接客が大好きだからこそ、この仕事を選んで本当に良かった」と桜井さんは朗らかに笑う。
元販売職の彼女が語る、ドライバー職の魅力とは……?
「売らなきゃ」というストレスはゼロ!
ドライバーだから実現できる“ハッピーな接客”スタイル
私が前職で販売の仕事を約10年続けてこられたのは、お客さまとお話するのが大好きだったからです。店長業務も任されていたので、当時はやりがいも大きかった。でも、40代になった時にこの先10年、20年とアクセサリー販売の仕事を続けていく自信が無くなってきました。というのも、百貨店内を見渡してみても、50代、60代の女性店員って、パール売り場くらいにしかいなくて(笑)。私もそこに行くしかないのかなって思い始めたら、先が見えたようで、つらくなってしまったんです。
「転職しよう」、そう決意した私の頭にぱっと思いついたのが、タクシードライバーの仕事でした。私の中では、接客経験が活かせて、年齢を重ねても長く働ける仕事というイメージがあったんです。最近では当社のように女性ドライバーが活躍する会社も増えてきましたしね。
いざタクシードライバーになってみて感じたのは、「ハッピーな接客」ができるということです。百貨店での販売は、ノルマがあるので「売らなくてはいけない」というプレッシャーが大きく、押し売りするような後ろめたさを感じることもありました。けれど、タクシーの場合は、いつもお客さまの方から声をかけてくださいます。皆さん、行き先も決まっていますから、「もっと売らなきゃ」と思う必要は一切なし。自分の接客次第では、「最寄りの駅までと思って乗ったけど、気分がいいからやっぱり家まで乗せて行って」と、乗車距離を伸ばしてくださる方もいます。純粋に、接客の質とお客さまの満足度を高めることに集中できる環境なので、「これが私のやりたかった接客だ」と目からうろこが落ちた気分でした。
ストレスフリーに働く秘訣は「マイペース」
転職して知った、自分の仕事観
自分のペースで働ける、ドライバーならではのワークスタイルも気に入っています。ストレスフリーに働く上で、私にとってはこれがすごく大事だったと転職してから知りました。
アクセサリーショップの販売員とは違い、決まった時間に決まった場所にいなければいけないという仕事ではないので、物理的に自由でいられるところも魅力。「今日はどこに行ってみようかな」と自分で行き先を考えて、決められるのも楽しいものです。
さらに、当社に関して言えば、個人の頑張りがそのまま報酬につながるところも私にとってはやりがいになっています。アクセサリーショップの店長だった頃は、どんなに自分が努力して売り上げに貢献していても、他のスタッフの業績が悪く、店舗全体で売り上げ目標を達成しないと評価してもらえないような環境でした。スタッフの愚痴を聞いたり、人間関係のトラブルを解消したり、新人の育成をすることも店長の仕事ですから、神経をすり減らすことも多かった。一方、今の職場の評価は個人の業績次第です。誰かの足を自分が引っ張ることもないし、引っ張られることもない。精神的にもマイペースでいられますから、ストレスもかなり減りましたね。
また、一人で行動することも多いドライバーですが、決して孤独ということではありません。事務所に帰れば仲間がいて、気軽に仕事の相談をしたり、他愛ない話で盛り上がったりできます。信頼できる上司、同僚に囲まれていて、人間関係の悩みもゼロ。余計なことを気にせずに、仕事に集中できています。
「私、定年まで働き続けます!」
夢に向かってまっすぐ走る日々が、心地良い
今の私の目標は、この仕事を定年まで続けること。きっとできるし、やってみたいと心から思います。私は40代でドライバーになりましたが、「もっと早くこの仕事に転職しておけばよかった」と考えることもありますね。
私も以前はそうだったのですが、リスクを考えたら、転職しない理由っていくらでも見つかるんですよ。「まぁ、今のところでもいいか」と妥協して、つい決断を先延ばしにしてしまう。でも、自分が大事にしたいものをないがしろにしながら働き続けてしまうと、やがて後悔することになります。だから、年齢と共にやってくる人生のターニングポイントには、絶対に臆病になっちゃダメですね。変わらなければいけないときには、思い切って変わるべきです。
実際、キャリアチェンジには勇気が必要だったけれど、自分の直感を信じてタクシードライバーになってみたら、人生全体の満足度が上がりました。
今では、東京りんかい交通のドライバーとして、達成したい目標もたくさん。「外国人旅行客の接遇研修も受けたい」、「バリアフリーの介護タクシーの運転にも挑戦したい」、「後輩の女性ドライバーの育成にも携わっていきたい」など、将来のことを考えてはワクワクして過ごしています。目標に向かってまっすぐに走っていける毎日は、すごく充実していますよ!
取材・文/上野真理子 撮影/吉永和久