働く女性の7割が仕事は頑張っているけれど会社からは評価されていないと認識【働く女の価値は30歳を過ぎたら下がるのか?】
年齢が上がると転職が難しくなると思っている人は多い。でも、実際のところはどうなのだろうか。採用時に人事はどんなところを見ている? 既婚女性や子どもがいる女性よりも、独身女性のほうが有利なの? 転職市場において、働く女の価値は年齢によって左右されてしまう? 気になる採用の舞台裏に迫る。
働働く女性たちの半数以上が30歳以降の転職は不利になると回答
会社の外に飛び出し、転職をするとしたら、どのように評価されるのだろうか。将来のキャリアを考えれば、当然気になってくる問題だ。女性たちの大半は年齢が高くなるほど、転職時には不利になると考えている。
35歳の転職だと「年齢がネックになる」と考える女性が圧倒的に多い。30代の回答結果からは、実際にそれを実感している様子が伺える。
果たして、それは事実なのだろうか。
「20代なら、スキルや経験が採用基準に満たなくても、それを補うだけの成長意欲や吸収力があれば、高く評価します。30代で採用するのは、即戦力ですね」(システム開発会社人事)
同様にある情報サービス会社の人事は「在職年数が長ければ、それにふさわしい実績を積んでいるかを重視します。30代なら、プロジェクトをとりまとめた経験やマネジメント経験がある人は評価が高くなります」と語る。
そして、あるシステム開発会社人事からはこんな本音も。「長く勤務していただきたいポジションの場合は、同じスキルであればやはり若い方のほうが内定の可能性が高いと思います」。また「会社の方針で新卒入社に注力しているので、基本的に30代よりも20代を採用していきたいと考えている」(IT業界人事)というケースもある。
予想はしていたものの、やはり年齢が上がるほど企業側の採用基準は上がるといえそうだ。
さらに、キャリアカウンセラーの藤井佐和子さんによれば、「30代は、ヒューマンスキルの面でも即戦力であることが求められる」と話す。
「新しい環境にもすぐに適応し、職場の人たちとコミュニケーションしながら必要な情報や知識はみずから動いて吸収していく能動的なタイプは転職市場でも強いですね。反対に、常に指示待ちで受け身なタイプは非常に厳しいといえます」
ビジネススキルにおいても、ヒューマンスキルにおいても、「我が社ですぐ活躍してくれる」と人事に確信させるだけのものを持つ。転職市場においても、それが30歳を過ぎても価値を下げない秘訣といえそうだ。
子どもがいても問題ない
すべては会社が期待する成果を出せるかどうか
20代・30代の女性にとって、後のキャリアを考える上で切り離せないのが、結婚・出産というライフイベント。結婚や出産は転職にどう影響するのだろうか。それによって転職が難しくなる、転職市場において価値が下がるということはあるのだろうか。
女性たちの大半は、年齢に関わらず、結婚・出産後の転職は難しいと考える傾向にある。しかし、企業サイドは「結婚しているから採用しない」なんて考えはほぼ持っていない。ただし、ワーキングマザーの働き方について、少なからず要望があるのは事実だ。
「時短で働いたり、子どもが病気の時に休暇をとるのは構わないが、それを見越してスケジューリングをし、自分に任された仕事をきちんと進めることが条件。もし1人でやるのが難しい場合も、会社に『ここまでは責任を持ってやるから、ここはフォローしてほしい』とあらかじめ伝えて、周囲に迷惑や負担をかけないことが求められます」(IT業界人事)
「子どもがいるからといって採用を控えることはありません。ただ、『何があっても必ず5時には退社する』『帰宅後は一切メールをチェックできない』など、融通がまったく利かない人は正直厳しい。会社にいられる時間が短い分、うまく工夫して自分の仕事をコントロールしてほしい」(Webマーケティング会社人事)
子どもがいること自体をマイナス視することはないが、それをカバーする努力は当然求めるということ。「結局は、会社が期待するパフォーマンスを発揮できるかどうかが評価のすべて」(インターネット広告会社人事)なのだ。
採用面接で聞かれる「結婚・出産の予定は?」
この質問に隠された人事の思惑
むしろ、すでに結婚・出産を経験している人は、実体験をもとに「こういう努力や工夫をすれば、これだけの成果が出せる」と具体的に話すことができる。
「最近採用した女性は、保育園へのお迎えが必要でしたが、『月・木は、私がお迎えなので残業が難しい。でも火・水・金は夫や母が迎えに行くので、残業が可能です』と残業の可否や家族のサポート体制を明確にしてくれたので、こちらも安心して採用できました」(システム開発会社人事)
難しいのは、独身女性の場合だ。経験がないから、予測でしか語れない。本当に仕事と育児を両立できるか、自分自身が1番自信を持てない。
採用面接時に今後の結婚・出産の予定を聞かれることは決して珍しくない。自信を持って答えられないことで、不採用になってしまうのでは?と不安を抱く女性は当然多い。
企業側には一体どんな意図があるのだろうか。
「確かにその質問はしますが、『うちは結婚・出産した女性でも大丈夫ですよ』と伝える意味でお聞きしています。予定があると分かっていれば、残業が発生した場合の対応など具体的な相談ができますし、女性の側も本当にこの職場で働いていけるかを正確に判断できるでしょうから」(コンサルティング企業人事)
企業は現時点でのスキルや能力だけでなく、将来に渡ってどんな成果を出せるかを知った上で、採用可否を判断しようとしている。「転職とは自分の未来を買ってもらうこと。3年後、5年後に、その会社で自分がどうなっていたいのかを考え、そのビジョンを面接でしっかり話せることが大事」と藤井さんも話す。将来を見通してキャリアプランを立てることは、日々の仕事に取り組む上でももちろん重要だという。
転職市場において、30歳を過ぎた女性の“価値が下がる”なんてことはない。“採用基準が上がる”のだ。それに見合ったスキルや経験を持ち合わせていないとき、まるで自分の価値が突然下がったかのような錯覚に陥る。20代のうちから30代で求められるビジネススキルやヒューマンスキルを磨くための経験を積むこと。そして、30歳を過ぎたら、20代の時よりももっと柔軟な働き方や考え方が求められることを覚えておこう。
お話を伺った方
株式会社キャリエーラ
代表取締役 藤井佐和子さん
大学卒業後、大手光学機器メーカーの事務職を経て、インテリジェンスにて女性の転職をサポート。現在は株式会社キャリエーラを設立し、キャリアコンサルタントとして、女性のキャリアカウンセリング、企業のダイバーシティーサポート、大学生のキャリアデザインなどに携わる。カウンセリング実績は1万2000人以上。オフィシャルブログ「藤井佐和子のキャリアカウンセリングブログ」も好評。