「上司の仕事」は今の業務の延長線上にある! 上司歴14年の堂薗稚子さんが教える“管理職”のススメ
上司に対して日々感じている「なんでそんなこと言うの?」「どうしてそういうことするの?」という不満や疑念。それを直接上司にぶつけたいと思っても、「余計に怒られるんじゃないか」「印象が悪くなるんじゃないか」とモヤモヤしたまま自己完結してしまっている女性も多いのでは? そんな働く女性たちの疑問に、最強ワーキングマザー・堂薗稚子さんが、上司の立場からズバッと解説! 上司って、ホントはすごくあなたのことを考えてるのかも!?
こんにちは。堂薗です。突然ではありますが、1年以上お付き合いいただいたこの連載、今回で一旦、最終回となりました。
これまで、おばさまのお説教を前向きに読んでいただき、本当にありがとうございました。私自身、失敗だらけのビジネス人生を振り返り、教えられたことや気付いたことを共有させていただくことで、マネジメントという仕事についても自分なりに考える良い機会となりました。
多くの企業でお仕事させていただいていますが、若い女性の管理職志向は男性に比べて、ぐんと低いことがほとんどです。
幅広い世代が働く歴史ある企業では、「そもそも幹部候補として採用されていない」とおっしゃる妙齢の女性も多くいらっしゃいました。成長著しい若い企業でも、「ライフイベントと両立できるイメージがわかない」「特にやってみたいと思わない」と若い女性たちが言います。それぞれ、とてもよく共感できる理由です。また、これまで何度も書いてきたように、「自分には自信がない」と答える女性もすごく多いのです。
「管理職になる」ということは、キャリアの選択肢の1つです。男性陣は、「まだ見ぬ世界」にわくわくできる生き物のようですが、女性は「成功体験」の先に未来を見ることが多いものです。つまり、女性は、とても現実的で、決して夢見がちではないということ。自分の今の仕事やその面白さと、将来の「管理職になる」というキャリアが繋がっていないから、「イメージがわかない」のではないかと私は思うのです。
大変だけれど、それ以上のやりがいがある
これは、「管理職になる」ということを特殊なミッションとして扱うのではなく、今与えられている仕事の中にもその要素があること、出している成果やプロセスにその適性があることを、日常業務の中で女性たちにきちんと伝えてこなかったマネジメントボードの課題が大きいのではないかとも思っています。「こんなにやりがいのある役割なのに、もったいない!」と何度思ったことでしょう。
私自身、管理職のミッションを与えられたことで、苦しいことも多かったけれど、それ以上にとても大きな成長感がありました。無責任な言い方をしてしまうと、「やってみれば分かるよ」ということになってしまうけど(笑)
どれだけ懸命に考えても、人も組織も自分の思ったようにはならない。思ったようにしようとすればするほど、それとは反対の方向に進んでいくこともあります。「こんな管理職になろう!」と目標を定めて頑張れば頑張るほど、うまくいかなくて空回りすることもありました。
そんな失敗の連続を経て、「こういう時はこう判断しよう」と自分なりのルールを持つこともできるようになったかなと思います。メンバーそれぞれの力を見て、それぞれが自分で育っていくための機会をどう作るか考えるようにもなりました。そうやって少しずつ何かを得るたびに、自分自身が育っていくのを実感できました。
マネジメントの醍醐味とは?
会社員として仕事をするならば、管理職としての仕事の面白さやそこでの成長を、ぜひ体験してもらいたいなあと私は心底思います。自分一人の力なんてたかが知れています。一人だけでは実現できないような仕事も、自分がリードして組織で取り組み、成果を出すことができます。
自分で決めることができるなんて、すごくチャレンジングで刺激的じゃないですか? もちろん難しいことも、自分の不勉強に愕然としたり悔いたりすることもあるけれど、そこできちんと学べばもっと成長することができるわけです。これまで少し他人事のように感じていた会社や事業が抱える葛藤も、自分事になって考えるようになります。視界が広がっていく実感がきっと持てると思います。
そして、何よりも組織や人を育てる、成長支援をする仕事が、人間力を鍛えてくれる素晴らしい機会になるのは間違いありません。
私自身、とても自分勝手でわがままでどうしようもないメンバーでしたが、管理職になって、自分と価値観の異なる誰かのことをこんなに懸命に考えるようになるとは思いもしませんでした。他を受け止め、尊重する気持ちが芽生えてくるのです。
反発されても嫌われても、メンバーの成長の機会をどう作るか考え続け、自分以外の力も借りながら支援し続ける。メンバーがその機会を活かして、ぐんぐん成長していく様を見るのは、なんとも言葉にできない喜びがあります。
そして、そんな自分に気付いた時、人として少し成長したのだなと実感でき、感慨深い気持ちとともに、もっと成長したいと思えました。異動や退職などで離れた後もずっと応援したくなりますし、「超えられちゃったな」と感じることも、とてもとてもうれしいものなのです。そんな人との繋がりは、それ以降のビジネスでもきっと大きな財産になることでしょう。
「女性の管理職経験」は大きな武器!
また、「女性活躍推進」が叫ばれる世の中にあって、“女性の管理職経験”の市場価値は思った以上に高い、という実態もあります。
次のキャリアを考えるとき、マネジメント経験があり、人を育ててきたことや判断業務をこなしてきた実績は、きっと高く買ってもらえます。まだまだ女性の経験者が少ない分野でもあるし、多くの企業や職場がその経験を求めているからです。私も起業した後、これらの経験がどれくらい活きたか言い尽くせません。
私たち女性が持つ共感力の高さ、ビジネスに対する真摯な態度、組織や会社を見渡せ見極められる視点、上司たちから良くも悪くも学んだこと。そういったことは全て「管理職」の素養であり、女性に期待されていることなのだと私は思っています。
機会が与えられたら、怖がったり斜に構えたりせずに、ぜひぜひ挑戦してもらいたい! やってみて分かることもたくさんあります。どうしても肌に合わなければ、管理職であることを辞める潔さも私たち女性は持ち合わせているはずです。
この連載を始めるときに実施したアンケートでは、上司の言動に不満や疑問がある女性が70%前後もいました。1つ1つのケースにお答えすることは難しかったのですが、「本当はこんな風に考えているのかもよ?」と前向きな真意があるかを考えてきました。少しでも皆さんのもやもやが晴れたら……と願ってやみません。
そして、尊敬する上司はもちろん、イマイチな上司からも学びを得ながら、ぜひ素敵な上司になっていただきたいと思っています。またどこかでお目にかかれる日を楽しみに、一緒にこのビジネス社会を泳いで参りましょう。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました!
堂薗稚子(どうぞの・わかこ)
株式会社ACT3代表取締役。1969年生まれ。1992年上智大学文学部卒業後、リクルート入社。営業として数々の表彰を受ける。「リクルートブック」「就職ジャーナル」副編集長などを経験。2004年に第1子出産を経て翌年復職。07年に当時組織で最年少、女性唯一のカンパニーオフィサーに任用される。その後、第2子出産後はダイバーシティ推進マネジャーとして、ワーキングマザーで構成された営業組織を立ち上げ、女性の活躍を現場で強く推進。経営とともに真の女性活躍を推進したいという思いを強くし、13年に退職し、株式会社ACT3設立。現在は、女性活躍をテーマに、講演や執筆、企業向けにコンサルティングなどを行う