犬山紙子さん「心の枕営業は即止めて」――“営業ならスカート履け”“今は妊娠しない方がいい”クソバイスから自分を守るためにすべきこと

世の中には、アドバイスのように見せかけた“呪い”をかけてくる人がいる。

「仕事ばかりしてると、婚期逃すよ」
「早く彼氏つくらないとね」

相手の事情を無視した、自分の考えを押し付けるだけの助言。これを「クソみたいなアドバイス=“クソバイス”」と名付けたのが、イラストエッセイストの犬山紙子さんだ。

読者が受けたクソバイスを集め、その対応方法をまとめた『言ってはいけないクソバイス』(ポプラ社)が、『アドバイスかと思ったら呪いだった。』(ポプラ社)とタイトルを改め、先日文庫化された。

犬山紙子

イラストエッセイスト
犬山紙子さん

1981年生まれ。仙台市の出版社でファッション誌の編集を経験した後、家庭の事情にて退職。6年間、東京でニート生活を送りながら書いたイラスト・エッセイのブログがきっかけとなり、2011年、『負け美女 ルックスが仇あだになる』(マガジンハウス)を出版。現在、TV、ラジオ、雑誌、Webなどで活躍中。『私、子ども欲しいかもしれない。』(平凡社)、『アドバイスかと思ったら呪いだった。』(ポプラ社)など話題作多数

「私もこれまでに、さまざまなクソバイスを受けてきました。例えば独身の時に彼氏が欲しいけどできないって言ったら、『子供を産むことを考えたら、とっとと婚活パーティーに行かなきゃダメだ』って男友達に言われたんです。私は子供が欲しいなんて一言も言ってないのに、的外れもいいところですよね。仕事面でも、テレビに出始めた頃に一般の方から『もっと毒吐かなきゃ』『爪痕残さないとダメだ』みたいなことを言われました。『じゃあ爪痕の残し方を教えてくれよ!』っていう(笑)」

これらのクソバイスを受けたのは、犬山さんが20代の時。「若手の働く女性たちも、クソバイスを受けがち」と指摘する。

「プライベートでご飯を食べているだけなのに、友達や先輩から、『お前のことを買ってるからあえて言うけど』みたいに言われちゃうんですよね。こういう人たちは、ただ自分が上から目線でモノを言うことで、気持ち良くなりたいだけ。相手が若い女の子っていうだけで、“自分の意見を押し付けていい相手”と勝手に判断しているんですよ」

相手を心配して言っているような体裁を取っているから、タチが悪いクソバイス。「なんでこんなことを言われなきゃいけないの?」とモヤモヤしている若手女性は少なくないだろう。そこで、Woman type読者が職場で遭遇したクソバイスへの対処法を、犬山さんにぶつけてみた。こんな時、どんなクソバイス返しが有効……!?

「営業なんだから、スカート履きなさい」

営業職/25歳

職場の30代の先輩女性から「営業なんだから、お客さんに気に入られるためにスカートを履いた方がいいよ」って言われました。女っぷりを上げないと、売れないって……なんか違う気が。

犬山紙子 くそバイス

★犬山さん流・クソバイス返し★
「先輩は話術で仕事を取っていると思ってました! 服装がスカートかどうかは関係ないですよ~」

 

「褒めるアプローチで、女を使えっていうアドバイスは違うのかもなと相手に思わせましょう。『私がお客さんなら、営業の人にそんなこと言われてたらめっちゃ傷つきますよ〜』と笑いながら返して、先輩にお客さんの立場を想像させるのもいいと思います。

だって、もしも私が『イケメンの編集担当付けとけば、喜んで仕事するだろう』なんて出版社の人に言われていたら超傷つきますよ。それと同じこと。営業がセクシーならモノ買ってくれるだろうなんて、お客さまのことをバカにし過ぎ。

本人がスカートが好きで履くのはもちろんいいけれど、クソバイスのせいでモヤモヤしながら『履いた方がいいのかな……?』と思っているのであれば、自分の気持ちを犠牲にするようなことはしなくていい。心の枕営業は即止めましょう」(犬山さん)

 

「セクハラを受け流せてこそ、一人前よ」

27歳/一般事務

40代の女性上司に、社内の男性上司の態度がどうもセクハラっぽいと飲みの席で軽く相談したら、「セクハラくらい、さらっと受け流せてこそ一人前よ」って言われました。正直、それでいいのか、と思って納得がいきません。

犬山紙子 くそバイス

★犬山さん流・クソバイス返し★
「先輩、これまで本当に頑張ってきたんですね。でも、こういうのは私たちの世代で終わりにしましょうよ」

 

「この発言自体ハラスメントなので本当は「ハラスメントですよ」と言ってしまっても大丈夫。でも先日、とある記事で40代女性が『セクハラの告発の動きに対して微妙な気持ちを抱えています。言える風潮を羨ましく思う反面、自分は我慢してきたから……』という投稿をしているのを目にしました。彼女たちは彼女たちで、今すごく苦しいのかもしれません。

余裕があるなら彼女たちの過去を労うのもよいかもしれません。だって彼女たちも被害者の側面もあるから。『相手の男が絶対に悪い』と一緒に怒ってもいいかもしれない。その上で『でも、これからは耐えていてはダメだ』ということを伝えられるといいと思います。

ただし、そう言っても全く聞く耳持たなかったら憤りを感じている仲間を集めて、問題にしていい。念のため、セクハラ発言をスマホで録音しておくのもオススメです」(犬山さん)

「お前を雇ってくれる会社なんてない」

26歳/専門職

転職しようか悩んでいると40代の男性上司に相談したら、「うちの会社以外に、お前を雇ってくれる会社なんてないよ」「こんな中途半端な状態で外にお前を出せない」と言われました。引き止めるにしても、別の言い方があるんじゃないか、と思いました。

犬山紙子 くそバイス

★犬山さん流・クソバイス返し★
「ありがとうございます! 今、辞める決心がつきました!」

 

「もしかしたら、クソバイスをした本人も転職を考えているのかもしれないですね。でも勇気がないから踏み出せなくて、だから行動に移そうとしている自分より若い人に呪いをかけているのかも。そうして、自分が転職せずに留まっていることを正当化したいんじゃないかな。人の可能性に蓋をしたがる人って、自己防衛の気持ちが背景にはあるような気がします。

ただ、こんなの、言われた時点で転職確定ですよね(笑)。この発言は『自分の所から逃がさないぞ』っていう、洗脳する人の常套句だと思うんですよ。つまり、裏を返せば辞めてほしくないってこと。むしろ会社にとって必要とされている人と認定されていると思えばいいし、次の会社は今より絶対マシだ!って、勇気を持つ方向に気持ちを切り替えたいですね」(犬山さん)

 

「新人は誰よりも“長く”働け」

24歳/営業企画

うちの職場にいる40代の男性上司は、根性論が大好き。「若手は誰よりも早く出社して、誰よりも遅くまで働け!」「先輩の仕事をどんどん奪って働け!」ってうるさいんです。量をこなして仕事の質を上げるっていうのはあると思うけど、成果がどうかより、長く働くことを推奨するのは馬鹿らしい……。

犬山紙子 くそバイス

★犬山さん流・クソバイス返し★
「(定時に)おつかれさまでーす」

 

「時代遅れなクソバイスはスルーして、同僚と定時退社アベンジャーズを結成し、仲間と一緒にさっさと帰りましょう。就業時間外に働くことを強要するのは、会社側のただの搾取です。それにこの発言って、残念ながら“時間をかけないと仕事ができない自慢”でしかない。まず心の中で、『この人は仕事ができないんだな』と憐んでバリアを張るのも良いかもしれません。

その上で反論はせずに、軽く流してサッサと帰るのがいいと思います。こういうクソバイスをする上司の考えを変えるのは難しいですから。どんなに説明をしても、セクハラ問題を理解できない人っているじゃないですか。それと一緒で、もう価値観が根本から違う人なんですよね。

ただ、自分だけが異端になってしまうにはキツイから、近い価値観を持っている同僚とタッグを組みましょう。定時退社アベンジャーズを結成して、同僚と一緒にさっさと帰る。今日やるべきことが終わったんだったら何も問題ないですよ。

あとは、話の分かる別のまともな上司を社内で見つけて、『理解のある人もいるんだな』って、心の拠り所できると理想的ですね。『むりやり長時間労働=頑張ってる』とする負の連鎖を止めるためにも、結託して踏ん張りましょう」(犬山さん)

「今は妊娠しない方がいいよ」

29歳/クリエイティブ職

先日、以前から希望していた部署に異動することができました。その時、30代の女性上司から「せっかく希望の部署に来たんだから、あなたのためにも、すぐ妊娠とかするのは避けた方がいいわよ」「あなたのために言ってるのよ、2年は待ったほうがいいと思う」と言われました。すぐ産休に入られたら困るという気持ちは分かりますが、そんなこと言われても、と悲しい気持ちになりました。

犬山紙子 くそバイス

★犬山さん流・クソバイス返し★
(深刻そうに下をうつむきながら)「子供、できるか分からないですけどね……」

 

「ちょっと深刻そうな表情で言うのがポイントですね。『あ、まずいことを聞いてしまった』『何か深刻な事情があるのかも……』と思わせたら、相手は妊娠に関することは聞いてこなくなると思います。嘘でもなんでもないですから罪悪感も持たなくて大丈夫です。妊娠できるかどうかなんて誰にもわからないし、コントロールして妊娠できるものでもない。

さらに、大前提として、このクソバイスには一切耳を傾けなくていいとも思います。ただの人権侵害だから、『そうなのかな?』なんてことすら思わないでほしいです。そもそも妊娠の計画を会社でカジュアルに聞いていいとは思いません。そこで、『こういう話をしちゃいけないんだな』って相手に気付かせるためにも、気まずい空気を出して、会話をシャットダウンしましょう。

ちょっと強めに意見が言える間柄の上司なら、『その発言、問題になるから言わない方がいいですよ』って真剣に話すのもいいと思います。『試しに今言った事、Twitterに書いみてください。炎上しますよ』とかね。相手も社会的立場や信頼を損なうようなことはしたくないはずだから、いかにこの発言がヤバイのかを伝えられるといいですね」(犬山さん)

 

クソバイスに「なるほど」は禁句
「ウケる!」「面白いですね」の一言で呪いを跳ね返して

こうしたクソバイスがはびこる原因の一つとして、犬山さんは「クソバイスがストレス発散の方法になってしまっている」と指摘する。

「誰かにクソバイスをすることでストレスを発散して、自分が癒される。そんな、ちょっと病的なところがあると思います。自分が歩んできた道以外にも、幸せになる道はたくさんある。島倉千代子さんが歌っている通り、『人生いろいろ』なんですよ。それなのに、相手の事情を聞いて、気持ちを想像するという、当たり前のことが抜けてしまっている。私も過去を振り返ると、これまでロクに人の話を聞かずに的外れなクソバイスをしては悦に浸ってきました……。今、猛烈に反省しています」

クソバイスの一番の問題点は、「アドバイスだと思って真に受けて、傷ついてしまうこと」と犬山さん。真面目な女性ほど、「私が悪いのかな……」と自分を責めてしまいがちだが、「一切聞かなくていいし、傷つかなくていい」と犬山さんは強く訴える。

「あなたの事情を一切理解していないくせに、上から目線で持論を押し付けられているのであれば、それはクソバイスです。心にバリアを張ってください。相手が気持ち良くなるだけだから、『なるほど』は絶対に禁句。代わりに『面白いですね』とか、友達だったら『へ~その考え方ウケル!』って返すことをオススメします。これなら相手は気持ち良くないし、会話も広がりません」

とはいえ、自分に向けられたクソバイスにどうしてもモヤモヤしてしまうことはある。そんな時こそ、頼るべきものは信頼できる友達だ。

「クソバイスをその場でうまく切り返すことよりも、大事なのは自分の心のケアです。一人で抱えると自分を責めてしまいがちだから、孤立をしないことが本当に大切なんです。話が分かる人にクソバイスをシェアすることが、自分を守ってくれます。信頼できる友達に『あんたは間違ってないよ』って笑い飛ばしてもらえるだけで、心はかなり楽になるはず。自分のバリアだけで跳ね返せないクソバイスは、皆でバリアを張って跳ね返しましょう!」

取材・文/天野夏海 イラスト/村野千草(中野商店)


<書籍紹介>

犬山紙子 くそバイス

犬山紙子著『アドバイスかと思ったら呪いだった。』(ポプラ文庫)
一見アドバイスのようでも、相手の事情を考えずに上から考えを押し付ける行為は、呪い化することが多々ある。読者から呪いの実例を集め、仕組みを解説、言い返しフレーズを考案。「余計なことを言ってくる人に一体どう対応すればよいか」を徹底研究した傑作エッセイ。
>>Amazonで購入する

 

 


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