育休復帰後の望まぬ部署異動、組織内の男女格差――「思い通りにいかない現実」に直面したときの対処法
長く仕事は続けていきたい。でも、どんな仕事が自分に合っているのか、そもそもどんな人生を送りたいのか、自分のありたい姿が明確にならない女性も多いはず――。そこでこの連載では、さまざまな人生経験を積んできた『育キャリカレッジ』のメンターたちが、“豊かなキャリア”を描いていくためのヒントを後輩女性に向けて送ります
こんにちは! 『育キャリカレッジ』の公式メンター、梶本由美です。
メンタリングやコーチングをベースに、「大人を元気にする」活動をしています。具体的には、『育キャリカレッジ』でのメンターとしての活動に加え、ストレングスファインダー®(アメリカの調査会社ギャラップ社開発の強みを知るツール)を活用したセッションや企業研修、勉強会、セミナーを通して、働く人と企業との幸せな関係づくりをしています。
今日は、私自身の経験から、「思い通りにはならない現実」を、どうやってポジティブに転換し、行動を変えたのかについて、お話したいと思います。

【この記事を書いたメンター】
梶本由美さん
「育キャリカレッジ」の公式メンター、ウィメンズキャリアメンター養成講座認定講師。米Gallup社認定ストレングスコーチ、ICF国際コーチ連盟アソシエイトコーチ、福岡市男女共同参画推進サポーター。会社員時代に部門異動や、育児と介護のダブルケアラーを経験し、自分の働き方を変えてきた。現在はパーソナルファウンデーション(自己基盤)とストレングス(強み)を大切に扱うコーチングを軸に、セカンドキャリアを歩んでいる。本人の強みトップ5は、最上志向、着想、親密性、共
感性、ポジティブ。家族は自営業の夫と小学6年生の娘
「やりたい仕事」をすると、意欲も6倍にアップ
私は、会社勤務32年間の経験から、仕事の取組み方、成果の出し方は、人それぞれで千差万別だと思っています。もし組織の中で「適材適所」が適切に実行されていたら、働く私たちは「強み」を生かして仕事ができて、もっと充実感を持って仕事に励むことができ、生産性も上がるでしょう。
世界の1,000万人以上を対象に過去10年以上に渡り、「従業員エンゲージメント」を調査してきた米ギャラップ社によると、「毎日『強み』に取り組む機会がある人は、そうでない人よりも6倍も意欲的かつ生産的に仕事に取り組む傾向がある」と報告しています。
自分の強みを生かした仕事……つまり「やりたい仕事」をすると、意欲はなんと、6倍も上がるのです! しかし、実際には「私にはこの仕事は向いていない」「女性だからと過剰に配慮されている」「やりたくない仕事ばかりしている……」と思いながら、かつ、強みが発揮できず、モチベーションも低いまま働いている人は多いのではないでしょうか?
私自身がそうでした。やりたい仕事がたまたま巡ってきたときは、強みが生かせて成果も出せていましたが、やりたくない仕事をしなければいけなくなったときは、弱みの克服に労力をかけ成果も出せず評価もモチベーションも急降下していたのです。
そんな私が、思うようにいかない現実や状況をどう乗り越え前向きになれたか、具体例を続けてご紹介していきますね。
就職後に初めて感じた「女だから」の壁

私は九州の電力会社に1981年就職しました。それは男女雇用機会均等法が施行される前です。女性は高卒か短大卒、自宅通勤(1時間圏内)の採用条件があり、男性とは異なるキャリアのスタートでした。しかし入社後に仕事に邁進し、リーダーも経験。その経験が評価され数年後、憧れだった広報部に異動。初の女性広報担当として、華やかなメディア関連の業務に就きました。
とはいえ、お茶くみや伝票整理など、当時「女性の仕事」とされていた業務も掛け持ち。社外でバリバリ仕事をこなし、夕方帰社したら、そこには山盛りの湯飲みやコーヒーカップが待っている日々。しかし私はそれらを黙々とこなし、周りから応援されながらやりたい仕事ができる環境をつくっていきました。
そこから初めて出張が決まったときのことです。上司に「女性一人は心配だから同行しようか」と言われましたが「大丈夫ですよ! 一人で出張にも行けない担当なんていらないでしょ」と即答。その経験は、「女性」という枠を超えて、晴れて「一人前の担当者」を真に手にした出来事だったと思います。
女子校で過ごした私は、働き始めるまで男女の差をあまり気にせずに過ごしてきました。女性だからこれはできない、女性だからこれはしなさい、ということもありませんでした。しかし社会では、組織ではそうではなかった。ここに「自分のやる気や実力だけでは思う通りにならない現実」が待ち構えていたのです。
私は男性中心の会社組織で働く中で、男女格差に強く憤りを感じるようになりました。そして、その環境で生き抜くため、社外では「男性の気持ち」、社内では「女性の気持ち」と切り替え、当時は組織の中で自分のアイデンティティを模索していたのです。
万全の体制を整えて育休から復帰。
でも、待っていたのは望まぬ部署異動
私は数々の「女性初」等を担ってきたので、社内にロールモデルはいませんでした。
暗闇の中でもがくような日々、何とか突破口を探し、暗中模索で行動することにしました。この経験が、私の人生の分岐点であり、その先に大きな変化をもたらしたのです。
それは、行政が主催している「女性リーダー研修」に参加した時。初めて「コーチング」というコミュニケーションスキルに出会いました。「コーチング」という「相手の話を引き出し、相手の中から答えを導き出す」という手段に、衝撃を受けます。
その後、コーチングに魅了された私は、さらに深い内容を自費で学びました。
その後、私は出産し、育休を取得します。育休前は土日問わず楽しく働いていたので、復帰後もそのつもりでした。認可保育園、民間託児所、ベビーシッターなどあらゆる対策を取り、万全の体制を整えて復帰しました。
ところが、「育児に配慮した部署」に配属されてしまうのです。いわゆる、戦力外通告です。本当に落ち込みました。

さらにその部署でも、初めての業務に慣れず、夕方からの会議に参加できず、いつも「ごめんなさい」「すみません」ばかり言っていました。
しかしここで、落ち込んでいた私は、一つのことに気がつきます。「他人に期待してはいけない。でも、自分に期待すると、自分を変えることができる」と。
そこで、出産前に学んだ「コーチング」を思い出すのです。落ち込んでいる場合ではない、と一念発起し、バリバリ働くために用意していたシッターなどは、コーチングの勉強のために活用しました。そしてプロの資格をついに取得。
もし私が、「思ったように働けない自分」の状況を呪い、嘆いたまま、諦めていたら、今の自分はなかったでしょう。
その後、私は会社の転身制度を利用して早期退職し、プロコーチとしての道を歩み始めます。さらに、前述した「ストレングスファインダー®」のコーチや講師としてだけではなく、育キャリカレッジのメンターとしてのキャリアも歩み始めます。メンターとコーチは似ているようですが、コーチより一歩踏み込んで人を導くという点で異なっていますが、これらの新しいスキルも次々と取得してきました。さらには、メンターを養成する講座も開催するようになりました。
これらの積極性や前向きさも、あの男性中心の大組織で、「女性だから、ママだから出来ない」と言われた悔しい経験と、そこから立ち上がって新しい道に踏み出したという経験が、全ての原動力です。
ここまで色々とお話してきましたが、一番言いたいことは、「思うようにいかない現実はどうしても起こるけれど、それを他人に何とかしてもらおうと期待するのではなく、自分が何ができるかに視点を切り替えると未来も変わる」ということです。
もしあなたが仕事をしていく中で、モヤモヤしたり、やる気をくじかれるようなことがあっても、どうかあきらめないでください。会社や周りが変わることを期待するのではなく、自分の伸びしろに期待してください。あなたは自分を大切に育てていくことができます。顔を上げて外の世界に目を向けましょう。