働く女性をハッピーにする3つのアイデアって?/損保ジャパン日本興亜株式会社
「女性活躍」という言葉はよく耳にするようになったけれど、女性を取り巻く労働環境が劇的に良くなっているという実感は持ちづらい。「世の中はそう簡単には変わらないもの」と、悲観モードになっている人も少なくないのでは? しかし、働く女性たちの希望となるような、変化の兆しは確かにある。この連載では、女性の社会進出を支援するGoogleのプロジェクト 『Women Will』から、私たちの仕事人生をよりよく変えるきっかけとなるような取り組みを行う企業、人々などにフォーカスを当て、日本社会で起こっている「働き方改革の今」をお届けしていきます。
今回取材したのは、損保ジャパン日本興亜株式会社。人事部にダイバーシティ推進グループを設け、男女問わず柔軟な働き方改革・女性社員の両立支援に積極的に取り組んでいる。具体的にどんな「女性をハッピーにする」アイデアが実践され、どんな成果を生んでいるのか――?実際に働くママである披田さんと、その「イクボス」である安冨さんの声から、働くママを取り巻く現場を探った。
10年以上前から女性社員の両立支援に取り組んでおり、「両立しても働きやすい会社」に向けて、育児休業制度や短時間勤務制度、育休者のための座談会「育休者フォーラム」などを整備してきた同社。
2010年からはさらにギアチェンジし、「働きがいのある会社」として多くの女性がキャリアを目指せる環境づくりに向けて、人事制度の改定や「女性経営塾」などの育成プログラムを充実させている。また社内だけではなく、仕事と家庭の両立に不安をもつ女性社員がキャリアアップを目指した働き方が出来るようなきっかけを作ることを目的に、複数の保険会社や異業種と「両立女性向け座談会」も開催するなど、会社の垣根を越えた取り組みにも積極的。一人ひとりが生産性を高める働き方を実現することにより成果をあげ、捻出された時間で家族との時間や自分自身を磨く時間として使ってもらうための「ワークスタイルイノベーション」に取り組んでいる。
アイデア1.
同様の悩みの女性たちと繋がれる、「会社を越えた女性向け座談会」
披田さんは、会社の垣根を越えて複数の保険会社で合同に開催された「両立女性向け座談会」に参加し、その仕組みに感銘を受けたのだそう。
「『両立女性向け座談会』は、大人数ななかでもコミュニケーションが活発になる工夫がされているなと感じました。同じ年齢の、同じ人数の子供を持つ、同じ興味を持った女性が、事前アンケートに基づいてグループ分けされているのです。復帰時期も同じくらいの方ばかりだったので、似たような悩みについて話をすることができました。働き方に関する悩みはもちろん、小学校入学準備などの話、習い事の話など、プライベートな悩みに関しても意見交換しました」
自社だけでなく、「他社の」同じ悩みを持った女性と繋がることができる「両立女性向け座談会」。自社のみで女性向け座談会を行う事例は多くあるが、その具体的メリットとは何なのだろうか?
「同じ会社であっても、上司やメンバーによっても、悩みは違ってくると感じています。社内の限られた環境だけでなく、会社を越えた交流で悩みをベースに相談できることで解決することができましたし、その機会を作ってくれることをとてもありがたく思いました。それに、いかに自分の会社が恵まれた環境かを客観的に知ることができたのも良かったですね。
また、様々なロールモデルの方の話を聞くなかで、先輩社員の話から数年後をイメージし、キャリアも育児も今できることを一生懸命やることが大切だと改めて思いました」
制度は同じでも、部署によって、またライフステージによって悩みが同じとは限らない。「両立女性向け座談会」は、業界全体に目線を広げて、より多くの女性の中から近しい悩みの人やロールモデルと出会え、解決の糸口を探れる機会を作ることで、女性たちがより長く安心して働けるようにするための同社の工夫の一つと言えそうだ。
アイデア2.
上司と育休中の社員が一対一でじっくりコミュニケーションができる「育休者フォーラム」
同社は、「両立女性向け座談会」だけでなく、その他にもユニークな社内座談会「育休者フォーラム」も行っている。これは、2007年度から開催され、育休中の社員とその上司を中心に約500名規模が参加する大規模なものだ。
その場で上司と「『働く意義』の認識が合わせられたことが非常に有意義だった」と、披田さんは言う。
同様に安冨さんも、部下とのコミュニケーションの場の有益さをこう話す。
「以前にいた職場でメンバーから、『一人一人の役割がきちんとわかれば安心です』という話を受けたことがありました。それもあって以後『誰が何をどこまでやるか』の最低ラインをはっきりさせるようにしています。優先順位だけでなく、役割分担を見える化し、ミッションはこれだよと明確にしてあげることが大事なのだと思いました。育休者フォーラムは育児をしながら働く部下がより働きやすくなるやり方を探る機会になりましたね」
本格的に業務が始まる前に、上司と部下が「意義」や「やり方」についてなど、業務以外のより根本的なコミュニケーションができる場所を設けるというこのアイデアは、他社でもすぐに実践することができそうだ。
アイデア3.
ライフスタイルに合わせた柔軟で多様な働き方を推進する「ワークスタイルイノベーション」
同社は 2015 年より、「ワークスタイルイノベーション」に取り組んでいる。一人ひとりが時間当たりの生産性を高め、仕事の効率化を実現することにより成果をあげ、捻出された時間を家族との時間や自分自身を磨く時間として使おうというものだ。
具体的には、シフト勤務制度・在宅勤務制度の拡充、長時間労働からの脱却、男性の短期育休100%目標を含む休暇取得の徹底、会議運営の効率化などが含まれる。これらは「Women Will」に投稿されたアイデアのなかでも、実現を望む応援の声が多い「人気のアイデア」にあたるものも多い。
この「ワークスタイルイノベーション」の意義について、披田さんに実感値を伺った。
「在宅勤務制度やシフト勤務制度については、こうして『率先して使いましょう』という立場を会社が明確にしてくれたおかげで、とても使いやすくなったなと感じます。おかげで負担なく子供の通院や保育園の面談などにも対応することができます。また、在宅勤務推進の一環で時短勤務者の希望者には職場の端末が追加配備され、在宅でも仕事ができる選択肢が増えたことは子供の発熱などもしものときでも大丈夫だという安心感につながっています」
さまざまなアイデア実践後の実感値と成果――現場は何を感じ、どう変わっているのか?
このほかにも両立支援のためのさまざまなアイデアを実践してきた同社。現場の現状についてきくと、安冨さんはこう語る。
「私の部署は、割合としてはとくにママ・パパが多いわけではありませんが、自然と両立している社員を受け入れる風土ができていると感じています。たとえば披田さんが16時を過ぎても仕事をしていると『大丈夫?何かやっておこうか?』とメンバーが声掛けしているのを見受けるなど、時間通りに帰ってもらうことが大事だという認識はチーム全体で共有できています。特に披田さんは責任感が強いため、私から頼むときは時間を逆算してお願いしたり、それでも間に合わない時は『明日でいいよ』と声がけしたりするようにしていますね。ただ、そのような風土が生まれるのも、なにより彼女が頑張っているからというのも大きいですよ。本人がきちんとやっているかどうか、が非常に大事だと感じています」
さらに披田さんは安冨さんの「イクボス」としての一面にも助けられていると語る。
「安冨さんはご家庭の中で家事も育児も分担していて、家事の大変さや小さい子供がいる生活をよく理解してくれています。子供が風邪をひいて休んだときに、『熱は下がったの?』と訊いてくださり、本当にありがたいと思いました」
お互いに感謝や評価の言葉を交わしながらなごやかに進むインタビューからも、普段のチームの雰囲気が垣間見えた。
会社が、「多様な働き方を推進する」という立場を明確にしていることで、現場でも多様さが「普通」になる。「育児をしながら働く」ということが特別ではないから、上司が育児の話もするし、同僚は時短勤務するママの残業を気にかけ、結果、本人も気兼ねなく退社できる。そんなポジティブな流れが生まれているといえそうだ。
取材・文/Woman type編集部
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