貴島Pが語る『劇場版おっさんずラブ ~LOVE or DEAD~』撮影の舞台裏「スタッフやキャストが誰よりこの作品のファン」

連ドラの熱狂から1年余り。ついに映画『劇場版おっさんずラブ ~LOVE or DEAD~』が公開される。あの平成最後の純愛ドラマが、今度は令和最初の純愛ドラマへ!
ファンの期待が最高潮に高まる今、プロデューサーの貴島彩理さんに映画に向けた想いをたっぷり語ってもらった。
聞き手:横川良明(@fudge_2002)
部長のひしゃく攻撃は、吉田鋼太郎さんのアイデアです

――映画公開おめでとうございます。まず伺いたいのがサウナバトルのシーンです。主人公の春田創一(田中圭)、黒澤部長(吉田鋼太郎)、牧凌太(林遣都)に加え、新キャラクターの狸穴迅(沢村一樹)、山田正義(志尊淳)の5人がタオル一枚の姿でバトッているシーンが予告公開時から大きな反響を呼んでいます。何でもサウナというシチュエーションを思いついたのは貴島さんだとか。
『おっさんずラブ』といえば、おっさん同士の真剣ラブバトルも名物の1つ。映画化にあたって、ラブバトル自体もスケールアップさせてお届けしたい、という思いはありました。
ただ、『おっさんずラブ』は恋愛ドラマである一方で、登場人物たちには仕事人としての人生もある……という設定を大切にしてきた。真摯に仕事をしながらも壮絶ラブバトルになるような状況をつくるのは毎回とても難しく、映画の脚本打ち合わせの際も、やはり課題になりました。
――なぜサウナだったんでしょう……?
なぜでしょう……。最近、私がサウナデビューしたからでしょうか(笑)。確か電話でポロッと「サウナはどうですかねぇ」と口にしたら、脚本の徳尾浩司さんが「それなら書ける気がする!」と言ってくださって。面白いシーンに仕上げてくださいました。
――収録は相当大変だったのでは?
一言でいえば、カオスでしたね(笑)
実はこのサウナのシーンが映画の撮影の最終日だったんです。なので、キャストもスタッフも色んな意味で熱がこもっていて、お芝居自体もヒートアップしていて、すごい空気になっていました。
――予告をよく見ると分かるのですが、部長だけタオルの位置が高くて笑ってしまいました。
あれは鋼太郎さんのアイデアです。リハーサルで入ってきた時には既にあの状態だったので、そのままいこうと(笑)
しかも、撮影中、何度も鋼太郎さんのバスタオルがずり落ちて……。もしかしてわざとやってるんじゃないか……と皆で笑いながら、一方で、これどうやって編集でつなげばいいんだろうとドキドキしながら見ていました。
――部長が牧の頭をひしゃくでコツンと叩きますよね。ああいう動きはどれぐらい事前に決めていたんですか?
全く決めていなくて、本番中に突然叩き出しました。おそらく春田を巡るライバルに対する嫉妬や憎しみが頂点に達した結果、思わずひしゃくで攻撃を……(笑)
しかも思いっきり3回ぐらい叩くので、「遣都さんの頭が割れてしまうのでは……」と心配になるほど。キャストというかキャラクターたち全員頭に血がのぼっていて、歯止めがきかなくなっているような雰囲気がありました!
――改めて吉田鋼太郎さんのすごさを感じるシーンでした。
この映画を通して、改めて俳優・吉田鋼太郎さんという存在に圧倒されましたし、感動もしました。このシーンは、眞島(秀和)さんや金子(大地)くんほか、すでにクランクアップしたキャストも応援に駆けつけてくださっていて。
スタッフともども、笑いが止まらなくなってしまって、マイクに声が入ってしまわないように、必死に息を止めながら見守っていました。
――それにしても、まさかこのシーンでクランクアップだとは思いませんでした(笑)
撮影が終わった時は、みんな裸で息切れしていて……(笑)。全員お揃いの白のガウンを羽織ってのクランクアップでした。よくよく考えたら世にも珍妙なクランクアップですが、なんだか『おっさんずラブ』らしいなとも思います。
――じゃあ現場も感動のクランクアップというより、楽しい雰囲気のクランクアップだったんですか?
純粋に楽しかったです。ただ“これで完結”ということもあり、感極まっている部分もあったと思います。
皆さん、「このメンバーで作品を作ることができて本当によかった」とおっしゃっていて。圭さんが最後に「こんな僕を愛してくれてありがとうございました」と挨拶されているのを聞き、スタッフもじんわりと胸が熱くなっている様子でした。
花火大会のシーンは、
田中圭さんと林遣都さんの表情に感嘆

――もう一つ見逃せないのが、花火大会のシーンです。個人的には、主題歌であるスキマスイッチさんの『Revival』の世界を彷彿とさせる感じがして、グッと来ました。今回、どうして花火大会のシーンを入れようと考えたのでしょう?
私がやりたかったからです(即答)
――それはなぜ?
夏だから(笑)
――シンプル(笑)!
あとは『Revival』の歌詞を辿るシーンを作りたいという想いがありました。連続ドラマは春のお話だったので、夏を舞台にした今回こそ、チャンスだなと。
それから、“誰も幸せじゃない花火大会”を描いてみたい、という気持ちもありました。花火や星空みたいな美しい景色って、好きな人と一緒に見ていない時、不思議と全然綺麗に見えなかったりするじゃないですか。
――予告でも春田が悲しげな顔で「別れようぜ」と告げるシーンが入っています。
あのシーンは、圭さんと遣都さんと監督(瑠東東一郎)の3人でかなり長い時間話し合ってから撮影に入りました。
これまで築き上げてきた春田と牧の関係性がある中で「別れようぜ」と切り出すには、よほどの“何か”がないと難しい。そこまで気持ちを持っていくには、自分のスイッチを押してゆくにはどうすればいいのか……と、非常に細かく相談されていました。
――貴島さんはお二人の芝居を近くでご覧になって、どう思いましたか?
「どうしてあんな顔できるんだろう」と衝撃を受けました。春田の言葉に牧が傷ついて、その牧の傷ついた顔を見て、また春田が傷ついて……というセリフに起こされていない部分の表情のキャッチボールがあまりにも繊細で、連続ドラマからずっと近くて見てきたはずなのに、改めてお二人のお芝居の底力に感嘆しました。
――連ドラ6話の別れのシーンでは、お二人の芝居を見て涙ぐむスタッフもいたと聞いています。今回はいかがでしたか?
やっぱり泣いているスタッフはいましたね。みんな、『おっさんずラブ』が大好きでいてくださっていて。スタッフが誰よりこの作品のファンであり、一番近くの視聴者として作品を愛してくださる。『おっさんずラブ』チームの温かさだなと思っています。
『おっさんずラブ』のチームは、私にとって大切な宝物

――多くは語りませんが、ラストシーンもすごく心に残りました。貴島さんはこのシーンを撮り終えて、どんな想いがこみ上げてきましたか?
寂しいような、清々しいような気持ちでした。キャストもスタッフも皆、ちょっとセンチメンタルになっていて、それが可愛らしいというか。ピュアで素敵な人たちだなといとおしくなりましたし、その分、私は元気でいなきゃなとも思いました。
――振り返ってみて、連ドラから駆け抜けたこの1年余りの時間は、貴島さんにとって長かったですか? それとも短かったですか?
あっという間でした。
――この『おっさんずラブ』という作品を共につくり上げたキャスト・スタッフの皆さんは貴島さんにとってどんな存在ですか? 最後に、その想いを聞かせてください。
大切な宝物であり、家族同然の存在です。まだドラマをつくり始めたばかりの私が、こんな素敵なメンバーにめぐり会えたのは奇跡だと思います。
今、ちょうど映画のパンフレットの原稿をチェックしているんですけど、皆のコメントがあったかくて、このチームを愛してくれているんだっていうのがすごく伝わってきて、夜中にちょっと泣いちゃったり(照)
できることなら、このチームでずっと一緒に作品をつくり続けていきたいくらい。でも終わらないドラマはないし、それぞれ自分の道がありますから。今はただ、いつかまた出逢える日を信じて、私自身、成長していきたいです。
そして、いつかまたこの宝物みたいなメンバーで集まることができたら、そのときは、今を超えるような面白い作品がつくれたらいいなと思います。
【お話を伺った方】
貴島 彩理(きじま・さり)さん
1990年3月20日生まれ。東京都出身。慶應義塾大学卒業後、12年、テレビ朝日に入社。バラエティー部でAD、ディレクターを経験した後、16年にドラマ部へ異動。連ドラプロデュース2作目となる『おっさんずラブ』が社会現象を巻き起こすブームとなり、「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2019」ブレイクドラマ制作賞を受賞。その他のプロデュース作品に『オトナ高校』『私のおじさん~WATAOJI~』がある。
【作品詳細】
『劇場版 おっさんずラブ ~LOVE or DEAD~』
公開時期:2019年8月23日(金)
監督:瑠東東一郎
脚本:徳尾浩司
音楽:河野伸
出演者:田中圭、林遣都、内田理央、金子大地、伊藤修子、児嶋一哉、沢村一樹、志尊淳、眞島秀和、大塚寧々、吉田鋼太郎
製作:テレビ朝日ほか
取材・文/横川良明