【フリーアナウンサー 新井恵理那】妥協せず、自分の気持ちに嘘をつかない。その先に「自分らしい生き方」は見えてくる
今、女性の働き方・生き方は多種多様。何でも自由に選べるって素敵だけど、だからこそ、何を選択し、どこに進めばいいのか悩んでしまう。「私らしい未来」は一体、どの道の先にあるんだろう……?
そこで今回Woman type編集部では、さまざまな女性たちに聞いてみました。「私らしい未来」、みんなはどうやって見つけたの!?
『グッド!モーニング』(テレビ朝日系)、『新・情報7DAYSニュースキャスター』(TBS系)、『所さんお届けモノです!』(毎日放送、TBS系)など、多数の番組に出演しているフリーアナウンサーの新井恵理那さん。ニホンモニターが行った「2019上半期タレント番組出演本数ランキング」では女性部門の1位に輝いている。
彼女は局アナではなく、フリーランスという立場で道を切り拓いてきた。数々のオーディションを受け、獲得したチャンスを生かして地道に実績を上げていく。ライバルも多く、仕事の保証もないという環境の中で生き抜き、新井さんは「自分らしさを大切にする」ことの重要性に気付いたという。

新井 恵理那さん
フリーアナウンサー。アメリカ合衆国カリフォルニア州生まれ。青山学院大学総合文化政策学部卒業。大学2年生のときにミス青山コンテストグランプリに選ばれる。大学在学中にセント・フォースに所属。現在は、報道・情報番組の他、バラエティ番組、ラジオ番組などレギュラー番組多数。2019年上半期テレビ番組出演本数ランキング女性部門で1位を獲得(ニホンモニター調べ)。資格は、弓道二段、スキューバダイビング、ジュニア野菜ソムリエ
■ブログ
オーディションが続く日々。
社会人になっても就活が続いているような、苦しい時期だった
私はもともとアナウンサー希望だったわけではないんです。黙々と作業に集中したいタイプだったので、人前に出るような華やかな職業に就くなんて、考えたこともなかった。
転機は大学生の時。「ミス青山」になったことでタレント活動をするようになり、突然人前に出る機会が増えていったんです。ミスキャンパスは局アナ候補として注目されることも多くて、周囲からの影響もあり、次第にアナウンサーを志すようになりました。
初めはテレビ局に就職する、いわゆる「局アナ」を目指しました。最終面接までいった企業もありましたが、結果としてキー局は全敗。一般企業の就活に切り替えて活動を始めたところ、フリーアナウンサーという選択肢があることを知ったんです。
仕事内容としては、局アナもフリーアナウンサーもさほど違いはありません。ただ、後者は個人事業主であり、コンスタントに仕事が入る保証がない。まずは番組オーディションに受かって、地道に出演を重ねて実績をつくっていくことが必要でした。
オーディションのたびに自分のアピールポイントを考え、何度も原稿読みを練習。社会人になっても就活が続いているような状態で、一番苦しい時期だったと思います。

先の見えない状況でしたが、今振り返ってみると、決してネガティブな思いだけではなく、「いつかきっと、今よりも良くなる」と思っていました。そして「仕事がないなら何ができるか?」を真剣に考えてもいて。自分自身をプロデュースする必要があると感じて、いろいろなところに足を運んだり、資格を取得したりしました。今までやったことのないことに挑戦するのは楽しかったですね。
そうして自分が経験したことはブログで発信。読者の皆さんの反応もチェックしていて、「この投稿でまた新しく人に知ってもらえた」とか、「読者の方のコメントが増えた」とか、そういうわずかな差を支えにしていました。小さな変化ではありますが、そういったことに気付いていくと、自分がちょっとずつでも前に進んでいるんだって思えたんです。
1つ1つに手を抜かない。
そうやって経験を重ねていたら、自分を素直に出せるように
オーディションに合格して仕事を獲得したとしても、フリーの場合はたいてい契約期間が決まっています。実力や人気があれば契約更新になることもありますが、新人アナの場合は契約期間が終わるとたいてい番組を卒業。また新たな仕事を獲得しなくてはなりません。
私も最初の数年間はそのサイクルが続いていました。ところが26歳くらいの頃から、契約を更新していただくことが増えて。気付けば常にお仕事をいただけている状態になっていたんです。

なぜ番組を卒業することが減って、契約更新が増えていったのか――。自分自身の気持ちは仕事を始めたころと変わっていないので、何が大きく違ったのかは正直分かりません。
ただ、毎年のように卒業を迎えていた時期も、とにかく一つ一つのことに手を抜かないで、向き合おうとしていました。その姿勢を周囲の人たちから評価していただき、少しずつ信頼を重ねていけたのではないか。そんな風に捉えています。
あとは、自分をストレートに出せるようになってきたことも影響していると思います。アナウンサーになった最初の頃は、「こういう風に言うべき」というルールに従おうとし過ぎて、逆に言葉に操られてしまっている感じがあったんです。
そこから抜け出せたのは、経験を積んで自分の中にストックができたことが大きい。思ったことがスルッと出てくるようになって、「考え過ぎずにやってみよう」と思えるようになって。自分の視界が開けた感覚がありました。

今回、「2019上半期タレント番組出演本数ランキング」の女性部門で1位という結果をいただいて、とてもありがたく思っています
でも正直、心は追いつかないというか。確かに以前より忙しくはなりましたけど、苦しさやしんどさは前の方があったので、不思議なズレがあるような感じがします。
もちろん今もいろいろなプレッシャーはあります。でも、先ほどお話したように、ここ最近は「無理しなくても、自分が思ったようにやったらいいんだ」と思えるようになったんですよね。
以前はもっと頭でっかちで不安ばかりだったんですけど、今は違う。大変でヒーヒー言うこともありますけど、現場に行って、そこで頑張れば大丈夫だっていう自信が付きました。心も軽くなったので、仕事がもっと楽しめるようになりました。
自分の気持ちに嘘をつかない。
自分にも相手にも素直でいれば、自分らしい生き方は見えてくる
今、改めて女子アナの魅力について考えると、「究極の配慮」なのかな、と思います。言葉を伝えることについて深く考える場面は、日常生活ではなかなかありません。
どういう言葉を並べて、どんな接続詞を置いて、相手にどういう風に話したら、伝えたいことがちゃんと伝わるのか……。このお仕事のおかげで、「人に伝える」ことの深さを感じられるようになりました。
「これが正解」というものはないけれど、人から反応があると「きっとこれで良かったんだろうな」と感じられてうれしいですし、悩むからこそ、やりがいがある仕事だと思います。

私はもうすぐ30歳になりますが、30代を迎えるのは「怖い」よりも「楽しみ」ですね。
ただ、これから家庭を築くことも考えていきたい。そうなると、次のステップで果たしてどんな仕事があるのか――。「20代の独身女性」だからいただけているお仕事もあると思っていますし、多分、一回リセットしなくてはいけなくなる。先が分からないという不安は、もちろんあります。
それでも、きっと大丈夫なんじゃないかな、とは思っていて。私は妥協せずに仕事に取り組んでいれば、同じ所に向かっている仲間同士の絆は自ずとできていくと思っているんです。
例えば生放送の番組では時間も限られていますし、現場はものすごくバタバタしている。だからこそ私は言うべきことは遠慮なくはっきり言いますし、お仕事相手の方からも言っていただくようにしています。そうやって「番組の内容を充実させる」という目標に向かって、これまで皆で真剣にやってきたから、強い人間関係をつくることができました。
だからたとえ今の仕事が全てなくなっても、「また一緒にやろう」と言ってくださる方はいるんじゃないか、と思っているんです。自分さえ怠惰にならなければ大丈夫。そんな自信があるから、不安もあるけれど、これから何が起きるか分からないことにワクワクもします。

自分らしい生き方を見つけるのは難しいですが、私は自分にも相手にも素直でいることが大切なんだと思います。自分の気持ちに嘘をつかない。だけど、人を傷つけるようなことは言わない。優しさを持って、言うことは言う。それが相手に対して素直でいることでもあるし、自分自身を大切にしてあげることにもなるんじゃないかな。
アナウンサーとして、一人の人間として、これからも良い言葉を発していたいと思っています。
取材・文/キャベトンコ 撮影/赤松洋太 編集/天野夏海
書籍紹介
新井恵理那フォトエッセイ『八方美人』(宝島社)

フリーアナウンサー・新井恵理那さんによる初フォトエッセイ。物事に対しては「八方美人」だという新井恵理那さん。いろいろなことに興味があって、ひとつのことに絞れず、小さいころは「将来の夢」が書けずに悩んだという。でも、「八方美人」だからこそ、人生は楽しい! 迷いながらも歩いていれば、きっと自分の居場所にたどり着く――。新井さんの思いが詰まった14のエッセイ。
イベント情報
新井恵理那『八方美人』(宝島社)発売記念 ミニトーク&お渡し握手会
開催日時:2019年09月14日(土) 16:00~17:50
場所:ジュンク堂書店 池袋本店
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『「私の未来」の見つけ方』の過去記事一覧はこちら
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