さくっと結婚を決める20代・大卒女子の本音を統計データから考えてみた【連載:新居日南恵】
この連載では、家族留学事業を行うmanma代表の新居日南恵さんが、各種データを使って20代の働く女性たちのリアルな姿を考察していきます。20代女性の仕事観、結婚観、人生観って?
こんにちは。株式会社manmaの新居日南恵です。
大学1年生の時に任意団体として今の組織を立ち上げ、これまで5年間、結婚や子育てをテーマにした事業を行ってきました。
この連載では、20代、働く女性たちのリアルな姿を、データなどを活用しつつ、等身大の視点で考察していきたいと思っています。
初回となる今回は、「若者の早婚化」について考えてみたいと思います。
「私が大黒柱でもいいよ」
都市部で暮らす大卒女子が、“さくっと”結婚を決めていく
「若者の早婚化」と聞いて、皆さんはピンときますか?
お金や時間をかけて恋愛を楽しみ、来年になればもっと良い人に出会えるかもしれないと結婚を先延ばしにしていたバブル世代と対照的に、今の若者はサクッと妥協点を見つけて結婚していく……。
そんな変化に驚いた人たちが、若者たちの早婚化傾向を指摘し始めています。
例えば、昨年『S Cawaii』(主婦の友社)で組まれた特集「今すぐ彼をつかまえて、20代のうちに結婚する方法」は各種メディアでも取り上げられ「若者の早婚化」の文脈でも話題となりました。実際、この雑誌の表紙を飾っているタレントのりゅうちぇるとぺこさんは、結婚当時21歳でした。
今、私は25歳なのですが、自分の周りでも大学在学中に結婚・出産を経て就活した同級生や、大学卒業と同時に結婚した友人がいます。
女性が就職したタイミングで、パートナーの男性が博士課程に進学し、女性が一時的に「私が大黒柱になる」という決断をしたケースも複数ありました。
都市部に住む大卒女性が、20代前半でさくっと結婚を決めていく……。このような結婚のカタチを「自分を養ってくれる男性をしっかり見極めて結婚したい」と考えた上の世代の方が見ると、もしかしたらカルチャーショックを受けるのかもしれません。
都市部で暮らす20代女性は本当に、「早婚化」しているのか
この記事では引き続き、都市部に住む大卒の女性が20代前半で適当な相手を見つけて、サクッと手を打ち結婚していくことを「若者の早婚化」と定義して話を進めていきます。
最近では、女性活躍や働き方改革の後押しもあり、結婚して子どもがいてもキャリアアップできる環境も整いつつありますよね。
また、妊孕(にんよう)力に関する知識や不妊治療などの認知度が高まってきたことも、早い段階での結婚・出産の決断を後押ししているかもしれません。
Woman typeの読者の方の中にも、「そういえば、大学の同級生も卒業と同時にサクッと結婚したなあ」なんて、思い出す人がいるのではないでしょうか?
一方で、「結婚は30歳を過ぎてからでいいやと思っている友人ばかりで、早婚化なんてとんでもない」と思う人もいるでしょう。
では、実態はどうなのでしょうか。本当に、都心部に暮らす女性たちは、より若い年齢で結婚するようになっているのでしょうか?
厚生労働省の人口動態調査を参照してみたいと思います。
平成2年時点では男性の平均初婚年齢は28.3歳でしたが、平成27年には31.0歳にまで上昇しています(厚生労働省:平成28年度人口動態統計特殊報告「婚姻に関する統計」の概況 14Pより)。
また、女性は25.8歳が29.8歳にまで上昇。平均初婚年齢は年々上昇を続け、たった25年で、平均初婚年齢が4歳も上がっていることが分かります。
さらに、25~29歳での結婚は減少し、34~39歳が増加しているのです(厚生労働省:平成 28 年度人口動態統計特殊報告「婚姻に関する統計」の概況 4Pより)。
このように、30代後半以降での結婚を選択する夫婦の増加が平均を引き上げている側面もあるかもしれません。しかし、それを相殺するほどの早婚現象は、データからは見られないのが現状です。
若者の早婚化は感覚としては分かるものの、統計的に数字で現れるほどの大きな現象ではないと言えます。
「結婚を先延ばしにしてきた」40代、不妊治療経験者の声
私は現在、東京に拠点を置き、子育て家庭への体験訪問プログラム「家族留学」を運営しています。
「家族留学」は、若い世代が将来の仕事や結婚・子育てのキャリア選択のヒントを探るために、先輩の子育て家庭を1日体験訪問し、子育てを体験したり、子育て中の方の話を聞くOB・OG訪問のような取り組みです。
以前、受け入れ家庭として、若い世代を定期的に迎えてくれる40代の女性が「会社で男性と同等に評価されるために、結婚を先延ばしにしてきた」と話していたのを聞いたことがあります。
かつては、子どもがいることが出世において不利になる環境もあったと、その時に気付かされました。
また、彼女と同様に、30代後半にさしかかってから婚活と妊活を始め、不妊治療を経て幸運にも子どもを授かったという方からお話を聞く機会が多くあります。
そこで皆さんが口を揃えて言うのは、「子どもを授かれたのは奇跡」だということ。なぜなら、同時期に不妊治療をしていた友人や通院仲間の中には、子どもを授かれなかった人も実際には多くいるからです。
「将来的に子育てをしたい」という希望があるのであれば、高齢での出産に伴うさまざまなリスクについて早い段階から知っておくべきだし、「早く結婚して子どもを持つ」という選択をするメリットも大きいと思います。
「新卒だけど子育て中」理解はできても、受け入れられない?
では、20代前半でさくっと結婚、つまり“早婚”した場合、デメリットとなることはないのでしょうか? 結論から言うと、結婚だけではそこまで大きな影響はないと言えそうですが、子どもがいるとなれば別かもしれません。
学生時代に結婚して出産した私の友人は、就職活動の際に「新卒だけど子どもがいる」という状況に理解を示し、受け入れてくれる企業を探すことにとても苦労したと言っていました。
多くの企業には、「入社して数年は仕事に集中し、社会人としての基礎体力を付けるべき」という考えが根強くあると思います。
ですから、最初から時短勤務や子育てと仕事の両立を前提とした入社は、理解できても「実際には受け入れられない」というのが本音なのでしょう。
まだまだ感覚レベルでしか起こっていない“若者の早婚化”。わずかな傾向であるとはいえ、私自身は、若い世代の結婚はもう少し社会から後押しされてもいいのではないかと感じています。
というのも、今や人生100年時代。これからは、20代でキャリアを積んでから結婚・出産するという選択肢だけではなく、子育てを早いうちに一段落させてからキャリアを加速させるやり方だってあるはずです。
定年という概念だってなくなるかもしれないし、女性も生涯働き続ける時代がやってくることを考えれば、キャリアや子育てのピークを何歳ごろに持ってくるかも、人それぞれ選べた方がいい。
結婚を先送りにし、30代後半~40代で不妊治療、仕事、子育ての両立に苦しんでいる女性を見ると、「なぜもっとキャリアの築き方にバリエーションがないんだろう」と感じてしまいます。
社会、組織が若者の早婚を受け入れられるような体制を整えていくことができれば、20代女性ももっとさまざまな選択ができるようになっていくはず。働きたい、産みたい、両方とも自然と叶えられる社会になるといいなと思います。
『働くオンナ学』の過去記事一覧はこちら
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