【ラブリ】環境変化を恐れる女性へのメッセージ「自分の中の“心地良さ”を優先してみて」
機械化が進み、人間がすべき仕事の本質が改めて問い直されることの多い昨今。AI時代は「人間らしく働くこと」が大事だとは言うけれど、それは一体どういうことなのだろう。
そのヒントを見つけるべくお話を聞いたのは、モデルとして活躍する一方で、最近では“言葉を使ったアートワーク”活動で注目を集めるラブリさんだ。
“体験した気になる”情報に依存し過ぎないで
今の世の中はテクノロジーが進化してすごく便利になったけれど、その分情報があまりにも多過ぎて、受け取ったものをちゃんと消化する時間が足りないと感じています。特に、私たちにとってとても身近なSNSの存在は大きいなって思っていて。好きな人のちょっとした日常や心の動きを、遠くにいても簡単に受信できる。発信するのもしないのも、見るのも見ないのも自由で、好きな時間に好きな場所で情報に触れられます。
でも、デジタルの情報だけで〝体験した気になってしまう〞のって、実はすごく危ないことだと思うんです。「あの場所、良さそうだな」「こんなことをやってみたら楽しそう」なんて、想像で終わっちゃうのはもったいないと思いませんか? 本当に行って、見て、体験してみないと分からないことはいっぱいあるはずなのに、SNSだけで満足してしまう。しかも、満足してしまっている自分にさえ、気付かないなんてことも……。
ちゃんと自分で選んで、動いて、経験する。そういう〝アナログな体験〞を通じて磨かれた選択をする力や行動力は、人生や仕事で何か悩んだときにこそ、役立つはずだって思っています。
その力を磨く機会を、SNS漬けの日々によってうっかり手放してしまわないように、気を付けないといけないなって思うんですよね。だから私は自分のSNSでも、情報を押し付けるだけにならないようにしたくて。「私はこんなことをしたよ、あなたはどう思う?」「どんな選択をする?」という感じで、隣で寄り添うようなイメージの発信を心掛けています。
そうやって自分らしい選択や経験を積み重ねていけば、きっと社会がどう変わっても大丈夫だと思うんですよね。AIがどれだけ単純労働を奪っていったって、私たちにしかできない仕事、私たちが本当にやりたい仕事が残ると思います。
私はファンの子たちからよく「やりたいことに飛び込む勇気がない」「安定のために今の仕事を手放せない」なんて相談を受けるんですけど、本当に自分のやりたいことのためなら、お金や安定なんて関係ない。自分が本当に好きなことを選べていれば、周りの環境がどれだけ変化していても、自分自身は揺らがないと思うんです。
もちろん、不安はいつだって抱えていますよ。それこそSNSにはみんなのベストショットが並んでいて、うらやましく思っちゃう気持ちも分かる。そういう不安はいくつになっても、何をしていてもきっと消えないものだから、うまく付き合っていくしかありません。それでも不安で怖かったら、自分がおばあちゃんになったとき、今悩んでいることを思い出すか考えてみて。「あの時、こんなことで悩んでたな……」なんて、きっと思い出さないから(笑)!
だったら、勇気を出して自分で選んで動いた方が私は絶対にいいと思います。
自分らしい選択と行動を積み重ねて、生きていく
私自身は10代の頃から、何かを決めるときはいつも「心地良いか、心地良くないか」を判断基準にしてきました。仕事も恋愛も、みんなそう。まずは、自分の現状を振り返って「何が心地良いのか」「心地良くないとしたら、どうすれば心地良くなれるのか」を考えます。
原因や方法をノートに書き出して、さまざまな角度から対処法を考えた上で、どうしても心地良くなさそうなものは、思い切って捨てちゃうことにしていて。
例えば、私はテレビにたくさん出ることがどうにも心地良くなかった。テレビの向こうにいる方々の反応が見えないから、自分の存在意義がどこにあるのか分からなかったんです。だけどテレビに出ることで認知度が高まれば、できることは増えていく……。だから今は、〝テレビのラブリ〞もうまく活用しながら、心地良い活動の比重を高めていこうと考えています。
そうやって自分の心地良さを優先して生きていたら、ファンの子たちからも「昔のラブリより、今のラブリの方が幸せそう」って言ってもらえるようになりました。私は自分が本当にやりたいことだけを残して選んできたから、今を楽しく生きていられるって、胸を張って言えるんです。
そうやって自分らしい選択ができる人間になるために、大きな改革は必要ありません。気になる場所に出掛けてみるとか、周りや自分に贈り物をしてみるとか……。日常にちょっとした新しいアクションを積み重ねるだけでも、見える景色が変わるはず。小さなことが、自分だけの選択をする力や行動力を磨いてくれるんだと思います。
私も私自身の人生を実験台だと考えているから、自分のトライはどんどんみんなに伝えていきたいと考えていて。例えば今は、超音波や脳波を使って、〝言葉の持つ感情〞を届けるようなライブを企画中です。そうやって新しい表現にはうまくデジタルも取り入れつつ、自分にしかできないアナログな体験を、自分にしか紡げない言葉で伝えていけたらいいなと思います。
取材・文/菅原さくら 撮影/赤松洋太