職場の人間関係に悩んだら試したい、明日からできる改善法
長く仕事は続けていきたい。でも、どんな仕事が自分に合っているのか、そもそもどんな人生を送りたいのか、自分のありたい姿が明確にならない女性も多いはず――。そこでこの連載では、さまざまな人生経験を積んできた『Mentor For』のメンターたちが、“豊かなキャリア”を描いていくためのヒントを後輩女性に向けて送ります
こんにちは。Mentor For公式メンターの前田典子です。
金融業界からキャリアをスタートし、人材育成業界に転職。現在は、メンタリング、コーチング、企業研修などを通じて、「個人」「組織」の両面からビジネスパーソンの支援を行っています。特に、職場でのコミュニケーションや人間関係の改善についてが私の得意領域。そしてきっと、多くのビジネスパーソンが悩んでいるテーマではないでしょうか。
私は、「システム・コーチング」という、チームの関係性そのものに焦点を当てて、関係性を改善する、といった仕事もしています。私の連載では、これらの経験から、職場のコミュニケーションがなぜ難しいのか、そして改善するにはどうしたらいいか、ということについて3回にわたって書いていきます。
職場のコミュニケーション課題
さっそくですが、皆さんは、職場のコミュニケーションに課題を感じていますか?
私は今まで数多くの女性をメンタリングしてきましたが、メンタリングセッションの場では、「コミュニケーション」についての課題がしばしば話題にのぼります。コミュニケーションというと、「話し方」「言葉遣い」「会話の仕方」も指すケースもありますが、多くの場合、課題はそこではありません。
例えば管理職研修の場で、「チームでコミュニケーションはうまく取れていますか?」と尋ねると、よく「うちのチームは挨拶や雑談もあります」、「特に争いごとはなくうまくいっています」という答えが返ってきます。
しかし、これらは必ずしも「良い状態」というわけではありません。なぜなら、「職場のコミュニケーションが良い状態」とは、会話があるということだけでなく「関係性が健全である」という意味も含んでいるからです。
では、「関係性が健全である」とはどういうことでしょうか?
メンタリングでよく耳にするお悩みは、「言いたいことを言えずガマンしている」、「発言を誤解されている」といったことです。こういう状況が、実は多くの職場に潜んでいるのです。
・上司に意見をいいたいが言えない
・仕事をどんどん頼まれ、断りたいが言えない
・同僚にアドバイスをしたら、誤解されてしまった
・うれしいことがあっても、相手にどう思われるか心配なので言わない
これらは私自身も以前に組織人として働いていた時に経験した悩みでした。仕事自体にはやりがいを感じていましたが、上司や同僚に対するコミュニケーションのモヤモヤは大きな悩みでもありました。
「言いたいことが、相手に伝わるように言う」
アサーティブコミュニケーションとは?
「アサーティブコミュニケーション」という言葉を聞いたことがある方もいると思います。これは、「言いたいことを、相手に伝わるように言う」というコミュニケーションの手法です。
この手法は、「コミュニケーションにおける行き違い、モヤモヤする状況を打開するために有効である」と、言われています。しかし、相手との間に「健全な関係性」が構築されていなければ、そもそも、この活用も難しいもの。では、「関係性」はどうやって構築すればよいのでしょうか?
「関係性」は二つの層からできていると考えられています。それは、「事実/現実」と「感情」です。前者は誰から見ても分かるもの(所属、チームなど)で、後者は外からは分からないもの(人々の感情の集合体)です。そして、育まれる「関係性」とは、「事実」ではなく「心(感情)」によります。つまり、「お互いが感じていること」が影響し合うことでつくられます。
例として、夫婦関係で考えてみましょう。出会った時に何かピンとくるもの(理屈では説明できないもの)があったり、「フィーリングが合う」などと感じたりして、目に見えない「心(感情)」によって関係性が育まれていきます。加えて、「契約」という「事実」が加わります。しかし「関係性」はまるで生き物のように変化します。契約に安心して、心のつながりをないがしろにすると、夫婦関係が難しくなりますよね。
職場に話を戻します。
職場には上司や同僚がいます。その人達との関係は「同じ職場」という「事実/現実」です。しかし、前述のように、それだけでは「関係性」は育まれません。「心(感情)」をないがしろにすると、メンバーは、「どんなことを感じているのか?」「何が嬉しくて、何がいやなのか。」「どんな人柄なのか?」といったことを共有できなくなります。
特に最近は「一緒に働いている人のことを知りにくくなっている」時代です。テクノロジーが発達していなかった時代は、否が応でも口頭で話をしなければならず、必然的にお互いの人間性や感情に触れることが多くありました。ところが、昨今はそれなしに業務を進めることができます。加えて、ビジネスのスピードも速くなっていて、職場で「感情」に触れている余裕はなくなってしまったように感じます。
職場で「心のつながりをつくろう」
仕事の会話とには、通常「感情」は含まれず「事実/現実」のことだけやりとりするのが普通です。ですから、仕事の会話をしたところで「関係性」は育まれません。そこに感情的なことが絡むと難しいのです。発言するのが難しかったり、発言することによって、仕事がやりにくくったりします。職場のコミュニケーションの難しさはそこにあります。
では、どうしたらいいのでしょうか?
皆さんにやってみて頂きたいことがあります。職場で「心のつながりをつくろう」ということです。職場の人達と「感じていること」「あなたらしさが伝わる会話」をするように意識してみましょう。
例えば、
1)朝の挨拶に「気持ち」をプラスする
朝、上司が「おはよう」と声を掛け、部下が「おはようございます」と言う。その後、沈黙になってしまう、なんていう瞬間はないでしょうか?
こんなときは、あなたの気持ちを表す一言を加えてみましょう。「今日は気分がいいんです。朝のスムージーが美味しくできたから」みたいなことでもよいし、もっと短く「今朝は涼しくて過ごしやすいですね」といったことでもOK
です。
2)週明けに「週末はゆっくりできた?」と問い掛けてみる
外資系の会社に勤務していた時、週明けに必ず聞かれたのが「How’s your weekend?」(週末どうだった?)でした。「家族と遊びに行った」「料理教室に行った」など、職場では見えない「その人」が垣間見えてよいものでした。注意点は、「一往復で終了し、深く詮索しないこと」です。
3)「感謝」に感想をプラスする
まず、職場で「ありがとう」を省エネせずに伝えましょう。そして、その時(時間的に余裕があれば)感想や理由をプラスしましょう。「忙しい●●さんなのに、いつも気に掛けてくれてすごくうれしいです」のような一言でOKです。
これらのポイントを実行するだけで、職場の「関係性」がよくなったり、コミュニケーションが取りやすくなったり、良い変化が起こります。そして、「健全な関係性」がある職場は、あなたの強みが発揮され、よりキャリアを積み重ねる土壌になっていきます。
「上司が分かってくれない」「何だかコミュニケーションでモヤモヤする」「あの人と分かり合えない」……もしそう思ったら、むしろ健全な関係性を築くチャンスです。ぜひトライしてみてください。
『後輩たちへ』の過去記事一覧はこちら
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