「管理職は特別な人がなるもの」という考え方が間違っている理由

持つべきものは、頼れるメンター!
「後輩たちへ」

長く仕事は続けていきたい。でも、どんな仕事が自分に合っているのか、そもそもどんな人生を送りたいのか、自分のありたい姿が明確にならない女性も多いはず――。そこでこの連載では、さまざまな人生経験を積んできた『育キャリカレッジ』のメンターたちが、“豊かなキャリア”を描いていくためのヒントを後輩女性に向けて送ります

こんにちは。育キャリカレッジのウィメンズキャリアメンター櫻木友紀です。前回は、女性が自分のキャリアを主体的に生きるためのポイントをお伝えしました。今回は、「私に管理職のポストは務まらなそう」と感じている女性向けに、お話させてください。

「なぜあなたは裏方で走り回っているの?」

日本には、女性管理職が少ないというイメージがありますよね。では、実際はどれくらい、いるのでしょうか?

厚生労働省が昨年9月に発表した「平成29年版 働く女性の実情」によると、管理職に占める女性労働者の割合の平均値は14.3%。企業規模が大きくなるほどその割合はさらに低くなり、1,001人以上の規模の会社では10%前後、ワーキングマザーの管理職となると、さらにレアな存在です。このレアさでは、「私に管理職は無理かも」と考えてしまう女性が多いのも頷けます。

しかし、これをグローバルな視点で見てみるといかがでしょうか?

国際労働機関(ILO)によると2018年時点で世界で管理職に占める女性の割合は27.1%、米国は39.7%と高い比率です(日本は先進7カ国で最下位……)。ちなみに、就業者に占める女性の割合は概ねどこの国も40~47%に入っており、日本と他の国で大きな違いはありません。それにも関わらず、日本は女性の管理職比率が低いのが特徴ですね。

女性

私は会社員時代、さまざまな国の人が集まり意思決定を行なっていく国際会議に参加することが多くありました。その中で他国の参加者からかなりの高頻度で聞かれるのが、「日本は女性の参加者が少ないね」ということでした。そして、「日本からのプレゼンターはなぜ男性ばかりなの?」「なぜあなたは裏方で走り回っているの?」ということも言われていました。

なるほど、国際社会から見ると、女性の意思決定者が少ないことや、女性がアシスタント的な仕事をしていることは、思わず口に出して聞きたくなるほどの違和感があるのか……。それと同時に、国際社会からこのような見方をされてしまう日本ってどうなのかな? という思いが湧き上がってきました。

管理職=「バリキャリなリーダー」ではない

先ほどお話した国際会議に参加している海外の女性管理職たちは、いかにもキャリアウーマンで、仕事ばかりしている方ばかりかというと、そのようなことは全くありません。オススメのマッサージ屋さんやお土産の情報で盛り上がったりすることもあるし、ワーキングマザーなら子育て方法の知識をシェアしたりもしていました。どの国の女性管理職も、等身大で、仕事以外のことにも楽しみを見出し、自分らしいリーダースタイルで臨んでいたことが印象的でした。

これらのエピソードからお伝えしたいことは3つ。

【1】女性管理職は日本ではまだレア。挑戦に不安を感じるのは仕方ないこと
【2】でも、グローバルに見れば女性管理職はいて普通!
【3】管理職は“特別な人”ではない

私がメンタリングの中で、働く女性からよく受ける相談の一つが、「管理職には興味はあるけれど、あんなにバリバリに働けない」「女性管理職は “すごい人” が多く、私はそんな風には到底なれない」ということです。

そんな時、私が聞くのは「どんな管理職だったら、あなたでもなれると思いますか?」ということ。

すると、「後ろから部下の背中を押してあげられる人」「イケイケどんどんのタイプというより、意見を上手くまとめて提案できる人」など、その人らしいステキな管理職像が浮かび上がってきます。

では、この記事を読んでいる、あなた自身はいかがですか? 管理職のイメージはどういうものですか? 「あなたらしい管理職でいい」と言われたら、どう答えますか?

そして私は、このような質問も追加したいと思います。

「なぜそのようなスタイルの管理職が必要だと思いますか?」
「もし、あなたが今描いた通りのスタイルで管理職として活躍できたら、職場はどう変わると思いますか?」
「職場の変化は、会社にどんな影響をもたらすと思いますか?」

この質問を重ねていくと、自分らしい等身大の姿で管理職になることは、自分にとっても職場にとっても、会社にとっても価値があることに気付きませんか?

会社は常に変化し続けるもの
いろいろなタイプの女性管理職が必要になる

私がメンタリングをした女性たちも、この質問を深めていくことで、自信を持ち、自分らしい管理職となるために必要なことは何かを考えられるようになっていきました。「このままの私でいいんだ!」と気付いた瞬間の輝く表情を見ると、いつもワクワクします。

また、私自身は会社というものは「社会から求められているものや、まだ存在しないものを、提供し続ける存在」であると思っています。つまり、常に変化し続ける必要がある存在です。そして社会には、いろいろな価値観、働き方、考え方の人がいます。そんな多種多様な社会のニーズを満たしていくためには、会社組織、ひいては、管理職のスタイルも多種多様である必要があると思っています。

今の日本の組織には、まだまだ「女性管理職」というと、「バリバリ働き強いリーダーシップがあるタイプ」というイメージがあります。だからこそ、管理職になることにハードルを感じてしまうのかもしれません。しかし、いろいろなタイプの女性管理職がこれからの社会に求められていくのです、そう考えると、そこまで気負う必要はない気がしませんか?

今、いないタイプの管理職になることに価値がある。そして、あなたがあなたらしい管理職でいることで、後輩達も「自分らしい管理職でいいんだ」と思えるようになるかもしれません。あなたがもし管理職に少しでも興味があるのであれば恐れず、自信を持って挑戦してもらいたいなと思っています。

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育キャリカレッジ

【この記事を書いたメンター】

櫻木友紀さん
育キャリカレッジ公式メンター ウィメンズキャリアメンター認定講師

製薬業界で管理職等を経験した後、現在は育キャリカレッジのウィメンズキャリアメンターとして、働く女性のキャリア構築の伴走をしている。キャリアコンサルタント、研修講師としても多方面で活躍中。帰国子女でもあり、その経験を活かして外国人女性の社外メンターにもなっている。高3男子の母

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