02
OCT/2019

LINEグループから外される、服がダサいとイジられる……これって職場いじめ? 弁護士に聞いてみた

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「今日の化粧、ヘンだよ~!」とイジられたり、
「あの人、もう彼氏と別れたらしいよ」と噂話のネタにされたり。

これって“職場いじめ”なんじゃないの……?」と思いながらも、デリケートな問題であるがゆえに、「こんな程度のことで、上司や外部の人に相談していいのか?」と悩む人は少なくないのでは。

そこで今回はベリーベスト法律事務所の弁護士・松井剛さんに、法律上でいじめとして認められるボーダーラインについて、具体的な事例を交えて解説してもらった。いきなり「法に訴える」とは言わないまでも、「これはいじめだと、堂々と主張していいんだ」と考える参考にしてほしい。

 ベリーベスト法律事務所 弁護士 松井剛さん

ベリーベスト法律事務所 弁護士 松井剛さん

労働問題を得意とし、その誠実な人柄と親身で分かりやすい説明に定評がある。依頼者の希望に沿った解決を導くべく日々研鑽を積んでいる。趣味は料理。
ベリーベスト法律事務所:https://www.vbest.jp/

法律的に「いじめ」という概念は存在しない

法律的な観点で「職場いじめ」とはどういうものなのか。まずはじめに、その定義を教えてもらった。

「そもそも法律では『職場いじめとは〇〇です』と定義しているものはありません。しかしそれに近いものとしては、数年前から話題に上がっている『パワハラ』があります。パワハラは、同じ職場で働く人に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に行われる行為。優越的な関係を背景に、業務上必要かつ相当な範囲を超えて、身体的若しくは精神的な苦痛を与えるまたは職場環境を悪化させる行為と定義されています※」

ただこれだけを「職場いじめ」と捉えると、優位性が特にない関係の時に嫌がらせを受けた、というケースが外れてしまう可能性がある。例えば自分とは上下関係もない後輩から日常的に悪口を言われたり、殴られたりしても、2人の関係に優位性がなければ、パワハラには当たらない

「しかしこういった一般用語としての『いじめ』に当たることが明らかな場合は、パワハラとは言えなくても、民法709条の不法行為に該当する可能性があります。違法に他人の権利や利益を侵害する行為があった場合に損害を賠償すべきことを定める規定です」

もちろん、全てケースバイケースであるという前提条件はあるものの、他者に対して不当に権利や利益を侵害する行為だと認められれば、損害賠償を請求することができるのだという。

では、具体的にはどんなケースであれば、法律的に「いじめ」と認められるのだろうか? 弊誌に寄せられた「これって、いじめ……?」と感じた瞬間について、アドバイスをもらった。

※注)「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告」による定義。一方、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)30条の2」では、「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」をパワハラと定義している。

1.化粧が濃い、服装がダサいとイジられる

相談者

職場の先輩に、化粧が濃い、服装がダサいと皆の前でイジられます。毎回笑われるのが嫌なので、自分の好みではないけれど無難な洋服を新調したり、メイクの仕方を変えたりして自分を殺しています……。

回答:「いじめ」と言える可能性あり

松井さん

具体的な事実によるものの、公然と行われれば侮辱罪(刑法231条)に該当する可能性や不法行為に該当する可能性があります。

しかしアパレル業界や化粧品業界など「ダサいと業務に支障が出る」仕事であれば、相手が業務上の注意として言っている場合もある。そのあたりは見極めが必要だ。

松井さん

例えば“鼻毛が出ているよ”、“メイクがヘンだよ”など言われて傷つくことがあったとしても、それは仕事上のマイナスを改善させるためのアドバイスであることもあります。

ちなみにこの場合は「侮辱されて傷ついたこと」に焦点を当てているだけであって、「ダサいと言われたくないから新しい服を買った」ことによる費用の請求などは難しいそうだ。

2.自分だけ雑談に参加させてもらえない

相談者

職場の先輩に、自分だけ雑談を振ってもらえません。業務に支障はないものの、周りの人とは仕事に関係のない雑談で盛り上がっているので、寂しいです。

回答:「いじめ」とは言いがたい

松井さん

隔離・仲間外し・無視等の人間関係からの切り離しは、パワハラの一類型と考えられてはいます。しかしこのケースは先輩から業務には関係のない話を振ってもらえないだけ、と見受けられます。先輩には、後輩に対して雑談を振る業務上の義務はありません。業務上の義務がないことをしなかったとしても、パワハラや不法行為に該当するとは言えないでしょう。

確かに、先輩は後輩に対して平等に雑談を振らなくてはいけない、という業務上の義務はない。他人に対してある程度好き嫌いがあること自体は、自然なことである。しかし、それが「パワハラと言える程度に具体的な行為として現れてしまうと問題になる可能性がある」と松井さん。

松井さん

他の人に『あいつを無視しようぜ』などと誘い、積極的に仲間外れにしたら、パワハラに当たる可能性があります。ただ、もし相手の知らないところで悪口を言っただけであれば、悪口を言われた人が心にダメージを受けることはなく、損害が発生したとは言い難いです。悪口を言うこと自体は問題ですが、損害賠償の対象にはならないでしょう。

3.自分以外は入っている「業務外LINEグループ」の存在

相談者

私が所属するチームには「業務時間外用LINEグループ」があるようです。どうやら休みの日に集まって飲み会などしているようなのですが、誘われていません……。

回答:「いじめ」とは言いがたい

松井さん

確かに悲しいことですが、業務外のコミュニケーションを行うLINEグループに誘う義務があるとまでは言えない以上、いじめとは言えないでしょう。

ただし他の人に『あの人は誘ってはダメ』と言って仲間外れにしたり、悪口を言ったりすれば、【2】と同様、パワハラにあたる可能性がある。

松井さん

誰かがそのいじめの対象者を誘って、間違えてLINEグループに入れてしまった時。しょうがないからそのLINEグループは解体させて別のグループを作った、と『積極的に仲間外れにした』という事実があれば、いじめにあたる場合があります。ポイントは、積極的に仲間外れにして、心理的なダメージを与えているかどうかです。

4.プライベートな悪口を職場で言われた

相談者

同僚に「あの人ってすぐ彼氏変わるよね、男好きなのかな?」とプライベートの陰口を叩かれているらしい。“男好き”というレッテルを貼られてしまい、職場に行きづらい……。

回答:「いじめ」と言える可能性あり

松井さん

悪口を言うことが公然と行われれば侮辱罪(刑法231条)や名誉棄損罪(刑法230条)に該当する可能性があります。

さらにこのケースは「異性関係がある」と言いふらしているため、セクハラにあたる可能性もあるという。

松井さん

セクハラというと男性から女性に対して行われる性的なハラスメント、というイメージがあるかもしれません。しかし同性同士であったとしても、異性関係について言及することはセクハラにあたる可能性が十分にあります。

5.お客さまから「好きじゃない」と言われた

相談者

販売職をしているのですが、特定のお客さまから「あなたのことが好きじゃないから、あなたからは買いたくない」と言われてしまいます。これも、職場のいじめにあたりますか……?

回答:「いじめ」とは言いがたい

松井さん

日本におけるパワハラの定義では『同じ職場で働く者』に対しては言及していますが、その他には言及していません。今回のケースでは『同じ職場で働く者』とは言えないため、職場いじめと判断することは難しいでしょう。

もちろん公然と侮辱されたりすることがあれば不法行為にはなり得るという。しかし「あなたのことが好きじゃない」といった個人の好き嫌いに関しては仕方のないことであり、それを理由で買わない、と言われても不法行為とまではいい難いそう。

会社は従業員を守る義務がある! 「仕事がしにくい」と思ったら声を上げて

職場いじめが認定されるかはケースバイケースであるものの、それでも以前より格段に声を上げやすい環境になっていると松井さんは話す。

「いわゆるパワハラ防止法において、事業主が労働者からの相談に応じ適切に対応するために必要な体制の整備、雇用管理上必要な措置を講じなければならないとされました。また、相談をした労働者に対する不利益取扱いも禁止されています。これに違反すれば厚生労働省から改善を求められ、応じなければ企業名が公表される場合も。つまり会社は『労働者から相談を受けたら対策をする義務がある』ということです。

だから少しでも『嫌だな』『働きづらいな』と悩むことがあるなら、恐れずに会社に相談した方がいい。社会でもいじめに対する意識は変化しているので、今までだったら泣き寝入りするしかなかったケースでも、働きやすい職場環境に変えられるチャンスになるかもしれません。今回私は法律に絡めてアドバイスさせていただきましたが、法律的にはいじめとは言えないことでも、ご自身が嫌だと感じるならぜひ声を上げてほしいです」(松井さん)

取材・文/キャベトンコ 撮影/大室倫子(編集部)

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